異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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オチも何もない没話の供養です
10カ月くらい熟成されてる……



 


おまけ:寝起きの話

 

 

 

 

 

 

――――目が覚めて最初に感じたのは、えもいわれぬモフモフ感であった。

 

 

 幸せそうな、かつだらしのない顔で寝ているスズカ……というかワキちゃんの生耳が腕に当たるのが妙にこそばゆい。

 どこもかしこも折れそうなくらいに細いのに、あれほど速く走れるのはサラブレッドの、ウマソウルを引き継ぐからこそなのだろうか―――。

 

 

 

(いやでもヒシミーことミラ子もいるしな)

 

 

 

 うん、ウマ娘=細いではない。QED.

 

 やっぱり最速の機能美だからかもしれない。

 学園にいると、ゲームみたいに常に理想の状態というわけにはいかないので休暇明けなんかは太り気味のウマ娘たちがあふれて悲惨なことになるのが割と毎年恒例。

 オグリは最早ギャグとしか言えない太り方をするので逆に気にならない(あくまで他チームで関係ないし)が、太ったスぺちゃんとか悲しみしかない。

 

 ファンとしても、トレーナーとしても頭を抱える事態だろう。

 ウチだとグラスは油断するとヤバいか。

 

 

 

 

 でもワキちゃん太らないな……。

 密着しているせいでしっかり感じてしまうすべすべのお腹に、悪いとは思いつつも手を伸ばしてちょっと触れてみる。

 

 

 

 

 ふにふに。

 

 

 

 

「………うーん、柔らかいのにしなやか」

 

 

 

 スラァ、とか薄いなぁという感想しか浮かばないお腹であった。

 なんでこんなウエスト細いの?

 

 

 

 

「………んん………んぅ、おにいさぁん……?」

「あ、おはよう」

 

 

 

 

 とろーんと眠そうな目を開けて、スズカは自分のお腹をふにふにしている俺の手を見て、それから甘えるように頭を擦りつけてきながら言った。

 

 

 

「はふ………そこ、おっぱいじゃないですよ…?」

「いや知ってるけど。ワキちゃん太らないなぁって」

 

 

 

「えっ、おっぱいが太らない……? うそでしょ」

「いや言ってないけど。というかおっぱいは太るって言わないと思う」

 

 

 

 

 

 まあ太るって言葉はやっぱりマイナスイメージあるよね。

 でもやっぱりワキちゃん太らないけど。

 

 

 

 

 

「だってお兄さんが栄養は計算してくれてますし……むしろちゃんと食べないと体重が落ちちゃいますよ…?」

「まああれだけ走ればそうもなるか……ん? ちょっと待てスズカ、お前黙って走ってないよな?」

 

 

 

 

 一緒に居る時の走った量は計算に入れているので、学園での仕事中スズカが友人たちと駆けまわってなければカロリー計算は合っているはずなのだが。

 

 

 

 

「……えっ。あ、その………タイキたちと、少しだけ……」

 

 

 

 

 しゅん、としょげるスズカだが、別に黙ってなければ怒ったりはしないんだが………走ったら教えて欲しい。カロリー調整するから。まあ今回は自白?してくれたから許そう。友達とも走るようになってきたのは若干嬉しいし。

 

 

 

 

「……次からはちゃんと言うように。そういえば胸から痩せるって聞いたことあるな」

「うそでしょ」

 

 

 

 

 男からすれば浪漫のかたまりでも、生物的には無用の長物ということなのだろうか。

 

 

 

 

「………お兄さん、おっぱい大きいと嬉しいですよね?」

「それ割と俺が急に高身長になるくらい無理筋では?」

 

 

 

 別に身長が低いわけではないが、平均としか言えない値である。

 ちなみにワキちゃんはウマ耳分だけ公開プロフィールの身長を盛ってる。

 

 

 

「嬉しいんですよね?」

「いや正直分からん。巨乳を触ったことないし」

 

 

 

 こっちの世界では。

 そんな余分な心の声を感じたのか、なにやら怪しむようなジト目で見られたが嘘はついていない。

 

 

 

「別にそんなの関係なくワキちゃんが一番好きだけど」

「それは―――……その、信じてますけど。でも、できることならお兄さんを喜ばせてあげたいですし」

 

 

 

 

 あっ、別に浮気の心配とかではないのね。

 よかったよかった。

 

 もし疑われているようならもっと真剣に気持ちを伝えられる方策を考えないといけないところだった。

 

 

 

 

「それは遠慮します。お兄さん、大体えっちなことにつなげますし。普通に甘やかしてください」

「だって普通に甘やかすとワキちゃん無防備すぎるし……」

 

 

 

「………無防備…?」

 

 

 

 

 パーソナルスペースなんて知らないとばかりにぴったり甘えてくるし、見られてもあんまり気にしないし密着することに躊躇が無いし。

 

 うん。

 とりあえず服着ようか…。

 

 

 

 

「服着てない時点で無防備だと思う」

「……結婚したら一緒に寝るときは脱ぐんだよって言ったのお兄さんですよね?」

 

 

 

 

 言った。確かに言った。

 でもそれはほら、夫婦のあれこれだし…。

 

 

 

「………着ててもいいんですか?」

「脱がすけど」

 

 

 

「ダメじゃないですか」

「嫌ならやめるけど」

 

 

 

「………むぅ。別に嫌というわけじゃ……夜だけなら」

「むしろ脱がしたい」

 

 

 

 「えぇ……」とちょっと引き気味のワキちゃんだが、真剣な眼差し?に何を感じたのかへにょりと耳を垂れさせた。

 

 

 

「お兄さん?」

「はい」

 

 

 

「そういう時はあらかじめ言って下さいね? 可愛い服を着ておくので」

「善処します」

 

 

 

「それ守らない時の返事じゃないですか」

「うん」

 

 

 

「うぅ……私もなるべく可愛い服しか着てないですけど………大体そういう時のお兄さんは意地悪ですし」

 

 

 

 割と常に意地悪なつもりなのだが。

 

 

 

「でもお兄さん車に乗る時とか必ずエスコートしてくれますし。エレベーターとか必ず扉を開けておいてくれたりとか、食事の時もお金払ってくれますし……」

 

 

 

 

 お金に関しては共用の口座に恐ろしいほどお金入れてくるワキちゃんには言われたくないんだけど。

 CMの出演料とか躊躇なく入れてくるよね? 億単位だと完全に勝ち目がないというか、実質ワキちゃん口座なのでなるべく使わないようにしてるけど。

 

 

 

 

「私の使うお金ってシューズと洋服くらいですし…。あ、でもお兄さんと二人で寝られるおっきいベッドが欲しいです」

「ウマ娘を駄目にするクッションでも買うか」

 

 

 

 

「CMに出たら試供品くれるらしいですよ? クッション」

「マジか。じゃあベッド買うか」

 

 

 

 子どものことを考えるとそのうち実家を出ることも考えねば。

 いやまあ近所に空き地があったらそこに建てればいいような気はするけど。なんやかんやどっちの母親ともワキちゃん仲良しだし。都内で府中にけっこう近いので土地は高いが。

 

 

 

 

 

「自分の家ってちょっと良いよな。母さん放っておくのは心配だけど」

 

 

 

 

 

「お兄さんって実はけっこう子どもっぽいところありますよね」

「………ワキちゃんに言われるなんて」

 

 

 

「どういう意味ですか…!?」

 

 

 

 

 

 だってスズカさんと比べて中身お子様だし…。

 でもクソほど寂しがり屋で甘えん坊になり、外面クールビューティーなスズカさんから頭サイレンススズカなワキちゃんになっただけか。

 

 競走馬が5歳児並みの知能らしいので残念ながら当然の結果。

 

 

 でも男もいくつになっても多分ガキなんだよね。少なくとも二十代になっても子どもの頃とまるで変った気がしない。

 

 

 

 

 

 

「昔はお兄さんって優しくて、カッコ良くて、いつでも落ち着いてて、すごく大人だなーって思ってたのに……」

「それお前大分昔から俺のこと好きだな」

 

 

 

「……確かに」

「あっ、そこは頷くのか」

 

 

 

 

 恋愛なにそれ美味しいんですか、状態だったワキちゃんは走った先の景色と、あと家族と一緒にいることにしか興味無さそうだったが。

 

 

 

「だって別に恋人なんて関係なくずっと一緒でしたし…。チューとうまぴょい以外は大体一緒にしてたじゃないですか」

 

 

 

 

 まあね。

 お風呂一緒に入って一緒に寝て、なんなら髪を乾かしたり頼まれて結んであげたり、服着せてあげるのも割と日常茶飯事だった。

 

 

 

 

「お兄さんの事は昔から大好きでしたけど、そういう意味では今思うと――――…三冠でお兄さんが泣いてる時に『あっ、お兄さんも私がいないとダメなんだな』って思って。それからでしょうか」

 

「うそでしょ」

 

 

 

 

「お兄さん好き好きだったのが、私もお兄さんに色々してあげたいなって」

「………あー、言われてみれば確かに?」

 

 

 

 

 

 まさかの切っ掛けだった。

 かなり恥ずかしい……が、それで可愛い嫁がもらえたなら意味はあった……と、思いたい。

 

 

 

 

「じゃあ泣いてなかったら?」

「…………でもお兄さんが他の女の人に構ってばかりになったら気持ちに気づきそうですよね」

 

 

 

 

 いや気づくか? ワキちゃんだぞ。

 そんな表情に気づいたのか、ワキちゃんもちょっと考えて、それから少し眉をひそめた。

 

 

 

 

 

 

「お兄さん、けっこうカフェさんとかテイオーのことも好きですよね」

「カフェは………いやその、でも正直最近まで嫌われてると思ってたんだけど」

 

 

 

 

 めちゃいい子だとは思っていたけど。

 なんかめっちゃすげなくあしらわれるし嫌われてると思うじゃん?

 

 

 

 

「………お兄さんって、実はけっこうにぶトレーナーさんですよね」

「ぐはっ」

 

 

 

「テイオーなんて……いえ、これは言わないでおきます」

「え、何。気になるんだけど教え――――あ、いえなんでも」

 

 

 

 

 にこり、と微笑んだスズカだがその耳は寝ていた。つまりちょいキレていた。

 ……ワキちゃんでもキレることあるの…? たぶんいきなりお尻引っぱたいても怒らなそうなのに……。

 

 

 

 

「お兄さん、なんですかその目……」

「ワキちゃんならいきなりお尻引っぱたいても怒らなそうなのにっていう目」

 

 

 

 

「お尻叩かれたら流石に怒るんじゃないですか…?」

「よく考えたら叩いた方が精神的ダメージを負いそう」

 

 

 

 

 何が悲しくてワキちゃんに暴力を振るわねばならんのか。

 それなら自分を叩く。

 

 

 

 

「でもお兄さんに叩かれたら確かに怒るより先に困惑しそうですね。……何があったのかなぁって」

「何があったらいきなりお尻叩くんだよ……」

 

 

 

「……虫が止まってたとか?」

「よほど凶悪な虫だったんだな」

 

 

 

 

 

 蜂とか?

 それならもう攻撃しないでなんとか追い払いたいが。

 

 

 でもよくよく考えると、自分で勝手にぐいぐい前に行くサイレンススズカって鞭入れられたことほぼないのでは?

 

 なんとなく手綱引きっぱなしだったり、あとは某レジェンドとマイペース(?)で逃げてる印象しかない。

 

 

 

 

 

 そんなこんなでテイオーの話は有耶無耶になり。

 ランニング用のシャツとズボンに着替えたワキちゃん、もといスズカと一緒に元気よくランニングに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 命日の投稿がこれでいいのかという思いは正直あるんですが、色々あってダイヤちゃんの二次創作してたらこんな時間でした……




 
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