艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第46話 ~再会~

「待って、朝霜!?単独で挑むのは危険よ!」

「分かってる!でも、これ以上、提督のいる泊地に近づけるわけにはいかねぇだろ!ちょっとビビらせてやる!援護してくれ!」

 

夕雲が注意喚起をするが、朝霜は接近を止めない。

当然、南方棲戦姫は腕部と手甲の砲塔ユニットから紅蓮の砲弾を朝霜に向かって放つが、改二の練度を持つ彼女に、そう簡単に当たるわけが無かった。

 

「どうしたぁ!?もっと来いやぁ!」

「ナマイキナ!」

 

接近する駆逐艦娘に対し、今度は砲塔ユニットから魚雷を8つ取り出すと、何と左の手甲で殴り飛ばして撃ち出してくる。

更に同時に周りの護衛要塞が口を開き、一斉に砲弾を飛ばして来た。

 

(まずは、あの厄介な護衛要塞を片付けねぇとな!)

 

魚雷と砲撃を両舷一杯の速度で、蛇行しながら回避した朝霜は、左太ももの4連装の魚雷を1本撃ち出す。

普通ならば、護衛要塞が1体庇って爆発する場面。

しかし、意外な事に南方棲戦姫は、護衛要塞を使わずに自らの身体で受け止めた。

 

「ん?」

 

相手の対応に疑問を覚えながらも、そのまま反時計回りに回り込むように今度は、腰に付けた4連装の魚雷を1本撃ち込む朝霜。

こちらも直撃して派手な炎を上げる。

傷は再生能力で回復されるが、折角の護衛要塞を使わない事に違和感を覚えた。

 

「お前、もしかして頭悪い?だったら、容赦しねぇぜ!」

「フフ………フフフフフ………!」

 

朝霜の挑発に、まるで狂ったように笑い出した南方棲戦姫であったが、それがハッタリでない事をすぐに悟る事になる。

 

ガシッ!

 

「何!?」

 

突如、足を取られ、朝霜はバランスを崩しそうになる。

何事かと思い、足元を見れば、フラッグシップ級潜水艦ソ級が水中から朝霜の左脚を掴んでいたのだ。

 

「こ、コイツ!?」

「ツカマエタ………!」

 

動けなくなった朝霜は、慌てて連装砲ソ級に連装砲を撃ちまくるが、中々沈んでくれない。

そんな朝霜に向けて、南方棲戦姫は舌なめずりをする。

 

「朝霜!待ってて!」

 

葛城が攻撃機を飛ばし、上空から爆撃を姫クラスに仕掛けるが、このタイミングで護衛要塞1機が庇って爆発を起こす。

 

「沈メ!」

「味方ごとやる気かよ!?」

 

そのまま魚雷を撃ち出して来た南方棲戦姫を見た朝霜は、とにかく連装砲をソ級に連射する。

その手がようやく破壊されて潜水艦は沈んでいったが、魚雷への回避は間に合わなかった。

咄嗟に自分の爆雷や残りの魚雷を破棄するが、足元に着弾した雷撃は派手な爆発を起こし、朝霜を炎に包む。

 

「ぐ………はぁ!?」

「朝霜!?しっかり!?」

 

思わず夕雲の悲鳴が聞こえてくるが、朝霜は何とか大破で耐えきっていた。

それでも主機がボロボロになり、言う事を聞かない。

後は敵の砲撃でハチの巣になるだけだった。

 

「ちぃ!?………あたいも、焼きが回ったか!?………って、わ!?」

「逃げるよ………!」

 

そんな朝霜の腕を掴む艦娘の存在がいた。

見れば、弥生が残りの魚雷を南方棲戦姫に撃ち込み、その隙に艤装から煙幕を出しながら、朝霜を曳航していく。

だが、敵艦はその姿を追い回すのが楽しいのか、弥生達のいる煙幕の中に向けて、護衛要塞と共に、出鱈目に砲撃を撃ってくる。

弥生はジグザグに動いて回避をしようとするが、朝霜が自分より大きい事と(というより弥生が小柄である事と)、砲撃の嵐が激しい事が悪影響し、全てを躱しきる事が出来ない。

 

「ぐう………!?」

「弥生!?」

 

紅蓮の砲弾の一部が弥生の艤装に掠ってしまい、炎が上がる。

中破した弥生は思わず朝霜を離してしまい、共に海面に倒れ込んだ。

 

「フフフ………!」

「待って下さい、今援護に………!邪魔よ!!」

 

夕雲が援護に向かおうとするが、フラッグシップ級戦艦タ級に妨害され、中々向かう事が出来ない。

葛城も、白雪も、あきつ丸も手が回らなかった。

仰向けに倒れながら、朝霜は考え込んでいた。

 

(あたいは………結局あのままだったなぁ………。)

 

謝る事も出来ず、心の傷を深めてしまった姉に値する艦娘。

業が巡り巡って来たのならば、こうなるのは必然だったのかもしれない。

 

(沖波は天国にいるのか、それとも地獄か………。)

 

結局、最後まで第三十一駆逐隊はバラバラだったなぁと思いながら、朝霜は何とか身体を起こす。

南方棲戦姫は、相変わらず舌なめずりをしながら砲塔ユニットをこちらに向けて来る。

紅蓮の砲弾に貫かれれば、当然身体が持つわけが無い。

 

(最後に言いたかったなぁ………。あたいも………悪かったって。………岸波、ゴメンって。)

 

そう観念した朝霜に南方棲戦姫の砲口が向けられ………しかし、その瞬間に、その姫クラスの身体に魚雷が8本まとめて飛んできて派手に大爆発を起こす。

何が起こったのか?と驚く朝霜は見た。

ダークオートミールの髪の艦娘が、自分を庇うように立っているのを。

 

「何しているのよ………。」

 

その声は、憤怒に震えていた。

声の主である駆逐艦娘………岸波は、大声で吠えた。

 

「朝霜達に、何しようとしているのよ!南方棲戦姫!!」

 

嘗てない怒号と共に第二十六駆逐隊旗艦である岸波が、戦場に殴り込んできた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

怒りに震える岸波の周りには、舞風と望月、山風が集まって来ていた。

驚く朝霜と弥生は、怪力の朧が2人纏めて引っ張って、あきつ丸のいる泊地の方へと運んでいる。

噴進砲を持つ薄雲と、対空砲火に長けている初霜は、白雪と一緒に葛城の周りに集まって敵攻撃機を撃ち落とし始めていた。

夕雲に張り付いていたタ級は、磯風と長波が魚雷を4発ずつ撃ち込んで沈めており、援護をしようとした敵潜水艦や敵駆逐艦等は、嵐・野分・萩風が爆雷や連装砲等で沈めていっていた。

ブルネイから文字通り全速力で駆け付けた援軍は、間一髪のところで犠牲を出さずに済んだのだ。

その雄姿を見ながら、朧に引っ張られる朝霜が岸波に言う。

 

「岸波………。」

「ずるいわね、朝ちゃん。私も仲間に入れて頂戴よ………。沖姉の仇討ちにね!」

 

岸波は朝霜の方を見ずに叫ぶと、左胸の爆雷を思いっきり南方棲戦姫の眼前に投げつけて連装砲を撃ち込み、空中で信管を作動させて、派手に爆発を起こす。

 

「………何ダ、アノ時ノ無様ナ艦娘カ。」

「ええ………貴女に会う為に戻って来たわよ。海の底に、沈める為に!」

 

爆発は、残っていた4機の護衛要塞が壁を作る事で防がれてしまう。

煙を上げて自身を守る要塞の様子を横目で確認しながら、南方棲戦姫は岸波を挑発する。

その挑発に敢えて応えながら、岸波は連装砲を心臓めがけて連射。

南方棲戦姫は、堅牢な砲塔ユニットのある右腕で防御しつつ、左腕の砲塔ユニットから、攻撃機の役割を果たす羽虫を3機飛ばす。

 

「やらせないよ!」

 

舞風が叫び、手持ちの高角砲と右アームの高角砲で素早く撃ち落としていく。

3機ぐらいならば、輪形陣でなくても今の彼女ならば十分に対処する事が出来た。

 

「オ前モ………アノ娘ノ後ヲ追ワセテアゲル!」

 

ならばと、南方棲戦姫は魚雷を撃ち出してくるが、岸波達4人は、単縦陣で面舵を取って右に動き、回避行動を行う。

 

「主砲連射!隙を与えるな!!」

 

岸波の怒号に近い号令で、反時計回りに回る形で、南方棲戦姫に向けて、主砲による砲撃を喰らわせていく。

南方棲戦姫はニヤリと笑みを見せつつ、右腕で上半身を守りながら、左腕の砲塔ユニットによる砲撃を、残り4機の護衛要塞と共に撃ち込んでくる。

 

「当たり前だけど………再生能力付きだね!」

「それでも無限じゃない!………絶対に落とせ!!」

「ちょっと、岸波、ヒートアップしすぎ!仇だからって、冷静さを失うと轟沈するよ!」

「分かってるわよ!!」

「分かって無いじゃん!」

 

舞風が思わず注意するが、憎悪故に頭に血が上った岸波は、そう簡単にクールダウン出来ない。

尤も敬愛する姉であった沖波を苦しめて沈めた敵が、すぐ目の前にいるのだ。

その敵を前にして、冷静さを保てという方が無理なのだ。

しかし、怒りの燃える岸波の頬を、何と後ろから放たれた弾丸が掠める。

望月が単装砲で撃ってきたのだ。

 

「も、望月!?」

「嚮導艦に冷静さを取り戻させるのも補佐の仕事だからね~。………いいから、少し落ち着けよ。もしかしたら、今までの動きで、突破口を開けるかもしれないかもしれないんだから。」

「………どういう事?」

 

ある意味ベテランでなければ出来ないような望月の行動と言動に、岸波の狭まっていた視野が少し広まる。

望月は山風や舞風と何かを話すと、岸波に見ていてくれと言う。

 

「まず、魚雷。」

「撃つよ………!」

 

1週して、泊地側に回った艦列から、山風が8本の魚雷を一斉に放つ。

南方棲戦姫の足元に炸裂して派手に炎を上げるが、防御はせず、再生能力で治してしまう。

 

「次、空中での爆雷起爆。………ほい!」

 

次に望月が腰の爆雷を投げつけて、単装砲を使い、空中で信管を作動させて起爆し、南方棲戦姫の眼前で派手な爆発を起こす。

すると、護衛要塞がまた4機壁になるように盾を作る。

1機は先程のダメージと合わせて耐えきれなかったのか、それでバラバラになる。

 

「最後、主砲。」

「行けっ!」

 

そして、舞風が2種類の高角砲を、南方棲戦姫の心臓めがけて撃ち込む。

姫クラスは、右腕の砲塔ユニットで防ぎ、左腕の砲塔ユニットから多数の紅蓮の砲弾を放って来る。

 

「何度ヤッテモ無駄ダ!」

「無駄って言う割には………行動パターンが一緒だよね?」

 

南方棲戦姫の勝ち誇ったような言葉に対し、砲弾を回避しつつ望月は疑問を提示してみる。

今度こそ、岸波は彼女の言いたい事を理解した。

どういうわけか、相手は強力な魚雷を、再生能力を犠牲にして受け止め、眼前で爆発を起こした、本来の用途から外れた使用法をしている爆雷を、護衛要塞を展開してまで全力で守らせている。

主砲による砲撃に至っては、駆逐艦クラスの物とはいえ、わざわざ強固な右腕でガードをしている。

その行動パターンを振り返った朝霜は、電探で岸波に伝えていく。

 

「岸波………。思えば、あたいの時もそうだった。魚雷は全然、護衛要塞を使わないのに、葛城さんの爆撃はしっかり防御させていた。まさかと思うが………。」

「「上半身」に何か触れてほしくない物でもあるのかしらね………?葛城!」

「任せなさい!」

 

敵の弱点を感じ取った艦娘特有の直感により、葛城が攻撃機を、次々と南方棲戦姫に集中させていく。

 

「コノ………!」

「させねえよ!」

 

明らかに嫌な顔をした姫クラスは、対空砲火に優れる軽巡ツ級を呼び寄せようとするが、嵐達が砲撃や魚雷を放ち、妨害する。

次々と落ちて来る爆撃に対し、右腕を上に掲げてガードする他、残り3機の護衛要塞も、全て盾に使って爆散させてしまう。

 

「やっぱり、何かあるわね!全艦、南方棲戦姫の上半身を狙え!!」

「グ………ゴアァアアアアアアアアアッ!!」

『!?』

 

岸波がイケる………と思った瞬間であった。

南方棲戦姫は思いっきりのけぞり咆哮する。

深海の底から響き渡る、地鳴りのような叫びに、思わず海域にいた艦娘達は、反射的に怯んでしまう。

 

「し、しま………!?」

「ガァアアアアアアアッ!!」

「がはっ!?」

 

南方棲戦姫は、そのまま憤怒の形相で岸波に突っ込み、腹に膝蹴りを喰らわせて海面に倒すと、踏みつけて右腕の砲塔ユニットを顔面に向ける。

 

「岸波!?」

 

舞風達が援護をしようとするが、強烈な咆哮をまともに受けた影響で、すぐには動けない。

勝ち誇った顔で、南方棲戦姫は舌なめずりをしながら岸波を見下した。

 

「マズ………ヒトツ………!」

「ぐっ………!?」

 

必死に右手の連装砲を敵艦に向けるが、間に合わない。

眼前に突き付けられた敵の砲塔がスパークする。

 

(私は………死ぬ………!?沖姉の仇も討てずに………!)

 

最悪のシナリオを前に、絶望に顔を歪めた岸波であったが………。

突如、その意識が………いや、岸波だけでなく、海域にいた全ての艦娘の意識が、彼方に飛んだ。

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