第二話のバーサーカーの武器の形状を両刃斧から普通の斧に修正、バーサーカーのステータスを追加しました。
ロンドン某所の時計塔
その中の地下講堂では、限られた者しか立ち入ることのできない会議が開かれていた。
「今回の一件、どうぞ私におまかせいただきたい。見事事態を解決へと導き、そして確認でき次第、聖杯を手に入れて見せましょう」
時計塔の中でも有数の権力を誇る12の
12人全員が揃っている訳ではないが、半数近くが召集されて開かれたこの会議。
内容はアルメニアにおいて噂される、何者かが開催を宣言した聖杯戦争。その事態の解明についてだ。
時計塔側で選ばれた魔術師は現地に赴いてこれを調査。
聖杯の顕現、或いは聖杯戦争の存在が確認された場合、参加ならびに情報統制。そして可能であれば聖杯の回収。
ここまでが今回の聖杯戦争で選ばれた魔術師の目的だ。
今回の調査では他の時計塔の一級講師や、フリーランスの魔術師たちが現地へ派遣されるマスターの候補として選ばれた。
時計塔の考古学科に所属する一級講師
スカイ・グレイプス
幻想種への肉体改造を施した異端児
アルケイスト・リヴル
五本の指に入る黒魔術師の家系の重鎮
ロウギス・アリータ・クロウ
フリーランスの死霊魔術師
──それら有力な候補を差し置いて、選ばれたマスター候補は3人。
元時計塔講師の
アイリッシュ・クロムハーツ
そして、会議に呼び出されたのは残る2人の内のひとり。
その目には確固たる自信が。そしてなによりも、待ち続けたとばかりに滾る信念が見え隠れする。
彼にとって唯一の懸念事項であった男は、表立って話せない事態のために時計塔の外へ繰り出していた。
ここで一気に畳み掛ければ、望んだ場所が目の前に。
──その事実は男を饒舌に語らせる。
「私は元よりこの日を幾度となく想定していました。残念ながら前回の──冬木の5度目の聖杯戦争には参加はできませんでした。しかし、殆どの準備は既に整えてあります。つきましては、どうか承認して頂きたいことが──」
それから一時間後、男は時計塔内の廊下を歩いていた。顔に浮かべる表情は冷静さを感じさせつつも、しかしその瞳には喜びと懐かしさが浮かんでいた。
廊下を歩き、十字路に差し掛かる。
そして目指す私室に向かおうとして──ふと、違う方の通路に視線が向かう。
「聖杯戦争……あぁ、懐かしい響きだな……」
思い起こすのは数十年前の記憶。
目を細めると、そこに若かりし日の自分が歩いているかのように映った。
✴ ✴
今から数十年間前 90年代の時計塔
まだ若かりし頃、彼は部屋で書き綴ったレポートを手に、自らの教師の元へ持って行くため歩いていた。
十字路に差し掛かり、角を曲がろうとした──次の瞬間、角から勢いよく飛び出した台車が、彼の足へと命中する。
「ダァッ痛ァ!?」
日本でいう『弁慶の泣き所』と呼ばれる場所に台車の荷物が命中し、レポートを廊下にぶちまけると足を抑えて呻く。
「あぁ、ごめんね。大丈夫?」
「え……ええ、まぁ。こ、これくらいどうということは」
台車を押していた人物が謝罪とともに近づく。衝突した相手は時計塔の事務員だった。
事務員は相手に視線を合わせ、心配そうに声をかける。
痩せ我慢とともに見栄を張っていた少年に、事務員は台車に積まれていた荷物の1つを手に取る。
「それは良かった……あ、そうだ! 君、エルメロイ教室に顔を出してるリーゼンブルムくんだよね? 君の先生に荷物が届いているんだけど、良かったら渡して来てくれないかな?」
「それくらいは構いませんが……ッ!」
少年──ロイド・リーゼンブルムは痛みに呻いてよく聞かぬまま事務員の言葉に了承すると、押し付けられる様に渡された小包を受け取った。
「じゃ、よろしく!」
「あの、これ一体──」
何故自分が渡すことになっているのだろう。そう思うも真意を聞く暇もなく、事務員は去っていった。
彼の頭の中で、これが明らかな職務放棄であると気付くのはそれから10秒と掛からなかった。
「まったく! 曲がり角は気を付けろと言われてないのか!? ましてや荷物を生徒に預けるなんて……! ついこの間先生の荷物を紛失してしまったって言うのに!」
拾い上げたレポートを小包に乗せて、ロイドは文句を言いながら再度時計塔の廊下を歩く。
この日、ロイドが不機嫌になる話題が幾つかあった。そして先の出来事によって、彼は思い出したように露骨に不機嫌となった。
プンスカと擬音を立てるような雰囲気を纏いつつ目的の部屋に辿り着くと、一度咳払いをしてから気持ちをリセット。ノックをして声を上げる。
「先生、リーゼンブルムです。論文を持ってきました」
「────」
相手からの返事を待ってから、ロイドは扉を開ける。
部屋の中では、デスクの前に立って道具の整理、荷物に詰め込んでいた講師の姿があった。
「失礼します。こちら論文の方です」
「────」
ロイドに渡された論文をパラパラと軽く確認。それを机に置いた講師は、次に彼が持っていた小包へ目を向ける。
「あぁ、さっき受付の人に預けられまして。先生宛てだそうです」
ロイドから説明と共に小包を受け取ると、講師はすぐさまそれを開封して中身を確認する。
「あ、もしかして例の極東の魔術師の競い合いというヤツですか? となるとそれが例の触媒っていう物──まさか、アイツもそれに参加しようと?」
「────」
「そうですね。アイツに限ってそれは無いですね。失言でした」
話題に上がった相手のことを嘲笑につけるロイド。
一方で講師は、既に纏めてあった荷物の中へその小包を入れる。
「────」
「わかりました。では」
少年は教師に頭を下げると、早歩きで部屋から出て行った。
次はどのような論文を、魔術と理論を生み出すか。更なる高みへ。そしていつか恩師と同じく元へと辿り着けれれば──。
そう考えながら、ロイドは先の不機嫌さを忘れたかのように、廊下を上機嫌で歩いていった。
──そして、それが彼が恩師と交わした最後の会話だった。
✴ ✴
そして現在、2009年の時計塔
足取りは確かに、しかしなにかを抱え込んでいるかのようにフラフラとした趣で廊下を歩くと、ロイドは私室に辿り着く。
ガチャリと音を立てて扉を開くと、待ち人たる伴侶が出迎えた。
「おかーえりー」
ベッドの上で寝っ転がっている、何処か抜けたような表情を浮かべている伴侶の言葉に、しかし男は反応を返さなかった。
「………………フッ」
ボソっと呟く男。それは声も震えて微かに聞こえる程度の言葉。しかし、直後その静寂に近い様子は即座に打ち切られた。
「ハーッハッハッハハ!」
着いたばかりの席からおもむろに立ち上がり、拳を握りしめて高々と突き上げて吠える。
「おおぅ、どしたの?」
「フフフッハハハ……。ようやくだ、ようやくこの時が来た、来たのだよサキ! 私はこの日を待ちわびていたぞ!」
喜びに震える男は、脱兎のごとくサキと呼んだ伴侶に駆けるとハグを交わす。
そして再び走り出すと、今度は壁に立て掛けられていた一つの写真の前で立ち止まる。
教室のような場所で撮られたであろうその写真には、何人かの少年や少女、そして金髪の男性と赤髪の女性が映っていた。
「やりました、やりました我が師よ! 私は遂に成し遂げた! 貴方と同じ色位、そして
手を大きく開いて天を仰ぎ見る。仰々しく、そして大袈裟に近いリアクションの中で、彼は大きな笑みを浮かべる。
「この闘いを経て、私は名実ともに貴方の隣に並び立つ魔術師となり、そして奴を越えることが出来る……迷惑かもしれませんがこの勝利、貴方に捧げよう。我が恩師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトよ!」
✴ ✴
ロイド・リーゼンブルムは時計塔の鉱石科に在籍する典位の一級講師である。
リーゼンブルム家は代々、鉱石科に在籍する貴族派主義の魔術師の家系で、ロイドはその中でもより多くの、そしてより質の高い魔術回路を有して産まれ、千年を超える一族の、まさに最高傑作とまで呼ばれていた。
そのためリーゼンブルム家に生まれた彼は、幼い時から周囲からの期待を背負っていた。
そんな彼の才能に目を付け、自身の教え子の一人として開設した教室に通うことを打診した講師がいた。
それこそが彼が所属していた鉱石科の君主にして恩師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトであった。
若くして君主の座に至り、
そんな彼の半生にロイドはひどく憧れ、エルメロイ教室に通うことを決めたのだった。
斯くしてエルメロイ教室の初期の生徒になったロイドは、教室内でも投影魔術の申し子と呼ばれたアムレス・ヴォータンに並ぶ天才と評された。
当時のケイネスと同じ
そんな変わらない、しかしロイドの成長と有意義な日常が続いていたある日、時計塔内で1つの噂が広がっていた。
ケイネスが極東の魔術師同士の儀式に──即ち聖杯戦争に参加する気だ、という話だった。
ロイドは無論、ケイネスの勝利が揺らぐことはないだろうと確信していた。それは本人も同じだったであろう。
帰還した暁には、是非ともその卓越した手腕や戦いぶりを聞き出そうと、胸を高鳴らせて彼が時計塔に凱旋するのを待ち侘びていた……。
しかし、ケイネスが帰還することはなかった。
彼と、そしてその妻は日本の冬木で開催された第4次聖杯戦争に参加し、そのまま還らぬ人となったのだ。
ケイネスが死したため、エルメロイ教室は解体。それに伴い生徒間でもゴタゴタを含めた問題が発生することとなった。
そんな中でロイドは、それらに一切に興味を示すこともなく、ただ只管に魔術を極めることとした。それ以外のことを考えることさえ憚られたのだ。
当主を喪ったエルメロイ家は礼装や財産、土地なども失ってしまい、ロイドは彼とその家系への恩義から実家の金を回して購入することとした。
恩師を喪い、酷くショックを受けたロイド。
しかしそれだけならば、師でさえも勝ち残れなかったのかと思うだけで済んだかもしれない。だが、そうはならなかったのである。
話を戻すと、ロイドが在籍していた当時、エルメロイ教室には一人の変わり者──異端児がいた。
血統とその年月こそが至高たる魔術師でありながら、その理論を覆そうとするような論文を提出。さらにその理論を事実にしようと躍起になった生徒がいた。
ウェイバー・ベルベット
理想崩れのウェイバーと呼ばれたその生徒は、ケイネスらを欺いて日本の冬木に向かい、同じく聖杯戦争に参加したのだ。
聖杯戦争には触媒と呼ばれる、英霊を使い魔たるサーヴァントとして召喚するための呼び水を用意するのが基本である。当然ケイネスも、とあるサーヴァントを喚び出すための触媒を用意していた。
しかし事務員の不手際により、ケイネスの元へ届けられる筈だったその触媒は、偶然にもウェイバーの手に渡ってしまったのだ。
その頃のウェイバーの破天荒ぶりはロイドも当然目にしており、同じく天才と称されていたアムレスとその派閥による嫌がらせを受けていたことも知っていた。
──最も、当時のロイドは教室内における他の生徒には殆ど興味を示していなかった。
所詮は一介の魔術師同士の寄り合いでしかないと、対抗するような派閥を作るだけの力や名声を持ちながらも、その気も一切起こらなかったほどに。
そしてそれはウェイバー個人に対しても同様であった。
いつも変なことを言ってる常識知らず
ロイドにとっての彼は、それ以上でもそれ以下でもなかった。
しかし聖杯戦争が終わり、ケイネスを始めとした参加者の多くが死亡した中で、恩師の触媒を利用したウェイバーは、まんまと生還を果たした。
それからのウェイバーの功績はまさに破竹の勢いであった。
瓦解しかけていたエルメロイ教室の再興に始まり、没落しかけたエルメロイ家の立て直しに奔走。恩師ケイネスが遺した礼装や魔術理論の再構築といったことを成していった。
再興したエルメロイ教室は当初こそ注目されなかったものの、その内容から多くの新世代生徒たちが彼の元で多大な成績を残した。
彼が生徒たちに声を掛ければ、時計塔の勢力図が塗り替えられるとまで噂されている。
天才と称されていながらも、ただ漠然と魔術に向き合い、エルメロイが売り払ったケイネスの礼装を買うくらいしかできなかった自身とは、まさに隔絶した結果を出し続けた。
そこまでに至ってようやく、ロイドはウェイバーへの──否、ロード・エルメロイ2世への評価を改めることとなった。
奴は常識知らずではなかった。常識外れだったのだ──と。
それ以来、ロイドは聖杯戦争への熱意を、ひいてはエルメロイ2世を超えることを主にして、時計塔で腕を振るい続けた。
生徒として、そして講師として魔術を極め続けた。
貴族で在りながらも珍しく、個の意志を尊重する傾向にあったリーゼンブルム家は、ロイドが聖杯を手に入れるのを見据えているのならばと彼の思想を容認した。
10年を超える中で磨き上げた魔術師としての戦い方は実戦的であり、対魔術師を想定したものが殆どであった。
しかし、彼は時計塔に於けるトップ──即ち
現在全ての君主の座が埋まっているため当然ではあるのだが、それを差し引いても至ることはできない。
何故ならば、彼の魔術はその根本が『相手を斃す為の魔術である』からだ。
そもそも魔術師は根源を目指すものであり、魔術師を取り締まる法政科でもない限りはそれが常識である。
にもかかわらず対人戦のみを想定し、根源へ至るには程遠き思考で魔術を極め続けたロイドには、君主の座は相応しくないのが現状だ。
もはや狂気とも呼べる
確かな実力と才能、そして血統を持ちながら、しかし君主に選ばれることはない。
全てはあの日、『聖杯戦争』に捕らわれてしまったが故に。
✴ ✴
「良かったねロイドー。ずっと言ってたよねー」
「ああ、この日を待ち侘びていたのだ!」
ペチペチと拍手するサキの様子に得意気に鼻を鳴らしてから、ロイドは自室の机に徐ろに近付く。
デスクの引き出しを開けて、隅にポツンと設置されていたスイッチを押す。すると、背後の書斎の棚がスライドし、そこから一つの扉が姿を見せた。
「ふふ、ここから持ち出すために入るのは初めてだな」
扉に付けられた鍵穴に、懐から取り出した鍵を差し込んでからドアノブに触れる。
そこに魔力を流し込むことで認証を終える。必要な行程が完了した扉は、ドアノブから手を離したロイドの目の前でガチャガチャと音を立てながら自動的に解放される。
部屋の中は薄暗く、また防音の結界が施されているのか、時計塔から仄かに聴こえる喧騒も、この部屋まで来ると完全にシャットアウトされていた。
部屋の中には無数の歴史的価値のある物が置かれていた。だがそれらは、壺や絵などといった骨董品はほとんど無かった。
歴史のありそうな豪華な布生地
何かの生き物の角
血の付いた木製の槍
柄に穴が空いた斧
どれも一見しても価値があるのか解りづらいものばかり。
しかし見るものが見れば気付くだろう。これらの殆どが、サーヴァントを呼び出すに足り得る触媒の数々であると。
そんなちょっとした触媒の博物館と化していた一室の中を歩くロイドは、後ろから付いてくるサキを率いながら、ある物の前でその歩みを止めた。
ケースの中に収められた2つの触媒を覗き込んでから、サキはソレを指を刺しながらロイドの顔を見る。
「ふーん、コレにするの?」
「ああ。長年考えたのだ、どのようなサーヴァントであれば勝ち残れるか。そして私が結論付けたのがコレだよ」
不敵な笑みを浮かべロイドは、懐から真新しい綺麗な手袋を手に付けると、目当ての触媒を保護しているケースを外してからソレを手に取った。
サキが私室から持って来ていたジュラルミンケースを受け取って側の台に置く。
バチンバチンと音を立てて開くと、触媒を丁寧に入れてジュラルミンケースを閉めた。
「さあ、すぐにでも行こうではないか! 私達の輝かしき舞台へ!」
魔術と鍵の2つでしっかりと封をし、トランクに軽く放ると、羽織っていたコートをバサッと翻して荷物を持って部屋を後にする。
✴ ✴
それから数日して12月23日の正午、ロイドとサキは聖杯戦争開催地とされるニザラムに居た。
二人が今居るのは、魔術師が自身の研究成果などを保管するための空間である魔術工房と呼ばれる物。──早い話が魔術で形成された拠点である。
工房内には侵入した敵対者を迎撃するための多数の罠が張り巡らされており、その存在そのものが安易に這入するのを阻止するための牽制になり得る。
現在のものは数時間ほどで構えた簡易的な物で、一度サーヴァントの召喚を行った後、更に魔術を掛けて防御を万全なものとする予定である。
そんな工房の中で、ロイドはサーヴァントの召喚を行うための魔力陣を描いていた。しかし陣は一つではなく二つだった。
そしてその陣の直ぐ側には、それぞれの触媒を載せた台が置かれていた。
さてこんなものかとロイドが作業を完了させた所で、工房の外で待機していたサキが黒いものを手に持って振り回しながら入ってくる。
「さっきロウギスのおじさんの
「ほう、そうか」
自分たち以外の参加者であるアイリッシュ・クロムハーツへの参加要請を行った後、首都エレバンにて待機していたロウギス・アリータ・クロウからの知らせを受けたらしい。
「まぁ、自分から魔術の道を捨てた魔術使いの助けなど不要だがな。精々足を引っ張り合わないように過度な干渉は避けるところだな──ところでサキ。なんだそれは?」
「使い魔が落とした羽根。持ってていいでしょ?」
「そうかー、ならしょうがないな」
カラスの羽根をブンブン振り回しながらそんなことを言う妻の愛らしい姿に満更でもない返事をしながら、ロイドは陣の前に立つ。
「さあサキ。召喚を行うぞ」
「はーい!」
軽く返事を行うと、サキは羽を持ったままもう一つの陣の前に立って手を伸ばす。
そして妻の様子を一旦見守ってから、ロイドも中心に立つと魔力陣に手を伸ばす。
令呪の宿った右手を添えながら、魔力陣に向かって詠唱を始める。
時計塔が指名した3人目のマスター、それは他でもないロイドの妻 サキである。
サキ・リーゼンブルム
旧姓は
今から数年前、ロイドが聖杯戦争の下見と称して日本の冬木にやってきた際に偶然出会った女性だ。
どちらかというと魔術師の家系ではなく、修道を司る、日本の古い家柄の出身者である。
その出自からリーゼンブルム家の人間からは懐疑的な目で見られているが、所謂魔術回路などの量や質は良好で、ロイドの数十倍以上の魔力を一度に発揮できる存在であるとされる。
先の聖杯戦争にて彼の恩師ケイネスは、妻のソラウ・ヌァザレ・ソフィアリにサーヴァントへの魔力供給を担当させていた。
それに倣い、助手に等しい存在を求めたロイドが目を付けたのが彼女だ。
しかし彼女に正しく運用してもらう上では、自分の代わりに魔力を負担してもらうだけの場合よりも、単純にもう一人のマスターとして参戦してもらった方が効率がいい。
そう判断したロイドによって、3人目のマスターとして推薦、時計塔側としては渋々と言った感じではあったが、見事選ばれたのだった。
そうこうしているうちに準備が終わり、令呪が、そして魔力陣に強く青白い光が灯り始める。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
ロイドが最後の詠唱を高らかに叫ぶと、より一層強い光が工房内を照らしだす。
一陣の風が吹く。工房内は締め切っているためにそんなことは通常では起こりえない。そんな中、描かれた魔力陣の中心に影が一つ。
「──っあ〜っと」
光の中から姿を現した存在──召喚されたであろうサーヴァントはこちらに背を向けて地べたに座り込みながら、開口一番大きく伸びをしていた。
マスターから召喚されたにも関わらず、さしてマスターを意識することなく振る舞うその姿に、ロイドは僅かに眉を釣り上げつつサーヴァントへ問う。
「あー、貴様が私が召喚したサーヴァントだな? 召喚に応じたからには、そちらから自らの主人であるか問いかけるべきだと思うのだが?」
問いかけながら、ロイドは座ったまま首だけをこちらに向けていたサーヴァントを見下ろして観察する。
目深く被ったヨレヨレの三角帽子
浅黒い肌に、ボロボロの見窄らしい衣服
肩から下げた、これまたボロボロの鞄
その身なりだけでは、一般的な人間は彼を浮浪者か何かとしか思わないだろう。
だが召喚したロイドは当然、目の前の物乞いじみた格好の男が──それも、世界的にも高名な英霊であることを知っている。
果たしてそんな男が自分にどう接するのか待っていたのだが──。
「あー。こう言ったらアレでしょうけど、そう見えないんであれば旦那の頭はお飾りってことでよろしいですかい?」
まず第一声が、そんな挑発じみたコメントだった。
自らがこめかみを一層引きつかせているのを感じながら、ロイドは己がサーヴァントと言葉を交わす。
「お前が聞いてこないから改めて問うたまでだ。大体、サーヴァントはまず自らのマスターを確認したら声をかけるのが適切だろうに」
「そりゃあすいませんね。まさか旦那のような鼻の高いプライドの塊みてぇな、それでいて自分に失敗はないとか変に自信過剰そうな傲慢チキなおっさんが、こんな卑しい身分のマスターとは思いもしなかったもんで」
「──」
ロイドは、彼の性格の悪さを知っていた。
それでも尚、結果を出せるであろうサーヴァントを召喚した。多少は好きに言わせてやろうかと思っていたが……。
「何をバカな。私はまだ三十と少しだぞ。それに貴様とて良い歳だろう。大体私が失敗しないのは確定で──!」
「あーはいはいそういうのいいんで。ってかアレですね、旦那ァそこの方は奥方ですかい? ──ははぁ、さては奥方の尻に敷かれてると見た」
「くっ……!?」
尻に敷かれているというよりは、どちらかというとサキに合わせているのでむしろ自分から尻に敷かれて行ってるタイプである。
──それはともかく、割と図星なことを初見で見抜かれて、しかしロイドも否定する。
「いやいや、そんなことは無いぞ! 私がサキに敷かれているなどそんなことは」
「そうやって見栄張るんすよねダメ亭主って。女の尻に敷かれるような男はダメですよ、亭主関白──とまでは言いませんけど、奥方を多少コントロール出来なきゃ亭主失格でさぁ」
──これ以上この男と会話していると胃が保たない。
そう判断したロイドは己のサーヴァントを一度無視し、隣で召喚していたことをすっかり忘れかけていたサキの方へと視線を向ける。
サキの眼の前にもまた、一騎のサーヴァントが召喚されていた──。
──しかし。
「サーヴァントキャス──いえ、アサシン。召喚に従い参上しました」
「はーい、よろしくー!」
サキに答えるのは、今しがた自分が召喚したサーヴァントと似たようなボロボロの姿をした少女だった。
焦げ茶色のくせっ毛
ボロボロの黒い衣服と手首の枷
そして左肩から生えた、大きな黒い鳥の羽
アサシンと名乗る少女を見て、しかし一番狼狽したのはロイドであった。
「ア、アサシン!? ランサーではなくか!?」
「? はい、キャスターかと思ってたんですけど、どうやら違うみたいで……」
ロイドはサキにランサーのサーヴァントを召喚させようと目論んでいた。しかし、実際に召喚されたのはアサシンであった。
そしてアサシンもまた、どうやら自らのクラスにも疑問を持っていたらしい。
そんな彼女の様子を見て、隣の魔力陣の中で寝転んでいたロイドのサーヴァントが口を開く。
「あー、すいやせんね
「そうですか」
「まーいいんじゃないー?」
そう言ってロイドのサーヴァント──キャスターはアサシンに挨拶し、サキもまたアサシンをフォローする。
そんなほんのり緩い空気の中で、しかしロイドだけは頭を抱えていた。
「馬鹿な……あの触媒を用意したのにか……! アサシン、お前真名はなんだ!?」
そう問われて、アサシンは自らのマスターであるサキをチラと見て──気にもとめてない様子から良しと判断して真名を応える。
「▇▇▇▇▇▇です」
「────ニアピンかああァァァ!!! てか貴様アサシンなのか!? どこが!!?」
一度静止してから、ロイドは頭を抱えたまま床に崩れ落ちる。
ニコニコ笑うサキに、ゲラゲラ爆笑するキャスター。そんな様子に困惑してアサシンもどこか申し訳無さそうにする。
「恐らくは、都合のいい切っ掛けでしか無かったとはいえ、私という存在そのものが暗殺に繋がったからそのイメージでしょうね。……この羽だって生前なかったものですし」
「キャスターの陣地作成と、ランサーの戦線維持能力とを組み合わせて戦う私のプランが──!」
自分の左肩から生えた一枚の羽を触りながら、アサシンはネガティブな雰囲気とともに自嘲する。
そんな中で、サキはロイドに近付くと頭を撫でながら励ます。
「大丈夫だよー。ロイドの勝利はこんなことじゃ揺るがないんでしょー? ここから頑張ってこうねー」
「……そうだな。そうだな! 逆に考えれば拠点に引きこもりながら相手マスターの暗殺を試みるヒットアンドアウェイが狙えるものな! ──貴族たる者が暗殺なのは興が乗らないが……聖杯戦争なのだ、仕方あるまい!」
突如としてガバッと起き上がると、早口とともに立ち上がってプランを再び練り始める。
そして天を仰ぎながら、ロイドは高笑いと共に宣言する。
「そう揺るがない……揺るがないのだ! 私の勝利は、揺るがなぁぁい!!!」
気を取り直して高笑いするロイド
彼を見て微笑むサキ
先程までと空気が変わった二人を見て困惑するアサシン
そんな三者一様の様子を観察しながら、相変わらずゲラゲラ笑いながらキャスターは今回の召喚に関しての感想を漏らすのだった。
「なんか……アホくさくて逆に面白」
No.5 キャスター
クラス︰キャスター
真名︰???
性別:男性
身長:153cm
体重:41kg
出典:???
地域:???
属性:中立・混沌・人
ステータス
筋力D 耐久E 敏捷B 魔力EX 幸運A 宝具A+
クラススキル
陣地作成:EX
道具作成:B
保有スキル
エンチャント:A
高速詠唱:A+
???:A
✴ ✴
No.6 アサシン
クラス︰アサシン
真名︰???
性別:女性
身長:152cm
体重:40kg
出典:???
地域:???
属性:中立・中庸・人
ステータス
筋力E 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具C
クラススキル
気配遮断:C
保有スキル
???:B
???:B
???:E
???:E
✴ ✴
なに? どれだけコテコテな貴族の魔術師キャラを考えても劣化ケイネスか二番煎じにしかならない?
それは無理矢理ケイネスから離して違うキャラにしようとするからさ。
逆に考えるんだ、いっそケイネスリスペクトのシンパにしちゃえばいいさと考えるんだ。
途中出てきたマスター候補は、原作キャラの獅子劫さん以外は没になったキャラです。