科学技術全盛時代に精霊の居場所は   作:はなみつき

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ライフポイント

 世良  VS  レイノハート

 

 LP4000    LP4000

 

 1ターン目が終わり、お互いにライフが削られていない状況。

 高速化した現代デュエルにおいて1ターン目は先攻プレイヤーにとっては攻撃が可能となる後攻プレイヤーの猛攻を防ぐための妨害をどれだけ立てられるかが勝利への鍵となり、後攻プレイヤーにとっては相手が展開した妨害をどう躱していくかが肝となる。

 先攻のレイノハートは再びターンが回って来て、後攻の俺は攻撃には失敗したものの相手の妨害を剝がしたうえで防御を固めるという展開に持って行くことが出来た。

 そういう意味ではどちらも1ターン目の目的は達成できたとも言える。

 

「私のターン、ドロー」

 

 2ターン目に入り、レイノハートもモンスターによる攻撃が可能となる。これからが俺の真の防御ターンとも言える。

 

「『強欲で金満な壺』を発動。EXデッキのカードを六枚ランダムに裏側で除外し、二枚ドローする」

「手札増強か……」

 

 奴の手札は先のターンでゼロ枚になっていたが、これで二枚。手札が一枚しかないか、二枚あるかでは出来る事の幅が増えるため警戒が必要だ。

 EXデッキのカードを五分の二を失ってでもする価値がある二枚ものドローは貴重だという事である。

 

「魔法カード、『簡易融合(インスタントフュージョン)』。ライフを1000払い、EXデッキから『レア・フィッシュ』を融合召喚する」

 

 レイノハート

 

 LP4000 → LP3000

 

『レア・フィッシュ』

 レベル4 ATK1500 水

 

「む……」

 

『レア・フィッシュ』。

 遥か昔の融合モンスターの一枚であり、効果も無ければステータスも貧弱。今更正規の方法で融合召喚する人なんて居ないだろう。しかし、様々な召喚方法が実装され、正規の方法以外での召喚が容易に可能な現在ならかつてのバニラ融合モンスターは手軽に特殊召喚出来る素材モンスターとして活躍する事がある。

 

(『トロイメア・ユニコーン』を今使って素材の内にデッキへ戻すか……。だが、効果は無効化されているとはいえ、優秀なステータスを持つカレイドハートや蘇生効果を持つキトカロスが残っている。誘いの可能性もあるから展開を最後まで見て考えるのが良いか)

 

 俺はマスカレーナの効果は使わず、レイノハートの動きを見極めることにした。何より、戦闘耐性を持っている『エルシャドール・アプカローネ』をこのタイミングでリンク素材にして良いものかというのも大きな理由だ。

 

「さらに手札から『壱世壊に渦巻く反響(ティアラメンツ・グリーフ)』を発動! デッキからティアラメンツモンスターである『ティアラメンツ・レイノハート』を特殊召喚し、そのモンスターと同じ種族または属性のモンスターを一体を墓地へ送る。私は『ティアラメンツ・キトカロス』を墓地へ送る」

「またイラストが見えないカードか……」

 

 またしてもそれは俺の知らないティアラメンツカードであり、やはりそのイラストは靄に覆われていて見ることは出来ない。

 再びデッキから現れた『ティアラメンツ・レイノハート』がデッキに鞭を差し込む。

 

「特殊召喚されたレイノハートの効果と墓地へ送られたキトカロスの効果を発動! デッキから『ティアラメンツ・シェイレーン』を墓地に送り、デッキの上からカードを五枚墓地へ送る」

 

 レイノハートはデッキからカードを五枚墓地へ送る。通常公開情報である墓地はデュエルディスクの機能で確認できるが、そういった相手の情報に関する機能が動作していない現状ではその確認すらできない。

 

「折角枯らした墓地がまた……」

「貴様の涙ぐましい抵抗など、無意味! デッキから墓地へ送られた『壱世壊に軋む爪音(ティアラメンツ・メタノイズ)』と墓地へ送ったシェイレーンの効果を発動! 『壱世壊に軋む爪音(ティアラメンツ・メタノイズ)』効果によってキトカロスをEXデッキに戻す。そして、墓地のシェイレーンとメイルゥをデッキの下に戻し、融合! 再び現れろ、我が僕! 『ティアラメンツ・キトカロス』!」

 

 どうやら今墓地へ送られた五枚の中に融合素材となるメイルゥも居たようだ。

 墓地へ送られても再び現れるバイザーを付けたキトカロスはカレイドハートに付き従うかのように後ろに立っている。そんな姿を見て居られないのか、三人娘は何か言いたげだ。

 

「そして、特殊召喚に成功したキトカロスの効果によって、デッキから『壱世壊に奏でる哀唱(ティアラメンツ・サリーク)』を手札に加える」

 

 レイノハートが手札に加えたカード。それは俺の知らないティアラメンツカードだったが、今までとは違い、そのイラストははっきり見ることが出来た。

 そのイラストは三人娘を守るキトカロスと彼女を痛めつけて笑っているレイノハート。そして、臨戦態勢をとるこの世壊の主人公、『ヴィサス=スタフロスト』が描かれていた。

 

(酷いイラストだッ……。ん? このカードも俺は知らないが、何でこれは普通に見えている?)

 

 ふとした疑問が頭をよぎるが、今もデュエルは続いており、レイノハートのターンは終わっていない。

 

「さらに私はレベル4の『レア・フィッシュ』と『ティアラメンツ・レイノハート』をオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚、『深淵に潜む者』」

 

『深淵に潜む者』

 ランク4 ATK1700→2200 水

 水属性モンスターをX素材としているためATK500アップ。

 

「『深淵に潜む者』!? まずい! そのカードを残す訳にはいかない! マスカレーナの効果を発動! 相手ターン中にこのカードをリンク素材としてリンク召喚する!」

 

『深淵に潜む者』はX素材を一つ取り除く事で、そのターン相手は墓地のカードの効果を発動できなくするカード。しかも、この効果は相手ターンでも発動できるため、俺のターンでこの効果を使われてしまってはティアラメンツもシャドールも完全に機能不全に陥ってしまう。

『深淵に潜む者』の召喚を許す前に『レア・フィッシュ』を処理しておかなかった俺の判断ミスだ! 

 

「どうやらこのカードの効果は知っているようだな。だが、遅い! その効果にチェーンして『深淵に潜む者』の効果を発動する。X素材を一つ取り除き、効果を発動する」

「くっ……現れろ! 想いを繋げるサーキット! 召喚条件はカード名が異なるモンスター二体以上! マスカレーナとアプカローネをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク3、『トロイメア・ユニコーン』!」

 

『トロイメア・ユニコーン』

 LINK3 ATK2200 闇 リンクマーカー:左、下、右

 

『深淵に潜む者』の召喚に対してマスカレーナの効果を発動し、『トロイメア・ユニコーン』をリンク召喚する。

 

「このカードがリンク召喚に成功した場合、手札を一枚捨て発動。フィールドのカード一枚をそのカードを持ち主のデッキに戻す。戻すのは『深淵に潜む者』だ!」

「『トロイメア・ユニコーン』によって『深淵に潜む者』は私のデッキに戻るが、このターン貴様は墓地のカードの効果を使うことは出来ない。『超電磁タートル』が墓地にある事は知っているぞ」

 

『深淵に潜む者』の効果が残存しているためアプカローネの墓地効果も使えない……。

 

「バトル! キトカロスで『トロイメア・ユニコーン』を攻撃!」

「ぐっ……」

 

 世良

 

 LP4000 → LP3900

 

 マスカレーナを素材にしてリンク召喚されたモンスターは効果破壊に対する耐性を獲得するが、戦闘破壊に対しては無力だ。

 ユニコーンはキトカロスが振るったナイフによってあっさりと切り捨てられる。

 

「カレイドハートでダイレクトアタック!!」

「……ッ!」

 

 目の前に迫った水底の悪魔(カレイドハート)はその鞭を振るい、巨大な穂先が俺の身体を貫通した。

 

「がッ!! ……う……ぎ……」

 

 世良

 

 LP3800 → LP900

 

 普段行うデュエルで受ける仮想ダメージとは比べ物にならない程の激痛に、俺は言葉にもなっていない音を口から漏らす事しか出来ない。

 残り僅か900のライフポイントが実際に自分に残された命と同じである事を直感的に理解した。

 

 心臓を穿たれたような激しい痛みに俺は仰向けになる様にして倒れ込んでしまう。

 そんな状況でも手札のカードを放さなかったのは意地だったのかもしれない。

 

『あぁ……駄目……』

『倒れないで下さい!』

『……そんな……そんな事……』

『ラッセさん!!』

「終わりか。久々の戯れがこの様な幕引きとは、興ざめだな」

 

 俺の意識は深い闇の中へと落ちて行く。

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