Fate/outsider   作:EUDANA

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 イベント走ったり水星の魔女見たりで遅れに遅れて申し訳ないです

 PIXIV版のルビ変換変えてませんでした!ホントにすいません!!!



04.アーチャー召喚/葬儀屋

 

 

Overall operation(全体動作), startup confirmation(起動確認)

Reactive(リアクティブ) Controller(コントローラー) set(設定)

There is a slight weight error due to left(左側に若干の重量誤差)

balancer(バランサー) adjustment(調整) ──】

【 ──Adjustment completed(調整完了)

CODE(コード).DXM Boot up(起動開始)

 

Operating(オペレーティング) System(システム) All Green(オールグリーン)

 

 

 何処とも知れぬ暗い一室の中で、横たわっていた女性が台から起き上がる。

 その度に、彼女の背中に取り付けられていたコードがブチブチと切断され、彼女と代わって台の上に投げ出される。

 

 

 女性はメイドの様な服を身に纏っていた。

 その至るところには十字架が描かれており、まるで修道女にも近い雰囲気を感じさせる。

 しかしその双方とはまた違い、各所に鎧のようなパーツが備え付けられていた。

 さらに首元には、まるで朱い歯車のような痣が浮かんでいた。

 

 

 そんな奇妙な出で立ちで包んだ上体を起こした女性は、首やスコープの跡が刻まれた様な瞳──と思しき部位を動かして、周囲を見回す。

 すると、その台の側から声を掛けられる。

 

「問題があるなら答えろマキナ」

 

 機械的な動きで声の主人に首を動かした彼女──マキナは、こちらを見向きもしないまま背を向けて、モニターを確認している1人の男を視界に捉える。

 

 ぱっと見では白衣の上から青と黒のコートを着込んだ、少し変わった服装の眼鏡の研究者、といった風貌。

 だが彼のその服装もまたマキナの例に漏れず、白衣やコートの随所に十字架が描かれていた。

 

 そんな男の背後で机から降りると、マキナはキチッとした様子で姿勢を整えてから返答を行う。

 

【報告。左側に重量の誤差が発生したため、制御バランサーを微調整致しました】

「結構。新造の魔力炉心だ。軽量化するべきだったが最後の戦闘出撃、その程度の些事なら問題ない」

【了解しました。以後調整を固定化、現状を正常基準値へと更新致します】

 

 淡々とした会話を繰り広げる両者だったが、しばらくしてから男はようやく振り返りマキナへと視線を向けた。

 

「時間も惜しい。早速だが──」

 

 ピリリ──。

 

 喋っている最中、モニター前のデスクに置かれてあった連絡端末が鳴り出した。

 男は正確無比な動きでさっさと掴み取ると、それを耳に充てる。

 

「なんだ、私は忙しいと言ってるだろ」

 

 男が誰かと連絡を取り合っている中、マキナは命令が出るまでの間、動きをピタリと止める。それが今、彼女にできることだ。

 

「時間をかけるのは御免なんだ。──そう、今回の模擬聖杯戦争の監督役、並びに監視には私が付く。それに、向こう側がそう指名してきた」

 

 電話はまだ終わらないようで、男は徐々に苛立ちを見せるようにトントンと足を鳴らす。

 

「──今更。お前達の所のヤツも、冬木で息子と共に裏で参加してたんだろ。確か言峰(ことみね)だったか、知らないとは言わせないぞ」

 

 しばらくした後、男は舌打ち混じりに端末を切って懐にしまうと、すぐさまマキナへと視線を戻す。

 

秘蹟会(ひせきかい)の連中め、貴重な時間を無駄にした……」

 

 そう言って男は近くにあった瓶を一本手に取ると椅子から立ち上がる。

 ツカツカと音を立てて、部屋の出口へ歩みを進めるとチラとマキナへ振り返る。

 

「サーヴァントの召喚に入って貰う。来い」

 

 そのままマキナの返答を待つこともなく、せかせかと部屋の外へ歩み出す。マキナもまた、彼に合わせて数歩ほど後ろを歩む。

 

 

 マキナのすぐ前方。男は手に取った瓶──ジンジャーエールと書かれたそれの王冠蓋を素手で簡単に取ると、一気に口の中へと流し込む。

 

 そして一気に飲み干すと、道中に備え付けられたダストボックスに雑に放り投げる。

 

 

 

 

 

 目的の部屋に辿り着くまでに、マキナと男は何人かの人間とすれ違う。その格好には2つの系統が存在していた。

 

 一つは男からコートを取り払ったようなシンプルな白衣の格好に身を包んだ者たち。

 もう一つは逆にコートはそのままに、内側の白衣を紺に近い神父のような格好をした者たち。

 

 彼ら彼女たちは皆、その系統のどちらともが男に会釈だけをしてすぐに通り過ぎる。

 一応相手に頭は下げるが、そんな無駄な時間さえ消費するのは惜しいため最低限だけ。──そう感じさせるほどだ。

 

 

 

 しばらく歩いて辿り着いた部屋の中では、何かの血液で作られた魔力陣が描かれている。

 そしてそんなおどろおどろしい雰囲気を漂わせる部屋の中心には、やはり部屋の雰囲気に相応しい物が置かれていた。

 

 それは一見するとただのフラスコ。しかしその中では、ドス黒い血のような何かが厳重に封じられており、取り扱いに慎重になっていることが感じられる。

 

「触媒はこちらで用意した。お前は回路を起動させて詠唱、召喚次第こちらが合図するまで待機だ。サーヴァントとの交渉は基本的に、全てこちらで行う」

【了解しました。炉心同調起動、これより回路を順動させ、サーヴァントの召喚に入ります】

 

 その一言を合図として彼女の中で、文字通り何かのスイッチが入る。

 周囲に魔力らしき力を放出させるマキナ。その首元に刻まれた歯車のような形状の令呪は、彼女の召喚を悟ったのか強く輝き出す。

 

 

【 ──── 】

 

 

 一際大きな輝きと共に、魔力陣とマキナの令呪が光る。衝撃や風、そして魔力が部屋を満たし伝っていく。

 

 この場所すべてを揺るがすそれを目前にして、しかし男は顔色一つ変えることもなく、コートのポケットに手を突っ込んだまま静観していた。

 

 

 そして輝きや衝撃が穏やかに止むと、陣の中に1人の女性が立っていた。

 

「──なんだこのひどく重苦しい部屋は? こんな場所で召喚を? 私をなんだと思っている」

 

 召喚されたサーヴァントは、自身が喚び出されたその部屋に酷くショックを受けたようで、不満を一つ漏らした。

 

 

 褐色に近い肌に黒く長い髪

 青の下地に黒の装飾

 その身を守る、金色の鎧

 そしてその背には、やや小振りの弓。腰に付けた矢筒には、数本の金色の矢が収められていた。

 

 女性としては珍しい装備を身に纏ったサーヴァント。マキナの背後で見ていた男はその姿を見てクラスを認識する。

 

弓兵(アーチャー)か。想定通りだな」

「貴様が私のマスターか? ……いやしかし、令呪はどこだ?」

 

 弓兵──アーチャーと呼称された女性は自身に歩み寄る男を睨み見回していたが、彼の何処にも令呪が宿っていないことに気付いたようだ。

 

「貴様、本当に私のマスターなのか?」

「私はお前のマスターではない。お前のマスターはコイツだ」

 

 男は何処かぶっきらぼうに、アーチャーにも見えるように親指でマキナを指差す。

 男の背に控えていたマキナと首元の令呪を見たアーチャーは、さも驚いたように目を丸くしている。

 

「この()が私のマスター? しかしどう見ても絡繰──いや、機械人形ではないか」

「厳密に言えば新造人間(アンドロイド)だ。世間一般に出ていない技術で作り上げた代物だ」

【この度の聖杯戦争にて貴女のマスターを務めさせていただきます、マキナです】

 

 マスターであるにもかかわらず、マキナは自身のサーヴァントであるアーチャーに敬うようにお辞儀を行う。

 そして自身の前で立っていた男の方へと手を向けて自らのサーヴァントに紹介する。

 

【こちらは私のマスター──以後主人と呼称します、クリムス・サーディアルです】

 

 アーチャーの視線は主人のそのまた主人と呼ばれた男──クリムスへと向けられる。

 マスターたるマキナに対するソレとは違い、その視線には懐疑が多大に含まれていた。

 

「自らが矢面には立たず、人工的な命を駒として遣うとはな」

「我々サーディアルが所属する教会は聖杯戦争への直接の介入は表面上許されない。──ましてや、私は監督役を務めることが義務付けられている立場。表立っての参戦は不可能だ」

 

 ──最も、立候補したのは確かに私自身の意思でだが。

 と、そう付け加えてからクリムスはアーチャーの嫌味へ返答する。

 

「そしてどんな目的であれ、作り出した命を否定出来るのはそれこそ神にだけ許される行為。その神も、この世に生まれ落ちた命くらいは祝福するだろう」

 

 所属先の信条を語り、しかしさりとて興味を持たずに話す男に、アーチャーは少し悩んでから口を開く。

 

「信ずる神や教えが違うのは構わんが……お前、本当は無神論者ではないか?」

「肯定しよう。私は神の威光になど興味もないしどうだっていい。だが真髄を探求することに於いては、ここが──聖堂教会が一番手っ取り早い。それが我々の歴史(サーディアル)が下した結論だ」

 

 

 

 

 

   ✴          ✴

 

 

 

 

 

 研究機関 サーディアル

 

 元々それは、某国に存在する研究所であった。しかし現在、そこはただの研究所ではない。

 ある組織直属の、奇跡と科学双方を極める大規模な研究所となっている。

 日夜研究を重ね、時には科学技術を駆使した超兵器を、時には奇跡を携えて力を加えた礼装を、と言った具合に。

 

 

 そのサーディアルを内包した存在こそは聖堂教会(せいどうきょうかい)と呼ばれる、彼の宗教を信奉するカトリック系組織の裏の顔である。

 

 聖堂教会は神の教えを主としており、また神が人に与えた奇跡、神秘を管理することを命題としている。

 一般的に広く知られている、『詠唱によって人に取り憑いた悪魔を祓う 悪魔祓い(エクソシスト)』のソレとは違い、洗礼された詠唱を相手の魂へと刻み、また時には物理的な手段を持って終わらせるのが彼らだ。

 

 人の道を踏み外した死徒(しと)と呼ばれている存在──一般的に吸血鬼として認識されているモノたちを認めず、それらの根絶の為に常に戦っている。

 また、神秘を追求し根源を目指す魔術協会──主に時計塔の魔術師たちを異端と見做しており、表面上でこそ停戦しているが、日夜記録に残らない対立を繰り広げている。

 

 

 

 聖堂教会が成立するより以前からサーディアルという前身となる組織が存在していた研究所(ラボ)であったが、今から千年程前、聖堂教会の設立にあたって正式に教会に組み込まれることとなった。

 現在ではサーディアルは研究所の名前ではなく、そこで最も優秀な研究者が所長へ就任する際に贈られる称号という扱いだ。

 

 

 研究所の所長は、代々受け継いできた研究を纏め上げて更なる飛躍を試みる。

 そして所長が自らの終わりを察した時、或いは不意の死後に残った科学者たちが集い、次のとりわけ優秀な科学者に所長(サーディアル)の名、それに前所長までの研究成果を引き継いで新たなる所長へと就任するのだ。

 

 

 

 聖堂教会には複数の組織が存在する。

 聖遺物などの管理を主とする第八秘蹟会(だいはちひせきかい)

 死徒や魔術師との戦闘を主とする代行者(だいこうしゃ)

 武闘派集団の騎士団(きしだん)

 そして教会最高戦力たる埋葬機関(まいそうきかん)

 

 

 一方この研究所は、神秘を聖堂教会から奪い取る魔術師や敵対者たる死徒との戦闘を想定した『洗礼礼装(せんれいれいそう)』と呼ばれる装備、兵器の開発を主としている。

 

 かつてサーディアルと呼ばれた組織は、その開発した兵器で死した魔術師や死徒たちを創り出し、研究材料として遺体から何までを纏めて聖堂教会へと納品し、そしてそれを成果としてまた新たな兵器を開発する。

 その行動権限は、教会の中でも自由に動ける埋葬機関にさえ並ぶと噂される。

 

 

 まるで死した異端達を次々と出棺するその様故に、サーディアル(彼ら)は新たな組織の名前を得るとこう呼称されることとなった。

 

 『葬儀屋(アンダーテイカー)』と──。

 

 

 

 

 

   ✴          ✴

 

 

 

 

 

「なるほどな、この()のことは納得しよう。しかし、貴様が監督ならば尚の事公平に振る舞わなくてはならないのではないか? 理屈をこねて、聖杯戦争のルールの隙間を付いてるようにしか見えないが」

 

 『組織の都合で自らは動かない、その言葉自体に嘘はないのか』

 アーチャーはその真偽を確かめる必要があるだろうと判断する。

 

 彼女とて聖杯に賭ける、叶えたい願いがあるのだ。それをルール違反で失格など、まさに最悪の可能性であろう。

 

「聖杯戦争のルールや現世の知識は召喚に応じて聖杯から送られている。しかし、聖杯戦争では主催者がいるのだろう? 確か御三家だったか? ともかく、その輩にルール違反間近のこの行為がバレたときはどうするのだ?」

 

 そんな質問をぶつけて様子を見る。しかし、クリムスの返答は意外なものだった。

 

「不要だ。既に神樹シロウには──即ち主催の人間に許可を得ている。いや、むしろ奴が指定してきた」

「何……?」

 

 その話が本当ならば訝しむべきだろう。何故ならそれは『主催側が一部参加者に対して堂々と不正を行うことを良しとしている』という事なのだから。

 

 

 ──最も、本来の冬木の聖杯戦争自体が御三家の為に用意された儀式であるため、当時からそちらに有利な不正が行われ続けていた歴史があるので今更なのだが。

 

 

 そんな事情を知る由もないアーチャーに対して、クリムスはこの聖杯戦争の主催者たる存在──神樹シロウという男の話をする。

 

「奴は、私が自身を探っていることに勘付いていた。その上で向こうから接触、そして取引を持ち掛けてきた」

 

 

『クリムスがこの聖杯戦争の監督役に就く』

『クリムスは自身の代理をマスターに据えることが許される』

『この聖杯戦争中、最後に残るまでの間は互いへの攻撃は禁ずる』

 

 

「──この3つだ。内容は至ってシンプルだろう」

「確かにそうかも知れないが……いくらなんでも消極的すぎる。それに何故その主催者──神樹シロウとやらを狙わない? 接触できるならば尚更だ」

 

 頭の中で情報が整理されてきた為か、本来の自身らしくやや好戦的な物言いをし始めるアーチャー。

 彼女は物事を捉える時は思慮深くある。しかしこと戦場に立った時、どちらかと言えばこちらの方が彼女の素に近くなる。

 

 だが実際、敵であることに変わりがないのであれば、契約などせずに交戦するのもまた一つの手であろう。サーヴァントの存在を抜きにしても、一介の魔術師程度ならば十分対抗することも可能な筈──しかし。

 

「そうだな。だが、それが出来れば苦労しない」

「どういうことだ?」

 

 

 その上でクリムスは、そんなアーチャーの提案をある事情から否定する。

 

 

 アーチャーが聞き返すが、それは至極当然な疑問。

 聖堂教会の中でも自由に動くことを許される立場にあるクリムスならば、葬儀屋内だけでなく代行者たちに働きかけて動かすことも容易であった。

 

 無論、クリムスも可能性の一つとして徹底抗戦のプランを一考したこともある。

 

 だがそうは行かない事情もまた出来上がっていたのだ。

 

「そうだな、一度説明した方がいいだろう──マキナ」

【了解いたしました】

 

 彼女の反応も想定していたのだろう。クリムスはマキナを呼び出す。

 

【神樹シロウのパーソナルデータが存在します。アーチャー、貴女にも共有致します】

 

 そう告げると、マキナの瞳から一筋の光が壁へと照射される。

 光が照らし出すその映像には、白黒(モノクロ)の虹のような瞳が特徴的な痩せこけた男の写真が映っていた。

 

 

 

 

 

【神樹シロウ。25歳。元は魔術の家系の一つ、神樹家の長男として生まれた魔術師でした】

 

【神樹家は時計塔に在籍しておらず、所謂辺境の田舎者と言った家系でした。しかし神樹シロウは生まれながらの神童として、魔術協会の一部の魔術師にもその存在が知られていたようです】 

 

【しかし今から12年前の1997年、当時の神樹家当主とその妻──即ち神樹シロウの両親は謎の事故により死亡したと記録されています。恐らくは──】

 

 

 

「息子の手に掛かって殺された、ということか」

「そう見ていいだろう」

 

 

 

【──話を戻します。長男ではありましたが、神樹家の魔術刻印は神樹シロウには受け継がれませんでした。そして翌年、14歳の頃に時計塔へと身を置くこととなります】

 

【2003年、時計塔を抜けた彼は、我々聖堂教会や魔術協会に数えられる組織の一つ 『アトラス院』に接触。さらにその裏では、既にアルメニア政府に働きかけてニザラム開発の下準備に入っていたことも確認されています】

 

 

【2006年にはドイツで確認。──目的は不明ですが、冬木の聖杯戦争の御三家の一角 アインツベルン家と接触しています。しかしそれから数年間は、表舞台に出てくることはありませんでした】

 

【そして今から半年ほど前。再び姿を現した神樹シロウは、アルメニア政府に働きかけ続けて築き上げたニザラムの情勢が安定すると、我々に接触を図りました。内容は先に主人が述べた通りです】

 

 

 

 

 

 次々に表示されていた映像が途切れ、マキナの瞳から放たれていた光が収束する。

 

【──以上が、こちらの持ちうる神樹シロウの情報です】

 

 説明を終えたマキナと入れ替わるようにクリムスが口を開く。

 

「魔術刻印も後ろ盾もないまま単身で各勢力への接触。情報統制能力や短期間の行動範囲。……もはや手広くやってるなどという次元ではない」

「なるほど。しかしそれならば──」

 

 ──単に神出鬼没なだけではないのか?

 そう答えようとしたアーチャーの言葉を待たずして遮ると、クリムスは自らの結論を語る。

 

「時計塔やアインツベルン、アトラス院を相手取る。国一つをヤツの領土として見ても本来ならば早々に始末される筈。だが生きている。……更に教会在籍時に記録されている奴のデータ……これらの辻褄を合わせるならば答えは一つ」

 

 無論あくまで可能性。

 しかし、クリムス自身の中ではもはや確信となっているソレは、この擬似的な聖杯戦争が如何に歪ながらも信憑性を帯びているかを決定付けていた。

 

「ヤツは──神樹シロウは『根源接続者』だ」

「!」

 

 

 

 根源。

 全ての魔術師たちが数千年以上を掛けて、時に自らの子孫に魔術刻印と言う名の呪いを託す形で目指す、言ってしまえば魔術師たちにとっての終着点(ゴール)

 

 しかし中には何らかの変化により、不意にソコへ到達する者が──或いは生まれながらにゴールに到達している者もいる。

 

 

 

 そして神樹シロウもまたその一人である、と。クリムスは端的にそう語る。

 

 一方、その些か信じがたいその話題にアーチャーは困惑を見せる。

 

「根源……私の地方ではあまり語られた概念(モノ)では無いが、如何なるものかの知識も得てはいる。しかしそれは──」

「信じられないか、まぁ無理もない。魔術師(連中)も認めてはいないからな」

【しかし、その魔術師たちが根源へ至る為に振るう魔術の論理では説明が付かないことを行っている経歴があります。まず間違いないかと】

 

 マキナの補足も相まってか、アーチャーは頭を抱えることになる。

 

 

 

 そもそも彼女はどちらかと言えばこれでも武人肌であり、闘いに無常の喜びを魅入出す。

 古今東西、様々な時代の英雄たちを相手に己が力を証明して雌雄を決し、そして死後より抱き続けていた、ある願いのために闘う。それがアーチャーの目的なのだ。

 

 しかしいざ蓋を開けてみれば、主催とグルの出来レース。しかもその主催に至っては根源接続者であり、はっきり言って勝ち目が有るのかも不透明と来た。

 

 

 

 そんな自陣営の状況に頭を悩ませていた彼女は、ふと思い立つ。

 

 

 そもそもこの男は、何故聖杯戦争に参加するのか。

 

 対立すれば勝つこともできぬまま敗北するかもしれないこの戦いに、しかしクリムスは渋々といった様子も一切見せなかった。

 勝つ秘策でもあるのか、或いはそれでも挑む理想を持っているのか……。

 

 

 次に、では何故このマスターの主人たる男は自分を召喚したのか。

 

『アーチャーか、想定通りだな』

 

 自身の召喚時に呟いたあの言葉が事実であるならば、クリムスは最初から彼女を狙っていたことになる。

 

 チラと視線を動かして、魔力陣の側に置かれた触媒を確認する。

 なるほど確かに自身を呼び出すにはうってつけの触媒であろう。

 だがそれならば他の英霊を選択すればいい。自身の実力を過小評価するつもりはないが、それでも自身より強力な英霊など当然存在する。

 

 

(───確かめねばなるまい)

 

 アーチャーはマスターとクリムス双方を視界に捉えると、疑問をぶつける。

 

「ではマスターの主人、貴様に問おう。その超越者を前にして、貴様は何を背負い戦いを挑む?」

 

 アーチャーの言葉を受けて、クリムスは僅かに目を細める。

 その顔にほんの少しの煩わしさを醸し出しながらも、クリムスは己の目的を語る。

 

 目の前のサーヴァントには理解されないだろうと理解しながら。

 語ったその内容に彼女の反感を買うだろうとも理解しながら。

 

 

「……私の目的は──」

 

 

 

 

 

 アーチャーは知る由もないことだが、神樹シロウがクリムスに同盟を持ち掛けたのには3つの理由がある。

 

 1つ目には、自らに都合よく聖杯戦争を進行してくれるから。

 

 2つ目には、自らの目的を聖堂教会や魔術協会に知らせることがないだろうから。

 

 

 ──そして3つ目には、彼らは目的こそ違えど、そこに至るために望む結果は同じものであるから。

 

 

 

 

 

 クリムスが語り終えてしばらくの間、アーチャーは呆然としていた。

 一体コイツは何を言っている……と、そう考えずには居られなかった。

 

 だがそれも僅かな間。次の瞬間には激昂混じりに問いただす。

 

 

「──貴様ッ! そんなことが許されるはずがないだろう、正気か!?」

「ああ、私は正気だ。いや、どのみち時間の問題なのだろう。そうでもなければあのアトラス院が達観したかのように沈黙を続ける通りはない」

「──ッ! 最早交わす言葉無しっ!」

 

 言うが早いか、アーチャーは腰に差していた短剣を引き抜くと、全速力でクリムスへと駆ける。

 これ以上、この男を生かす訳にはいかない──と。

 

 

 

 アーチャーの失敗を挙げるならば、クリムスの余りに馬鹿げたと言ってもいい目的に激昂したことを含めたとしても、やはり一つだろう。

 

 

 

 ───彼女のマスター マキナは、クリムス側の立場にあるということだ。

 

 

 

【令呪を以て我がサーヴァント・アーチャーに命ずる。今後一切、我が主 クリムス・サーディアルに対するあらゆる害を禁ずる】

 

 ずしり、と。アーチャーはその身体に強烈な負荷がかけられたことを感じ取った。

 サーヴァントの暴走や勝手や行動を抑制するために行使する、聖杯がマスターに与えた力 令呪が発動されたのだ。

 

 

 放たれる淡い光。その輝きが増すにつれて、アーチャーの動きが静止する。

 

「くっ……!」

「アーチャー、私がお前を狙ってマキナに召喚させた理由を知りたいのだろう。……その理由の一つが、お前の生い立ちだ」

 

 すぐ目の前で短剣を構えて静止するアーチャーに眉一つ動かす事なく、クリムスは冷ややかな視線を送る。

 

「お前は英霊であるが、それと同時に人理に仇なす存在。故に召喚した。教会(我々)ならば、いざという時にお前を始末するのに時間を喰わないからな」

「……っ!!」

 

 やがてマキナの令呪の光が弱まると共に、アーチャーは全身の力が抜けたかのように崩れ落ちる。

 そしてマキナの首元に宿る令呪から、一画分の痣が消えて痕になる。

 

 

 怒りの形相を滲ませながら、しかしアーチャーは令呪の効果によって短剣を収める。

 

「───いいだろう、精々貴様の努力が実らないように願っているぞ」

 

 マスターの主人たる男へ呪詛を吐き捨てながら、アーチャーの身体は蒼白い光とともに霧散する。

 実体を消し、魔力の消費を抑えるサーヴァントの機能、『霊体化』によるものだ。

 

 

 

 瞳に当たるパーツで周囲を監視し、彼女が霊体となって近辺にいることを確認してから、マキナはクリムスへと頭を下げる。

 

【申し訳ございません。アーチャーの暴走は、マスターである私の不手際です】

「構わない。元々希少の荒い英霊であることはわかり切っている」

 

 アーチャーの話題をさっさと打ち切りながら、クリムスはメガネを押し上げる。

 

「間もなく神樹シロウの本拠地、ニザラムを内包するアルメニアに到達する。現在そこで確認されているサーヴァントはバーサーカー、キャスター、アサシン……そしてランサー」

【では残るはライダー、そして最優のクラスたるセイバーですね】

 

 未召喚サーヴァントのクラスを確認したマキナの言葉を受けて、しかしクリムスは顔をしかめる。

 

「あぁ、サーヴァントの召喚が始まった時期、お前は更新中で起動停止……そのデータは伝えて(インプットして)いなかったな……」

【?】

 

 マキナの疑問に答えるように、クリムスはある事実を伝える。

 神樹シロウから伝えられた情報を元に再設計された、サーヴァントの召喚状態を示す霊器盤。それが指し示した事実を───。

 

 

 

「セイバーは召喚された僅か数秒後に霊基が消滅した。故にこの聖杯戦争に参加するサーヴァントは6騎だ」

 

 

 




No.2 アーチャー
クラス︰アーチャー
真名︰???
性別:女性
身長:176cm
体重:47kg
出典:???
地域:???
属性:混沌・善・地

ステータス
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具B

クラススキル
単独行動:B++

保有スキル
???:B
???:D


   ✴          ✴


 聖堂教会所属者は大体辛いものが好き。ということでクリムスの好物はジンジャーエールです。
 キメラのマスターが有りならアンドロイドのマスターも……まぁ行けるでしょって感覚
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