艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第40話 ~回想・愉快な家族~

「成程なぁ、夕雲もリンガであきつ丸から陽炎さん達の話を聞いていたんだな。」

「流石に夕雲は、朝霜達みたいに喰いついては来ていないでありますが………。」

「でも、やっぱり陽炎さん達の事は気になったから、沢山話を聞かせて貰ったわ。」

「いいなぁ~、あたい達も早く知りたいぞ。………な、岸波。」

「ええ。あの第十四駆逐隊がどうやって強くなっていったかは気になるもの。」

 

夕雲が来た事で、ヘビの存在に混乱している沖波はともかく、岸波や長波、朝霜は和気あいあいと会話をする。

特に、夕雲と長波と朝霜は、同期だけあってかなり仲が良い感じであった。

 

「本当はリンガに移った時に、もうちょっと早く手紙を送る事が出来れば良かったんだけど………急な転籍だった上に、最近は出撃が多くて。ゴメンね。」

「ん?リンガは、深海棲艦の活動が活発なのか?」

「第十四駆逐隊が来た頃に比べればまだマシだが、活動が活性化しているのは事実だ。その為に第三十一駆逐隊を呼んだのだからな。」

 

朝霜の疑問に答えてくれたのは、提督であった。

どうやら、纏まった休暇を取れない位には、忙しくなってきたらしい。

 

「今も出撃中の艦娘はいる。それに、他にも何処かの駆逐隊等を呼べないか、鎮守府に呼び掛けている所だ。………怖気づいたか?」

「いえ、むしろ燃える所です。私達はその為に頼りにされているのだって、分かったのですから。………って、沖姉。いい加減、大丈夫?」

「だ、大丈夫!そうですね………この泊地をやらせるわけにはいきませんから!」

「頼もしい限りだ。ならば、遠慮なく働いてもらうぞ。」

『はい!』

 

提督の発言を受けて、岸波を始め、第三十一駆逐隊の艦娘達は勇ましく答礼をした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「第十四駆逐隊に憧れていた岸波が、その思い出の地に派遣されるっていうのは、何か運命を感じるよね~。」

「それに………、話を聞いている限りだと………、岸波は、本当に陽炎ラブだったのかなって………。」

「陽炎ラブってねぇ………。まあ、否定はしないけれど。」

 

工廠(こうしょう)から金属を叩く音が聞こえる中、望月や山風から出た言葉を受けて、少々恥ずかしそうに、頭をかきながら答える岸波。

あの頃の自分の陽炎達への憧れは、振り返れば、いささか過剰だとも思った。

 

「でも、あそこには陽炎先輩以外にも、頼もしい艦娘達がいたわ。そして、その艦娘達とも、あの頃は仲良く出来ていたっけ………。」

 

岸波はそう言うと、再び過去話を続ける。

仲間………いや、「家族」達と楽しく過ごした頃の思い出を。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

第三十一駆逐隊が転籍して数週間が経った時。

久々に、リンガにいる全員で夕食を取る事が出来るようになった為(と言っても電探で常に気配を察知するために艤装を装備した状態であったが)、賑やかな夕食の準備に入る事になった。

ところが………。

 

「へ、ヘビのカレーーー!?」

「おいおい、沖波。何情けない悲鳴上げてんだよ。もう散々慣れたんじゃないのか?」

「うう………でも、あの肉は何度食べても慣れない………。」

「ごめんなさいね。本土から豚や鳥の肉が来れば、まだいいんだけど………。」

「ほら、白雪も困ってるだろ?観念して食べろ。」

「はい………。」

 

どんよりとしたオーラを纏う沖波に謝りながら、ヘビの肉が入ったカレーの鍋を運んで来るのは、茶髪のセミロングを後ろで2つ括りにした駆逐艦娘である。

彼女は吹雪型2番艦の白雪。

大人しそうな外見ではあるが、こう見えてベテランの艦娘の1人だ。

特に対空砲火には拘りがあるのか、重量が増えてでも、手持ちタイプの12cm30連装噴進砲を肩から紐で括りつけて、しかも艦隊行動に支障をきたさない器用さを持ち合わせている。

 

「白雪先輩………いつも思うんですが、どうして重い噴進砲を持ち合わせているんですか?」

「主砲だけじゃ、上手く弾幕を張る事が出来ないから。」

「いやいや………。連装高角砲とかならばともかく、普通の主砲で弾幕を張れる物なんか?」

 

対空砲火に特化している朝霜が腕を組んで疑問を抱くが、白雪は特に気にした様子もなく、カレーの鍋をテーブルの上に置く。

その鍋から、ご飯の乗った皿を持った長身の艦娘が、カレーをすくって分けていく。

腰まである黒髪のロングヘアーを、後頭部に一房だけ白いリボンでポニーテール状にまとめており、前髪は左右に分けてあるのは、雲龍型3番艦の葛城だ。

明るくサバサバとした性格の空母で、瑞鶴に憧れを持っているらしい。

海戦では、式神の付いたボウガンで艦載機を飛ばすのが特徴的であった。

 

「ま、私も最初は戸惑ったけど、慣れたら意外と美味しいわ。特に白雪のカレーは絶品なんだから文句言わない。」

「うう………私は、葛城さんみたいに度胸は無いんです………。」

 

とはいえ、折角の食事だから残さず食べなければならず、沖波はグッと堪えてヘビの肉入りカレーを頬張っていく。

大変だろうな………と思いながら、岸波は魚介類やサラダ等もバランスよく取って行って、偏食が無いようにしていく。

しばらくの間、提督やあきつ丸、夕雲も交えながら談笑していくが、その中で只1人黙っている艦娘を見る。

薄紫色の髪をもみ上げの長いボブヘアーにした艦娘は、睦月型3番艦の弥生であった。

 

「……………。」

「弥生、どうしたのでありますか?まさか、沖波と同じくヘビカレーがダメだとか?」

「別に………苦手じゃない………。弥生、怒ってないよ………只………。」

「弥生さん、気にしなくて大丈夫ですよ?貴女のペースで話して会話に参加して下さい。」

「あ、ありがとう………。」

 

あきつ丸や夕雲が気にしてくれた事で、思わず赤くなって俯く弥生。

どうやらコミュニケーションが苦手であるらしく、岸波達とも中々波長が合いにくい艦娘であった。

それでも、海戦では闘争心を発揮する、睦月型の中でも勇猛果敢な少女である。

 

「弥生………、あまり盛り上げられなくて………ゴメン。睦月型だから海戦でも脆いし………。」

「あ、気にしなくて大丈夫ですよ。弥生さんの海戦での闘争心は、私が見習う部分も多いですから。」

「そ、そう………?」

 

カレーを何とか完食した沖波が、弥生に話しかける。

確かに気弱な沖波からしてみたら、勇猛な弥生は良い先生なのかもしれない。

 

「確かに勉強になる部分も多いよな。あたいも、白雪の対空砲火の器用さにはビックリだったぜ。」

「そう言って貰えると、私も嬉しいわ。」

 

朝霜は、主砲や噴進砲を駆使して敵の攻撃機を撃ち落としていく白雪の姿が、印象的であったらしい。

訓練の際は、何かしら参考に出来ないか、聞いている事もあった。

 

「ねえ、葛城は!?私は何が魅力的!?」

「いや………葛城さんは駆逐艦じゃないですし。」

「そんなぁ!?空母でも学べる所があるでしょ!?」

「葛城先輩は、焦り過ぎ………?」

「ああ、それは言えるかも。」

「ちょっと!?岸波!長波!」

 

頬を膨らませて怒る葛城を見て、皆が笑う。

ひとしきり艦娘達の笑顔を見た所で、提督が話を始めた。

 

「ひとまず、この度はご苦労だった。だが、日に日に深海棲艦の圧力が強まっているのは事実だ。だから、本土からもう1つ駆逐隊を要請する事が出来た。」

「そうなんですか?じゃあ、また3、4人程、新たな艦娘が来るんですね。」

「ああ。明日の昼頃到着する予定だから、皆で挨拶してくれ。」

 

そう言うと提督は、カレーのおかわりがいるか聞いてみる。

沖波以外は、手を上げて希望した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「白雪さん、リンガにいるんだね。しかも、私以上に噴進砲使いこなしている感じだし………。」

「弥生がいるのも驚きだな~。意外とみんなから愛されてるじゃん。」

 

リンガにいる同型艦の存在を知った事で、薄雲や望月が思わず反応する。

岸波は頷くと、ハッキリと言う。

 

「いい家族だったわ。あきつ丸も、白雪先輩も、葛城先輩も、弥生先輩も。私が勝手に縁を切るまでは優しくしてくれたんだもの。夕姉に至っては、怠惰艦になっている間も、世話を焼こうとしてくれていたし………。」

「本当に岸波ちゃんにとっては、幸せな時間だったんだね。………で、ここで新しく艦娘が来たって話だけれど。」

「それが、第十七駆逐隊………磯風達の艦隊だったのよ。」

 

朧の疑問に答えながら、岸波は、第十七駆逐隊の事を思い出す。

彼女達もまた、家族の一員だった時間の中での出来事を。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「第十七駆逐隊!陽炎型12番艦、磯風、推参!司令、共に進もう。」

 

皆でカレーを食べた翌日の昼、腰まである黒髪ロングのストレートヘアと深紅の瞳が特徴的な艦娘………磯風が、リンガで着任の挨拶をする。

岸波が磯風に対し最初に受けた印象は、その武人肌の佇まいもそうだが、長身で体格が良く、異性も同性も惹きつけそうだな………という所である。

また、背中に装備した艤装は、陽炎型の中でもかなりの重武装である事にも驚かされた。

黒に赤のラインを基調とした横に長い艤装には、左側に大型のアームが伸びており、その中に大量の爆雷や4連装の魚雷の魚雷が備え付けられている。

また、秋月型が愛用している「長10cm砲ちゃん」と呼ばれる対空砲と4連装の魚雷も右側に埋め込んでおり、右手にはそれを模した連装高角砲を、左手には対空特化用のピストル型の連装機銃を持っていた。

 

「第三十一駆逐隊旗艦の岸波です。随分………大型の艤装ですね………。」

「ほう、君が………。そうだな、この通り体格に恵まれているから比較的大型の艤装でも扱いやすいのは利点だと思っている。」

「自分を分析して装備を選べるのは、素晴らしいと思います。」

「対空砲火ならば、任せてくれ。………後、私達は呼び捨てで構わないぞ?下手に気を遣わなくていい。」

「そう………ありがとう、磯風。」

 

仲間を紹介しよう………と言って次に出て来たのは、青髪の髪を両サイドで団子状に纏めた大胆に制服をノースリーブにした艦娘。

 

「陽炎型11番艦の浦風じゃ、頼りにしてくれ。」

 

何処か母性が強そうな声音を持つ艦娘………浦風は、これまた大型の艤装を付けていた。

黒を基調に赤のラインが基軸であるのは磯風と一緒だが、こちらは大量の爆雷が備え付けられている。

魚雷発射管が太ももに移動した代わりに、連装高角砲が1つ乗っている。

手持ちの連装高角砲は、左手の方が磯風と同じ物である、対空に特化したピストル型の機銃になっていた。

 

「変わった改二艦だな。あたいと同じ対空特化か?」

「いや、改二じゃないんじゃ。磯風が「乙改」、うちが「丁改」っていう、改二前の改装なんじゃ。乙改は、火力をちいと犠牲にした代わりに、対潜水にも特化させとる。」

「何かややこしいけど、変わった改造もあるんだなー。とにかく、宜しくな!」

 

その次に前に出て来たのは、磯風に似たような艤装を縦に背負った、綺麗な銀髪を金の髪留めで左右非対称にしているスタイルのいい艦娘。

 

「陽炎型13番艦の浜風です。宜しくお願いします。ちなみに私は、乙改です。」

 

浜風の艤装は、磯風と違い大型のアームで接続されているわけでは無いので、魚雷発射管は浦風と同じく太ももに括りつけている。

しかし、背中側に爆雷と長10cm砲ちゃんが埋め込まれており、右手には長10cm砲ちゃんを模した連装高角砲、左手には機銃があった。

いずれにしろ、大型の艤装である事には変わらなかった。

 

「凄い………ここまで色々と武装を積んでいると、色んな状況に対応できそうだね。」

「そう言って貰えると有り難いです。第十七駆逐隊は、陽炎型の中でも、状況に応じた武装の選択が可能である事が自慢なのですよ。」

「メガネも状況に応じて色々と変えた方がいいような物なのかな?」

「え、ええ………そうかもしれないですね?」

 

最後に出て来たのは、墨色のおかっぱ頭に白いカチューシャ、金色の目を持つ若干(他の3人と比べて)小柄な艦娘。

 

「よっ!陽炎型14番艦の谷風さんだよー。丁改で対空と対潜特化だねー!」

 

浦風が艤装を斜めに背負っているのならば、谷風は浜風のように艤装を縦に背負っているのが特徴。

大量の爆雷と太ももの魚雷、そして艤装の連装対空砲と、右手の連装対空砲、そして左手のピストル型の機銃が武器だ。

第十七駆逐隊の4人は、磯風を始め、全員が豊富な武装を扱っているのであった。

 

「本当、色々ありだよなー。陽炎型ってアームとかで色々制御できるから、夕雲型と違った魅力があるし。」

「そうそう!流石、陽炎に育てて貰っただけあって、詳しいねぇ!谷風さんも、鼻が高いよ!」

「何ていうか………本当、色々な性格の艦がいるんだな。谷風は陽気そうだ。」

「むーどめーかーっていってくれよな!」

 

こうして自己紹介が終わった所で、第十七駆逐隊も、正式にリンガ泊地に所属する事になる。

彼女達もまた、すぐにリンガの戦力となってくれる精鋭達であった。

………流石にヘビの肉に慣れるには、時間を必要としたが。

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