艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第102話 ~奪還戦~

「じゃ………みんなお願いね。大変だと思うけれど、この夜戦でケリを付けるわよ!」

『了解!』

 

磯風達が、廃船の脱出を試みる数時間前。

提督代理である陽炎の指示で、決戦用の艦隊が3つ作られていた。

深海初代時雨艦隊と戦う決戦第一艦隊は、時雨、初雪、春風、如月、巻波、電、初春。

深海初代睦月艦隊と戦う決戦第二艦隊は、睦月、吹雪、五月雨、白露、磯波、浦波、雷。

深海初代大潮艦隊と戦う決戦第三艦隊は、大潮、叢雲、漣、朝潮、荒潮、満潮、ヴェールヌイ。

旗艦を、2度目の交戦で己の深海棲艦化した姿と対峙した3人にして、初期艦やネームシップ、第六駆逐隊や第二十五駆逐隊の面々を中心に構成していた。

また、陽炎から気合を入れ直すという意味で、決戦によく使われる白鉢巻を各艦が受け取っていた。

 

「何か馴染みが、無いですね………。この髪型ですから………。」

「まあ、これも陽炎なりに、皆のモチベを上げる為の案なのじゃろう。」

 

慣れない鉢巻姿に、不思議な気持ちになる春風や初春であったが、今回はそれを受け入れる事にする。

何故ならば、決着を付けるという事以上に、大切な駆逐艦の仲間を取り戻す戦いであるからだ。

だから、敢えて軽巡の川内を外すというリスクを負ってでも、駆逐艦だけにして、結束力が大事だという事を強調した。

陽炎は、出撃メンバーに対してハッキリと告げる。

 

「相手は色んな事情のある元駆逐艦。でもね………売られたケンカは3倍以上にして消してやらないと、駆逐艦っていうのはやってられないわ!」

 

力強い彼女の言葉に、皆がうんうんと頷く。

駆逐艦娘は普段、いがみ合ったり、ケンカしたりする関係だ。

しかし、いざという時の仲間意識は、他の艦娘達を唸らせる程の力がある。

 

(電は………忘れていたのかもしれないのです………。)

 

その中で渦中の人である電は、艦列に並びながら思う。

第二十五駆逐隊の面々によって、視野の広さを取り戻した事で、彼女は改めて、駆逐艦の素晴らしさを噛みしめる事が出来た。

どんな事情があっても、仲間の為ならば、奮闘出来るその精神。

自分もまた、その誇り高い艦娘の1人なのだと。

 

(罪は消えない………。許される事ではない………。けれど………それでも………今の電を見てくれる人たちはいるから………!)

 

電は拳に力を入れる。

それと同時に、陽炎は拳を突き上げ、叫んだ。

 

「取り戻すわよ!暁を!磯風を!平和を!全てを!!」

『おお!!』

 

仲間達と一緒に、電も拳を高々と突き上げた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

3つの単縦陣で出陣した決戦艦隊は、速力を発揮しどんどん加速していく。

その中で、決戦第一艦隊の旗艦を任された時雨は、電や初春に確認を取っていた。

 

「基本、あの敵艦は電を狙うんだね。」

「電が憎いですからね………。当然と言えば当然ですが………。」

「これこれ、ここまで来てネガティブになるでない。………で、策はあるのかのう?」

緊張をほぐしてくれているのか、敢えて電の頭をわしゃわしゃと撫でながら、初春が時雨に聞いてくる。

それに対して、時雨は2人に笑みを見せた。

 

「1対1の状況を作る事が出来れば、今度は負けないよ。それまでレ級達を抑えればだけれど………。」

「そこは、電に任せてほしいのです。もう………皆さんはやらせません。絶対に!」

「頼りにしてるよ。」

「………な、なのです。」

 

敢えて、初春と同じように電の頭をわしゃわしゃと撫でる事で、時雨もふざけてくる。

電にはそれが、有り難かった。

………かなり恥ずかしかったが。

 

「睦月ちゃんも準備は大丈夫だよね?」

「はい!考えてみれば単純だったのです!今度は睦月、負けないよー!」

 

決戦第二艦隊旗艦を務める睦月は、吹雪と会話をしながら胸を張っていた。

彼女の方も、何かしらの策はあるらしく、自信満々の顔をしている。

 

「問題は、耐える事だね。作戦の成功の可否は………。」

「大丈夫だよ、みんな根性はあるし。それに、陽炎ちゃんは、それを信じてくれて送り出してくれたんだもの。」

「そうにゃ!」

 

笑みを見せる五月雨の言葉に、睦月もうんうんと頷き賛同する。

考え込んでいた吹雪も、同調しながらも、小声で2人に言う。

 

「本当はね………私もあの3人や電ちゃんに付いては責任を感じてた。私が初代白雪ちゃん達の轟沈で錯乱したのが決定打になっちゃったからね………。」

「吹雪ちゃん………。」

「でも、電ちゃんが立ち直ったんだから、私も頑張らないと!」

「………うん、私も。」

 

少なからず初期艦仲間は、電達に負い目を感じていた部分はあった。

しかし、彼女達も前向きに進む時が来ているのだ。

 

「全く………自分勝手よね、みんな。」

「自分勝手でも、進むしかないのが艦娘………いや、人間だからね。」

「漣………そんな知的な事を言うキャラでしたっけ?」

「おいこら、大潮!漣を何だと思ってる!?ここら辺のツッコみは、初期艦の方と変わらないな!?」

 

決戦第三艦隊では、叢雲と漣、そして旗艦である大潮が話をしていた。

いい話をしていた漣は、大潮に鋭いツッコみを入れられて憤慨する。

 

「全く………!姿も昔の初期艦と変わらなくなってるし………!漣達に対する当てつけか!?」

「ああ、すみません。大潮なりの策として今回敢えて、改装前の装備を身に着けているんです。」

 

大潮は、前回戦った時と違い、連装砲と魚雷発射管が備わったアームガードを両腕に付けていた。

更に、頭には煙突帽子を被っていた為、初期艦仲間にしてみれば、余計に初期艦大潮を思い起こさせてしまう恰好になっていたのだ。

 

「ま………その策が外れたら笑ってあげるわ。」

「フォローも入れて貰えると有り難いです。」

「考えてあげる。………さて、無駄口もここまでかしら。」

「………ですね。じゃあ、行きましょうか!」

 

正面から、深海初代時雨とフラッグシップ級ネ級3隻の超長クラスの砲撃が飛んで来る。

戦闘体勢に入った艦娘達と深海棲艦達が、交戦を始めた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

廃船の中は思った以上に入り組んでいた為、磯風と暁は脱出に、想定以上の時間を要する事になった。

何とか外に出た2人は、裏手から回り込み、砲撃や雷撃を繰り返している艦隊達を見る。

 

「暁、状況は分かるか?ここまで遠いと………。」

「不味いわ………押されている。武装の復元が出来る深海棲艦の方に分があるみたい。」

 

暁が目を凝らしながら、状況を確認していく。

基本、艦娘側は魚雷や砲弾の数に限りがある。

だが、深海棲艦側はその定義に当てはまらない。

特に、再生能力を備えた姫クラス等は、自由に武装を蘇らせる事が出来た。

 

「暁………今の君の破損状況は?」

「中破よ。」

「私とあまり変わらんか………。こうなったら背後から強襲して………!」

「逆に足手纏いになるだけよ!?主機だって本調子じゃないんだし!?」

「だが………!?」

「アレ………?」

「ん?」

 

論争に発展しそうになった所で、暁が再度目を凝らす。

その姿に磯風は首を傾げたが、彼女は驚いた顔で言う。

 

「これ………もしかして………。」

 

直後に出た言葉に、磯風も目を見開く事になった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「沈メ!電ッ!」

 

決戦第一艦隊は、中央で、憎悪に燃える深海初代時雨の艦隊と戦っていた。

敵艦達は、電に向けて砲撃を集中させる。

だが………。

 

「そう簡単には………沈まないのです!」

 

電は装甲板を斜めにかざす事で、深海初代時雨やネ級、そしてレ級の砲撃を弾いていた。

 

「ドウナッテイル!?」

 

その電の防御力の強化に、敵艦達は驚きを隠せない。

何故ならば、普通は超長射程のある砲撃等は、駆逐艦の装甲板では防ぎきれないからだ。

だが、電はその砲撃の嵐を、装甲板を壊す事無く弾いていた。

 

「強度ガ違ウノカ!?」

「正解です。今回の海戦の為に、3枚程、装甲板を溶接して貰いました。………電はもう、誰もやらせないのです!」

「ダッタラ、砕ケルマデ撃チマクルダケダ!」

 

攻撃よりも仲間達を守る為に、防御行動を重視する電に対し、深海初代時雨達は、より砲撃を集中させていく。

だが、その間に時雨や初春、第二十五駆逐隊を始めとした面々は、ネ級やレ級に肉薄し、砲撃や雷撃を浴びせていく。

特に、深海初代睦月の艦隊と合わせ、4隻いるレ級の内の1隻は、再生能力を奪われたのか、巻波の砲撃を受けた所で、煙を吹いて沈んでいった。

 

「レ級1隻撃沈!この調子で!」

「やるね、巻波………!みんな、撃ちまくるよ………!」

「ソンナ簡単ニ行クト思ウナ!」

 

初雪の指示に苛立ちながらも、電に砲撃を続けながら深海初代時雨は、憤怒に燃えていた。

 

「大丈夫、当タラナケレバ、ドウトイウ事ハ無イニャシイ!ソノ内ニ魚雷ヤ砲弾ガ尽キテ、自滅スルノガ目ニ見エテイルヨ!」

 

右翼の決戦第二艦隊に対して深海初代睦月は、得意の機動力を活かして一撃離脱を繰り返していた。

こちらは、同じように装甲板を組み合わせた雷が盾役に回っているが、徐々に押されているのは確かである。

磯波に至っては、機銃に値する高射装置を使い始めているほどだ。

しかし、それでも当たらない程、敵艦は速かった。

 

「隙が無いなぁ………。浦波ちゃん、大発は?」

「2艇の戦車付きの大発と共に砲撃していますが、こちらもそう上手くいきません。三日月さんみたいに、もっと扱えればなぁ………。」

「ニャシイ!睦月達ノ勝利ハ目前ナノデス!」

 

とにかくスピードの速い深海初代睦月は、磯波や浦波の変則攻撃を避けながら早くも勝利宣言をする。

いつまでもこの集中力が持つわけでは無い。

だが、防御役の雷を含めて牽制している内に、白露がネ級を1隻落としていた。

 

「雷!1隻おとしたよ!頑張って!」

「こっちはまだ持つから焦らないで!………雷様を怒らせたらどうなるか教えてあげるわ!」

 

装甲板を徐々にボロボロにしながらも、雷は強気の表情で敵艦達を見据えていた。

 

「………何ヲ考エテイルノデスカ?勢イニ任セテ無策デ来タトハ思エナイ。」

「残念だけど、君に語る理由は無いよ。私達も必死なんでね。」

 

一方、左翼で決戦第三艦隊を迎え撃つ深海初代大潮は、小鬼達や浮遊要塞、攻撃機を上手く使いながら、ヴェールヌイを追い込んでいた。

ここでの盾役は彼女だ。

だが、こちらも同じく装甲板は強化しているらしく、そう簡単には崩れない。

その上で、ヴェールヌイや第八駆逐隊の面々は、戦車付きの大発動艇や特型内火艇を使い、敵艦に数で負けないようにしていた。

それでも、総合的な数では深海初代大潮の方が上だ。

だが………。

 

「貴女達ノ目ハ不利ニナッテモ曇ッテハイナイ。何カ切リ札ガアルノデハ?」

「五月蠅いわね、あったらどうだって言うのよ!?」

「撤退シマス。」

「あらあらあら………意外と素直ね。でも………。」

「もう、遅いわ。」

「ッ!?」

 

朝潮が告げた瞬間、深海初代睦月が戦っている右翼の方から………凄まじい量の砲撃が飛来してくる。

その圧倒的な質量は、ネ級とレ級を1隻ずつ沈めるだけでなく、動き回っていた深海初代睦月の主機を破壊し、動きを鈍くする。

 

「ニャ、ニャギャア!?ナンニャ!?」

「アレハ!?」

「………ソノ手ガアリマシタカ!?」

 

敵艦達が驚きを見せる中、右側の遥か向こうで艦隊が………艦隊決戦支援にやって来た6人の艦娘達が、集中的に砲撃を喰らわせている。

金剛、比叡、榛名、霧島、綾波………そして………。

 

「悪いわね………!今、一番元気なの、私なのよ!!」

 

陽炎型ネームシップであり、提督代理を務めている陽炎が援護に駆け付けていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

磯風達が捕まっているという事で、昼に金剛や妙高達を下手に出撃させられなかった分、この夜の海戦で遺憾なく力を発揮する方法を陽炎は考えた。

だが、幾ら高速戦艦や重巡と言っても、夜の駆逐艦のスピードには翻弄されてしまう。

そこで、彼女が考えたのが、艦隊決戦支援という手段だ。

本隊が海戦を繰り広げている間に、気付かれないように側面から近づき、一気に砲撃支援を行ったのだ。

実際、その奇襲はかなりの効果があった。

 

「陽炎も無茶しますね~。提督なのに、前線に出ちゃっていいんですか~?」

「確かに綾波の言う通りデース。提督は佐世保にいないとダメじゃありまセン?」

 

綾波や金剛に問われるが、当の陽炎は、高角砲を連射しながら、頬を膨らませて言う。

 

「私だって駆逐艦です。それに、いい加減に戦力にならないとやってられませんよ!」

「こんな破天荒な提督で、榛名は心配です………。」

「確かに今から敷波とかと交代してもいいんじゃないかしら?」

「榛名さんはともかく、霧島さんには言われたくありません!」

「………って、待ちなさい、陽炎!?それ、どういう意味!?」

「あのー、レ級が飛び出してきましたよ?」

 

軽く口論になりそうになったが、比叡が止める。

確かに1隻レ級が飛び出して来ていた。

それを見て、陽炎がニヤリと笑みを浮かべる。

 

「こういう時の為の陽炎よ!………綾波、金剛さん、比叡さん!雷撃準備!」

 

そう言うと、陽炎は両側4門ずつの8門の魚雷発射管を起動させる。

陽炎のような改二タイプは、魚雷発射管を沢山備えており、しかも次発装填装置がある為、実質16門の魚雷を放つ事が出来る。

魚雷の本数が限られる海戦において、このアドバンテージはかなり大きかった。

 

「綾波、準備出来ました!」

「金剛、OKデース!」

「比叡、いつでも行けます!」

「雷撃支援………開始!!」

 

陽炎の叫びで強力な魚雷が幾つも飛んでいく。

軽く20発以上は超える魚雷を、怒りに任せて突進してきたレ級は躱す事が出来ず、再生能力を発揮する間もなく撃沈する。

 

「こちら榛名です!敵艦、攻撃機を発艦!」

「榛名さん、霧島さん、三式弾用意!対空戦闘で耐えるわよ!」

「了解。………あら、頼もしい援軍も来てくれたみたいね。」

「あ、ホントですね!」

 

霧島の言葉に陽炎が振り向いてみたら、ゆっくりと脱出してきた磯風と暁が合流をしようとしていた。




何か今までで一番カッコいいサブタイトルかもしれないと思った、今日この頃。
やっぱりサブタイトルが良いと、盛り上がりますよね。
ネームシップ達が活躍する中、陽炎もちゃっかり参戦になりました。
実は彼女達のような、次発装填付きの魚雷発射管は面白いと思っています。
雷撃戦に特化した組み合わせですし、構造がメカメカしいですからね。
それ故に、アーケードで採用するには、ギミックが難しそうですが…。
個人的に排熱機構とかがあると、勝手に盛り上がります。
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