風都タワーまであと500メートルくらいのところだった。俺たちが襲撃を受けたのは。バイクで走っていると、5メートルくらい後ろを追いかけている黒いバイクの姿があった。搭乗しているのは、灰色の姿のドーパント。所々青白く光っていて頭からは真っすぐに一本だけ角が生えている。少し動きがぎこちないがどのような能力を持っているのか分からないから出方を図るべきだろう。
『翔太郎。』
「ああ。分かっているさ。」
交差点で急にバイクをターンさせ、ドリフトして減速しながら追いついてきた追跡者のバイクを蹴る。前に戦った事のあるバイクに乗っている雑魚ドーパントと違い、全く運転のぶれる気配がない。こちらへ向かって一直線にバイクで走ってくる。
「フィリップ、ルナトリガーだ」
バックルに挿してあった二本のメモリーカードを抜き取ると今度は黄色のルナと青のトリガーメモリを取り出し代わりに挿す。
『ルナ・トリガー』
即座に右が黄色、左が青のダブルルナトリガーへと変身した。ルナは伸縮能力、トリガーは銃の能力で組み合わせると追尾弾となる。
ドーパントへ向けて乱発すると、そのうちの一発が奴のバイクのマフラーへ着弾した。エンジンから煙を噴き出し停止する。
そのドーパントの動きを止めている間にもまた先ほどのサイクロンジョーカーに変身し、ジョーカーメモリを腰の差込口に挿してその上からボタンを押す。
『ジョーカー、マキシマムドライブ』
そのメモリの力を奥底から引き出すのがマキシマムドライブだ。高く飛びあがり、ジョーカーエクストリームを決めようとした。だが、それは出来なかった。
飛び上がる前に後ろから強烈なバイクでの体当たりを食らったのだった。地面に転がさられ、強制変身解除させられてしまう。『翔太郎!』というフィリップの声を聞きながらも俺の目の前は深い闇に包まれる。意識を失う直前に、ドーパントが乗った黒いバイクが複数台、風都タワーに向かうのが見えた。
「…ぅ太郎、翔太郎!良かった、気付いたんだね」
目を開くと見慣れた緑色の服。
「おう、フィリップじゃねーか」
どうやら相棒が助けに来てくれたらしい。リボルギャリーの熱い鉄板の下でエンジンが轟音を響かせて高速移動しているのが分かる。
「イテテ…まさか同じようなドーパントが複数いるとはな」
「色々聞きたい事はあるけど、そろそろ風都タワーへ着きそうだ。ひとまず後回しにして今はドーパントに集中しよう。」
「ああ。」
「今回はファングジョーカーで行こう。」
「は?大丈夫なのか?」
「心配しなくて大丈夫。それより君はさっきまで気絶していたじゃないか。」
風都タワー前に着いたらしい。リボルギャリーが大きく開く。外に出てみると、その目の前にはさっきのドーパント達に首を掴まれ苦しんでいる情報屋の顔があった。
「翔太郎ちゃん!助けに来てくれたの!」
「ああ、情報屋さんよお。間に合ったみたいだな。それじゃあいっちょ行くぜ、相棒。」
「任せてくれ、翔太郎。」
その言葉を待ってたかのようにフィリップの手のひらに小さなロボットの恐竜が乗る。それを反対の手で上から押しつぶすように折りたたみ他のメモリーよりは大きいファングメモリーへと変形させる。そして振りかぶる。
「「変身」」
ジョーカーメモリーを挿し込んだ瞬間、からだ中から力という力が抜け、地面に倒れ込みながら意識を失う。そして本物の肉体が地面に倒れて身動きもしなくなったころには俺はフィリップの変身したダブルファングジョーカーの左側となっていた。このフォームだけはフィリップが主体で変身するのが特徴だ。右側が白いボディで他のメモリーとは一線を画した、変わったフォームでもある。
「さあ、お前の罪をかz…っぶねぇな、最後まで言わせろ」
問答無用で殴り掛かってくるドーパント達。
「おいフィリップ、これで良いのかよ。」
『大丈夫だ。僕を信じたまえ』
その言葉と共に彼はバックルから飛び出ているファングメモリー特有のレバーを下に押す。
『アームファング』
手首付近から白い刃が伸びる。
相手は似た顔をしているドーパント5人組。しかも量産型とは思えないほど一体一体が強力だ。武器を出している最中にも情報屋を捕まえている一体を除き四体に囲まれる。
『翔太郎』
「ああ」
言わなくても相棒が伝えたい事は全て分かる。囲んでいる四体のうち、一体に突っ込み下から振り上げたアームセイバーで切りつける。そのまま返す刀で切りつけ、その勢いのまま隣のドーパントにも強力な一撃。残りの二体がひるんだ隙に全力の回し蹴りで吹っ飛ばす。
そして情報屋を捕まえているドーパントの元へ一跳びで行くと、アームセイバーをそのドーパントの首に引っ掛けて地面に引き倒し、その拘束から情報屋を救い出す。
「おい情報屋!」
鮮やかな手並みで瞬く間にドーパント五体を引き倒した俺たちを見て彼は唖然としていた。
「怪我は無いか!」
「はっ、はい……」
「よおし、それなら良かった。一寸待ってな。あいつらを倒してくるから」
立ち上がると、もう回復した先ほどのドーパントたちに遊びの終了の言葉を告げる。
「さあ、お前の罪を数えろ」
先ほどは不意を突いて倒せたが、同じ策は通用しない。苦戦することが見込まれた。
『翔太郎、サイクロントリガーに変身だ』
「変身ったって今はお前の身体で変身してるんだろ?そんなの出来るのかよ。」
『僕を信じたまえ』
そう言うと彼はサイクロン、トリガーメモリーを取り出し、代わりにファングとジョーカーメモリーを抜く。待機音がしてから先ほど取り出したメモリーのボタンを押す。
(作者注:原作改変すいませんっ!どうしてもダブルをVシネみたく沢山変身させたかったので……)
『サイクロン・トリガー』
ベルトから音がし、ダブルは一瞬のうちに右が緑、左が青のフォームへと変わる。サイクロンメモリーは風の力を有し、トリガーメモリと組み合わせると威力を犠牲にする代わり速射、かつ広範囲への攻撃が可能となる。
慎重に近づいてきたドーパント達に弾幕代わりに打ち込む。目くらましをした隙に別のメモリーでフォームチェンジ。
『ルナ・メタル』
黄色と銀色のフォーム。メタルメモリーは長い金属棒、メタルシャフトが使え、ルナと掛け合わせると鞭のように扱える。そのまま五体とも吹っ飛ばし、風都タワーの壁に打ち付ける。
『ヒート・メタル』
右だけフォームチェンジで熱の能力が使えるようになる。メタルシャフトを赤々と燃え上がらせたまま五体のドーパントに素早く打ち込む。
『翔太郎』
「ああ。」
『サイクロン・ジョーカー』
高く飛びあがり、必殺技、ジョーカーエクストリームを浴びせた。着地すると、その後ろでメモリーブレイクを伴った爆発音が聞こえる。パキン、というガイアメモリーが強制排出され割れる音がした、その直後。
「キャーーーーーーッ!人殺し!」
「「うん?」」
振り返ってみると、さっき俺たちがメモリーブレイクしたドーパントの中身と思える人が倒れたまま起き上がらなかった。
「し、死んでる……おいフィリップ、こいつぁどういう事なんだよ」
「僕にも分からない。どうしてこうなったのか。」
誰もが身動きが出来なくなっている、静かな空間で一人の男が俺たちの後ろまで歩いてきた。そして立ち止まるとポケットからあるものを取り出す。
『アブソリュート』
その音に反応し急いで後ろを振り返った俺たちの脳天に重い一撃のかかと落としが直撃する。ゴッという鈍い音がして地面に組み敷かれた。先ほどのドーパント達と比べられないほど強い。関節がギシギシと悲鳴を上げ、一瞬のうちの無力化。そしてその直後に奇妙なことが起きた。そのドーパントの力でバリアのような立方体の中にそのドーパントと共に閉じ込められた。そして、
「か、体が……」
『上手く……動かせない……』
そのドーパントの能力によって、指一本動かせなくなっていた。もう押さえつけられていないにも関わらず。硬直している身体をごろりとそいつが足でひっくり返し、それによって初めてそのドーパントをまじまじと見ることが出来た。
漆黒のボディに体中を血管が浮き出るように燃えるほど赤々とした線が走っていて、頭からは悪魔のように醜く曲がりくねった短い角が二本覗いている。だが一方で、スリムな体で仮面ライダーをドーパント化したらまさしくこうなるであろうという、いで立ちをしていた。
「この町を守る仮面ライダーともあろう者が無様なものだな」
よく聞き覚えのある声で、一言そう告げるとそのドーパントは去って行った。
「う、嘘だろ……おい待てよ親父さん!!!」
そいつは振り返らずに視界から消える。結界が解除され身体の自由を取り戻せた時には、もうその姿はどこにも無かった。
(あの声、間違いなく親父さんのものだった……)