艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第67話 ~信頼できる加勢者~

入って来た3人の艦娘は、それぞれ特徴があった。

最初の艦娘は、水色のような蒼色のセミロングの髪で、先を切りそろえたいわゆるぱっつんな髪型である。

2人目の艦娘は、腰まであるロングストレートの銀髪を側頭部後方で二房ツーサイドアップにし根本に紅白の吹き流しを付けているのが印象的。

そして、最後の艦娘は、ダークブラウンのショートボブで、もみあげが長く、鎖骨くらいまで伸びているのがポイントであった。

 

「初風!天津風!時津風!」

 

磯風はこの3人を知っていた。

というのも彼女達は、磯風の故郷である呉で、雪風を交えて第十六駆逐隊を結成していたのだ。

その内の3人がこの横須賀にいる理由は………。

 

「確か、第二十六駆逐隊の7人が、纏めて呉に転籍になった際に、補強で入れ替わりとして来たんですよね。」

「あの呉のドロボウ………幸運艦の雪風だけは手放そうとせず、秘書艦に据えていたがな。だが、実力を考えれば、この3人だけでも十分だろう。」

「ありがとうございます!」

「すぐに列車を手配するから、まずは7人で、鹿屋基地に近い佐世保鎮守府に向かえ。如月達にとっては故郷だから勝手が分かるだろう?」

「はい………。」

「次の新月の夜までは、そう日は無い。そこの提督の指示を仰いで、どうするか決めろ。」

「了解です!」

 

磯風達は、感謝の想いと共に執務室を出ようとする。

だが、彼女達を提督は止めた。

 

「待て待て。まだ、話は終わってないぞ。………如月、そのお前を模した深海棲艦は、何と名乗ればいいんだ?」

「如月で結構です。」

「何?」

「如月です。………私の不注意で、皆様に迷惑を掛けているのですから、戒めとして。」

「………分かった。では、「深海如月」と呼称しよう。各提督に伝達しておくから、準備を整えてくれ。」

 

磯風は、如月が気負い過ぎていると思いながらも、とりあえずは佐世保に向けて、準備をする事にした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

佐世保へと向かう列車内は、現時点では昼であったが、ほぼ貸し切り状態であった。

というのも、艦娘が乗車する際は、一般市民とのトラブルを防ぐ為に、1両貸し切りにするのだ。

その為、各座席前等、かなり広いスペースを自由に使う事が出来た。

 

「ぶーーーん!」

 

そのスペースを自由に駆け回っているのは、時津風。

彼女は、何故か犬っぽい雰囲気を持っている。

これでも提督の言う通り、海戦では少なくとも磯風に匹敵する位の練度は持っているのだから、艦娘は見た目で判断してはいけない。

座席は1つのスペースに付き、6人までしか入れなかった為、窓際から如月、卯月、春風………反対側に、磯風、初風、天津風と座っていた。

 

「すまないな、初風、天津風、それに時津風も。いきなりになるが、協力してくれて。」

「別にいいわよ、命令だもの。」

 

そう返すのは初風。

彼女はサバサバしており、ぶっきらぼうな印象があった。

しかし、そこで磯風は懸念している事を話す。

 

「………佐世保には、妙高さんがいるぞ?」

「あーーー!ヤダ!意識しちゃったじゃない!バカ!!」

 

いきなり頭を抱えて叫ぶ初風に5人だけでなく、走り回っている時津風も一瞬動きが止まる。

宿毛湾泊地跡解放戦で、岸波や磯風達と共闘した妙高は、実は初風にとってはトラウマだ。

というのも、艦の記憶だと、彼女は激突して艦首を折られた所に集中砲火を受けて、轟沈してしまっているのだ。

別に艦娘の妙高が悪いわけでは無いのだが、初風にとっては恐怖の対象となってしまっていた。

 

「天津風………佐世保に着いたら、初風のカバー頼む。」

「ま、まあ………大丈夫じゃない?「新型高温高圧缶」のテストもしたいし………。」

 

天津風は、若干初風の様子に引きながらも、承諾してくれる。

ちなみに、彼女の言う新型高温高圧缶とは、簡単に言えば強化型艦本式缶の更なる強化版だ。

改良型艦本式タービンと組み合わせる事で、更に速力を強化できる為、駆逐艦にとっては、喉から手が出る程欲しい代物でもあった。

それを天津風が持っているのは、彼女が次世代型駆逐艦のプロトタイプだから。

素早さなら誰にも負けない、あの島風の艤装は、彼女が元となって作られた。

その為、彼女も「連装砲くん」と呼ばれる砲塔を持っているのだ。

 

「結果的に収穫のある旅になれば、万々歳よ。………その割には、1人で背負い込んでいる人がいるみたいだけれど。」

 

天津風は、窓の外を虚ろな瞳で見ている如月を見て言う。

僅かな時しか共に過ごしていない彼女達も、如月が何処か気負い過ぎているのを感じた。

いや、正確には………。

 

「あなた………あたし達を怖がってないかしら?」

「え………?」

「いえ、違うわね。怖がっているのは自分自身。自分が何処か他人とは違う存在だって恐れている。」

「……………。」

 

如月は、無言で静かに左手の手袋を取る。

そこには、呪われた影響で、甲殻類のような殻に包まれた鬼のような手があった。

 

「あなた達は、これを見ても何にも………。」

「うわー、すごーい!ゴツゴツしてるー。深海棲艦に呪われるとこうなっちゃうんだ。あたし達も気を付けないとねー。」

 

思わず如月の目が見開かれる。

その手を、何の躊躇いもなく、時津風がわしゃわしゃと掴んで来たからだ。

子犬のように振る舞うその目には、何の恐怖心も無い。

 

「ね、ねえ………あなた………怖く無いの?」

「えー?あたしも、髪が犬っぽいとかよく言われるからなぁ。それに、そんな事を言い始めたら、艦娘自体が異質だよー?」

 

そう言いながら、好奇心旺盛な目で触って来る時津風の目に、嘘を付いている様子は無い。

金縛りにあってしまったような如月を見ていた初風と天津風は、互いに顔を見合わせると、時津風と同じように手を伸ばし、如月の手を掴む。

 

「あ、あなた達まで………?」

「如月、あなたは私達を勘違いしているわ。そんな左手1つでビビる程、駆逐艦が………第十六駆逐隊が腰抜けだと思っているの?」

「そ、それは………。」

「だとしたら、如月………あなたは、人を見る目が無いわね。あたし達の駆逐艦魂を、少しは見直して欲しいわ。」

「そうよ!こんなの妙高姉さんに比べれば全然!」

「初風………あなたのそれは、ある意味異常よ。」

「……………。」

 

3人の温かい手の感触を確かめながら、如月は彼女達に何て言っていいか分からなくなる。

そこに、様子を静かに静観していた磯風が話しかけて来る。

 

「如月………、私は血塗られた手を持っているから、周りと接するのが怖くなるのは、少なくとも分かる。だが………この面々は、信頼してもいいのでは無いのか?」

「磯風ちゃん………でも………。」

「踏み出さなければ、手に入らない物だってある。私は北方で、改めて君や春風達に教えて貰った。だから、君を助けたいとも思っている。春風だって、似たようなものだろう?」

 

磯風は反対側に座っている、春風にも聞く。

彼女は、穏やかな笑みを浮かべながら答えた。

 

「勿論です。わたくし達の姉妹艦が目を覚ます事が出来たのは、如月さん達のお陰です。その恩返しが出来るのならば、誠心誠意、如月さんのお手伝いをします。」

 

当然のように言ってのけた春風の言葉を受けて、如月は俯いて、ぼそりと呟く。

 

「私、本当は凄く怖いの………。深海棲艦化した自分の姿や深海如月の姿を見て、みんなが私に恐怖するのが………。その目が嫌だから私………。」

 

幌筵泊地での戦いは、自分に関係しない事であったし、何より出会った時に、磯風が自分の左手を真っ先に握ってくれたために、自然と艦隊に入る事が出来た。

しかし、今回は自分の為の戦いなのだ。

背負う物が違っていた故に、如月は無意識の内に、1人殻に閉じこもっていたのだ。

それを見越してなのか、今まで黙っていた卯月が、如月の肩を抱いて言った。

 

「如月、甘えるぴょん。駆逐艦はふざけ合って、いがみ合うような関係だけれど、いざという時は協力し合えるような関係だぴょん。」

「……………。」

「まずは自分との戦いに勝って………しっかりと準備を整えるぴょん!如月なら、それが出来るぴょん!」

「………そうよね。」

 

如月は頷くと、力強い顔で初風・天津風・時津風を見た。

そして、敢えて呪われた左手を伸ばし、握手を求めた。

 

「初風ちゃん、天津風ちゃん、時津風ちゃん。………協力してくれますか?」

「バカね、誰に物を言っているのよ。」

「心配しなくても、いい風が吹いているから大丈夫よ。」

「楽しい旅にしよー!」

 

三者三様の言葉であったが、しっかりと左手で応えてくれたのを見て、如月は涙ながらに答えながら、笑顔を浮かべた。

 

「ありがとう………!みんな………好きよ!」

 

信頼の出来る仲間の存在に、如月は心から安堵した。

だが、彼女はまだ知らない。

佐世保にて、更なる試練が待ち受けている事に………。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

同時刻、鹿屋基地近くの海上では、艦娘と深海棲艦による海戦が繰り広げられていた。

黒い5機の浮遊要塞を引き連れるのは、上半身が艶めかしい人間の身体でありながら、下半身が機械と一体化している鬼クラスの深海棲艦。

多数の砲塔を携え、赤く光るコアを獣のような口の中に光らせているその機械の船は、長髪の髪をなびかせ、甲高い声を上げる人の容姿と相まって、かなり異質だ。

この敵艦には、艦娘側からは「装甲空母鬼」と呼ばれていた。

 

「オホホ………!」

 

鬼クラスは手をなびかせ、羽虫のような攻撃機を発艦させていく。

すかさず、旗艦を務める緑のセミロングヘアをなびかせる艦娘………睦月型の長月は輪形陣を指示する。

 

「金剛さんを中心に!三式弾を頼みます!」

「任せなサーイ!」

 

両サイドにお団子を結った、ブラウン色のロングヘアの、巫女服を着た大人の艦娘である高速戦艦金剛が、16門の砲塔から赤い色の弾丸を空中に放つ。

それは、爆発して拡散すると、次々と敵攻撃機を撃ち落としていく。

 

「オホホ………!」

 

だが、装甲空母鬼はすぐさま次の手を打ってくる。

金剛が迎撃している間に、魚雷を多数掴むと、一斉に放ってきたのだ。

先頭に立っていた癖のあるセミロングの黒髪に金色の瞳を持つ艦娘………睦月型の三日月が、後ろの長月に警告する。

 

「長月!敵艦の雷撃よ!」

「そう来るか!三日月は瑞鳳さん!巻波は金剛さん!私は妙高さんの壁だ!酸素魚雷で、直撃コースのものを相殺する!」

「了解っ!」

 

長月の指示に勢いよく返事をしたのは、ダークグレイを基調とした金剛によく似たお団子ヘアーを持つ駆逐艦………夕雲型の巻波である。

3人は、それぞれ割り当てられた艦娘の前に立つと、1本魚雷を放ち、自分達に直撃するものだけを撃ち落とす。

魚雷同士が爆発した事で、海面から派手な水柱が上がる。

その向こうから、今度は浮遊要塞と共に、鬼クラスの砲撃が一斉に飛んできた。

 

「伏せて!」

 

高身長故に、いち早く気付いた妙高の警告で、6人は咄嗟に海面に伏せて回避する。

 

「キリが無い!瑞鳳さん、もっと攻撃機を発艦させて下さい!金剛さん、妙高さん、コンビネーションで!」

「分かったわ!」

 

セミロングの茶髪を一房だけポニーテール状にまとめ、紅白縞模様の鉢巻をした軽空母である瑞鳳が、防御を前にいる三日月に任せ、どんどん攻撃機を発艦させて、爆撃を喰らわせていく。

更に、金剛と妙高が艤装から魚雷を発射した。

 

「改装された金剛型………侮らないで欲しいデース!」

「やるからには、本気で行きますよ!」

 

放たれた強力な雷撃は、2機の浮遊要塞に庇われて届かない。

だが、同時に2人は全砲門から砲撃も放った。

こちらも残り3機の浮遊要塞がガードしようとするが、威力が凄まじかった故に、貫通して装甲空母鬼にダメージを与えていく。

 

「オホホ………!」

 

しかし、鬼クラスは、再生能力を備えているのか、傷を癒していく。

依然、不敵な笑みを浮かべている所を見ると、かなり余裕であるらしい。

 

「シット!キリがありまセーン!………長月、近隣の地域に深海棲艦警報は出ていますカ?」

「避難は進んでいるらしいですが、まだ完了してはいないそうです。」

「佐世保から増援の状況はどう?」

「白露や時雨が、血相を変えた比叡さん達を連れてきていると言っています。避難状況も合わせて、それまでは6人で粘らないといけませんね。」

「耐えられる自信はある?」

 

最後に聞いてきた瑞鳳の言葉を受けて、長月は艤装の左側にマウントしていた単装砲を取り出すと、右手の単装砲と合わせて二丁で持つ。

そして、不敵な笑みを浮かべて見せた。

 

「これ位、第十四駆逐隊時代に比べれば、何てこと無いですよ!………三日月、巻波、まだいけるな!」

「ええ………見てらっしゃい!」

「左腕はまだ「動く」から、やったげる!舞鶴魂ぶちかますっ!」

「それでこそ駆逐艦だ!………さあ、金剛さん達も、踏ん張りますよ!」

 

長月はそう艦隊を激励すると単縦陣に切り替え、先頭になって装甲空母鬼に向かって行く。

そう………鹿屋基地近辺での激しい攻防戦は、もう既に始まっていたのだ。




舞台は北から南へと移って、続々と新艦娘&第1部以来の久々の艦娘の登場回です。
初風・天津風・時津風は、実は以前から登場させたかったので、感無量です。
また今回、長月が単装砲を二丁で持っていますが、実はこれ元ネタがあります。
公式ラノベ「陽炎、抜錨します!」の表紙で、このスタイルを披露してるんですよ。
ですので、火力増強の術として採用させて貰いました。
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