艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第103話 ~最後の最後に………~

陽炎や金剛達が支援砲撃をしてくれているお陰で、戦局は大きく変わった。

深海棲艦側からしてみたら、下手にレ級やネ級を突撃させようにも、近づいたら陽炎と綾波、更には無事に合流した磯風と暁に足止めをされる。

その間に金剛型4姉妹に撃ちぬかれてしまっては意味が無い。

 

「フニャア!?時雨チャン!睦月ノ主機ガ、不意打チデ煙ヲ吹イテルンデスケレド~!?」

「この瞬間を、睦月達は待っていたのです!」

 

特に動揺していたのは、深海初代睦月であった。

実は陽炎達が敢えて彼女達の艦隊の方から突撃していったのは、支援砲撃の1発目で、その厄介な主機を破壊して機動力を封じる為だ。

勿論、再生能力を備えている為、時間さえあれば敵艦は主機を復元させられる。

しかし、それを逃すほど、睦月達は甘くは無かった。

 

「磯波ちゃん、浦波ちゃん!足を集中的に狙うよ!」

「分かりました!撃ちます!」

「戦車による砲撃を再開します!」

 

睦月が機銃を、磯波が高射装置を、浦波が戦車の乗った大発による砲撃を一斉に深海初代睦月の脚に当てていく。

実は、再生能力も無敵の代物では無い。

勝手に復元してしまうという事は、意図しなくてもダメージ部位が復元してしまうという事。

つまり、本人が望まなくても、限りある再生能力を消費してしまうという事だ。

 

「アワワワワワワ!?」

「睦月ッ!?ネ級とレ級ヲ送リ込ムヨ!」

「全ての浮遊要塞ヲ盾ニシマス!」

 

咄嗟に深海初代時雨が2隻残っているレ級の内の1隻と、最後のネ級を深海初代睦月の艦隊に送り込む。

深海初代大潮も、浮遊要塞を全て飛ばしてくるが、そこにまた陽炎達の援護砲撃が飛んで来る。

 

「レガアアアアアア!?」

「ボ、防御ガ間ニ合ワナイヨ!?」

 

強烈過ぎる金剛型の砲撃を、まともに受けたレ級と浮遊要塞の一部が爆散し、ネ級は怯んでしまう。

その隙を見計らって、吹雪と五月雨が突撃した。

 

「私達が守るんだから!」

「だから………落とすよ!」

 

先陣を切った吹雪にネ級は砲門を向けるが、彼女は即座に取舵を取って左にカーブを切り、砲撃を躱す。

派手に水柱が上がった中から五月雨が飛び出し、二丁の連装砲を集中的に顔面に叩き込んでいく。

更に、顎を思いっきり蹴り上げた所に、後方から吹雪が連装砲を後頭部に何度も叩き込んで、再生能力持ちのネ級を、あっという間に沈めていく。

 

「フ、吹雪チャンも五月雨チャンモ、昔ト練度ガ違ウ!?」

「睦月達も忘れないで欲しいにゃ!」

 

完全に動揺した深海初代睦月は、とにかく主砲を連射して接近を防ごうとするが、苦し紛れの砲撃は、雷が強化した装甲板で全部弾いてしまう。

何とか軸をずらして砲撃をするが、その後ろから白露が飛び出して、尚も敵艦を守ろうとする浮遊要塞を主砲で破壊。

その上で、磯波と浦波の援護を受けながら、睦月が突撃してくる。

 

「モウ、モウ………!?睦月ハ何デマタ、沈メラレルノ!?」

「………今一度、じっくりと思い出すにゃ。最初に沈められた瞬間を!電ちゃんの立場に立って!!」

「エ………?」

 

睦月の叫びの意味に茫然とした深海初代睦月に、彼女の単装砲が連続で撃ち込まれる。

足に、腕に、艤装に………撃ちぬかれた所は、もう再生しなかった。

 

「……………。」

 

海面に仰向けに倒れ込んだ深海初代睦月は、空を見上げていた。

相変わらず空には雪が舞っており、晴れ間は見えない。

そんな中で、睦月は彼女の片腕を掴み、引っ張り始めた。

 

「ドコニ………連レテ行クノ?」

「この海戦に赴く前に、約束した事があるにゃしい。その約束を………果たすのです。」

 

睦月はそう言うと、未だ海戦中の他の艦娘達の様子を見ていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「朝潮姉さんから、貴女の事はこっそり聞きました。………何故、戦うのですか?」

「………デハ、逆ニ聞キマス。大潮達ニ出来ル事ハ、他ニアッタノデスカ?」

 

一方で、大潮は深海初代大潮に、戦う理由を聞いていた。

深海棲艦でありながら、狂気に囚われず、仲間2隻の暴走を抑えていた元艦娘。

その存在理由を考えると、大潮は悲しい物を覚えた。

 

「簡単ニ、分カリ合エルト思ッタノナラバ、甘イデス。深海棲艦ニサレタ悔恨ハ、ソンナ軽イモノデハ無イ。」

「そうですか………。」

 

大潮は溜息を付くと、後ろの艦隊の仲間達に目線を送り、宣言する。

 

「では………せめてもの手向けで、大潮達がケリを付けます。もう、貴女が苦しまなくて済むように………!」

「ナラバ、ヤッテ見テ下サイ!勝ツノハ、大潮デス!」

 

深海初代大潮は、騎馬を組んだ小鬼達に一斉突撃を命じる。

だが、それに対して大潮達は、個々に蛇行しながら主機を加速させる。

 

「叢雲に聞きました!槍で騎馬を崩せるのならば、もっと簡単な手段があったと!」

「簡単ナ手段?」

「それは………!」

「蹴りよ!」

「ナ!?」

 

敵艦は驚かされる。

朝潮型で構成された第八駆逐隊は、それぞれ小鬼達の群れに突進すると、その騎馬を思いっきり蹴り飛ばした。

駆逐艦とはいえ、最大まで加速した主機による蹴りは、更に小さな小鬼達にとっては脅威だ。

 

「何ていうか………こんなに軽く飛んでいくと気持ちいいわよね。」

「少々、みっともない気がするけれどね。」

「それでも、勝つ為ならば………!」

 

それぞれ思い思いの蹴り方で、砲台小鬼やPT小鬼の騎馬を崩していく。

後は、崩れた所で主砲や機銃を連射すれば、再生能力があっても簡単に沈んでいった。

 

「仕方アリマセン!艦載機デ………!」

「それも封じさせて貰います!」

 

大潮はそう叫ぶと、被っていた煙突帽子を何と深海初代大潮に向けて投げ飛ばした。

 

「一体何………ッ!?」

 

弧を描いて飛んで来るその帽子の中に、何かが詰め込まれている事に気付いた敵艦は、慌てて連装砲で帽子を破壊する。

しかし、その途端………中で割れた液体の入った瓶………火炎瓶が炎を噴き、濁流となって深海初代大潮に襲い掛かった。

 

「クッ!?コレデハ、艦載機モ魚雷モ………!?ウワァ!?」

 

膝に取り付けていた魚雷が、纏わりついた炎で誘爆した事もあり、深海初代大潮の再生能力もゴリゴリと削れて行く。

何とか小鬼達に取り払うように指示を出すが、叢雲と漣が妨害していく。

 

「残念だけど、やらせないわよ!」

「漣達は、しつこいんだから!」

 

どうしようもなくなった敵艦は、目の前に大潮が迫るのを見て、咄嗟に連装砲を撃ち出す。

だが、今回の大潮は、攻防一体のアームガードを備えていた。

右腕の連装砲を備えたガードで砲弾を弾くと、左腕の魚雷発射管を備えたガードを向けた。

 

「大潮の名は………私が受け継ぎます!」

 

トドメの4連装の魚雷を受けて、深海初代大潮は倒れる。

 

「………大潮ヲ、ドウスルツモリデスカ?」

「電が………話があるみたいですので。」

「電ガ………?」

 

深海初代大潮が首を傾げる中、睦月と同じように、大潮は敵艦の腕を引っ張っていった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「睦月!?大潮!?ヨクモ、電ーーーッ!!」

 

仲間達が次々と倒れた事で、深海初代時雨の憎悪は更に深まる。

彼女は、電に次々と砲撃を叩き込もうとするが、3枚重ねにした装甲板によって全て弾かれてしまう。

その間に、第二十五駆逐隊を始めとした他の仲間達は、最後のレ級を仕留めに掛かる。

 

「レレーーー!!」

 

味方が少なくなった事で、レ級は海面い這いつくばり尻尾の口から魚雷を撃とうとする。

しかし、その巨大な口が初雪の砲撃を受けて爆発を起こす。

 

「集中砲火………!」

「やらせて貰います!」

「如月を舐めたら痛いわよ!」

「やっちゃる!」

「レギャアアアアアアア!?」

 

全ての武装がある尻尾の再生に時間を掛けている内に、初雪、春風、如月、巻波の砲撃が至る所に炸裂し、レ級も耐え切れずに沈んでいく。

これで、残りは深海初代時雨のみ。

 

「何故ダ!?何故負ケル!?僕達ハ………!?」

「苦しんだのは………君達だけじゃないんだ!!」

「黙レ!!」

 

電や初春と一緒に攻撃を繰り出していた時雨に対して、敵艦は逆上する。

彼女に向けて左の大型単装砲を向けるが、砲弾が放たれる前に爆発を起こす。

 

「シマッタ!?」

「同じミスをするとは相当焦っているのう………。わらわがいる時点で警戒すべきじゃろう?」

 

初春の鋼鉄製の扇子を砲門の中に投げ込まれた事で、時雨の大型単装砲は機能を失う。

勿論、再生しようとはするが、扇子の破片を巻き込んでしまう為に、使い物にならなくなっていた。

 

「ダ、ダッタラ………!?」

「そこだぁっ!!」

 

咄嗟に深海初代時雨は、膝に備えられた魚雷による雷撃を喰らわせようとする。

しかし、その瞬間に時雨が、両腕に構えた大型単装砲に備えられた機銃を放つ。

機銃は魚雷の信管を作動させ、敵艦を自爆させた。

 

「クッ………マダァッ!!」

 

再生能力が消費されていく中で、それでも闘争心を失わない深海初代時雨は、手持ち用の大型単装砲を握り時雨に撃とうとする。

だが、その砲撃は割って入った電に弾かれる。

 

「電ーーーッ!?」

「だから、やらせないと言ったのです!!」

「いい加減に………終わらせるよ!」

「はい!」

 

時雨と共に、主砲を嘗ての仲間に向けた電は、今度こそ躊躇わなかった。

大切な物を取り戻す為に………こんな自分を信頼してくれる者達の為に………。

電は、歯を食いしばり、撃ちまくった。

 

「グァァァァァァァァッ!?」

 

砲撃の雨を受けた事で、深海初代時雨は絶叫する。

その悲鳴は電の耳の中でこだましたが、塞ぐ真似はしなかった。

やがて敵艦は、全ての感情が抜けきったような顔で倒れた。

ダメージを受けた部位はもう回復しなかった。

 

「終ワッタノ………?」

「………いえ、まだなのです。」

 

静かに電が呟く中で、睦月と大潮に運ばれて、深海初代睦月と深海初代大潮も連れてこられる。

3人は、彼女の前に綺麗に並べられた。

支援砲撃を行っていた、陽炎や磯風、暁も合流してくる。

 

「電………。」

「貴女………。」

「磯風ちゃん、暁ちゃん………ごめんなさい。電のせいで、怖い思いをさせてしまって。」

 

深く頭を下げる電の姿を見て、磯風も暁も首を横に振る。

 

「別にいいんだ。無事に………海戦が終わったんだから。」

「でも電………本当に、何をする気なの?」

「……………。」

 

電は、呆然とする3隻の深海棲艦を見ながら、静かに右肩の連装砲を向けた。

その姿を認識した深海初代時雨が、呟く。

 

「マタ………僕ラヲ、殺スンダネ。」

 

その敵艦の言葉に、電は只………感情を押し殺して頷いた。

 

「この一連の騒動は、電によって起こされた物です。だから………最後の決着は電がつけたいのです。」

「いいのか………それで?」

 

思わず磯風が声を掛けるが、電は敢えて寂しげに笑ってみせた。

 

「電は………やっぱり我儘で傲慢なのです。大切な仲間だったからこそ………トドメを誰にも譲りたく無いのです。」

 

そして、電は連装砲を3人に向けた。

後は、頭の中で念じれば、艤装を伝わり引導を渡す事が出来るだろう。

10年前、過ちを犯してしまった時と同様に………。

 

「……………。」

 

磯風は、何も言えなかった。

同じ深海棲艦化した艦娘が相手とはいえ、初雪の時とは状況が違う。

ここは、電に任せるしかなかった。

彼女は、3隻の深海棲艦に話しかける。

 

「最後に………最後に何か言いたい事がありますか?呪詛の言葉でも、怨嗟の言葉でも、何でもぶつけて下さい。」

 

多分、恨みの言葉を受けようと思ったのだろう。

電の言葉に対し、最初に喋ったのは………深海初代睦月だった。

 

「………ごめんね。」

 

不思議な事に、その言葉は深海棲艦の発する海の底から響き渡るような声では無かった。

深海初代睦月は………初期艦睦月は、涙を流しながら呟くように言った。

 

「ごめんね………電ちゃん。睦月が怒りに任せて砲門を向けたせいで………10年間、ずっと苦しめる事になって………本当に………ごめんなさい………。」

 

最後の最後に呟かれた言葉は………恨みでも呪いでもなく………10年越しの謝罪であった。




長かった佐世保の海戦…決着編です。
只、もうちょっとだけこの話は続きます。
最後の初期艦睦月の言葉の真意は、果たして何か?
そして、それに対して電達の下す決断はどうなるのか?
今回の話は、全体的に悲しいものでしたが、有り得ないと言い切れないのがまた…。
歪んだ艦娘の歴史が起こした悲劇は、今を生きる彼女達を支えている。
これは、いつまで経っても、皆が忘れてはいけない事なのだと思います。
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