艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第72話 ~怒りの如月~

「オホホ………!」

 

5機の浮遊要塞を連れた装甲空母鬼は、魚雷を取り出し、扇状に撃ち出していく。

魚雷は深海如月達の艦列を飛び越えて着水し、磯風と川内の艦列に猛スピードで近づいていく。

しかし、距離がある分、磯風達は単縦陣になって、魚雷と魚雷の間を抜けて回避する余裕があった。

だが、その間に深海如月の艦列が、魚雷の後ろから接近してくる。

 

「この段階で出て来るとは………墜とさせて貰う!」

 

左翼に陣取る磯風達は、一斉に先頭の深海如月に向けて砲撃を放つが、その速力が尋常じゃない。

まるで、如月の強化型艦本式缶までコピーしているかの如く、こちらを嘲笑うように取舵を取って左カーブをし、右翼の川内達の艦列へと向かって行く。

 

「白露、巻波!川内さん達の邪魔をさせるな!」

「了解!」

「やったげる!」

 

すぐさま狙いが軽巡以上の大型艦だと分かった時雨が、駆逐艦娘達に指示を出して前に出る。

時雨は、艤装のギミックを展開し、両腕それぞれに付いた大型単装砲と機銃を連射。

白露は、右腕の連装砲と、艤装左舷に取り付けられた連装砲を乱射。

巻波は、右手の小手と一体になった連装砲を、何発も撃ち込もうとする。

 

「ドォコ、狙ッテイルノカシラ?」

 

しかし、深海如月には、まるで小さな小鬼群と対峙しているかのように、攻撃が当たらない。

 

「ちょっと!どうして当たらないの!?」

「落ち着いて、白露。どんな形であれ、僕らは壁になればいいんだ。」

「ああ、成程!」

 

時雨の言葉の意味を理解した白露は、夾叉弾を放つ。

だが、それは、速力に優れる深海如月には潜り抜けられてしまう。

 

「何処ヲ狙ッテ………。」

「あなた………艦列意識してる?」

「アラ?」

 

次の瞬間、深海如月の背後で爆発が起こる。

白露の夾叉弾は、親玉には当たらなかったが、背後を必死に追走していた5隻のフラッグシップ級には効果をもたらしていたのだ。

その隙を狙って瑞鳳が、対空砲火が厄介なツ級2隻を、夜間攻撃機で一気に爆破したのである。

 

「モウ、使エナイワネ!」

「僕らを侮り過ぎだよ!」

 

時雨はそう言うと、魚雷を一気に8本撃ち出す。

次の狙いは、深海如月に必死に付いていこうとしていた、戦艦タ級であった。

足の速い親玉は軽く回避してしまうが、タ級はどうしようもなく、2隻一気に吹き飛ぶ。

 

「ガンガン行くよ!」

 

更に、その隙を狙って、巻波が連装砲を残りの1隻に叩き込む。

これで、深海如月の連れている随伴艦は、あっという間に全滅した。

 

「アラ………ドウシヨウカシラ?」

 

夜の駆逐艦達の力を見て、わざとらしく肩を竦めてみせる深海如月。

その間に、川内達4人の大火力組は、装甲空母鬼に攻勢を仕掛けていた。

羽黒は、三式弾で敵攻撃機を破壊して隙を作る事に従事。

更に、比叡が徹甲弾を撃ち込み、庇おうとした浮遊要塞ごと、装甲空母鬼にダメージを与えていく。

川内は指示を出しつつ、背中にマウントされている魚雷を抜き放ち、投擲していく。

瑞鳳は、邪魔するツ級がいなくなった事で、より攻撃機を運用しやすくなった。

 

「第二十五駆逐隊、一斉砲火!」

 

更に、比叡の攻撃で浮遊要塞を失い、丸裸になった鬼クラスに対し、磯風達が主砲をガンガン喰らわせていく。

明らかに、パワーバランスが傾いた事で、装甲空母鬼の表情には焦りが出始めていた。

 

「悪いけど、沈んで貰うよ。………君は、少し僕らを怒らせ過ぎた。」

「ソウネ。流石駆逐艦ナノカシラ?デモ………。」

 

時雨の最後通告を受けて………しかし、ここで深海如月は邪悪な笑みを浮かべて告げる。

 

「忘レタノ?私モ「駆逐艦」ナノヨ?」

「!?」

 

次の瞬間だった。

敵深海棲艦が、消えた。

気付けば、白露の前に現れていて、彼女に向けて、両腕の顔を模した艤装から、砲撃を撃ち込んでくる。

 

「うわわ!?」

 

慌てて右手の連装砲を盾に使ったが、破壊され、吹き飛ばされて海面を転がる。

 

「沈ンデ。」

「だめだ!?」

 

そのまま足首の魚雷発射管から、6本の魚雷を放ち追撃をしてきたので、時雨が白露の襟を掴んで強引に掻っ攫い、直撃コースから退避させる。

だが、深海如月の攻撃はそれだけでは、終わらない。

今まで、最大の速力を隠していたらしく、鉄砲玉のように突っ込むと、装甲空母鬼を狙っていた比叡の前に立ち、顔面にまた砲撃を叩き込む。

 

「くぅっ!?」

 

何とか身を捻り急所への一撃は避けた比叡だが、魚雷を装填していた艤装の右半分に炸裂し、爆発を起こし吹き飛ぶ。

更に雷撃の追撃を容赦なく仕掛けてきたので、近くにいた羽黒が自身の魚雷を投棄して庇い、炎に包まれる。

 

「うああ!?」

「比叡さん!?羽黒さん!?」

「ドコ、ミテルノ?」

「ええ!?」

 

一瞬の隙を突かれ、あっという間に背後に回られた瑞鳳は、飛行甲板を破壊され、艦載機の発着が封じられる。

僅かな時の間に、1隻の駆逐艦に艦隊全体の火力が大幅に削られてしまった。

 

「この………!」

「遅イ、遅イ!」

 

自身の艦隊が軒並み大破した事で、川内が焦って砲撃を仕掛けるが、深海如月には当たらない。

水雷戦隊のボスである彼女の砲撃すら避ける親玉の速力は、もはや異常であった。

 

「川内さん!?」

「磯風!装甲空母鬼に集中して!対空砲火を欠かしたらダメだ!」

「くっ………!」

 

比叡や羽黒、瑞鳳の戦闘能力が封じられた事で、制空権が完全に装甲空母鬼に傾いてしまった。

鬼クラスの表情には、また余裕が生まれ、この機を逃すまいと、攻撃機をどんどん発着させる。

 

「磯風を舐めるなぁ!!」

 

手持ちの連装砲と機銃、更には艤装の砲門と、全てを空に向けた磯風が、砲撃をガンガン叩き込んで羽虫の形をした攻撃機を叩き落としていく。

当然、攻撃機は磯風を集中的に狙おうとするが、春風が背中合わせに陣取ると、機銃と単装砲全てを迎撃に使い、彼女の援護に回る。

 

「春風、その傘で爆撃は防げないか!?」

「無理です!防げるのは昼の駆逐艦の砲撃と機銃位です!」

 

とにかく全力で撃ち落とし、本土への爆撃だけは避けようとする2人。

 

「如月、卯月、2人の護衛宜しく!………行くわよ、天津風、時津風!」

「魚雷発射管には異常は無いわ!」

「同じくー!」

 

その護衛を如月と卯月に任せ、初風を筆頭に天津風、時津風が装甲空母鬼に迫り、魚雷をどんどん撃ち込んでいく。

派手な爆発が起こりかなりの傷を負わせるが、再生能力によって傷が一瞬で癒されてしまう。

そして、一撃離脱をしようとする初風達を狙って敵艦は、巨大な砲門から砲撃を嵐のように放ってくる。

 

「何で、こんなタフなのよ!?………ぐう!?」

「初風!?」

 

高角砲が付いた右アームや艤装の一部が吹き飛んだ初風は、バランスを崩しそうになり、天津風に支えられる。

どんどん各自に焦りが出てきて、思うような海戦が出来なくなっていく。

 

「まだ駄目か!?というか、私より素早いなんて………わあっ!?」

「川内さん!?」

 

正面から砲撃をされた川内は、腕をクロスさせて身を庇った事で、4門の単装砲が吹き飛び海面を転がる。

巻波が慌てて前に出るが、旗艦である川内も、遂に中破してしまっていた。

 

「ソロソロ、詰ミカシラ?惨メニ命乞イシテミル?」

 

如月の声を発しながら、敵艦は巻波を見た。

攻撃能力が奪われた艦娘が多い以上、戦略的に見ても、このままだと艦娘側の全滅は、目に見えているだろう。

そうなれば、装甲空母鬼は好き勝手に本土へと爆撃をして、鹿屋基地の近くの民家等を破壊しつくす。

下手すれば、青葉達が最後の砦として待ち構えている避難所の学校にまで………。

 

「……………。」

 

巻波は、狡猾な深海棲艦を睨みつけた。

そして、彼女は手を突き出した。

連装砲を持った右手ではなく………機械化された左手を。

 

「何カシラ?ソノ手ハ?アナタ、気ガ狂ッタ?」

「如月の身体を手に入れて、好き勝手やってるみたいだけど………。」

 

巻波は目を見開き、深海如月に言い放った。

 

「艦娘を………馬鹿にするな!!」

 

次の瞬間だった。

突き出した手のある左腕の関節部分から、火が吹く。

何事かと思ったら、その腕がいきなりロケットランチャーのように一直線に深海如月に向けて飛び、その顔を掴んだのだ。

 

「!?」

 

これには、流石の深海如月も意表を突かれたらしく、完全に無防備であった。

しかも、移出された腕は、丈夫なワイヤーで上腕部と繋がっているらしく、巻波が引っ張る事で、敵深海棲艦の動きが封じられる。

 

「ナ!?何!?アンカー!?」

「つっかまえた!!川内さん!今!」

「雷撃を深海如月に!砲撃を装甲空母鬼に!!」

 

立ちあがった川内が、魚雷を深海如月に向けて、残りの力を振り絞り投げつける。

更に、左側の艤装が生きている比叡が、残っている魚雷を撃つ。

時雨に支えられた白露も、雷撃戦を仕掛けた。

 

「嫌ァアアアアアアアッ!?」

 

派手な炎が上がり、制服が焼けこげ、悲鳴を上げる深海如月。

更に、艦娘側の攻撃は止まらない。

比叡と羽黒がふらつきながらも、強力な砲撃を装甲空母鬼に喰らわせる。

手の空いていた時雨と如月、卯月と時津風も更に続いて砲撃をその上半身に当てる。

 

「アアアアアアアアアッ!?」

 

夜戦で威力を発揮する攻撃が一同に炸裂した事で、装甲空母鬼はたまらず痛みにもがく。

 

「春風!」

「はい!」

 

攻撃機の発艦が収まった事で、余裕が出来た磯風と春風も、魚雷を遠慮なく喰らわせる。

台座が紅蓮の炎で燃え上がり、装甲空母鬼は遂に、焼け焦げながら一目散に逃げていく。

 

「チィッ!」

 

余裕を失い、一気に不利になった深海如月は、左手の甲殻類のような鬼の爪で、巻波の腕のワイヤーを切り裂くと、自分の顔を掴んでいた手を強引にはがし、海面に叩きつける。

そして、巻波を睨みつけると思いっきり吐き捨てた。

 

「コノ………「化ケ物」メ!!」

「………何ですって?」

 

地の底から響くような冷たい言葉は、巻波から発せられたものでは無かった。

同じ声を深海棲艦に真似されている、如月である。

 

「今、あなた………巻波ちゃんに対して、何て言ったの?」

「「化ケ物」デショ!?何ガ艦娘ヨ!?化ケ物ノ癖ニ出シャバッテ!!」

「ふざけ………ないでよ!!」

 

明らかに、巻波に嫌悪の目を向けた深海棲艦に対し、如月は怒りの声を発した。

彼女は、艦列を無視して飛び出すと、敵深海棲艦に6本の魚雷を全て発射する。

それは、敵艦に避けられてしまうが、何度も何度も両腕の砲門を向けて攻撃を仕掛ける。

 

「あなたに、彼女の何が分かるのよ!?あなた達深海棲艦のせいで!彼女はっ!!」

「フン!」

 

深海如月は一瞥をくれてやると、砲撃を躱しながら一目散に逃げていく。

尚も如月は追撃をしようとしたが、その襟首を、慌てて追ってきた天津風に捕まれた。

 

「如月、周りを見て。追撃できる状況じゃないわ。」

「でも………!」

「落ち着いてって言ってるのよ!被害を考えて行動しなさい!」

「うぅ………っ!」

 

歯ぎしりする如月は、思わず下を向いて俯くが、そこに巻波本人がやって来て如月に言う。

 

「気にしてないから大丈夫だよ。………それより、那智さん達に速く来てもらおっか。この状態じゃ、朝まで持ちこたえるのも大変だし。」

「巻波ちゃん………。」

「でも………ありがとね。」

 

如月は見逃さなかった。

慰めようとした巻波の表情に、僅かな陰りがあったのを。

何かを言いたかったが、結局何も言えず………磯風にポンと肩を叩かれる。

とりあえず、佐世保に帰投する準備を整えようと。

 

「様子見だったのか、深海如月は私達を侮って来てくれていた。だが………次は新月の夜までに傷を癒して、もっと本気で来るだろう。佐世保でそれに備えよう。」

「ええ………。」

 

如月は、納得がいかなかったが、とりあえず磯風の言葉に従うしかなかった。




如月の姿を真似た深海棲艦………深海如月との第1ラウンド。
この敵艦の厄介な所は、やはりスピードでは無いかと思ったのが、今回の海戦です。
艦これアーケードの駆逐棲姫も、相当なスピードで駆け巡るので、それを元にしました。
サブタイトルの回収は、最後の部分の会話ですね。
自分の声で、自分の恩人を愚弄されたら如月でも怒るのは当然だと思って書きました。
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