仮面ライダーダブル ~Eを求めて~   作:松浦

2 / 3
一章 第二話

 

Pastを求めてpart.2

 

風都の事なら何でも知っていると自負する情報屋に聞いてみたら案外早く大道克己の情報自体は見つかった。

「大道克己?聞いたことはあるんだけどねぇ。昔、交通事故で亡くなったんだけど。その人についてだったら、変わったうわさが一部流れていた気がするんだけど。」

「え⁉もう死んでる?」

高架線の下、俺は聞き間違えかと思い電車の走る音に負けないよう、情報屋に大声で聞き返した。

「その話、もう少し詳しく教えてくれないか?」

「ええと、あれは十年位前の事だったはず。ある無名科学者の女の人が女手一つで育てていた息子さんが交通事故で亡くなったの。引いたのは宅配業者の人。飲酒運転だったらしく、その男が捕まる時にその女の人は号泣していたらしいの。」

「……それって、どこら辺が変わったうわさなんだ?」

じれったくてつい口をはさんでしまうと、彼は少し気分を害したような表情を浮かべる。

「少しは人の話を最後まで聞くってことできないの?ほら、亜樹子ちゃんを見習って……って、寝ちゃってるじゃないの亜樹子ちゃん!」

見やると、スカーという気の抜けるような寝息を立てて気持ちよさそうに、手足をピンと伸ばした状態で直立したまま眠ってしまっている亜樹子。おまけに鼻提灯までしっかりと作っている。

「おい亜樹子ォ!」

「あ、翔太郎くん。おはよう。そしておやすみ。」

一瞬目を大きく開いて驚く亜樹子。だがすぐに俺の肩におでこをこつんと当てて、二度寝をしようとしていた。これでは話がまともにできない。

「お前、邪魔だから家帰って寝てろ!」

「翔太郎くんったら、ひどいなぁ。こんな美少女が隣にいるのに一人で帰れなんてむにゃむにゃ……」

完全に寝落ちしてしまった亜樹子を確認すると困ったような表情を浮かべ、静かに肩をすくめながら情報屋に向き直る。

「どうやら今日は無理らしい。また明日にしてくれないか?」

「翔太郎ちゃんも大変だね。それから……」

「ああ、忘れてた。すまねぇ。いつもありがとうな。これで美味しい物でも食ってくれ」

財布を取り出し、中から数枚の札を抜き取ると情報屋の手を取り握らせる。

「おい亜樹子。帰るぞ。」

彼女を担ぎながら情報屋に礼を言いその場所を後にする。

(どうやらこの件は長くなりそうだな。ん?)

情報屋と別れて10分ほど経った頃、丁度電車の通っている最中だったから轟音で気がそらされているせいもあり確実ではないが、微かに俺たちを付けている気配がしたような気がした。心の中で1.2.3と数え3の拍子に立ち止まり、即座に振り返る。暗がりに紛れて何も見えない。だが何かが動いている気配はする。10秒ほど経ち、目が慣れて来たらやっと正体が分かった。

ゴロゴロゴロゴロニャーゴ

「猫か。フッ、何か食べるか?」

可愛らしい三毛猫だったが、手を差し出すとその瞬間には指から血が出ていた。遅れて鋭い痛みが走る。

「ッテェ……施しは受けるつもりはないってか。見た目は可愛いが近づくと痛い目に遭う。どこかの誰かさんみたいだ。」

指を抑えながらその場を後にする。俺が痛い目に合っているのも知らないまま背中の亜樹子はむにゃむにゃまだ言っていた。

(それにしてもさっきの気配、獲物をじっくり観察するような目線だったような…俺の思い過ごしかな。猫が俺を襲おうとしていたに違いない。うん、そうだ。)

 

同じ頃、情報屋はさっき貰ったお金を握りしめ、彼お気に入りの、風都で最も美味しい移動式ラーメン店に向けて人けのない道を歩いていた。

(今日は久しぶりの臨時収入だし、奮発して麺増しにしちゃおっかな、それとも卵…いや背脂も良いな)

と、その途端後ろから突き飛ばされ、前に転んだ。ゴッと鈍い音がして鼻が地面にぶつかる感覚がした。注意しようと振り返る。

「いったいなぁ。ちゃんと前見て歩いてくだ…さ…い…」

凍り付いた。

ぶつかってきた人は人らしからぬ見た目をしていた。からだ全体が灰色で頭の形と言い、体の様子と言い、まさしく化け物だった。以前、翔太郎達がこんな怪物を相手に戦おうとしているのを見たことがある。名前は、

「ドドド、ド、ドーパント!ふぐっ」

地面に這いつくばって逃げようとするがすぐに思いっきりおなかを踏まれ意識が飛びそうになった。完全に戦意を喪失したところで彼の頭をその手で軽々と持ち上げ、体が宙ぶらりんになる。そこでやっと終始無言だったドーパントが彼に囁く。

「――――――――――――」

情報屋の目が大きく見開かれた。

 

翌日、情報屋の所に行くと彼は昨日とは随分と雰囲気が変わっていた。

「よぉ、情報屋。昨日の続きを聞かせてもらうぞ。」

「しょ、翔太郎ちゃん。昨日の事なんだけど、結局あれ他に何もな、無かったよ。ごめんごめん。」

「そうなのか。なんだ。単なる同姓同名ってだけか。珍しいな。大道なんてそんな沢山いるような苗字じゃないと思うんだが。それより大丈夫か?汗が沢山出ているぞ。それに顔色も相当悪い」

彼をよく見ると玉のような汗がびっしりと顔じゅうに流れていてあの特徴的な髪の毛も随分と顔に張り付きボリュームが減ったように見える。そしてくちびるまで真っ青だった。

「な、何でもないよ。そ、それじゃあ何も無いならぼくは帰らせてもらおうかな。」

「おいちょっと待てよ。今日のお前なんかおかしいぞ?まだ金も渡してないのに」

細い両肩をがっしり掴み逃がさないようにしてから話しかけたが、『金』という単語を聞き真っ青だった彼の顔色はもっと悪くなり翔太郎のもとから逃げ出そうとまでし始めた。

「お、お金なんていらないよ?き、きょうは何も教えてないし。」

「あ!おいちょっと待てよ」

翔太郎の腕からするりと抜け出し情報屋は駆けていった。

(なんか今日の情報屋、いつも変だがそれよりもはるかに様子が変だったな)

思い返せば昨日帰った後にもいつもと明らかに様子が違う人がいたのだった。

 

昨日、猫に引っ掻かれた後、俺は背中に亜樹子という重い荷物を背負いながら事務所にたどり着いたのだった。じっとりと蒸していて、着ていたYシャツも肌にピッタリ張り付いていた。耐えられなくなった俺は某二人で半分こにして食べたくなるアイスを冷凍庫から取り出して、フィリップにも差し入れとしてガレージに持っていった。

「おーい、フィリップ。パ〇コ食べるか?」

「やあ翔太郎。早かったね。〇ピコかい?ありがたく頂こう」

こうしてフィリップとパピ〇を分け合って食べた。

「ああ、冷たさが体中に染み渡るぜ。」

「実に興味深い。口から入ってきたアイスが何故ここまで全身を涼しくするのだろうか」

「おいおい、そんな面倒なこと考えないで頭を空にして食えよ」

「フフッ冗談だ。」

その後俺は情報屋に聞いたら色々と知っていそうな事、肝心なところで亜樹子が眠ってしまったので聞けなかった事などを話した。

「おいフィリップ。俺が調べられたのはここまでだったが、お前の、『星の本棚』での大道克己の検索結果はどうだったんだ?一つぐらい情報は出てきてないか?」

夢中になってアイスを吸っていたフィリップの動きが止まった。

「出てきたことは出てきた。でもすまない。君に言うことは出来ない。」

「出来ない?なんだってそんな。俺とお前は二人で一人なんだろ?情報が無いと何も出来ないんだが」

フィリップは今までに見たことが無い程悲しそうな顔をして告げたのだった。

「今回だけはだめなんだ。でも、この依頼は引き受けないわけにはいかない。僕が時期を見て本当の事を言うよ。翔太郎、君には迷惑をかける。」

この様に相棒から言われ、少しでもその荷を減らせる情報を手に入れられるかと希望を持って、今日情報屋に会いに来たのだが結局空振り。どうせ、ただの同姓同名なだけだったのだろう。

(俺って何かの役に立てているのかなあ)

そんなことまで思ってしまう。

これからどうしたものか、とズボンのポケットに手を入れた瞬間、俺の指先はその中に小さな紙が入っていると伝えてきた。

急いで取り出して読む。それは、情報屋からのものだった。一目で完結に相手へ伝えるに、これ以上の言葉があるだろうか。

手紙には一言、『たすけて』とだけあった。

 

すぐさまフィリップに呼びかける。

ジャケットから重みのある黒い物体を取り出し勢いよく下腹部に振り下ろす。シャッという小気味良い音と共にそこから出てきたベルトが勢いよく巻かれる。

「フィリップ」

『ああ。いつでも構わない』

「「変身」」

振り被ったメモリーを合図に合わせてボタンを押すとジョーカー、と効果音が流れる。

事務所のガレージでフィリップがサイクロンメモリーを挿したようだ。緑色のUSBのようなメモリーが右側のバックルに出現する。それを穴の奥まで左手で突き刺すと。右手に持っていたジョーカーメモリーを左側の穴の奥まで突き刺す。そしてそのバックルの下の方を中心に左右に開く。いつものように『サイクロン・ジョーカー』と音が流れ、俺たちは右側が緑、左側が黒の仮面ライダーダブルへと変身した。

『今回はどうしたんだい、翔太郎。』

「今は説明している暇がねえ。後で言う。」

『分かった。』

ダブルに変身した俺たちはどんなにフィリップの本体が離れていても会話をすることが出来る。

バイクにまたがると、情報屋がいつもいる『あそこ』へ狙いを定めた。バイクのエンジンを吹かせながら俺たちは風都タワー目指し、一直線に走る。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。