科学技術全盛時代に精霊の居場所は   作:はなみつき

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三枚

 財前さんから二枚目のペルレイノを受け取った後、なんとなく具合が良くないと適当な理由を部長に告げて俺は部活を早上がりして家に帰って来ていた。

 

『それで、アンタがペルレイノに行く方法が分かったかもしれないって、どういうことなの?』

「まあ、まだ決まった訳じゃないけどな……」

 

 学校から家への帰り道の途中、三人娘(ティアラメンツ)に俺が見た光景の話は既にしていた。それに加えて、今回の件から予想できる壱世壊へ行けるかもしれないという事も。

 

「メイルゥは以前、俺に言ったな。俺には精霊に対する親和性は言葉を交わす程度しかないって」

『? はい、確かに言いましたね』

『まさか……アンタの精霊との親和性を今から上げるって言うつもり?』

『……出来るかできないかで言えば……出来る。でも……』

『それにはとてつもない時間が掛かってしまいます……』

 

 まあ、そうだろうな。彼女達の言う通り、俺自身の力を底上げするという事は可能なのだろうが、それには長い時間が必要になるだろう。

 筋肉みたいにどうすれば鍛えられるかという事が分かっている訳では無い、精霊との親和性というあやふやな物を鍛える方法なんて見当もつかない。考えられる事と言えば、精霊達とコミュニケーションをよく取ったり、デュエルをして絆を深めていくとかだろうか? 

 

「俺の精霊への親和性を今から上げるのは難しいだろう。でもその逆なら出来るかもしれない」

『逆?』

私達(精霊)からあなた(人間)への干渉力を高めるという事でしょうか?』

「まあ、多分そういう理解であってると思う。自分でもなんて表現すれば良いか分からないんだけどな……」

 

 俺から精霊達に対する働きかけの方向ではなく、精霊から人間()への働きかけの力を強めれば良いのではないか。

 それがここ最近の経験から予測した俺の推測だ。

 

「さっき、二枚目のペルレイノを手に入れた時。俺は確かにペルレイノという世界を見ていた。だけど、その時目の前に居た財前さんは「俺が放心していた」という認識でしかなかった。つまり、俺自身は別の世界に移動したという事では無かった」

 

 あの時、俺はペルレイノに居た訳では無く、文字通り見ていただけだったのだろう。

『壱世壊=ペルレイノ』というカードを壱世壊への扉だとしたら、少しだけ開いた扉の隙間から向こう側を覗き込んでいただけで、扉の向こう側に超える事は出来ていなかったんだ。

 

『それじゃあ……アンタがペルレイノに行く方法って……』

『……カードを集める……』

「そう言う事だ」

 

 それに、思い返せば俺は自分が思っている以上に精霊から影響を受けたことが何度か有るじゃないか。

 

 一つ目はスペクターの聖天樹の大母神(サンアバロン・ドリュアトランティエ)

 ドリュアトランティエが俺に触れる事が出来たのも、スペクターが同名カードを何枚も所持していたからこそ、彼女の人間への干渉力というものは普通の精霊よりも強力だったのだろう。

 これは完全にイメージの話になってしまうが、あの男ならサンアバロンカードを無限回収していても全くおかしくはない。

 

 二つ目は他でもない三人娘(ティアラメンツ)。俺は彼女達を最初に買った時にそれぞれ三枚ずつ購入している。

 いくらティアラメンツが融合テーマだったとしても、俺の身体に融合して感覚を共有したり、限定的とはいえ俺の身体を自由に動かしたりするというのはやはり何かがおかしい。

 俺と彼女達との繋がりが強いからというのも間違いではないのだろうが、彼女達にそんな事が可能な大きな理由はやはり三枚のカードがこの場に集まっている事によって人間への干渉力が強くなっていたからなのだろう。

 

 そして、三つめは……『神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)』のカード。

 あの時の効果の対象は俺に対してでは無かったが、あのカードが三枚揃った時、カードの持つ力が強まっていたのは間違いなかったはずだ。

 その結果、ミドラーシュが全てを理解したと言っても過言ではないのだから。

 

「せめて後もう一枚……。三枚、ペルレイノのカードを集めれば俺も向こうの世界に渡ることが出来る……気がする」

『……なんだかはっきりしないわね』

 

 そう言わないで欲しい。残念ながら、確証があって言っている訳では無いのだ。

 二枚でペルレイノの扉は隙間が出来るくらいには開いたのだ。なら、もう一枚あれば半開きくらいになって人間の一人くらい通れそうなもんだろう。

 

『でも、光明が見えてきましたね』

『……今までは手掛かりも何も無かったから随分マシな状況……』

 

 メイルゥとハゥフニスの言うように、今まではどうすれば良いのか、何をすれば良いのかすら分からない状況だったのだ。それを考えれば目的がはっきりしたという事に間違いは無いのだから。

 

「よし、そうと決まったらペルレイノのカードを探すぞ!」

『結局のところ、これまでと方針は変わらないって訳ね』

『ふふ……今までやって来た事は間違ってなかったって事じゃないですか』

『……物は考えよう……』

 

 やるべきことは確認できた。

 しかし、今もそこそこ力を入れてティアラメンツカードを探しているが、あまり成果は出ていないのが現状だ。

 となると、少し趣向を変えてカード探しをしなければいけないかもしれないな。

 

 既に足を使っての捜索は行っている。

 友人の伝手を使って気にかけてもらうようにはしている。

 あまり使いたくない手だが、インターネットの力も利用している。

 となると、あと俺に出来る手段は……

 

「ダメ元で精霊に聞き込みでもしてみるか……」

 

 とは言え、多くの野良精霊達は人間世界に存在するカードの情報なんて持ち合わせては居ないだろう。

 強いて言えば、マスカレーナは力に成ってくれそうだ。彼女がどういった方法で人間界の情報を手に入れているのか不明だが、かなりの事情通な事は確かである。秘匿されているPlaymakerの正体を把握しているところからも、何らかの手段で情報を入手する手段を持ち合わせているはずだ。

 

 他に聞き込みするべき精霊は決闘者に憑いている精霊か。そういった精霊達なら人間のマスターについて回る事で人間界にあるカードの事情に詳しい可能性がある。

 だが、俺がかつて所持していた精霊付きのカードを譲渡した人達で、今もコンタクトが取れるのは島くらいだ。

 なぜなら、俺が精霊付きのカードを渡した人物は知り合いとは限らないからである。精霊達がどういった基準で決闘者(マスター)を決めているのかは知らないが、精霊を連れて街を歩いているとある日突然「私はあの人について行きたい」と言い出すことがあった。

 俺からすればただの通行人の他人だ。だが、彼・彼女達からすれば運命の人みたいなものなのだろう。

 

 そんな時は精霊と別れを告げた後、勇気を振り絞って「ラッキーカードだ。こいつが君のところに行きたがっている」とかGXの遊戯みたいな事を適当に言いながらカードを決闘者へ無理やり押し付けて姿を消すというのを数回やったものだ。

 

 そんな訳で、俺はあいつらのマスターについて詳しい事は知らないし、連絡先だって知らない。

 

 そう考えると俺の知り合いである島に譲渡された『グリーン・バブーン』は極めて珍しいケースであると言える。

 だけど、グリーン・バブーンは人間の言葉を話せないからなぁ……こっちの言葉を理解してはいるんだろうけど……。聞き込みをする相手としては不適切だろう。

 

 あれ? となると、もう会いに行く相手はほとんど決まってるみたいなものじゃないか? 

 

「今度マスカレーナに会いに行ってみるか……」

 

 とりあえず、次LINK VRAINSに行くときは三人娘にしっかりと説明してから行かないとな。

 

 




小話

今レイノハート戦の構想をチョコチョコしているんですけど……このままだとマスカレーナがリンクマーカーの供給原としての役割を全うするだけで、ただの応援役になるかもしれない……

ま、可愛いからいっか!彼女にはチアリーダーになって貰うとしよう(思考放棄)

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