科学技術全盛時代に精霊の居場所は   作:はなみつき

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ティアラメンツ・ダイブフュージョン


潜水融合

 この十年の悩み事を初めて他人に話すという事で多少は気が楽になった今日この頃。

 壱世壊=ペルレイノに行く方法を色々と考えているのだが、やはり思いつかない。GXだったなら次元の歪み的な場所から精霊界へと行っていたような気がするが、それはデュエルアカデミアの特殊過ぎる立地が関係していたはずだ。

 5D'sではデュエルモンスターズの精霊に導かれて龍可が精霊界へと訪れていたはず。使えるとしたらそっちの手法だろう。しかし、俺は龍可みたいにシグナーという訳ではなければ三人娘(ティアラメンツ)も人間を精霊界に連れて行くようなことは出来ないらしい。

 

 という訳で、ペルレイノを訪れる方法探しに関しては八方塞がり気味だった。

 

「いつもありがとうございます。またお願いします」

「どうも」

 

 そんな時に気分転換に来るのが原作キャラの溜り場こと、Café Nagiである。

 出来立ての美味いホットドッグが食える店が他にあるならそこに行くのだが、探してみると意外とないもので、食いたくなったらここに来るしかない。

 原作キャラに会わないなんて事は主人公勢と同じ高校に進学した時点で無理なわけだし、好き好んで事件に巻き込まれたい訳では無いが、かと言って避け続けるのも無理な話。

 それなら食いたいものを食って満足すれば良いという結論に至ったのは今は昔の事で、俺はここの常連となっていた。

 

 そうして今日はCafé Nagiが出しているイートインスペースの4人掛けテーブルを占領して一休みいれている。

 

『ねえ、それ美味しいのかしら?』

「ん? 美味いよ。流石に紙袋まで食い尽くす程じゃないけど」

 

 対面に座っている(ように見える)シェイレーンは俺の持つホットドッグに興味があるようだが、残念ながら精霊の彼女にこの味を体験させる術を俺は知らない。

 

『とても美味しそうですね~』

『……食べてみたい……』

「そう言われてもなぁ……」

 

 ホットドッグをデュエルディスクの上に置いたらホットドッグ召喚とか出来ないだろうか? 仮に出来たとしてもこんな公衆の面前でホットドッグをデュエルディスクの上に置く変な人間にはなりたくない。

 彼女達と話すのは耳にインカムをつけて「ハンズフリー通話ですよ~」って顔でやってるからまだセーフなはず。

 

「うーん……君達の方でホットドッグの霊的で精神的な何かを取り出すとか出来ないの?」

『はぁ? そんな訳分からない事出来る訳無いじゃない』

「でしょうね」

 

 まあ、知ってた知ってた。最初からそんな事が出来るとは思ってなかったさ。

 

『あ! それだったら、これならどうでしょうか!』

 

 そう言って立ち上がったメイルゥがこちらを向く。

 

『……えい!』

「うわっ!」

 

 かと思ったら突然俺に向かって飛び込んできた。咄嗟の出来事に流石にびっくりしてしまい、イスをガタリと動かし大きな音を出してしまう。

 

「お客さん? どうかしましたか?」

「あ、いえ! すいません、その……突然大きな声を出されて驚いたもので」

「ああ、そうでしたか」

 

 言いながら耳に付けているインカムを指で叩いて主張する。

 適当な言い訳だったが、どうやら草薙さんに不審がられることは無かったようだ。

 

「あれ? メイルゥはどこに行った?」

『ふふ……私はここですよ~』

「え?」

 

 飛び掛かって来たメイルゥはいつの間にか姿が見えなくなったのだが、声は聞こえてくる。

 前を向いても口をパクパクしているシェイレーン、右を見ても『……なるほど、そんな手が……』と一人呟くハゥフニス。さっきまで俺から見て左の席に居たメイルゥはやはり居ない。

 

『ここですってば~』

「……えっ」

 

 今度はメイルゥの声が聞こえてくると同時に動かしたつもりがない俺の手が持ち上がり、指が俺自身の方向を向いている。

 

「な、何これ……」

『忘れてるかもしれませんが、私達は融合する事で真価を発揮するんですよ!』

「人間に憑りつく……いや、人間と融合する事なんて出来たのか」

『流石に普通の人にはやりませんし、そもそも出来ませんけどね。あなたには私達(ティアラメンツ)との繋がりがあって、私達(精霊)と親和性があるからこそ出来る技なんです』

 

 俺とお前で超融合、って事!? 

 

「大丈夫? 融合事故とか起きたりしない?」

『大丈夫です。あなたは私達を視ることは出来ますが、触ることは出来ません。それくらいの精霊との親和性なら、うっかり一つの存在になっちゃうなんて事はないはずです。……多分』

「そっかぁ……多分かぁ……」

 

 なんか一つまみ程の不安はあるが、俺が精霊をどうに出来るほどの能力を持っていないのは自分が一番よく分かっている。その能力の才能として精霊との親和性っていうものが必要なら、確かに俺はそこまでの親和性は持ち合わせてはいないのだろう。……多分。

 

『ほぁ~、これはホットドッグというのですか。サクサクパリパリでとても美味しいです』

『ず、ずるいわよ!』

 

 手に持つホットドッグを意識せず食べている。

 動かすつもりが無いのに勝手に身体が動くという不思議な体験だ。俺がメイルゥの動かそうとする意識に抵抗すれば簡単に抗える所をみるに、主導権みたいなやつは俺が持っているらしい。

 

「ん? ていうか、俺が食べてるのにメイルゥは味が分かるのか?」

『はい。この状態ならあなたが見て、聞いて、嗅いで、触って、そして味わった感覚は私も感じることが出来るのです』

「は~、精霊ってのは色々なことが出来るんだなぁ」

 

 精霊に対する新たな発見に感動を覚えながらも身体は勝手にホットドッグを食べ続ける。うん? なんだこれ。思考と行動がちぐはぐ過ぎて変な感じがするな。

 

『……じゃあ、次は私の番……』

『きゃん!』

 

 すると今度はハゥフニスが俺の方へと飛び来んで来る。二度目の事だったので跳ねるほどびっくりはしなかったが、普通に驚くのでやるなら一声かけてからやって欲しいものである。

 そして、ハゥフニスが飛び込んでくると同時に俺の中から弾き出される様にして飛び出て来たのはメイルゥだった。

 

「あれ? メイルゥが出て来たぞ」

『あいたたた……どうやらあなたの中に入る事が出来るのは一人までの様ですね』

「ふーむ、それも精霊との親和性ってのが関係してるのかな」

 

 しかし、精霊が人間の意識にダイブするような事が可能とは。これはティアラメンツ固有の能力なのか、それともシャドールみたいに同じ融合テーマのモンスターなら可能なのか。考えれば考えるほど謎である。

 この技を名付けるとしたら人間の意識に潜る潜水融合と言った所か。……口には出してこそいないが、技名を付けるとかこっぱずかしいな。

 

 そんなどうでも良い思考をしながらもやはり俺の身体はホットドッグをパクつき続けていた。

 

『……うまうま……』

「満足そうで何よりだよ」

 

 Café Nagiのホットドッグに舌鼓を打つハゥフニスの声は心なしか弾んでいる様に聞こえた。

 

『じゃ、じゃあ……私も』

「ちょっと待て、シェイレーン」

 

 流石に三度目だからな。

 

『え……二人は良くて、私との融合は、駄目……?』

 

 何を勘違いしたのか、イスから立ち上がったままの態勢でポロポロと涙を流し出すシェイレーン。

 

「いや、違う違う。いきなり飛び掛かられるとびっくりするから、やる前に一声かけて欲しいと思ったんだって」

『そ、そう……。私だから嫌って訳じゃないのね』

「そんな仲間外れみたいな事しないって」

 

 理由を説明して納得してくれたのか、シェイレーンは無事に泣き止んでくれた。

 そのまま彼女は俺の前に立つ。ハゥフニスはその間に俺の中から抜けていたようだ。

 

『それじゃあ、その……良い?』

「お、おう」

 

 事前に言うように頼んだのは俺だが、そう躊躇いがちに許可を取られると何だか無性に緊張してしまうな。

 そんな俺の緊張はよそに、シェイレーンは俺の中へと潜り込む。

 

『ゴクリ……』

「……」

『……』

「……えい」

『!?』

 

 いつまで経っても食べようとしないシェイレーンにしびれを切らした俺は彼女が身体を動かすのを待つのを止めてホットドッグを口に放り込む。

 ひとかけらと呼ぶには少し大きかったが、何とか一口に収める事が出来た。

 

『~~~~ッ』

「どうだ、美味いだろ」

 

 口の中のホットドッグをしっかり飲み込んでから自分の中に居るシェイレーンに語り掛ける。

 

『か、かりゃいわ……』

「ありゃ、シェイレーンはマスタード駄目だったか」

 

 

 

 

 裏ではDen Cityの広場にあるモニターでPlaymakerとハノイの騎士のデュエルが始まった所らしいが、そんな事は俺には関係なく彼女達の事をまた一つ知る事が出来た一日だった。




最近はスメールに住メールしてました。
思い出した様に更新していくよ。
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