艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第94話 ~高速戦闘~

「皐月………!1回戦ったのならば、相手の特徴は、正確に教えてよ………!」

「ボク達の時は、あんな動きしなかったんだよ!?………ああ、もう!舐められてたんだ!」

 

3隻の深海初代艦娘の特徴を見て、初雪は文句を言って、皐月は悔しがる。

初春達と交戦した時は、レ級等がいた為、強化された駆逐艦と空母の機能を備えた駆逐艦という程度の認識でしか無かった。

しかし、今回3隻の深海棲艦達は、レ級やタ級、ネ級に混じり、それぞれの個性を見せつけている。

その中で、初雪達の臨時第一艦隊は、深海初代睦月と戦っていた。

 

「砲撃開始………!当たれ………!」

 

初雪の号令で、一斉に深海初代睦月を中心に砲撃が飛んでいく。

だが、速力がかなり強化されているらしく、6人一斉に砲撃を行っても、全然当たらない。

更に厄介な事に、かすり傷を負わせることが出来ても、すぐにその傷が塞がってしまう。

 

「再生能力付きですか!?」

「アレもボク達の時は披露して無かったよ!悔しい!!」

「落ち着いて、皐月ちゃん!だったら、缶を強化した睦月達が!行くよ、如月ちゃん!」

「ええ!」

 

睦月が如月と共に追いかけようとするが、深海初代睦月の艦隊にいるレ級2隻が、攻撃機を飛ばしてくる。

更に、タ級1隻とネ級2隻が、長距離砲撃を仕掛けて来た。

 

「邪魔しないでよ!」

 

色々と憤慨していた皐月が、レ級の攻撃機を破壊し、ついでに砲撃を躱しつつ両足首の魚雷を6本全て撃ち出す。

雷撃はタ級やネ級に吸い込まれて爆発を起こすが、その傷が癒されてしまう。

 

「ええっ!?随伴艦も再生能力持ちなの!?」

「かなり厄介ですね………!」

 

艦隊6隻全てが、再生能力付きであるという現実を突きつけられ、巻波が驚き、春風が戦慄する。

一方、深海初代睦月を追い回そうとした睦月と如月であったが、2人の強化された速力を持ってしても、追いつけない。

 

「何!?あの深海如月より速いの!?」

「睦月ニ追イツコウナンテ100年早イニャ!」

 

そのまま後ろを向いて航行しながら、器用に加速した深海初代睦月は、睦月と同じような装備を操り、砲撃と雷撃を同時に放つ。

だが狙いは、睦月でも如月でも無かった。

 

「皐月ちゃん!そっち行った!」

「え!?待って!レ級から砲撃も来て………うわぁ!?」

 

それが、同じくトビウオのように跳ねながら自由に動き回る、レ級との連携だという事に気が付いた時には、皐月は雷撃の火に包まれていた。

爆雷を咄嗟に投棄したから轟沈にはならなかった物の、対空迎撃の出来る彼女が大破してしまった影響は大きい。

 

「皐月………!大丈夫!?」

「き、機銃は何とか守ったけど………!海戦参加自体は、厳しいかも………。」

「無理しないで下がって………!他は!?」

「こちら敷波!臨時第二艦隊、敵艦の撮影完了!でも………離脱困難!」

 

そう答えるのは、敷波率いる臨時第二艦隊。

深海初代時雨の艦隊と相対していた彼女達も、かなり面倒な事態に陥っていた。

一見すれば敵艦の装備は、独特な顔のモチーフさえ除けば、改二艦である時雨と同じだ。

ギミック式で展開される大型単装砲2丁とそれに備わった機銃と爆雷、手持ち式の単装砲に、両太ももに備わった8本の魚雷。

だが、その大型単装砲の最大射程が駆逐艦の物では無かった。

 

「喰ラエ!」

「レ級………いや、フラッグシップ級ネ級に匹敵している!?」

 

いわゆる艦娘達の間で、「超長」と呼ばれる射程を持つ深海初代時雨の砲撃は、簡単に敷波達の撤退を許してくれない。

深海初代睦月ほどでは無いが、十分な速力もある為、随伴艦の能力と合わせて非常に面倒だ。

とにかく、カメラを持った磯波と浦波だけは被弾させられない為、2人を最後尾に置いて、敷波達は砲撃や雷撃を放っていく。

だが、こちらの艦隊も、全艦が再生能力付きだ。

 

「どうする………!?」

「隙を作りましょう!綾波、突撃を具申します!」

「………しか無いか!近づけば条件は五分に近づくし!」

 

磯波と浦波を後退させつつ、敷波、綾波、白露、時雨が、敵艦の群れに反転して接近する。

これには意表を突かれたのか、慌ててレ級2隻が海面に這いつくばって魚雷を撒き散らす。

しかし、呼吸が合わず、互いの魚雷をぶつけてしまい、逆に隙を作ってしまう。

 

「チャンス!」

 

敷波が深海初代時雨や、タ級とネ級を巻き込み夾叉弾を放つ。

怯んだレ級に向けて綾波が突撃すると、1隻の顔面を遠慮なくぶち抜いた。

 

「それーーーっ!!」

「レガァーーーッ!?」

 

顔を抑えて怯むレ級は、砲撃を撒き散らすが逆に隣の同型艦に当ててしまい、連携が崩れる。

その隙を狙い、白露と共に時雨が、自分と瓜二つの姿の敵艦に向かって行く。

 

「その気味の悪い艤装、破壊させて貰うよ!」

「ソレハ、コッチノ台詞ダヨ!」

 

時雨は艤装を展開すると、大型単装砲を2丁、敵艦に向けて放つ。

だが………同じく砲撃体勢を取った深海初代時雨の狙いは、別の所にあった。

彼女は、時雨の砲撃に合わせて、彼女の脚………主機を狙ったのだ。

 

「な!?」

「時雨!?」

「ナブラレテ沈メ!」

 

慌てて脚を開いて回避しようとしたが、砲弾が主機に掠ってしまった時雨は、航行不能になり、白露に支えられる。

深海初代時雨は、大型単装砲を破壊されるが、すぐに再生能力を使って復元してしまう。

そして、タ級やネ級と共に、時雨や白露を狙い始めた。

 

「敷波!時雨達を助けないと!」

「海風!援護できない!?こっちはかなりヤバい!」

「………こちら、臨時第三艦隊!それどころじゃないわ!」

 

そして、深海初代大潮と対峙する海風率いる臨時第三艦隊は、かなり不味い状況に追い込まれていた。

ほとんどの艦が、小破や中破に追い込まれていたのだ。

深海初代大潮の艦隊には、浮遊要塞が5機いるだけでレ級もタ級もネ級もいない。

だが………。

 

「何でそっちの大潮は、そんなにアゲアゲで色々出せるんですかねぇ!?」

「大潮ノ方ガ、優レテイルカラデス!」

「ああ、そうですか!!」

 

珍しく、かなり苛立った様子を見せるのは大潮。

深海初代大潮の装備は、大潮の改二装備と大して変わらない。

だが、敵艦は次々と新たな護衛として、雷撃を仕掛けて来るPT小鬼群とトーチカである砲台小鬼を呼び出しているのだ。

しかも、砲台小鬼は、佐伯湾で戦った深海初代磯波の時のように、大発動艇に乗っているわけでは無い。

何と騎馬戦の大将のように、PT小鬼群の小鬼達の上に乗っかっているのだ。

そして、一番厄介なのは………。

 

「何で呼び出すもの全てが、再生能力付きなのよ!?」

 

思わず叫びながら、満潮が連装砲を連射する。

それは、1組の小鬼達を吹き飛ばすが、傷を再生させると、再びチームで組体操のように器用に陣形を整える。

 

「浮遊要塞も、再生能力付きみたいね~っ!」

 

荒潮も顔をしかめながら、連装砲を放つ。

主を守る騎士の役目を果たす浮遊要塞は、深海初代大潮を庇うだけでなく、自らも傷を復元させるから、攻撃が中々敵艦に届かない。

当然、妨害が出来なければ、砲撃や雷撃だけでなく、攻撃機の発艦とかも自由に行えるので、攻撃が激しくなるわけであった。

 

「クッソ!どうすりゃいいンだ!?このままだとジリジリと削られるぞ!?」

「何とか、突破口を見いだせればいいのだけれど………!」

 

江風や朝潮が頭を使う中で、海風は初雪を見る。

 

「初雪………この3隻が、貴女の知り合いならば、弱点も知っているんじゃ無いの?」

「弱点って言われても………。」

 

初雪も正直、そこまで言われても困るのが本音だ。

敢えて、答えるとすれば………。

 

「生前、3人は仲が良かったと思うんだ………。だから………、1隻でも怯ませられれば、何とかなる………んじゃないかな?」

「一番脆そうな、深海初代睦月をどうにか出来ない?」

「出来れば………苦労しない。」

 

前に深海如月と対峙した時は、巻波がアンカーのように機械化された左腕を撃ち出して、掴んで動きを止めた。

だが、今回の敵艦はそこまで慢心していないし、何より動きがあの時以上なので、そもそも巻波の攻撃そのものが当たらない。

頼りになりそうなのは、何とか速力を活かして追いかけている、睦月と如月であったが、逆に言えば2人が速い分、他の面々の攻撃が誤射する可能性があった為、下手に援護が出来なかった。

 

「どうします?もう魚雷を持っていない人たちも多いです。このままでは………。」

「とにかく大将に重傷を負わせればいいんだよね!?だったら、ボクがやる!」

「え………皐月………!?」

 

驚いた事に大破した皐月が、一直線に深海初代睦月に迫っていく。

魚雷も爆雷も無い中で、主機の状態もあまり良くないのに、何を考えているのか分からなかった。

 

「睦月ヲ、侮ッテル?」

「睦月型の弱点は、知っているつもりだよ!お互い、脆いって所がね!」

 

皐月はそう言うと、敢えてこちらに向かって来た深海初代睦月に、残していた機銃を乱射する。

だが、敵艦は回避しようとせず、再生能力で受け止めると、砲撃を撃ち込み、皐月の機銃を破壊してしまう。

 

「!?」

「コレデ、丸裸………ニャ?」

 

だが、皐月は突進を止めなかった。

彼女はそのまま一直線に突き進んでいくと、左手で、背中に隠し持っていた白鞘に仕舞われた刀を………守り刀を取り出す。

そして、それを抜き放った。

 

「散々コケにしたお返しだーーーっ!!」

「ニャギャアッ!?」

 

その隠し武器とも言える刃は、深海初代睦月の喉元を斬り裂き、彼女を痙攣させる。

更に、刀を振り上げた皐月は、力いっぱい敵艦を袈裟斬りにする。

黒い血が大量に噴き出し、深海初代睦月は倒れた。

 

「睦月ッ!?」

 

その光景を見ていた深海初代時雨がターゲットを変更し、皐月に砲門を向ける。

だが、皐月はすかさず艤装から煙幕を出し、自身と深海初代睦月を隠す。

これで、下手に遠距離からの援護は出来なくなった。

 

「クッ………!?シッカリシロ、睦月!?」

「浮遊要塞ヲ、飛バシマス!」

 

深海初代時雨が近づき、深海初代大潮が自身に纏っていた浮遊要塞を飛ばして来た事で、残りの2つの艦隊も逃げる隙が出来た。

海風率いる臨時第三艦隊は、中破に陥った艦娘達を曳航しながら離脱を図る。

敷波率いる臨時第二艦隊は、航行不能になった時雨と彼女を庇って大破にまで陥った白露を、敷波と綾波が曳航していく。

そして、初雪率いる臨時第一艦隊は、煙の中から睦月と如月が皐月を抱え出して曳航していった。

初雪がしんがりになり、駆逐艦特有の速力を活かして、一直線に佐世保まで逃げていく。

後ろから、深海初代時雨の声が聞こえた。

 

「電ニ伝エロ!僕達ハ、絶対ニ君ヲ許サナイト!………絶対ニ!!」

 

初雪は答えず、海域を離脱していった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

『……………。』

 

佐世保の港では、ヘトヘトに疲れ果てた初雪達を、磯風や陽炎が迎え入れた。

今回の海戦による主な大破艦は、白露と時雨、それに皐月だ。

中破艦はもっと多く、魚雷等を使い果たした艦も多いので、武装等の補充も必要だった。

疲労は、旗艦である初雪や敷波、海風にも及んでいたので、比較的安全圏にいた磯波と浦波が報告をする。

 

「陽炎提督………臨時艦隊、只今帰投しました。敵艦の撮影も無事に終わりましたよ。」

「大破艦、中破艦が多数いるので船渠(ドック)入りと高速修復材(バケツ)の使用をお願いします。勿論、写真の現像も………。」

「お疲れ様。みんな。ゆっくり休むと………電?」

 

提督代理の陽炎が指示を出そうとしたところで、それまで俯いていた電が、前に出る。

彼女は、静かに疲れ切った様子の艦娘達を見渡すと、その中で一番重傷を負っていた皐月に近寄った。

 

「……………。」

「ああ、ボクなら大丈夫だよ?これ位の派手な戦いは、慣れてるからさ!」

 

笑って見せる皐月であったが、火傷の跡が酷い所を見ると、やせ我慢なのは、誰にでも分かった。

その様子をまじまじと見つめた電は、思わず彼女を抱きしめた。

 

「……………。」

「痛た………で、出来れば抱き着くのは、後にして欲しいかな………。その、傷が何か痛いや………。」

「………のです。」

「え?」

 

静かに………しかし、少しずつではあるが、電の口から絞り出されるような声が出た事で、皆が驚く。

思わず磯風が聞いた。

 

「電!?声が出るように………!?」

「電は、覚悟を………決めないといけないのです。」

「電………?」

 

電は皐月を離すと、陽炎に向き合って真剣な瞳で話し始める。

 

「司令官さん………皆を集めて欲しいのです。」

「………決めたのね。」

「はい。」

 

陽炎の言葉を受けて、電は頷き、周りを見渡すとハッキリ告げた。

 

「私と………あの3隻の深海棲艦との過去………お話しするのです。」

 

その様々な感情を堪えたような物言いに、磯風は、何故か緊迫した物を感じた。




初期艦を名乗る深海初代艦娘との、最初の海戦回。
様々な艦娘を登場させている以上、色々な場面で活躍させたいという想いがあります。
今回は、皐月が、意地を見せる場面が印象的だったでしょうか?
改二の彼女は、守り刀を持っている為、最後の切り札なのかと思いました。
それにしても、駆逐艦が入り混じった夜戦は、目まぐるしい物になりそうですよね。
艦娘達にしてみれば、近づいて必殺の一撃を叩き込む華の舞台ですから。
さて、次回からは謎だった電の過去編です。
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