艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第15話 ~的中する悪い予感~

朧を部屋に送った後でベッドに休ませて、眠った事を確認した上で部屋を出た岸波と舞風の2人は、第一士官次室(ガンルーム)で夕食を取る事にした。

しかし、そこで隣のテーブルに見知った6人の艦娘が、真剣な顔で話し合いをしているのを確認する。

朝潮・島風・望月・山風………そして、今は駆逐艦寮でお世話になっている海防艦の御蔵・屋代であった。

朝潮は命令書らしき物を配ると、色々と作戦内容に付いて説明を始める。

どうやら、宿毛湾泊地復興を担う作業船の護衛任務であるらしく、初めての命令書の内容に、海防艦の2人はかなり緊張している様子であった。

 

「任務開始は早朝。特に望月さん、絶対に寝坊しないで下さい。」

「はいはーい。じゃ、今日は早めに寝るとしますかねー。」

「御蔵と屋代も緊張していると思うけれど、訓練通りにやればいいだけだから。」

「わ、分かりました。」

「頑張ります!」

「じゃあ、解散!」

 

朝潮の言葉に艦娘達は、一斉に立ち上がり部屋へと戻る。

その様子を確認した朝潮は、軽く息を吐きもう一度命令書を見つめる。

 

「朝潮先輩、あの子達を連れて任務に出るんですか?」

「あ、岸波と舞風?………ええ、司令官はともかく上の偉い人達がもう待てないみたいで。」

「そうなんですか。朝潮先輩も大変な任務を受けましたね。」

「これは、旗艦の宿命だから。」

「でも、朝潮さん。こう言ったら何ですけれど、軍船と海防艦を同時に守らないといけないのは大変じゃないですか?」

「上手くみんなと協力して対処していくわ。心配してくれてありがとう。あの子達の無事を祈ってあげて。」

 

それだけを言うと、朝潮は去って行く。

岸波はその後ろ姿を見ながら考え込むと、舞風に言う。

 

「何もないといいのだけれど………。」

「岸波って朧さんの事といい、結構心配性だよね。………まあ、こないだ近くに萩風………駆逐水鬼が出たから分からない事も無いけど。」

「後で大潮先輩に、もうちょっと詳しい事を聞いておこうかしら。」

 

岸波達は、そう話しながら静かに食事を続けた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

翌日の天候は、雨天。

その中を、朝潮達は抜錨していく。

資材を宿毛湾泊地跡に運ぶ軍の作業船は、既に横須賀に到着しており、いつでも護衛できる状態であった。

 

「複縦陣。作業船を囲むように進んでいくわ。」

「何か気を付ける事はありますか?」

「潜水艦の潜望鏡に気を付けて。また、速力を出し過ぎない事。順調に作業すれば、8割の力で往復しても夜までには横須賀に帰れるわ。御蔵と屋代には途中、休憩を多めに作るからしっかり休んでね。」

「分かりました。」

 

御蔵の質問に、朝潮は的確に答えていく。

陣形は左前から朝潮・島風、御蔵・屋代、望月・山風だ。

波は高かったが、横須賀で高波の中の訓練もこなしていた為、海防艦達が転覆する事は無かった。

仮に何かあっても、後ろの望月達が対処できるように事前に話し合っている。

 

「各艦、何か問題はある?」

「こちら望月、昼ご飯の内容を船長に聞いてよ?」

「………望月さん、ふざけてる場合じゃないでしょ?」

「ん~?固まってたら失敗するよ~?もっと肩の力を抜かないと。」

「望月はリラックスしすぎ………。朝潮、後方は異常無いから………。」

 

作業船の中にいる船長との通信は、旗艦である朝潮が行う事になっている。

その為、隊内通信による連絡と合わせて、朝潮の作業量は他の艦娘に比べて格段に多かった。

全てを的確にこなす事ができるのは、第八駆逐隊の旗艦だからだろうか。

やがて、時間が経つにつれ、作業船と共に艦隊は西南西へと進んでいく。

 

「これは………。」

 

宿毛湾泊地跡に、半分位近づいて来た頃だろうか?

周りに、過去に深海棲艦に沈められた船の残骸が見えてくる。

思わず御蔵や屋代が身震いをする中で、突如朝潮が隊列から離れていく。

 

「あ、朝潮さん!?」

「ソナーに反応有り!潜水艦カ級が1隻!私が対処するわ!」

 

朝潮は敢えて直線では無く、作業船や御蔵に流れ弾の魚雷が当たらないように、面舵を取り右から回り込むように動く。

すると、水中からカ級がその魚雷を朝潮に向けて発射。

しかし、動きを完全に呼んでいた朝潮は魚雷の左側を迂回して敵潜水艦の頭上を通過すると、背中の艤装から爆雷を投下した。

 

「この海域から出ていけ!」

 

撒かれた爆雷はカ級に炸裂し、髪の毛や潜望鏡が浮かんでくる。

朝潮は尚も敵艦の様子を確認するが、どうやら他にはいないらしい。

一安心した朝潮は、作業船の傍まで戻ると各艦と船長に状況報告をする。

 

「少し船速を上げて貰うようにお願いしたわ。この海域は早く通り過ぎた方がいいわね。御蔵、屋代、付いてこれる?」

「あ………は、はい!」

「御蔵姉さん、どうしたの?」

 

少し呆けていた御蔵を、反対側の屋代が無線で心配する。

どうやら先程の、隙の無い朝潮の海戦が衝撃的であったらしい。

確かに、対潜水艦に特化した海防艦が見れば、改めて憧れを抱くのも無理はないだろう。

 

「どうすれば、あんな感じになれるでしょうか?」

「こればかりは慣れと練度向上ね。………とにかく、周囲の警戒は怠らないで。繰り返すけれど、少し飛ばすわよ。」

「はい!」

 

こうして作業船は船速を上げ、宿毛湾泊地跡へと到着する事になる。

そこは、過去の襲撃で崩壊しており、辺り一面に折れて焼け焦げた鉄骨等が散乱していた。

 

「こんな所が本土にあったなんて………。」

 

屋代の素直な呟きに、他の5人の艦娘達もいたたまれない想いを抱く。

復興作業は深海棲艦の妨害や政府の投資の出し惜しみもあって中々進まず、まだ資材を運搬している段階であった。

 

「ここに来るのは初めてじゃないけど………、やっぱり………何か………怖い………。」

「しまかぜも気味悪いかも………。」

「そりゃそうだよ、泊地の墓とも言われてるからね~。」

 

各々が感想を告げる中、資材の搬入作業が始まる。

朝潮は、船長に告げて簡単ではあるが6人分の昼飯を用意して貰った。

停泊している作業船は無防備なので、見張りも兼ねて洋上で食事を取る。

そして、代わる代わる船内で手洗い等を済ませると、帰路に付く作業船の周りに再び複縦陣に並ぶ。

今度は右前から朝潮・島風、御蔵・屋代、望月・山風であった。

 

帰りは資材を置いたからなのか、船速はそれなりに上げる事が出来た。

朝潮は、あの船の残骸の跡地を通り過ぎる所で、また増速するように船長と艦娘達に頼んだ。

 

「朝潮、嫌な予感でもするの?」

「実際に潜水艦がいたからね。………帰りに待ち伏せがあっても不思議では無いわ。」

「望月じゃないけど石橋を叩いて渡る癖、あんまりよくないよ?」

「これ位、慎重であった方が旗艦には向いているのよ。」

 

どちらかといえばマイペースな島風に対し、朝潮は真面目に答えると御蔵や屋代を気にする。

宿毛湾泊地跡に付く頃は若干疲れも見られたが、昼休憩を取った事で再び調子を取り戻していた。

朝潮は、現時点では問題ないと判断すると、再び索敵に集中し始める。

そして、再び船の残骸が残る区域を通過する事になる。

 

「各艦、監視を厳に。」

 

船長にお願いして船速を上げて貰うと、一気に通過しようとする。

何も起きない事を願った。

だが………。

 

「こちら望月。………右後方に敵偵察機確認!迎撃する!」

『!?』

 

望月の言われた方角を見てみると、一つ目の鬼火のような深海棲艦の偵察機がこちらに向かって飛行してきていた。

すぐさま望月が反転して、器用に手持ちの単装砲を高々と掲げて砲撃して、一撃で撃ち落とす。

 

「望月………意外と上手い?」

「意外とは何だよ~?これでも睦月型だから結構経験豊富なんだぞ~?………でも、ちょーっと不味いかな、これは。」

「どういう事………?」

 

問いかけて来る山風に対し、望月はのんびりとした声で………しかし、目は笑っていなかった。

 

「偵察機………いつもの羽虫じゃなくて、たこ焼きだった。」

「え?え?」

「た、たこ焼き………いえ、鬼火だとどうなるんですか!?」

 

一転して低い声で呟き始めた望月は、戸惑う御蔵と屋代に説明する。

 

「一般的な深海棲艦は羽虫のような偵察機や攻撃機を使うんだ。だけど、強力な………それこそ姫クラスや鬼クラスになると、あの面倒なたこ焼きのような物を使う事が多いんだよ。」

「じゃ、じゃあ………!?」

「朝潮、意見具申。………作業船の船速最大。あたし達は船の後方に回った方がいい。」

「………採用します。各艦、船の後方のエンジン部分に回って!」

 

嫌な予感がした朝潮の素早い指示で、作業船はエンジンを全開にしてスクリューを回す。

朝潮達はその波に呑まれないように注意しながら、船の後方に移動する。

すると、その時であった。

 

「………後方!大量の攻撃機確認!朝潮、来るよ!」

「な!?」

 

振り返った朝潮達は、驚愕する。

明らかに10機を超える数の敵爆撃機が、こちらに迫ってきたからだ。

偵察機を望月が撃ち落としたからか、明確な目標は定まっていないようでバラバラに飛行していたが、朝潮達を視認できた攻撃機が次々と迫って来る。

 

「輪形陣!船は絶対にやらせないで!!」

「無茶言わないでよ!?あたし達が先に沈むよ!?」

「無茶でも何でもやるしかないのよ!!」

 

不利な状況に思わず山風が叫ぶが、朝潮がそれ以上の大声で黙らせると複縦陣から輪形陣に切り替える。

速力の遅い御蔵と屋代が両翼のままで、前から朝潮、島風、山風、望月だ。

とにかく全員、爆弾を落とそうとして来る一つ目の鬼火に対し、機銃や主砲を撃ちまくる。

望月は睦月型だけあってかなりのベテランであるし、右腕に盾となる装甲版を備えているので対処しやすかった。

朝潮と山風は改二艦であるので、火力も実力もしっかりしたものを持っていた。

島風は速力が自慢な上に、連装砲ちゃんの対空迎撃能力が高かった。

だが、御蔵と屋代は………。

 

「きゃあっ!?」

「くぅっ!?」

 

海防艦娘達から上がった悲鳴を聞いて朝潮はハッとする。

必死に機銃や単装砲で敵攻撃機の爆撃を回避しようとしたが、十分に対処しきれなかったのだろう。

幾つかの爆発を至近距離で受けてしまい、艤装や制服が焼け焦げ、単装砲は砲身が折れ曲がりボロボロになっている。

爆雷に至っては、誘爆を防ぐ為に破棄している状態だ。

 

「御蔵、屋代、しっかりして!」

「だ、大丈夫です………。」

「これ位は………。」

 

元々の耐久力もあって、明らかに海戦継続が難しい大破状態に陥った2人を見て、朝潮は内心焦って来る。

しかも、そこで追い打ちのように望月からの警告が告げられる。

 

「こちら望月!今度は後方に巨大な深海棲艦の影有り!」

「何が………来るの!?」

 

思わず弱気になり始めた山風を始め、艦娘達は見た。

海の上を、巨大な深海棲艦独特の形をした顎のような玉座に腰かけて、文字通り疾走してくる長い白髪の深海棲艦の姿を。

砲塔と飛行甲板が備え付けてあるその姿に、朝潮達は心当たりがあった。

 

「空母棲鬼………!?」

「何度デモ………何度デモ沈メテアゲル………。」

 

空母棲鬼は不気味な笑みを見せると、右手を回転させて鬼火のような攻撃機を複数出現させる。

そして………。

 

「イケ!」

 

その深海から響くような声と共に、再び攻撃機を発艦させた。

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