昨日のちまちま手打ちで削除&入力してた作業は一体……?
01.セイバーのマスター
第一章/
───
元は日本の『
冬木の地に集い、聖杯に選ばれた七人の魔術師たちが、己が用意した触媒を元にサーヴァントと呼ばれる使い魔を召喚しマスターとなり、互いに競い合い最後の一人になるまで戦い合うものである。
『
魔術師たちは皆、『
物質や概念、世界や宇宙───あらゆる事象の始まりにしてあらゆる事象の終わり。究極の知識、アカシックレコード……それこそが根源である。
『サーヴァント』とは魔術師たちが使途する使い魔の一種だが、動物などを利用した通常のソレとは違う。
聖杯によって繋がれた『英霊の座』と言う場所から呼び出される、歴史上の偉人、英雄たちの影法師のことを指す。
サーヴァントたちには己の武器や逸話にまつわる伝説を持つ。それらは『
聖杯戦争にはクラスという霊基が存在しており、そこに英霊の魂を当てはめてサーヴァントとして召喚する。
クラスは召喚されるサーヴァントの数に合わせて全部で七つ。
剣士のクラス セイバー
弓兵のクラス アーチャー
槍兵のクラス ランサー
騎乗者のクラス ライダー
魔術師のクラス キャスター
暗殺者のクラス アサシン
狂戦士のクラス バーサーカー
それぞれのクラスに当てはめられたサーヴァントは、己の持ち味を生かして最後の一人になるまで戦う。
最後まで勝ち抜いた一人には、万物の願いを叶える願望基──『
しかし『聖杯戦争』は、他の魔術師とサーヴァントたちを倒すことで聖杯に溜まった魔力を使い、根源に行くための方法の一つでしかない。根源行きの片道切符を得る為の戦いと言えるだろう。
無論、望むのならば根源への到達以外も選べるのだが。
✴ ✴
ロンドンの一角 『
そこは世界中に存在している魔術師たちの多くが、魔術を極める為に──という名目で集う場所。魔術協会という3つの派閥の現在の主流であり、英国を本拠地としている。
その歴史や他組織との対立などを挙げれば枚挙に暇がないが、要は魔術専門の学園なのである。
「…………」
そんな魔術師たちの総本山の内部にある広大な図書室の隅で、一人の少女が書物を読み漁っていた。
黒く長い髪をなびかせる少女は、日本人或いは近隣のアジア圏の人間であることがうかがい知れる。
「……」
少女はあいも変わらず黙々と本を読み耽っていた。そしてその一冊を読み終えると、他の文にもう一度目を通しながら手を伸ばす。
そこに何冊も積んであった本を手当たり次第手に取ろうとして───しかし摑むことなく空を切った。
「うっ」
ガタッと音を立てて机の上でつんのめると、そのまま突っ伏して倒れ伏す。
「うーん……」
体を襲う疲労感から、疲れているのだと判断した。
この日彼女は、朝起きてから書物を漁っては読み漁っては読みを繰り返し、既に半日を軽く経過しているのだから当然と言えば当然だろう。
集めていた書物を全て元あった場所に戻すと、ふらつきながら図書室を後にする。
少女の名は
この時計塔の
元々彼女の家は時計塔に足を運んでこそいなかったが、魔術師の家系ではあった。
しかし幼い頃に両親は死亡、名のある家系ではなかった為に露頭を迷いかねない状況にあった。
幸い、魔術師の一族が子孫へ託す特殊な器官である『魔術刻印』の継承そのものは済ませていたので、両親の遺産などを利用して時計塔に通うこととなったのだった。
既に薄暗くなった廊下を重い足取りで歩きながら、しかし跡奈は今時計塔に流れる1つの噂話で頭がいっぱいだった。
──何者かが聖杯戦争を開催しようとしている、と。
✴ ✴
『来たる生誕の日、七の魔術師と使い魔による儀式を始める。
願うならば集え、総ての始まりの地へ』
誰が最初に言い出したのか、それは誰にも──時計塔の魔術師たちでさえ分からずじまいであると語ったその宣言。
一見すると何が言いたいのか理解しかねるが、少しでも魔術の道にいる者であれば文をそのまま解釈し、すぐに答えを理解できたことだろう。
『生誕の日』とは即ち『彼の聖人の生誕たるクリスマス』を、
『七の魔術師と使い魔』とは即ち『聖杯戦争に参加する七人の魔術師と召喚されるサーヴァント』を、
そして『始まりの地』とは上述した聖人の伝説から始まるならば、
エデンの園においては複数の候補があるが、そのうちの幾つかはアルメニア近辺を指している。
そこに加えてここ数年の間で突然出来上がった新興都市が栄えたのならば、もはや疑いの余地はないだろう。
✴ ✴
時計塔──ひいては世界中の魔術師たちの関心を集めるその噂は、当然彼女の耳にも届いていた。
しかし、跡奈が先程までのように聖杯戦争の知識を頭に叩き込んでいるのは、今に始まったことではない。
跡奈は何を考えたのか、時計塔に通い始めたその日から魔術の鍛錬や勉強と並行して、聖杯戦争やサーヴァントのことを調べ回っていた。
傍から見れば変人と見られるのもしょうがないだろう。現に彼女に苦言を呈した者や気になって声を掛けた者。様々な人物がいた。
聖杯戦争に参加する気満々と言えるその態度から、現代魔術科の
その君主の持つ教室で1、2を争う麒麟児からは自分も参加したいだのサーヴァントと友達になりたいだのという話をこれまた小一時間ほど聞かされ、
宝石魔術を主に扱う、
──といった具合である。
しかし、誰から意見を述べられたとしても、彼女の中では既に決意は固まっていた。
『聖杯戦争に参加する。』
それこそ彼女の時計塔に来てまでやりたかった──否、やらねばならない目的なのであった。
既に、事の真相を突き止めるために時計塔からも魔術師──それも講師が派遣されていると專らの噂。
後手に回ってしまったが、行動を起こすには今しかないだろう。
幸い、目の敵とも言える君主は時計塔だかのいざこざで、現在は世話係の少女や一部の生徒とともに不在。
時計塔を抜け出すには、まさに絶好の機会であった。
その日、クタクタになってベッドに倒れ込んだ跡奈は翌日に備えてすぐに熟睡した。
そして数時間後に目を覚ますと、既にあらかたの準備を終えて整えていた荷物をトランクに引っ掴んでは詰め込んで、夜明け前には寮を飛び出した。
『親戚が亡くなったので葬儀に参加するために日本に一時帰国する』と適当な言い訳を残し、時計塔をあとにするのだった。
✴ ✴
飛行機に乗り数時間。
跡奈は目的地───即ち、聖杯戦争の開催国 アルメニアの首都エレバンに着くと、そこから更にバスに乗り継いで、数十キロほど離れた新興都市 ニザレムに降り立った。
アルメニアは彼女の母国──と言って幼い頃に過ごしたくらいですぐに
「うわぁ……」
オリーブ色のポンチョコートを着込んでニザレムに着いた跡奈はニザレムの街並みに思わず感嘆する。
首都のエレバンもなかなかに賑わっていたが、此方も負けていない。
しかしそれ以上に、その街並みは資料などで見かける日本の光景によく似ていた。
アルメニアは日本と親交のある国であるためそれほどおかしい事でもないだろう。だが、この街の本質は別のところにあるのだ。
(日本のフユキ。本来の聖杯戦争開催の地を模した闘いの舞台……って事かな)
そう心の中で詮索しながら、跡奈は多くの人が行き交う街並みから少し離れた路地にするりと入りこむ。
この地に足を踏み入れた時から感じる、鈍い痛みに意識を向けてのことだった。
手袋を嵌めた右手。その手袋を取り外し、太陽に透かすようにその手を天に掲げる。
手の甲に浮かび上がっていた奇妙な形状の紋章──
翼と剣を模した様なデザインは、見慣れこそしないがすぐさま理解出来た。
これこそが聖杯に選ばれ、聖杯戦争に参加するマスター達に与えられる契約の印 『
「ここまで来た以上、引き返すことは出来ない……そう言いたいの、▇▇▇?」
掲げた手を額に当てて、跡奈は目を瞑って独り呟いていた。