もしチャンミで水着スズカさんが勝てたら投稿速度が上がります
なお一緒に出してる逃げリッキーが強すぎて勝てない模様
――――お兄さんがどんな存在か、一言で言うのは難しい。
一心同体……ちょっと違う。
所有物……お兄さんはモノ扱いとか嫌いだし違う。
誰よりも傍にいて、誰よりも私を大切にしてくれて、誰よりも一緒にいてくれて、近くにいてくれるだけで安心できる大切な人。
あえて一言で言うならそのまま「お兄さん」というわけだけれど。
旦那様でもあるし、けっこうえっちだし、意地悪だし、そこそこ捻くれてるから自分のことはあんまり語ってくれないし。
そんなお兄さんとの――――子どものことだ。
お兄さんは走って欲しいというし、私も走ることに異存はないのだけれど。……それよりお兄さんの赤ちゃんは絶対可愛いと思うわけである。お義母さんも「孫ができたら息子に似るのかしらねー」と言っていた。
――――お兄さん似の子ども! 絶対かわいい!
お兄さんが二人に増えて、しかも好きに可愛がっていいなんてもうそれが楽しみで楽しみで仕方がない。
だいたい子どもがいても走れるし。
タマモクロスさんも子どもを育てながらコーチの仕事をしているらしいし。
私としてはお兄さんのお陰で寂しくないし、好きに走れるし、世界一になった景色も見られたし、あとはお兄さんが幸せそうなら満足なのだけれど――――お兄さんがうまぴょい大好きなことが発覚したのでそれもほぼ解決。
普通に甘えたいのにすぐえっちな感じにしようとするのはちょっぴり不満なのだが、仕方がないので許してあげることにしている。意地悪な以外は嫌じゃないし。
お兄さんが望むなら、少しくらい……それなりに、お兄さんが喜んでくれそうなことを頑張ってみたいとも思う。
でもお兄さんの持ってる本はちょっと過激すぎてまだ半分も読めてなかったり。
そういうのが好きなら頼んでくれればいいのに、そういうわけでもないし。
普段何も言わなくても私の好きな物を用意してくれるお兄さんの凄さを感じてしまう。それはそれとして頼まれないならやらない。やらないったらやらない。
けど最近思うのだ。私はお兄さんがいないと寂しくて夜も眠れないどころか常時掛かり気味みたいなものなのに、お兄さんはズルいと。
(お兄さんだって、私がいないとダメになってくれてもいいのに)
今日だって「トレーナー仲間と飲み会に行ってくる」って……。
私だってそういう仕事の付き合いとか、お兄さんのお友だちとか、大事なことだってわかってる。だから我慢はするけれど―――それはそれとして、気が付けばくるくると同じ場所を回ってしまっている。
お兄さんには脚に負担がかかるからダメと言われているけれど、お兄さんがいないのが悪い。
……やっぱりこんな時、お兄さんの子どもがいてくれれば寂しくないのでは?
いやお兄さんはどちらにしてもいないとダメだけど。
仕方がないのでスぺちゃんに電話してみたり。
『スズカさん! こんばんは!』
「こんばんは、スぺちゃん。今大丈夫?」
『もちろん大丈夫です! ちょうどお母ちゃんから届いたにんじんを―――あっ』
「スぺちゃん……食べ過ぎないようにね?」
度々太ってしまって困っているのに、スぺちゃんは割といつも何か食べているイメージがある。大丈夫だろうか。お兄さんに言わせると「スズカがやたら走りたくなるようなもの」とのことで、それならまあ仕方ないと思うけれど。
『今日はお兄さんはどうしたんですか?』
「実はね――――…」
………
……
…
『なるほど、飲み会ですかー。トレーナーさん達って飲み会好きですよね。私のトレーナーさんもよくおハナさんと飲んでるらしいですし』
「お酒、美味しいのかしら」
お酒はあんまり匂いが好きじゃない。
でも酔って甘えてくるお兄さんはとても……とても良い。
力いっぱい抱きしめられると、なんというか………胸がきゅうっとなって、ぽかぽかして、ずうっとそのままでいたくなる。酔ってる時のお兄さんは意地悪じゃなくて、素直なのだ。
「ねぇスぺちゃん、お兄さんの子どもってきっと可愛いと思うの」
『……えっ? スズカさん、子どもできたんですか!?』
「まだだけど……。お兄さんが『ドリームトロフィーリーグも少し走ってからにしないか』って言うの。でもお兄さん、飲み会とか仕事とかでいないときがあるから……」
『な、なるほど…? ところでスズカさん、その………子どもってどうやってできるかって―――』
「うまぴょいして、ずきゅんばきゅんすると…?」
『――――たぶん合ってますね!』
たぶん…?
ちょっと気になるところではあるのだけれど、私もつい最近まで知らなかったので仕方ないだろうか。
ともかく、お兄さんの子どもは絶対可愛い。
なんとか説得したいのだけれど…。
『もうやっぱりスズカさんの素直な気持ちを伝えるしかないような……?』
「そうね……。ありがとう、スぺちゃん。お兄さんにお願いしてみる」
なんて言おうか悩ましい。
と、ちょうど電話が掛かってきたのでスぺちゃんに断ってそちらに出る。……えっと、お兄さんの電話?
「お兄さんっ?」
『あー、ごめん。ライスシャワーのトレーナーだけど……君の旦那がその、だいぶ出来上がっちゃってて――――迎えに来てもらえないかな? 店は―――』
お兄さん……。
そんなお迎えが必要なくらい酔うのは珍しい。けれど、ウマ娘のパワーなら背負って帰るくらいは余裕なので、絵面はともかく大丈夫だろう。
………
……
…
というわけでひとっ走りトレセン学園近くの居酒屋まで。
ちゃんと個室のあるところで、トレセン学園のトレーナー行きつけのお店なので私も顔パスで通れる(お兄さん曰く逆にスズカの顔知らなかったら驚くとのことだが)。
すると完全に出来上がったお兄さんが水を飲みながら何やら悩んでいた。
「だってさぁ……あんなに可愛いんだぞ? 子どもの頃からお兄さんお兄さんってついてきてくれてさ……望みは叶えてやりたいさ。でもなぁ……まだドリームトロフィーリーグ入ったばっかなのにさ……ワキちゃんが悪く思われないかなってさ……」
「はいはい、水飲んで水」
「世界一は取った! もうこれ以上ない。でもな、スズカならもっと夢を見せてくれるんじゃないかって思うファンの気持ちがわかるんだよ! 俺が一番のファンだから! もっと夢を見たいんだよ………これ以上ないと思うけど……」
「でもなあ、サイレンススズカだぞ……」
「いや、またリピートしてるぞ」
「完全に酔っぱらってるね」
「サイレンススズカなら世界一くらいなぁ、とれらぁ……!」
「トレーナーは大事だぞ」
「はい氷水」
一番のファン…。
嬉しい。きっと前までだったら一番嬉しい言葉だった。
……でも、今は――――最強のウマ娘じゃなく、ひとりの女の子として見て欲しいと、そう思う。
「じゃあ、レースが無かったら私は要りませんか…?」
「―――んなわけあるか! スズカが居なかったら俺なんて寂しくて死ぬわ! 寂しい時に頭を擦り付けて甘えてくるのが最高に可愛くて――――――…え?」
驚いたような、間の抜けた顔のお兄さんを見て『ああ、きっとこれがお兄さんの本音なんだろうな』と思う。
「俺今なんか言った?」
「スズカがいないと寂しくて死んじゃうって言ってました」
ついつい嬉しくて抱き着くと、お兄さんも恥ずかしそうにしつつも抱き返してくれる。
「気のせいじゃないかな……」
「じゃあちゃんと言って下さい。……私のこと、どう思ってますか?」
「かわいい……じゃなくて」
「じゃないんですか…?」
「幼気なワキちゃんを騙して嫁に貰ったというか…」
「………否定はしませんけど。……でもお兄さんは忘れちゃったかもしれないですが、私は覚えていますよ」
まさかお兄さんがこんなにえっちで、色々と我慢していたなんて知らなかった。
一緒に寝たり、お風呂に入るのを嫌がったのはそれが理由だったのだろう。そう言ってくれれば、私も―――…たぶん、流れでそういうことをしないように教えてくれなかったのだろうけれど。
「お兄さんが、私を見つけてくれたこと。私が気持ちよく、楽しく走れるように頑張ってくれたこと。私を育てるために悩んで、試行錯誤してくれて――――ずっと、寄り添ってくれたこと」
私をここまで育ててくれた恩は、感謝の気持ちは、返したい。
「私がここまで走れたこと、くじけずにゴールを目指せたこと、私が今、とっても幸せなこと――――私は、貴方のお陰だと思っていますから」
だから―――私のぜんぶをあげるから、貴方のぜんぶを私に下さい。
一緒に目覚める朝を、共に駆け抜ける昼を、愛を交わす夜を。春も、夏も、秋も、冬も。あなたと共に、二人の蹄跡を刻んでいきたいから。
「だから――――これからも、よろしくお願いしますね。お兄さん」
きっとまだ知らないことは沢山あって。
けれど、それでも。お兄さんと二人なら乗り越えられる。お兄さんのためなら頑張れる。
貴方のためなら、運命だって超えていける。
一番大好きな人に愛を教えてもらった、世界で一番幸せなウマ娘だから。
世界で一番速いウマ娘にだって、なってみせる。
そっと、触れ合うだけの口づけ。
お兄さんに身体を寄せて――――くしゃり、と頭を撫でられた。
「とりあえず家に帰るか」
「あっ」
「「ご馳走さまです」」
……そういえばお兄さんの同僚の人がいたんだった。
………
……
…
二人、手をつないで並んで夜の街を歩きながら話をする。
今ならきっと、素直な言葉が聞けそうだったから。
「……お兄さん、子どもは嫌いですか?」
「そんなわけない。……子どもが、いてくれればなぁ。夢が繋がる――――いや、そうか。サイレンススズカ産駒……」
さんく? Thank…?
「お兄さんにそっくりの子どもとか」
「……そこはスズカ似がいいなぁ」
「じゃあ目元がお兄さんにそっくりなウマ娘とか」
「性格はワキちゃん似で」
私が言うのもアレだけれど、それはかなり面倒な子どもなのではないだろうか。
お兄さんがいないと泣き喚く自信がある。
「面倒くさくは、ないですか…?」
「可愛いぞー。ママ、ママって甘えて後ろをついてくる子どもを想像してみろ」
「―――絶対可愛いですね」
現実はきっと、大変なことばかりだけれど。
走れば置いてけぼりにしてしまう私も、歩けば歩幅が広くて先に行ってしまうお兄さんも。不思議と並んで歩けていて。
並んで歩くことが、意外にも難しくて―――こんなにも自然にできることを、今更ながら不思議に思えた。
「…………すき。私、好きなんです――――こうしてお兄さんと、一緒に歩くのが」
手を繋ぐのも、腕に抱き着くのも。
抱き着いて困らせるのも。そのどれもが、大好きな人の優しさとぬくもりを感じられるから。
「走るのとどっちが好き?」
「あなたとなら、どちらでも―――――…でも、私は速いですよ?」
わたしたちの描いた、夢の走りだもの。
誰にも追いつかせない。でも、共に駆けるあなただけは。
「――――ぜったい、付いてきてくださいね?」
背中にしがみついてでも、一緒にいてほしいから。
きっと――――命を懸けても惜しくはないくらいに。