Fate/outsider   作:EUDANA

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 今回、元々ライダーの方書いてたんですけど、内容的に先にランサーのほうがいいなと思い直したんでこっち出しました。
 そんな感じで急遽な投稿と、リアルとかパルデア地方とか怪獣のブリーダー活動で忙しかったんで今回短めです。と言っても最初から今回は短めにする予定ではありましたけども。


05.ランサー召喚/忘却の血筋ルーカス

 

 12月某日 早朝のアルゼンチン

 

 まだ空が明るくなってきたばかりという時間、とある研究所。

 そこには所属する研究員の働く仕事場だけでなく、家族と共に直に暮らしている者の居住区も存在する。

 

 

 そんな居住区の一室、床に引かれた布の上に座り込んでいる青年が居た。

 

 そのやや金に近い茶髪に青い瞳といった英国らしさを感じさせる外見に反し、顔立ちはアジア圏のそれに近い。

 

 青年は薄茶色の大きめなリュックの隣に座って、床に置かれ厳重に保管されている何かを入れたプラスチックケースを吟味していた。

 

「見てろ、俺は絶対この聖杯戦争で勝ち残ってやるからな……!」

 

 誰に聞かせる訳でもなく、己に言い聞かせるかのようにそう一人呟いて、青年はプラスチックケースを幾つも詰め込んでいく。

 しばらくして荷物を準備し終えた青年は、勢い良く立ち上がると部屋を出る。

 

 

 

 夜明けを迎えてすぐだというのに、研究所には既に多くの人間が家の前の通路を行ったり来たりしていた。

 彼らの内、その殆どは魔術師ではない。彼の実家の表向きの事業、研究を支持し働く一般人たちだ。

 

 そんな彼らに見つかって何か有るわけでも無い。がしかし、青年は出来るだけ彼らに見つかりたくなかったので、なるべく人気のない裏道を通って研究所を出て行った。

 

 

 近くにバスなどの交通機関は無く、徒歩でも片道数十分間の距離を移動しなくてはならない。なので外から来る研究員たちは車で移動する。

 しかし青年はフィールドワークをよく行っており、この手の移動は文字通り餌飯前だった。

 それからしばらくして、青年は無事にバスに乗ると、車内でようやくの朝食を喰らいながら空港に向かった。

 

 

 

 

 

    ✴          ✴

 

 

 

 

 

 その青年───リカルド・ルーカスには目的があった。

 

 彼の実家であるルーカス家はそれなりの歴史を持っている魔術師の家系である。

 魔術刻印は長男であるリカルドに引き継がれており、家も自分たちの魔術を細々とながらも継承していた。

 これだけならば、ルーカス家がわざわざ一か八かの賭けで聖杯戦争に臨み、危険を犯す必要などさしてないとも言える。

 

 しかし魔術師の家系に生まれた以上、リカルド自身もまた根源到達を目指している。

 だがそれ以上にリカルドを突き動かしたもの。それはルーカス家が抱えていた、ある問題を解決することだった。

 

 

 彼らルーカス家は、元々ある家系との遠縁の関係だった。しかしある時期、ルーカス家の方針を巡ってその家系と小競り合いが起きてしまい、ルーカス家は争いに敗北してしまった。

 当時の当主や妻、両者の間に産まれた次期当主候補だった長男が死亡し、魔術回路もそう多くない遺された次男が急遽として跡を継ぐことになったのだ。

 

 更に言うならその家系は時計塔にも所属しており、以後ルーカス家は時計塔の門を跨ぐことは許されなくなってしまった。

 そして子孫が闇討ちに遭ってもおかしくないと判断した新しい当主によって今日に至るまで、ルーカス家の人間は自分たちの領域(テリトリー)から出ることを禁じてしまったのだ。

 

 

 

 故にリカルドは実家の汚名を返上し、自分たちもやればできるのだと証明するために……ルーカス家の未来の為に、この聖杯戦争に全てを賭ける思いで挑むのだった。

 

 

 

 

 

   ✴          ✴

 

 

 

 

 

 12月22日 アルメニア新興都市ニザラム

 

 朝方にニザラムに辿り着いたリカルドは、そのまま数時間かけて、街からかなり離れた距離にある人工的に作られた湖の畔に到着した。

 

 無論、リカルドは家の方針によりアルメニアの外に出たことがなかった。

 しかし初めて来る土地であるにも関わらず、リカルドは特に迷うこともなく一直線にこの場所に辿り着いた。

 

 ───ネタばらしをしてしまうと、昨今インターネット上で公開されている3Dマップを使用し、近辺の状況やルートを確認していたのだった。

 

 

「最近の科学は随分と便利になってるからな。利用できるもんは何だって使ってやるさ」

 

 元々研究所に詰めているルーカス家は科学技術も利用しているため、それらを使う事自体に特に抵抗はなかった。

 

 

 

 念には念と、簡素な魔術で作り上げた望遠鏡で周囲を偵察。問題無いことを確認すると、リカルドは近くの廃屋に足を踏み入れる。

 

 ニザラムという新しい都市の外れにあるこの湖は、開発初期の頃に作られていた。その為初めの頃はこの湖近辺に人が住んでいた。

 しかしニザラムが完成した現在、近場の人間たちは皆街の方へと越して行った。

 

 この建物も元は釣り堀として利用されていたようだが、都市ができたことで片田舎と言える湖からは客脚が遠退き売上も激減、廃業となりそのまま放置されていたらしい。

 

 

 

「霊脈の流れも問題無い、時間も予定通り……よし、っと」

 

 小屋の中に簡素ながらも結界を張って工房にすると、リカルドは持ち運んでいた鞄から水を詰めたペットボトル、そして触媒を入れた箱を取り出した。

 

 水を使って召喚陣を描き、ペットボトルをそこら辺に投げ捨てる。

 一度、この街に踏み込んでから自身の手の甲に浮かび上がった令呪を手でなぞると、足元に触媒を置いて詠唱を開始する。

 

 

 ───余談だが現在は正午手前。このリカルドのサーヴァントの召喚によって、数分後にあるマスター夫婦の片割れが嘆くことになるが、それはまた別の話。

 

 

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公───」

 

 

 かつて、自身の家系は魔術師同士の争いに敗北した。その屈辱、劣等の歴史は今日まで続く。

 

 

「───告げる。汝の身は我が下に我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

 魔術の世界からも忘れ去られた血筋。

 叶うなら、この敗者の歴史に終止符を───。

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 

 

 ───廃屋の中に、一迅の風が吹く。軋んで外れかけていた雨戸が揺れて、そのまま落ちていく。

 

 やがて光が収まると共に、廃屋の中心に一人の男が立っていた。

 

「……あぁ? マジかよ、よりによって俺を呼ぶのかよ……」

 

 開幕第一声は、召喚されたことへの驚愕であった。

 

 細身だがガタイのいい筋肉質な肌に纏い付く、青黒い戦闘装束。

 黒髪を乱暴にかき上げた粗暴な印象と、獰猛な目付き。

 一見武器のようなものは見えないが、恐らく常備していないだけだろうか。

 

 

 そんな自身の呼び出したサーヴァントのステータスを確認したことで、リカルドは歓喜する。

 

「やっぱり槍兵(ランサー)……! やった! 間違いなく強力なサーヴァントを引き当てた!」

「おい坊主───いや……お前、俺のマスターか」

 

 一人で勝手に喜ぶマスターに、サーヴァント───ランサーは声をかける。

 時代を駆け巡った英雄に声を掛けられたためか、リカルドはマスターの身でありながら丁寧に対応する。

 

「あ、はい! 俺が貴方のマスターです!」

「いや普通に喋れ、やり辛ぇンだよ」

「わ、わかりました……じゃなくて、わかった。……えーと、じゃあランサー。お前は───」

 

 ランサーに願われて口調を崩すと、リカルドはランサーにある名を告げる。

 それは自身が呼び出そうとしたサーヴァントの真名である。

 

「▇▇▇▇▇▇▇で合ってるよな!」

「あー…………どーりで」

 

 目をキラキラとさせるかの様な自らのマスターと彼の告げた名を聞いて、ランサーは此れ見よがしに渋い顔をする。

 

「な、なんだよ? だってお前───」

「俺は▇▇▇▇……もとい、▇▇▇▇▇▇▇じゃねぇよ」

「───え?」

 

 ランサーの言葉にリカルドはフリーズする。

 彼の頭は今、真っ白になっていることだろう。そんなことを思いながら、ランサーは自らの真名を告げる。

 

「俺は───」

 

 

 

 その名を聞いて、リカルドは困惑した。

 彼が用意した触媒は、ある英雄の武器───正しくはその破片である。

 その武器は彼が伝説上で使用していた物である。

 彼の他に使っていた人物など、召喚の条件に当てはまらない例外を除けば誰一人として居ない。言ってしまえばその英霊をサーヴァントとしてピンポイントで呼び出す専用の触媒と言える───筈だった。

 にも関わらず、違うサーヴァントが出てきたのだ。

 

 その日、リカルドが酷く落ち込んだのは語るまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

   ✴          ✴

 

 

 

 

 

 数時間後。夜も更けてきた頃、リカルドとランサーはニザラムの街に居た。

 

『本日もやって参りましょう、ニザラムのお料理コーナー! 本日の材料はこちら!』

『本日未明、───在住の旅行者が倒れているのが発見され、ニザラム国際医療病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。当院の医師、ラステア・レスカトラ氏によりますと───』

『本年も残り数日! ニザラムでは年越しイベントを開催します! 主催は高山グループならびに───』

 

「畜生! 俺だって……俺だってさぁ! こんなことになるとは思ってなかったんだよ!」

 

 街の地下にあるダーツバー。そこで流れる幾つかの地元のラジオ放送に負けない音量で、まるで酔っ払いのように騒ぐのは当然リカルドである。

 

 結局呼び出してしまった以上仕方ない。そもそもこのサーヴァント側に落ち度などなにもないのだから。

 そう己に言い聞かせながらも、やはり納得は出来ぬまま。リカルドはヤケ酒を呷りながら愚痴を零す。

 

「まぁ落ち着けよマスター。まだ負けと決まったワケじゃねーんだからよ」

 

 そう言いながらダーツを構えるのはランサー。適当に近い構えで軽く投げたソレは、既に中心に突き刺さっていたダーツの束に捩じ込まれるように、またも中心点に突き刺さる。

 

 一般のギャラリーからは感嘆が、裏のあるギャラリーからは小声で噂が経ち始める。

 

 

「おい、あれサーヴァントじゃねぇか?」

「まさか。こんなところで堂々とダーツなんてするか?」

「だがあのガキ、甲に令呪あるぞ」

「何処の魔術師だ? 見たことないぞ?」

 

 

 

「五月蝿いなぁ! 第一弱いからさっさと脱落するって言ったの自分だろ!?」

「……まぁな。だが今のお前に言われるとなんか腹立つんだよ」

 

 席に突っ伏したまま、投げ終えて戻ってきたランサーにジト目で嫌味を言うリカルドとそれをやんわり言い返すランサー。

 リカルドはこの街に来たときから特に変化はなかった。その一方でランサーは何故か戦闘装束を脱いでおり、何処から調達したのか紺色のシャツとネクタイに黒地のスーツを纏っていた。

 

「大体なんだよ、その格好」

「あぁ、お前がヤケ酒してる間にここのマスターのマダムに気に入られてちょっとな」

「はー……色男がよ」

 

 そう吐き捨てながら、リカルドは席を立つ。

 

「オイどこ行くんだよ」

「ちょっと外の空気吸いに。安心しろって、アンタがいる内はそう勝手な行動しないっての」

「なら良いがよ」

 

 フラフラとした足取りで人混みを掻き分けて、リカルドは店の外へと出ていく。

 

 満天の星空の下、リカルドは深く深呼吸する。

 彼が見ていたのは常に地面。敗者にふさわしい景色だった。……最も、それはそれでリカルドは嫌いではなかったのだが。

 

 こうして外の世界で空を見上げると、ほんの少しだけ呪いから解放されたような、そんな安心感が湧き上がる……。

 

(……この感じを、俺は絶対諦めないからな……)

 

 改めてこの聖杯戦争の勝利を誓って───そしてリカルドはまた別の物が湧き上がる。

 

「うっぷ……飲み過ぎたなコレは……」

 

 全身が宙に浮くかのような浮遊感に身を預けないようにしながら、リカルドは店の入口のすぐ隣りにある小さい広間にヨロヨロと歩む。

 

 生えている木にもたれ掛かると、吐き気を感じてそのまま座り込む。

 

「うーっ……」

 

 

 

 そうしてしゃがみ込んでいると、ふとその背を触られた。

 一瞬ビクつくも、相変わらずどこかキザな言動を見せるランサーかと想いながら振り返る。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

 声を掛けたのは真黒な服装を身に纏った、モデルか何かと見まごうほどに綺麗な女性だった。

 そんな美人に突然声を掛けられて、リカルドは思わずドキッとしながら受け答えする。

 

「あ、はい。どうも」

 

 彼女に背を撫でられて、リカルドは不思議と気分がスッと楽になるように感じた。

 

「それは良かった。ほら」

 

 差し伸べられた手を取って、リカルドは立ち上がって改めて彼女に向かい合う。

 

 すると今度は妙な気分になる。それは彼女が身に纏っていた、真黒な喪服を思い起こさせる服だ。

 それだけならば問題無いのだが、歪なのはその形状だ。

 

 上半身の右側と下半身の左側は男性物の形状。

 その一方で、対となる上半身の左側と下半身の右側はドレスのような女性物の形状をしていた。

 

 

 そんな奇妙なビジュアルをしていた為か、先程から通路を通る人々は奇っ怪なものを見る目で彼女をチラチラと見ては通り過ぎるといった光景が起こっていた。

 

 そんななんとも言えないデザインの服に身を包む女性に困惑しながらも、リカルドは頭を下げる。

 

「あのえっと、ありがとうございます。なんか気が楽になったと言いますか」

「いやいや、ボクは何もしてないよ。ホラ、お友達を待たせちゃ駄目だろ?」

「え?」

 

 そう言って女性が指を指す先に視線をやれば、そこには店の入口で突っ立ってこちらを見ていたランサーの姿があった。

 

 なにか信じられない様な物でも見ているかのように目を見開く自身のサーヴァントに不満を感じながらも、リカルドはもう一度御礼を言おうと振り返る。

 

「じゃ、お世話になりまし───あれ?」

 

 だが振り返ると、そこには女性の姿は無かった。アレと思いながら辺りを見回しても、彼女は何処にも居なかった。

 そうこうしているうちに、ツカツカと音を立てて早歩きでランサーが近付いて来た。

 

「なぁランサー、さっきのお姉さんどこに行ったか───」

「───知るか」

 

 ただ一言。それまでなんだかんだ軽口を叩き続けたランサーは、この日最も冷徹に、そして素っ気なく答えた。

 

「それより、お前何もされてないのか? アイツが魔術師とか他のマスターの可能性も考慮して動け」

「あ、あぁ。悪かったって。気を付けるよ」

「まだ聖杯戦争が始まって無いとはいえ、油断し過ぎだ。戦場に次なんてねぇんだぞ」

 

 きっぱりとそう語るランサー。

 普段の言動からいけ好かないと思ってはいたが、彼も伊達に幾つもの死線を乗り越えてきた人物では無いのだ。

 

 彼のマスターたる男として手腕を振るえるように、不思議とそう思えるようになったリカルドは両頬を叩いて気合を入れ直すと、叫んで走り出すのだった。

 

「…………あぁ、わかってるよ……! 良しっ、やるぞ! まずは情報収集から!」

「あ、おい待てコラ!」

 

 

 

 

 

   ✴          ✴

 

 

 

 

 

 やる気を入れて走り出す少年とそれを追う青年。

 そんな彼らを見守るように、この近隣を一望できるマンションの屋上に女性の姿が一つ。

 

「期待してるよ、リカルドくん。ランサーを───ボクの▇▇▇▇▇▇を上手く遣って上げてね?」

 

 楽しげに。微笑むように。狂ったように。

 女性の姿をした(ナニカ)は笑う。嘲笑う。嗤う。

 

 

 




No.3 ランサー
クラス︰ランサー
真名︰???
性別:男性
身長:181cm
体重:67kg
出典:???
地域:???
属性:中庸・悪・人

ステータス
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運E 宝具B

クラススキル
対魔力:B

保有スキル
神性:E-
仕切り直し:D
???:C
???:A
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