「つ、疲れた……ちょっと詰め込み教育すぎません……?」
「お疲れ様。まあ貴方の場合、早くサブトレーナーを卒業しろってことでしょうね」
チームリギルのトレーナー室。
理事長とたづなさんから実習生を押し付けられ、生徒に教えつつ学生にも教えるという意味不明な状況になって気持ち倍くらい疲労しておハナさんと二人でぐったりしていると、どこからか焼き菓子の美味しそうな匂いがしてくる。
「お兄さん、クッキーを焼いてみたんですけれど……食べますか?」
「食べる!」
薄緑のエプロンを付けたスズカがお皿に山盛りの、ウマ娘基準なクッキーを盛って運んでくる。形はシンプルな――――サイズは違うけど、全部ハート形だこれ!? いつもは雑貨店で買ってきた面白い形とかも作っていたのだが。
気になってスズカに目を向けると、どっかのグルメパレードで見た感じの♡を手で作って微笑んだ。
――――疲れた心にスズカの可愛さがスーッと効いて……まだ頑張れるような気がする…。その時、ふと閃いた! これは仕事のデスマーチに活かせるかもしれない!
「ふふっ。あ、おハナさんもどうぞ」
「……有難く頂戴するわ」
ちょっと遠い目になっているが、おハナさんは最初の一個を俺が食べたのを見届けてから食べ始めた。うーん気遣い。
クッキーの優しい甘さが疲れを癒してくれる…。
「プレーンにしますか? チョコチップにしますか? それとも――――ジャム?」
「スズカで」
「え、いいんですか?」
「うそでしょ」
本気で寂しかったのか「じゃあ遠慮しませんね」とにっこり笑顔で膝の上に乗ってきたスズカはむぎゅっと抱き着いてきて言った。
「仕事と私、どっちが大事なんですか…?」
「スズカ」
カルストンライトオがいても納得してくれるだろう速さで食い気味に返答。
まさに脊髄反射。
「……いつもお仕事、ありがとうございます。お兄さん」
「いつも寂しくさせてごめんな」
即答すると隣でおハナさんが天を仰いだ気配があったが、まあ仕方ない。
だってほら、前はトイレに行ってただけで左に大旋回して暴走していたワキちゃんがこんなに立派になって……。
「でもどこで覚えたんだそんな台詞」
「ええっと、お昼のドラマ…?」
「ちょっと、こっちに追加ダメージを与えてこないで頂戴……」
「でもおハナさんがいないと自制が吹き飛ぶ危険性が」
多分二人きりになると頬擦りが始まって、尻尾が絡まってきて、頭撫でてーからの、ちゅーの催促が始まり、手とか腕とかが絡んできて、ほっぺにチューしてきて満足気に微笑んだりしてくるのがワキちゃんクオリティー。試される自制心。いや健康な青少年ならそんな駆け引き(頭ワキちゃん)されたら誰でも掛かるから。
「くっ、トゥインクルシリーズ時代は緩すぎだと思っていたけれどあれでも相当我慢してたのを今更ながらに痛感させられたわ……」
「育て方が良すぎたんですかね」
「どう考えても甘やかしすぎが原因よね」
「当時は俺も若く、子ども(?)だったので……」
尻尾をこちらの腕に絡ませて、しなだれかかってくるワキちゃんは可愛い。可愛いが心臓に悪い。スッとこちらの首のあたりを撫でてからこちらの胸元に耳を当てると、嬉しそうに微笑んだ。
「ふふっ。お兄さん、ドキドキしてる」
「おハナさん仮眠室借りて良いですか」
「はいはい、いいわよ」
「ですよねー。ってそこは止めて下さいよ!?」
「大丈夫。コトが起こりそうだったら暇なリギルの生徒たちを呼び集めてあげるから」
「うわぁ」
それは確かに何も起こすわけにはいかない。いかないがしかしその場合俺は生殺しなんですが?
ちなみにワキちゃん的には大人なあれこれより甘えることの方が重要度は遥かに高いので。天然全力甘えたモードに入ったら、手を出しても怒られないけど出さなくても全く気にしないのであった。……なんか悔しい。
「お兄さん……もっと……」
「はいはい」
もっと撫でればいいのな。
「………んー」
はいはいもっと抱きしめます。
「………んぅー」
はいはいキスね。
「――――って、なんなのこのバカップルは!?」
「「新婚夫婦…?」」
いや世間一般の新婚夫婦知らないけど。
ワキちゃんは甘やかすと喜ぶけど、根本的に近くにいれば満足するし。これでも掃除とか洗濯とかは同じ空間にいればむしろ積極的にやってくれるので、そこは互いに率先して引き受けるようにしてるがまあ普段は比較的大人しい。
「貴方たちって、互いに不満とかなさそうよね……」
「お兄さんはもっと私に構ってくれてもいいと思います」
「もう十分構ってるわよね!?」
おハナさんの鋭いツッコミ! しかしワキちゃんにはぜんぜん効果がないようだ!
ワキちゃんの理想ってさ、多分少女漫画みたいな感じなんじゃないかと勝手に思っている。
「今日も可愛いね、スズカ。……愛してる」
「ぶっ」
「お兄さん…っ!」
「なんで感動してるのよ!?」
いやほら……その、ね? 割と箱入りというか、純粋培養というか……同性かつ同年代の友人との交友の重要性がよく分かるよね……。
でもおハナさんもどっかの沖トレに言われたら喜びそうですよね。
「ほらスズカもクッキー食べなよ」
「……食べさせてください」
とかなんとか食べさせあいをしたものの。
このままだと理性が辛いのでスマホでゲームでもやるか……。
「おっ、新作ゲームかぁ……」
「お兄さんならこの子好きそうですよね」
スズカが指さしたのはちょっと大人しめで可愛い感じのキャラ。
いや好きそうだけれども。………あれぇ?
「ち、ちなみにこの中なら?」
「うーん。この子…?」
俺の好み把握されてるー!?
とはいえ俺もコイツの好みは「優しくてとにかく甘やかしてくれるベッタベタなタイプ」だと分かってはいるが。
「意外と冷静なのね」
「昔から一緒にゲームとかしていましたし……慣れ、でしょうか…?」
「まあ、『浮気だー!』とかの心配が要らないなら良かったわ」
「お兄さんが……うわき」
ちょっとおハナさん、スズカが想像してそうなんですが!?
スズカはたっぷり十秒くらい至近距離で見つめ合った結果、真面目な顔で言った。
「でも浮気する暇はないですよね……」
それはそう。
だってちょっと離れただけで半泣きになるパートナーがいるので。なんなら至近距離で密着しているので目を逸らす暇もない。よそ見は許さない(物理)ということだろうか。
「ああー」とどんどん目が遠くなってるおハナさんだけどこれは自爆だし…。
「とりあえずお兄さんの胃袋はわたしが握っています」
「……まあそうだな」
実は一緒にいないと安眠できなくされてるし、三大欲求全部握られてるけど。
あれ、依存すごいと思っていたワキちゃんより俺の方が依存させられている…!?
「三年目になると浮気したくなるって、本当ですか?」
「いやいつの話!?」
「浮気は文化だとか……」
「多分別の平行世界か何かだよそんな文化」
「私が走らなくなったら興味がなくなったりとか……」
「走らないスズカってむしろ何があったって感じで心配になるけど」
もし万が一怪我とかだったら全力で支える。
しかしこんなに不安にさせるくらいなら本当に愛が足りないのか…?
「私が怪我で引退して、その後何年後かに現れた無敗の三冠ウマ娘の方に夢中になるとか……」
どこのディー〇インパクトかな?
「世界最強のウマ娘と戦うパートナーと出会うとか……」
それはもしかしてドウ〇ュース?
「ワキちゃんは俺がトレーナーしてるの嫌か?」
「………わたしは、お兄さんがトレーナーをしているの…好きですよ。『私のお兄さんは優しくて素敵なんだ』って自慢したくなりますから」
「……そっか」
やっぱり地道に気持ちを伝えていくしかないらしい。
おハナさんは「イチャつきながらトレーナー辞めようか検討しないで頂戴」と疲れ切った顔で呟いていた。
アニメ3期の頃
うおおお! 俺はダイヤちゃんの小説が書きたいかもしれない!
→いやでもやっぱりスズカさんだな…。
ガン〇ムSEEDの映画
うおおお! 俺はアスランの二次を書きたいかもしれない!
→いやでもやっぱりスズカさんだな…。
この前
うおおお! 俺は篠澤広の二次を書きたいかもしれない!
→いやでもやっぱりスズカさんだな…。
でも純正スズカさんを書くと解釈違いを起こしかねない悲しみ