科学技術全盛時代に精霊の居場所は   作:はなみつき

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お兄ちゃんの選託

『君にはまず、お疲れ様と言うべきなのかな。少年』

 

 a-vidaの攻撃の光が辺りを包み、全てを真っ白に塗りつぶした。その次の瞬間、俺の視界に入ってきたのはそれまでの光景とは一転して真っ黒の何もない空間へと変わっていた。

 そこで待ち受けていたのは以前この空間に来た時と同じ様に、『星杯に誘われし者』の姿をしたギルスだった。

 

「……ハノイの塔に囚われていた精霊達はどうなったんだ?」

『奴がデュエルで負けたことで、彼等をデータとして押し込める事が出来なくなった。そうする事であの塔の一部を形成していた精霊達は自分達の世界に戻って行ったよ』

 

 良かった。イレギュラーなデータである精霊達が解放されたのなら、これでハノイの塔の完成状況は原作通りの進捗になるはずだ。そうすればPlaymakerがリボルバーをデュエルで倒して今回のハノイの騎士事件は一旦の終結を迎えるはず。

 

「それにしても、結局双星神に助けられる事になっちゃったな」

 

 限られた手札でカードを破壊する事もままならない。直前でネフィリムが墓地に送られた事で手札に回収した『影依の偽典(シャドール-ク)』があったから次のターンでミドラーシュの特殊召喚をしてディンギルスかオーケストリオンを墓地へ送る事は出来ただろうが、流石にそれでは遅すぎただろう。

 あの場面でリースのフィールドのモンスターとオルフェゴールで重要な墓地リソースを枯らせることが出来たのは大きい。

 

『ふっ……あいつもお節介な奴だからな。次のカードを1枚引いてみると良い。それが君の本来のドローカードだ』

 

 ギルスが俺のデッキを指差しながらそう言う。

 彼の言葉に従い、デッキトップを1枚捲る。

 

「あ」

 

 ドローカードは『ティアラメンツ・シェイレーン』。あのターンのドローカードがこのカードだったら……まず、『壱世壊を揺るがす鼓動(ティアラメンツ・ハートビーツ)』でリースのフィールドの『オルフェゴール・アタック』をデッキに戻した後にシェイレーンを墓地へ送る。

 そうしたら、シェイレーンの効果が発動して最初のターンで使ったメイルゥとシェイレーンを素材にキトカロスを融合召喚出来る。キトカロスの効果でデッキのハゥフニスかメイルゥを墓地へ送ればさらにその効果が発動してルルカロスの融合召喚を行える。もし、ディンギルスをこのタイミングで特殊召喚されて、キトカロスを墓地へ送られたとしてもキトカロスの効果は問題なく使うことが出来る。

 そして、ルルカロスがフィールドに立てば彼女の効果でそもそもスケルツォンの特殊召喚効果を無効化することが出来る。

 

 『オルフェゴール・アタック』が無くなったのならルルカロスで安全にディンギルスへ攻撃して、400の戦闘ダメージを与えて……俺の勝ちだ。

 

「ははっ……本当に頼りになるなぁ……。でも、それで俺が勝ってもガラテアが……」

『? 君と共に居る彼女の力を借りれば、ガラテア(あの子)の中に潜む奴を引きずり出す事も出来ただろう。彼女が傍に付いている。それも君にあの子を預けた理由の一つだ』

「ええ?」

 

 彼女って……マスカレーナの事か?だが、申し訳ないけどマスカレーナにそんな真似が出来るとは思えない。

 もしかして、ギルスが言う彼女とはミドラーシュの事か? 確かに、シャドールと言うモンスターの中には、元となるモンスターの魂が奪われる事で、魂を失った肉体がシャドールモンスターへと変化した者も居る。そして、その魂を奪ったり、魂が抜けた肉体を操ったりしていた筆頭はネフィリムと……ミドラーシュだろう。

 ミドラーシュの力でリースの魂だけをガラテアの身体の中から引きずり出すことが出来たって言うのか? そのためには確か、真空管みたいな物も関わっていたような? 

 

「でも、LINK VRAINSにミドラーシュは来られない。あの場に居ないのにどうやって?」

『ああ、なるほど。そこから勘違いしているんだな』

 

 勘違い? え? もしかして、ミドラーシュはいつも俺と一緒にLINK VRAINSに来ていたののか? 

 

『あの仮想世界、LINK VRAINSと言ったかな。そこにも影はあるだろう?』

「そりゃまあ、太陽も再現されているし、光があれば影も出来る」

『当然、その世界の少年の身体による影も出来る訳だ。君の影は一種の象徴(アイコン)だ。君達が持つカードが我々と君達の世界を繋ぐ扉の役割をしている様に、君の影は彼女が住む場所と君とを繋ぐ扉なのだ』

 

 何だって? いつの間に俺の影は異世界へ繋がる様になっちまったんだ……って思ったけど、『影依の原核(シャドールーツ)』が飲み込まれたり、食い物が飲み込まれたりしていた訳だし、そこは今更か。

 

『君と言う存在から映し出された影はそこがどこの世界だろうと君と言う存在の影だ。なら、そこが人間界だろうと、精霊界だろうと、仮想世界だろうとその影を通じて彼女は世界に干渉する事が出来る。まあ、それ程の干渉力を持つのも、彼女の精霊としての力の強さと、君との繋がりの強さがあってこそだがね』

「はぁ……。まじかよ……」

 

 視線を足元に落としてみると、そこには見慣れた自分の影がある。そして、自分の身体の動きに反して影が独りでに動いて右手がOKサインとなっているのもここ最近でよく見慣れた動きだ。

 となるとあの時、間に合うはずがなかった『バトル・フェーダー』の効果を使ってくれたのは俺の身体を影糸で操作した彼女だったという訳だ。

 

「ん?」

 

 真っ暗なこの空間でどうして影があるんだ? いや、そもそもこれだけ暗いのにギルスの姿はハッキリと見る事が出来ている事から本当に暗い訳ではないのか? 

 地面も周囲と同じ様に黒色なのに、影だと判別できるほどクッキリと色が浮いておりとても奇妙だ。

 

「お前、そんな事も出来るなら先に言ってくれよ……」

 

 しゃがんで自分の影をベシベシと叩く。他人が見れば奇行にしか見えない行動だろう。

 

「いてっ」

 

 俺が影をはたき続けていたのに据えかねたのか、影の中から何かが飛び出て来て顔にぶつかった。

 地面に落ちたそれを手に持って見ると、表が白紙のカードだった。

 なんだこりゃ? 

 

「ところで、あんたはガラテアの中にリースが潜んでいた事も知っていたんだろう?」

『まあな』

「それなら、どうしてアイツを放っておいたんだ?」

 

 ギルスが俺にガラテアを預けた時、その時点でリースをどうにかしていれば話は早かった。まあ、そうする事が出来なかったと言われてしまえばそれまでだが、忠告の一つくらいくれても良かっただろうに。

 

『君は知っていただろう?』

「そりゃまあ」

 

 ……

 え? もしかして、俺がガラテアの事情を知っているから話を省いたのか? 言葉足らずが過ぎるだろ……。

 

『私があの子の傍に居ても、未来は変わらなかっただろう。何をどうやっても、私と言う存在が関わってしまえばあの子は一度消えてしまう』

 

 ギルスの語りを俺は遮らずに聞くことにした。

 

『だが、違う世界に住む君なら、また違った未来を引き寄せる事も出来る。私はそう考えた……ふむ、君の傍であの子は色々な事を経験したみたいだな』

 

 ギルスが手を出すと、そこに6つのジャックナイツのコアが現れる。

 

『グリフォン。傲慢を司る魔物。初めての敵対者はその傲慢な思想から君に危害を加えようとした。だが、そんな人物の行動は忠義の心からくるものだという事を知った』

 

 紫宵のコアが輝く。

 LINK VRAINSで俺に襲撃を仕掛けて来たおっさんハノイの騎士の事だろう。

 

『フェニックス。怠惰を司る魔物。給仕を受ける客たちは代金と言う代価を支払っているが、それを知らなければさぞ怠惰に見えた事だろう。だが、そんな彼らにも真摯な心で奉仕する彼女達の勤勉さを知った』

 

 紅蓮のコアが輝く。

 ドラゴンメイド喫茶で働くスタッフ達とハスキーの事だろう。

 

『ゴブリン。強欲を司る魔物。強欲にも金に目がくらんで怪しい仕事を請け負った君は敵対者の罠に嵌まる所だった。だから、分別と言うものを弁えたあの子は君を金のかからない遊びに誘った』

 

 翠嵐のコアが輝く。

 うっ……あの虚無バイトの事か。それを言われたら少し弱い所がある。

 

『ケルベロス。暴食を司る魔物。初めて食べる人間界の食べ物に、あの子は我慢が出来なかった様だ。その結果、共犯者に逃げられ、思わずもう一人の共犯者を密告した。あの子はどうやらその事を少し気にしていたらしい。何事も我慢、節制が必要だ。そうあの子は思った』

 

 燈影のコアが輝く。

 スペクターと二度目の遭遇をした時だな。まあ、ミドラーシュは反省しているどころか、全く気にしている様子は見せなかったが。

 

『マーメイド。嫉妬を司る魔物。あの子は旧友と再会して喜ぶ君を見て自分の知らない君を知った。そんな知らない君を引き出せる彼女達にどうやらあの子は嫉妬してしまったらしい。かわいいね』

「ん?」

『だが、彼女達から君に、君から彼女達に向けられる友愛の情はとても良いものだと気が付いた。それは他人に対する慈愛の第一歩だ』

 

 紺碧のコアが輝く。

 三人娘(ティアラメンツ)がペルレギアで行われる祭りへ誘いに来た時の事だろう。

 

『そして、ユニコーン。憤怒を司る魔物。だが、人の怒りと言うものは長くは続かない。いずれは受け入れられる。それは寛容と言うものだ。あの子は何も言わずに妹として受け入れてくれた君の寛容さに甘えることが出来た』

 

 黄華のコアが輝く。

 

「寛容か……。そうは言っても、俺はリースを許すことなんて出来ないな。そんな俺が寛容だろうか?」

『ふっ……。人と言うものは悪徳だけでも、道徳だけでもない。その二つを併せ持ってこそ人だ。君は怒る事もあるし、許すことも出来る普通の人間だ。だからこそ、君を選び、あの子を託した。もし、君が完全に道徳を極めた人間だったとしたら、そんな奴を私は信用しない。それに、君が徳に優れた人間だったとして、奴の性根を叩き直す事は出来なかっただろう。あいつにも出来なかった事だからな』

 

 ギルスが懐かしむように口にした「あいつ」と言う言葉。彼が双星神の事を呼ぶときも同じように「あいつ」と言っていたが、恐らくここで示しているのは神としてではなく、幼馴染としてのアウラム()の事だろう。

 

『もう一つは……まあ、いいか。あの子にはまだ早い』

 

 あ、最後の色欲を飛ばしたな。

 色欲を司る魔物であるサキュバス。そのサキュバスを象徴するトロイメアモンスターについて触れたくなかっただけかもしれないが。

 

『あの子は君と共に日々を過ごし、様々な事を学んだ。良き事と悪しき事。その日々の経験はこれから来るあの子の未来での指針になるだろう』

 

 ギルスの手の周りに集まっていた6つのジャックナイツのコアは俺のデュエルディスクから現れた蒼穹のコアと交わり、光を放つ。

 

『奴に意識を消され、双星神(あいつ)に再誕させて貰う以外の可能性を、君はこの子に与えてくれた』

 

 眩い光の中から現れたその姿は……

 

「ガラテア」

『お兄ちゃん』

 

 リースの人の心をささくれ立たせる様なゾワゾワする感じは全くしない。俺の事をお兄ちゃんと呼ぶ彼女はまさしく俺が知っているガラテアだ。

 

『お兄ちゃん』

 

 ガラテアはこちらに近付いて来ると、ミドラーシュが投げつけて来た白紙のカードを持った俺の手を持ち上げる。

 

『ありがとう。お兄ちゃん』

「……ああ。どういたしまして」

 

 すると、手に持っていた白紙のカードにイラストが刻まれて行く。

 描かれたイラストはガラテア、いや、OCGで『星遺物トークン』として扱われていた物によく似ている。だが、名称の部分には『ガラテア』とだけ刻まれており、そのほかのテキスト関連は空白だった。

 デュエルディスクを使ってのデュエルが主流のこの世界ではトークンカードと言うものは存在しない。全て機械が生成してくれるからだ。テーブルでデュエルをする時は皆コインや予備カード等を代わりに使う事になって居る。

 

『これからこの子が未来でどのような音を奏でるのか。君がいつか聞いてくれることを願う』

「楽しみが増えたよ」

 

 ガラテアは俺から離れ、ギルスの方へと向かう。

 そろそろ、お別れの時間だろう。ガラテアをギルスの元へ帰す。それは俺のお兄ちゃんとしての役割が終わりを告げたという事だ。

 

『改めて、君に感謝を』

 

 ガラテアと並んだギルスは軽く会釈をすると、ガラテアを伴って消えて行く。

 

『認めよう、少年。君は私に並ぶお兄ちゃんだ』

「ん?」

『さらばだ。弟よ』

「アンタの弟になった覚えは無いんだが!?」

 

 ギルスの意味不明な言動に思わず声を荒げてしまったが、ガラテアの『バイバイ、またね』と言う言葉はしっかりと俺の耳に届いていた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「ん……んん……」

『あ! 起きたんですね!』

 

 長く寝ていた時の様な気怠さが身体を襲う。こんなに長時間LINK VRAINSにログインする事はあまりないから身体が慣れていないのだ。

 マスカレーナは現実世界で俺が目覚めるのを待ってくれていた様だった。

 

『その……ガラテアちゃんは?』

「大丈夫。無事だよ」

『良かったぁ~~~。あのすっごいモンスターが攻撃してデュエルが終了したと思ったら、いつの間にかラッセさんはログアウトしてるし、LINK VRAINSはもう少しでバラバラになる所だったしで、一人置いて行かれた私はちょっと焦ったんですからね!』

 

 頬を膨らませながらそっぽを向くマスカレーナ。如何にも「私怒っています」と言うような素振りだ。

 

「ごめんごめん。まさか俺も勝手にログアウトされるとは思わなかったからさ」

『……良いですけどね。それで、ガラテアちゃんは今どこに?』

「ガラテアは……帰ったよ。自分のいるべき場所に」

『そうだったんですか……。サイバース精霊界を案内してあげたかったのですが、叶いませんでした……』

「そうだな。俺もまだまだガラテアに見せてあげたいものは沢山あった。一緒にペルレギアの祭りも見たかった。でも……」

『あれ? ラッセさんの横に置いてあるそれは何ですか? さっきまでそんなの無かったはずなのに』

 

 マスカレーナが指を差した場所。それは机の上。イスに座った俺の上半身が丁度影を作っている場所だ。

 そこに裏側で落ちている1枚のカード。それを手に取ると、マスカレーナに見せてあげる。

 

『あ!』

「また会えるさ」

 

 それは『ガラテア』のカード。

 オルフェゴールの名を冠さず、星遺物の名も冠していない。

 いつか、未来でギルスと同じ様にジャックナイツ・オルフェゴールの名を冠しているのか、それとも全く別の名を冠しているのか、俺には分からない。

 

 

 

 でも、新たなガラテアがこの世に現れる時、俺は彼女と再会できるだろう。

 

 

 

 


 

 

 

 

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Title:

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From:

 Live☆Twinチャンネル

 

本文:

 動画タイトル『【サイバース精霊界】激突!?神様達も大喧嘩?人間は必要?不要?あなたはどっち派? 私は味噌派!【割れる】』

 

 概要『なんだか最近みんなピリピリしてるね。雰囲気最悪って感じ。さっさと仲直りしてもらって、元のサイバース精霊界に戻って欲しいよ。私達は喧嘩なんてしないもんね!』『……ラーメンは醤油派』『は?』『……は?』

 

 URL→ttps://www.db.yugioh-card.com/yugiohdb/card_search.action?ope=2&cid=15631

 




これにて、一旦完結となります。
番外編で済ませるつもりが何だかんだでティアラメンツと同じくらい書いてしまいました。相変わらずデュエル描写で3回くらい死んだんでかなり大変でした。

VRAINSの2期も気持ち的には書いてみたいところではありますが、なーんにも話の内容は思い浮かんでいないので書かないかもしれません。

以下使わなかった裏設定

ガラテアちゃん特殊能力
ユニコーン→大鎌で触れた相手を強制的にログアウトさせるぞ!別に両断する必要はない。
グリフォン→ガラテアちゃんが大鎌を掲げて「ぺかー」ってすると、デュエリストはスキルを封印されるぞ!
フェニックス→大鎌で触れる事でウイルス等の仕込まれた罠を破壊するぞ!
ゴブリン→ガラテアちゃんが大鎌をブンブンふると、どこからともなくディヴェル、スケルツォン、カノーネ、オーケストリオンが現れて音楽を演奏してくれるぞ!演奏と一緒にガラテアちゃんも歌ってくれる。かわいいね。
ケルベロス→大鎌で触れる事でクラッキング・ドラゴンみたいにLINK VRAINSで再現されたモンスターを破壊するぞ!
マーメイド→どこからともなくイヴリース、イドリース、オルフェゴール・トロイメアが現れるぞ!迷惑だね。
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