異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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ワキちゃんのうまぽい大作戦

 

 

 

 

 

 

「――――わぁ…。お兄さん、見てください! すごく綺麗……この海の先には、どんな景色があるんでしょうか」

 

 

 

 

 

 車の窓ガラス越しにはしゃぐワキちゃんの、白ワンピースが日差しにまぶしい。

 

 車を飛ばして一路海まで。

 俺たちは都心から少しだけ離れた、とある海辺の旅館に向かっていた―――。

 

 

 

 まあ端的に言えば浴衣だと俺が積極的なことに気づいたワキちゃんにより誘惑作戦が行われているのである。持ってくれよ俺の理性……! 鋼の意志とはなんだったのか。

 

 

 

 最近テイオーとかに相談してる様子もあったし、妙に大きく感じる旅行鞄の中身が気になる。こっそり覗いたら負けな気はするし。

 

 

 

 

「ところでワキちゃん。何見てんの?」

「これですか? お兄さんの好きそうな下着です」

 

 

 

 

 スッ、とスマホを掲げるワキちゃん。

 画面に映っているのはスケスケの白いネグリジェであった。……うん、思ったよりはマトモというか、正直好きです。

 

 

 

 

「ブライトがお勧めしてくれて」

「ブライトが」

 

 

 

「お兄さんの場合、胸元に隙間ができた時とか凄く見てますし。そういう見えそうなのがいいんですよね?」

「………」

 

 

 

 いやだって……見えそうじゃん。気になるじゃん。

 じとーっとした目でこちらを見てくるスズカに耐えられなくなり、赤信号に早く青になれと念を送る。

 

 

 

「お兄さん、おっぱい好きですよね」

「…………好きだよ」

 

 

「やっぱり大きい方が好きなんですよね」

「………いやありそうで無いけどやっぱりちょっとあるのも大変エロいと思う」

 

 

「……………………お兄さん?」

「はい、大きいのが好きです」

 

 

 

 

 スズカの胸に限っては一番綺麗だと思うけど流石に恥ずかしいので言えない。

 

 

 

 

「大きいと走る時邪魔だろ?」

「………それは、そうなんですけど。でもお兄さんにとって一番の女の子でいたいですし」

 

 

 

 

 そんなもの恋のダービーで最初から最後まで大逃げかましているワキちゃんが気にすることでもないような気がするのだが。

 

 

 

「逆にワキちゃん好きな男のタイプとか無いの?」

「え? ……………いじわるしない人?」

 

 

 

 

 それ俺完全にアウトでは。

 

 

 

 

「あといつでも一緒にいてくれて。頭を撫でる手が優しくて、走っているのを見守ってくれて、一緒に寝るときにぎゅうっとしてくれる人ですね」

 

 

 

 それ普段の俺。

 でもそうじゃなくて。

 

 

 

 

「顔の好みとかさー、身長とかさ、筋肉は多い方がいいとか」

「……?」

 

 

 

 スッ、と俺を指さすワキちゃんだがそうじゃないんだ…。

 

 

 

「じゃあお兄さん、顔だけで選ぶならどんな女の人がいいですか?」

「スズカ」

 

 

 

「えっ」

「なんで意外そうなのお前」

 

 

 

 ちょっと話し合いが必要なのかもしれない。

 なんだと思ってたの? 俺、そんなにタイプじゃない子と結婚したと思われてる? 度々好きだって伝えたと思うんだけど……。

 

 

 

「――――お兄さん、私の顔好きなんですか…!?」

「性格と声も好きだけど」

 

 

 

「うそでしょ」

「いやこっちがうそでしょだよ」

 

 

 

 特に人が良いから面倒ごとに巻き込まれて「うそでしょ……」してるところとか。

 丁寧に見えて意外とフクキタルとかの扱いは雑なところとか、寂しがり屋で頭サイレンススズカなところとか。

 

 

 

 

「……じゃあどうして今まで何もしなかったんですか?」

「だってお前、トレセン入学前の身長いくつよ」

 

 

 

「……ひゃくごじゅうくらい?」

「147cmほら写真」

 

 

 

「………えっと、そういえばこんな感じでしたね」

 

 

 

 完全に絵面が大きいお兄さんに甘える妹なんだ。

 ロリロリしいワキちゃんに手を出すほど俺の鋼の意志は弱くなかった。それはそれとしてこう、色々見えてしまう時はあったけど。

 

 

 

 

 

 

「あの、お兄さん」

「ん-?」

 

 

 

 

「………だいすき」

「……………おう。俺も大好きだぞ」

 

 

 

 

「じゃあ――――旅館についたらぎゅっとしてチューして下さい」

「……はいはい」

 

 

 

「あと、お兄さんの好きな衣装も用意しておきましたから」

「……え。何、俺の好きな衣装って」

 

 

 

 まさか、勝負服―――いやそれは無いかな。

 この前の浴衣か?

 

 

 

「……ふふっ、ないしょです」

 

 

 

 なんで顔がちょっと赤いの?

 そんな過激な衣装あったか…?

 

 

 

「あ、お兄さん信号青になりましたよ」

「うお、ありがと」

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 そんなこんなで無駄に心を乱されつつも――。

 事故なく到着した高級旅館では丁寧な出迎えを受けつつ一番景色の良い部屋に案内され―――そわそわしているスズカを気遣ってか簡単な説明を受けると部屋で二人きりに。

 

 

 

 

「―――お兄さん、お菓子が…! お菓子があります! いちご大福が!」

「うわすごい」

 

 

 

 偶然なのか、知っていたのか。 

 お着き菓子として置かれていたお高そうないちご大福を見て目をきらっきらさせるワキちゃんはさっそく食べ始めて。

 

 

 

 

「はい、お兄さんあーん」

「……おう」

 

 

 

 2個あるけどあえて半分に切って食べさせようとしてくるのは何の意図か分からないが、ありがたく頂戴する。……うーん、美味い。いいイチゴ使ってやがる…。

 

 

 

 

 ……と、何故かむぎゅっと抱き着いてきたスズカを見ると、にっこりと微笑んだ。

 

 

 

「お兄さん、今日は私へのご褒美……ですよね?」

「まあな」

 

 

 

 世界一になって無敗のまま劇的に引退したサイレンススズカだが、実のところCMやら取材やらで結婚してから二人きりでのんびりできていなかった。

 新婚旅行も行くが、それはそれとしてとりあえず海で遊びたいというスズカのために企画された慰安旅行であった。

 

 

 

 

「でも私からするとお兄さんへのご褒美でもあるので――――」

 

 

 

 

 ばさっと脱ぎ捨てられる白いワンピースに、思わず振り返ろうとするが「ダメですよ」と何か白いものを顔に掛けられて阻止される。このなんか甘い香りとちょっぴり汗のにおいがする布は……いやその、脱いだ服で視界を塞がれると色々と気になるんですが。

 

 

 

 

「……………あのさ、ワキちゃん」

「……はい?」

 

 

 

 

「この後温泉に入るんだしこのまま――――」

「……せっかく用意したからダメです」

 

 

 

 

 ごそごそとけっこう大がかり?な着替えを終えたらしいワキちゃんの手によってワンピースがどけられ。

 

 すらりと細い体躯を包む濃紺のワンピース、眩しい白のエプロンドレス。

 鮮やかな栗毛を彩るホワイトブリム――――クラシカルで飾り気の少ないメイド服に身を包んだワキちゃんは微笑みながら軽く頭を下げた。

 

 

 

 

「おかえりなさいませ、旦那さま」

「お、おぉ……」

 

 

 

 

――――メイドさんだぁああ!?

 

 

 

 しかもコスプレのペラい感じが全くないというか、普通に高級そうなんだけど…!?

 

 

 

「え、どうしたのソレ」

「……はい、旦那さま。テイオーさんのお家からの頂き物です。一着くらいならイイヨー、と」

 

 

 

 

 そういやアイツもお嬢様だったか…。

 いや、マジで?

 

 

 

「旦那さま、マッサージはいかがですか?」

 

 

 

 ………いや、一瞬そっちの意味かなーと思ったけど表情からしてこれ普通のマッサージだわ。でもせっかくなのでお願いしてみるか。

 

 

 

「じゃあ交代でマッサージするか」

「……えっ」

 

 

 

「その、私はメイドなので……」

「ご主人様の言う事は?」

 

 

 

「………ぅぅ……お兄さんがしたいなら……」

「したい」

 

 

 

 「はい」と消えそうな細い声で言ったワキちゃんだったが、座布団を並べて横になると腰のあたりをぐいぐいと押してくれる。

 

 …………おお? なんか期待してたより全然気持ちいい……。

 

 

 

 

 

「……お兄さん、私のマッサージはよくやってくれますけど……かたい、ですよねっ」

「あー、まあパソコンでの仕事も多いしなー」

 

 

 

 と、ずっしり来る重さと共に背中に柔らかい感触が―――。

 

 

 

「………重く、ないですか?」

「ちょうどいい感じ……」

 

 

 

 そういえば昔はよく足で踏んでマッサージしてくれたっけ。

 なんとなくそんなことを思い出していると、ワキちゃんがショックを受けたような声をあげた。

 

 

 

「うそでしょ……なんだか微笑ましそうにされてる」

「いやまあ。でも嬉しいぞー」

 

 

 

「……絶対気持ちいいって言わせて見せますから…!」

「いや気持ちはいいぞ」

 

 

 

 

 

 ただちょっと、それ以上に可愛さにあふれてるだけで。

 そんな内心を察したのか、ワキちゃんは今度は俺の上に腰を下ろして言った。薄いお尻がむにゅりと押されてむしろ臀部の骨を感じる…。

 

 

 

 

「……どうですか?」

「いやどうって言われても……」

 

 

 

 改めて考えても華奢だよなぁ、としか。

 

 

 

「……? 男の人はお尻が大好きって聞いたんですけど……」

「まあ確かに」

 

 

 

「………えっちな気持ちになりましたか?」

「え? ……………可愛いなぁ、と」

 

 

 

 普段お前がやってるスキンシップが過激すぎてこのくらいじゃ何ともないんだが…。

 連れションに比べたらノーマルだよ、ノーマル。

 むしろさっきの脱いだ服で視界を塞いできた方がやばかった。

 

 

 

 

「お兄さん、メイドさんですよ…?!」

「うん、めちゃ似合ってる。すごく可愛い」

 

 

 

「…………お兄さん、どうしたらうまだっちするんですか…?」

「お前のメイドさんへのイメージよ」

 

 

 

 

 可愛いのは嬉しいのか、照れつつも予想外のものを見る顔のワキちゃんである。

 というかお前、普段がアレすぎて逆にアピールしようとするとお可愛いのは面白いぞ。

 

 

 

 

「頑張れワキちゃん、お前の思ううまぽいを見せてくれ」

「うまぽい…!? え、えっと……」

 

 

 

 

「じゃ、じゃあお兄さん、こっち……向いてください」

 

 

 

 とりあえず見えないと始まらない。

 高級旅館の座布団に座って向き合ったワキちゃんは、顔を真っ赤にしながら両腕で胸元を強調するように身体を屈めて言った。

 

 

 

………あ、あはーん、うっふーん

「…………………」

 

 

 

 

「お兄さん!? 無言でスマホ出さないで下さい! 撮らないで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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