艦隊これくしょん ~受け継がれる想い~   作:擬態人形P

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第98話 ~ネームシップの勘~

「この磯風も、電達と出撃か。」

「ええ。電を連れて行く以上、爆撃は艦隊に集中すると思うの。だから、佐世保の守りは涼月達に任せて、貴女は前線に出向いてくれない?」

「任せろ。………って、他の第二十五駆逐隊の仲間は留守番か?」

「流石に、連夜の出撃はなるべく避けたいからね。」

 

翌日の夕方。

起床した磯風は、執務室に呼ばれて提督代理の陽炎から指示を受けていた。

今度、敵陣に乗り込む艦隊は、前夜と同じく3つであるが、遊撃部隊の許可を貰った為、7人編成を3組作る事が出来た。

また、夜戦に優れている纏め役として、軽巡の川内も、いよいよ夜戦に乗り込む形になっており、本人は腕が鳴るとの事。

他にも艦隊の特徴としては、渦中の人である電を始めとした初期艦仲間や、第六駆逐隊の仲間も入っている。

 

「他に何か質問はある?」

「電の状態はどうなっている?」

「………やっぱり、みんなそれを聞いてくるのね。」

 

陽炎は軽く嘆息すると、説明をする。

彼女の話だと電は、ヴェールヌイと共に、砲撃訓練を念入りに行っているらしい。

 

「悪いけれど、今は話しかけちゃ駄目よ。ヴェールヌイ曰く、本人は集中したいらしいから。」

「そ、そうか………しかし………なぁ………。雷や暁はどうしている?」

「雷は電の代わりに部屋の整理をしてあげているわ。暁は本人なりに情報収集しているみたいだったから………何か質問があるならば、彼女に聞いたら?」

「確かに、第六駆逐隊の旗艦だし、ネームシップだからな………。」

 

駆逐艦の中でも更に小さな外見故に、お子様扱いされる事が多い暁であるが、実際には第六駆逐隊を取り仕切っている。

更に、あの電の事情を知っていた上で、しっかりと旗艦の役目を果たしていると考えれば、実は相当なやり手なのかもしれない。

 

「今は、桟橋近くで夕食を食べているはずよ。今日の当番は巻波だったかしら?」

「じゃあ、またカレーか。何かこういう時に限って、アイツが食事当番だな………。」

 

とりあえず、陽炎に対し、ありがとうと言うと、磯風は去ろうとする。

しかし、そこで待ったが掛かった。

 

「あ、そうそう………。1つ言い忘れていたけれど、初春も何か色々とみんなに聞いていたわ。気掛かりな事があるみたいで、昼に出撃している金剛さん達の所に今行っている。」

「初春が?アイツ、そんな自分から積極的に動くタイプだったか?」

「ネームシップの勘みたいなのが、働いているのかもしれないわね。」

「………それは何処から分かるんだ?」

「ネームシップの勘からよ。」

 

濃い面々の中で忘れがちになりそうだが、初春も陽炎も、ネームシップだ。

妹艦達を率いている故に、姉御肌としての力を持ち合わせている。

それ故に、いざという時は妹艦達から見れば、心強い面もある。

只、どの艦もやや抜けている所も持ち合わせている故に、たまに忘れる事があるのだ。

完璧超人はいないと言えば、その通りなのだが。

 

「まあ、初春にも会ったら何か聞いてみる。すまないな。」

 

今度こそ、磯風は執務室を去り、桟橋へと向かって行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

桟橋では、巻波が完成したカレーを、紙皿に載せて、皆に分け与えていた。

磯風は彼女に、とりあえず電の事を聞いてみる。

 

「先に食事を取って、またヴェールヌイと一緒に砲撃訓練に行っちゃったね………。」

「そうか………。まあ、昨日の今日では、まだ艦娘の輪に入り込めないのは当然か。」

 

とりあえず、巻波からカレーを貰った磯風は感謝をすると、暁を探す。

彼女は、綾波や白露、朝潮と一緒に会話をしていた。

 

(今日は、ネームシップと出会う事が多いな………。)

 

1番艦同士で苦労を分かち合えるのだろうか?と思った磯風は、少し抵抗があったが、その輪に混じっていいか聞いてみる。

 

「あ、磯風も一緒に食べます~?今夜の暁達の出撃に備えて、色々と情報共有しているんです~。」

「ありがとう。磯風も、参加させてくれ。」

 

意外なほど簡単に許可を貰ったので、磯風も座り込みカレーを食べる。

暁はというと、熱心に敵艦の特徴を聞いて、知識に取り込んでいた。

 

(暁は、海戦時は真面目だが………ここまで真剣な姿は、横須賀でもあまり見ないな。)

 

余程、電の為に力になりたいと思っているのだろうか?

そう考えた磯風は、敢えて聞いてみる。

 

「なあ、暁………。敢えて聞かせてくれ。電と第六駆逐隊を組む事になって、抵抗は無かったのか?」

「え!?な、何言ってるの!?………そりゃ、大人のレディだから………!」

「すまない、真面目に答えてくれないか?」

「………最初は、そりゃ嫌だったわよ。味方殺しの艦娘と組むなんて。でも、形式上仕方なかったし、何より………。」

「何より………?」

「組んでいる内に、色々と相手の本質は分かるじゃない。………電が本当に、味方を殺して喜ぶような艦娘だったら、改二になる前に退役しているわ。」

 

頬を膨らませながら、顔を背ける暁の姿を見て、自分達には把握出来ないような様々な事情があったのだと磯風は推測する。

実際、味方殺しという汚名は、沖波の轟沈に関わった磯風自身にも関係している。

直接的であるかと間接的であるかという違いであって、沖波を捨て艦にする状況を作り出した磯風も、間違いなく咎人なのだ。

その咎人と付き合っていく過程というのも千差万別であり、それを乗り越えた絆があるというのも、磯風は知っていた。

 

「悪かったな………。第六駆逐隊の絆を疑ったわけじゃないんだ。無礼を許して欲しい。」

「べ、別にいいわよ………。ゴメンね、みんなに心配掛けて。」

 

謝る暁の姿を見て、磯風は思わず頭を撫でたくなったが、そしたら確実に怒られるのでそれは止める。

しかし、場を暗くしてしまったので、どうした物かと磯風は悩んでしまう。

だが、そこに、意外な人物がやって来た。

 

「なんじゃ?皆で暗くなって。折角のカレーが不味くなるであろう。さっさと温かい内に食べんかい。」

「初春?」

 

磯風達の姿を見かねて話題を変えに来てくれたのか、初春がカレーを紙皿に持ちながらやって来た。

彼女は遠慮なく磯風達の輪に割って入ると、カレーを食べ始める。

 

「確か………陽炎の話だと、金剛さん達の所に行っていたと聞いたが………。」

「うむ。わらわには、今の電をどうにかする事は出来ぬからのう。じゃから、少し確認をしとった。」

「確認?」

 

独特の古風な喋り方をする初春は、金剛達の戦況を確認していたと磯風達に説明する。

そして、一転真剣な顔になると、磯風達を見渡し、少し顔を寄せる。

どうやら、あまり周りに聞かれたくない話であるらしい。

 

「まさか………何かあったのか?」

「ああ、金剛殿達は大丈夫じゃ。小破・中破・大破いずれも出とったが、轟沈した艦はおらん。すぐに船渠(ドック)入りがされるじゃろう。」

「なーんだ、ビックリした………。」

 

白露が胸を撫でおろす中、朝潮が怪訝な顔をして聞いてくる。

 

「じゃあ、何を確認してたの?」

「被害状況の詳細じゃ。小破艦や中破艦は、深海初代大潮の小鬼達や艦載機にやられたらしい。すばしっこく動くみたいじゃからのう。」

「暁達も、戦う時は気を付けないといけないわね………。」

「後は、大破艦じゃな。いずれも、深海初代睦月と深海初代時雨にしてやられたらしい。」

「確かに、あの機動力と射程は脅威ですね~。」

「………何が言いたいんだ?」

 

特に小声で話す内容でも無いのでは?と思った磯風であったが、カレーを食べ終わった初春は、顔をしかめると、扇子を取り出し火照った顔を仰ぐ。

 

「鈍いのう………。気付かんのか?」

「気付くって………何に?」

 

本気で首を傾げる白露を見て、初春はゲンナリした顔で、自分の電探を弄り出し、磯風達にこっそりとチャンネルを合わせるように言う。

 

「昨日の夜戦の状況を説明するぞ?まずは、深海初代時雨の発言じゃ。」

 

「僕達ヲ見タネ………。デモ電ハ、イナイミタイダ。」

「ソレハ、コッチノ台詞ダヨ!」

「ナブラレテ沈メ!」

 

流れて来た深海棲艦の荒っぽい発言を聞いて、磯風達は訳が分からなくなる。

初春は何を言いたいのだろうか?

そんな中、彼女は次の深海棲艦の発言内容を振り返る。

 

「これが、深海初代睦月じゃ。」

 

「電チャンハ、佐世保カナ?ジャア、爆撃スルシカ無イカニャ?」

「睦月ニ追イツコウナンテ100年早イニャ!」

「睦月ヲ、侮ッテル?」

 

続いて聞こえて来た内容を、注意深く確認するが、初春の意図はまだ分からない。

彼女は最後に、残った1隻の音声記録を再生する。

 

「最後じゃ、良く聞け。深海初代大潮。」

 

「ソノ前ニ、コノ艦娘達ニ思イ知ラセテヤリマショウカ?」

「大潮ノ方ガ、優レテイルカラデス!」

「浮遊要塞ヲ、飛バシマス!」

 

「……………?」

「まだ分からんか?」

「そもそも、何でいきなり深海棲艦化した初代3人の発言内容を………?」

「殺意が足りていませんね………。」

「ん、何っ?」

 

ここでいきなり綾波が小声で物騒な発言をしたので、磯風は思わず大声を出しそうになり、慌てて口を押さえる。

初春は、うむという感じで首を前に振ると、更に小声で言う。

 

「おかしいと思わんか?金剛殿達の被害状況は、昨夜の被害状況に酷似しておる。小破艦や中破艦は、深海初代大潮に出されているのに、大破艦は深海初代睦月と深海初代時雨にしか出されていない。」

「それって………。」

 

確かに昨夜の海戦も、深海初代大潮の操る浮遊要塞や小鬼群、そして攻撃機によって、海風の艦隊は小破艦や中破艦が続出した。

しかし、大破艦は、深海初代睦月による皐月と、深海初代時雨による時雨と白露だけだ。

 

「冷静に考えれば………戦術がおかしいんじゃよ。もしも、わらわが敵の立ち位置で、再生能力を持った浮遊要塞を盾に自由に攻撃機を使えるのならば、小破艦や中破艦を多量に出すより、まずは大破艦を1人作って、連携を封じる。」

「言われてみれば………。よくよく考えれば、敷波の艦隊だと、時雨が航行不能になっていた上に、白露が庇って大破していたのだから、レ級達と一緒に、まずはそこを叩くわよね。」

「白露達が舐められていた?いえ………違う。電を苦しめる為ならば、本来ならば轟沈艦を作ってもおかしくない。それに………。」

 

白露の目線に合わせて、艦娘達が空を見上げる。

空には、攻撃機の群れは見当たらない。

最初こそ、物量に任せた敵の爆撃に苦しめられたが、それ以降は音沙汰がない。

 

「レ級を含めた航空戦力を管理しているのは、深海初代大潮ですよね。でも、電探の記録音声を聞く限り、明らかに殺意が他の2隻に比べて低いです。」

「艦娘を沈めたい深海初代時雨や、佐世保への爆撃を推奨する深海初代睦月がいるのに、ここまで何も動きが無いのは………。」

 

暁達は、電の昔話を思い出す。

彼女に恨み節を告げたのは誰だったか?

彼女に憤怒の目を向けたのは誰だったか?

そんな中、彼女達を最後まで止めようとしたのは誰だったか?

 

「初春………君はまさか………。」

「あくまで予想じゃ。それ故に、皆の者………特に電には、まだ告げられぬ。じゃが………。」

「もしも、その予想が合っていたとしたら………。」

 

全てを理解した磯風は、思わず息を呑む。

傍で聞いていた他のネームシップの艦娘達も、一斉に初春に注目した。

 

「深海初代大潮は、電に恨みを抱いておらぬ。………それどころか、あやつは………深海棲艦になりながらも、正気を保てとるぞ。」

 

彼女の推理を前に、磯風達は、只々衝撃を受けるばかりであった。




出撃前の、各ネームシップ達の会話。
実は吹雪や睦月を含め、1番艦が沢山集まっていたので、今回の話を作りました。
各ネームシップ達の鼓舞の仕方や妹艦の引っ張り方は、多種多様だと思います。
そんな中で、一癖も二癖もありそうな初春に、推理をして貰いました。
その推理が当たっているかどうかは、今後の展開次第になります。
只、次回からはまた激戦ですので、宜しくお願いします。
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