「ところでさぁ~、世良君は私達にもっと他に聞かないといけない事があるんじゃな~い?」
「うんうん」
何やらセクシーなポージングをしながら何かを主張して来る二人。
ふむ……。
「それって新衣装? とても可愛いと思う」
女の子は取り合えず褒めろとは、俺の親父の言葉である。
彼女達の服装は俺の知らない衣装であり、キスキルに至っては長い髪をバッサリと切っている。そのせいで最初彼女達が誰なのか分からなかった訳だが、Evil★Twinの正装は人間界では浮きすぎるからな。悪魔の尻尾みたいなのも生えてるし。
ギリギリの所で「可愛いと思うけど、この世界で活動するつもりならもう少し落ち着いた服の方が良いと思うぞ?」と言葉を続けなかった俺は百点満点の対応だと自分を褒めてやりたい所だ。
「でしょー! って、ちがーう!」
「……がっくし」
どうやら服装について聞いて欲しかった訳では無いらしい。
おかしいな? 服装では無いとすると、やはり髪型を変えたことについて触れた方が良かったのか?
「こんなに鈍い子だなんて思わなかったわよ」
『まあ、ラッセさんは精霊に触れ過ぎていて少し基準が変なんです』
「流石はあのドリュアトランティアの果実をむしゃむしゃと食べた人間……。器が違うね」
キスキル、リィラにマスカレーナを加えてコソコソ話をしているが、この狭い部屋では何を話しているのかなんて全て聞こえている。
もしかしなくてもバカにされてるよなこれ?
ていうか、リィラが言ってるドリュアトランティアの実を食った件はその時何も知らなかったんだから仕方ないだろ!
「なら、これでどうかしら!」
「うわ!」
コソコソ話を切り上げたキスキルが突然こちらにやって来たと思ったら、突然俺の手を掴んで彼女の剥きだしのお腹に押し付けさせられる。
「いきなり何を………………ん?」
ぐっと彼女のお腹に押し付けられた俺の手から感じる感触は一見人の肌の様だったが、その奥には奇妙な硬さがある。へその当たりなので骨と言う事はないはず。
「? 何だこれ?」
キスキルに無理やり触らされた右手だけでなく、左手も使って彼女の細い腰を包むように触ってみても、やはり皮膚の下に硬い何かを触ることが出来る。金属かプラスチック? 何処を触ってもその感触は変わらない。
それに、皮膚だと思ったそれも良く触ってみれば少し違う気がする。皮膚を摘まんでみても人間の様に持ち上がらない。まるで、下にある何かにピッタリと張り付いているみたいだ。
「ちょ、ちょっと……流石に少しくすぐったいんだけど……」
「じー……」
『じー……』
「どうしたんだこの身体?」
彼女達はデュエルモンスターズの精霊だ。普通の人は精霊を見る事は出来ないし、触ることも出来ない。俺は見ることは出来るが、人間界では触ることは出来ない。
ドリュアトランティアの様に意味不明な干渉力を持つモンスターはこちらに物理的な接触をしてきたが、俺の方から彼女へ触ろうとしても恐らくそれは出来ないだろう。
ただ、場所が精霊界であるなら、彼女達は実体を持つ生き物であるため、人間の俺でも物理的な接触は可能となる。
人型のモンスターならその身体の構造と言うものは俺達人間とそう変わらないはずだ。
まあ、ティアラメンツの様に人型だが水中に適性があるモンスターであるならばそれ相応に人間との違いはあるだろうが。
だが、今触れているキスキルの身体はどう考えても普通の人間のそれではなかった。
「ふぅ……やっと本題を話せるわね」
『そんなに触り心地が良かったんですかぁ?』
「うーん、何と言うべきか……新感覚素材って感じ?」
『あ、はい。そうですか』
俺とマスカレーナが話をしていると、何故かキスキルとリィラがいそいそとジャンパーの前を閉め始めた。
前を閉めるなら外をうろついてる時に閉めるべきでは? タイミングおかしいだろ。
「コホン……それで、この身体の事なんだけど……」
キスキルが改めて説明をしてくれる。
「
「な、何だって?」
自分の口元が引きつっている事を自覚する。
「キスキル、流石に知らないと思うよ? まだ一般に発表はされてないみたいだし」
「あ、そっか。えっとね、AIを搭載出来るアンドロイドとして人間界の企業で開発されている物なんだけどね、どうも私達でも使えるみたいでとっても面白そうだったから試作品を貰って来ちゃったのよ」
SOLtiS……。
それは遊戯王VRAINS終盤で出て来るSOLテクノロジーの製品の名前だ。LINK VRAINSが閉鎖されて悪化した業績を立て直す起死回生の商品として発売されたSOLtiSは便利な労働力として一気に普及する。
ただ、その便利過ぎるアンドロイドは肉体を持たないAIである闇のイグニス
結局何が言いたいのかと言うと、今現在ではSOLtiSと言うものは世間一般では存在しないはずの物であるという事だ。勿論、研究・開発・量産化と言う過程を考えれば今の時期に試作品が存在している事は不思議ではないし、流通と言う段階も踏まえれば既にある程度の量産化も終わっている可能性もあるのだが、まだ一般に公表されていない物が外をうろついているというのは大問題だ。
きっとSOLテクノロジーは血眼になって探している事だろう。
「ちょっと失礼」
「いやん」
「意外と大胆だね」
俺はキスキルとリィラの首に付けているチョーカーを少しずらしてSOLtiSであることを示す菱形のランプの存在を確かめる。
マジじゃん……。チョーカーで上手い事隠れていたから初見で分からなかったんだ。
「ただ、貰ったのは良かったのだけど、人間界で活動するにあたってこの身体の置き場所に困ってしまったって訳」
「だけど、途方に暮れているそんな時、私達には人間界に住む知り合いが居たって事を丁度思い出したわ」
ああ、俺の事ね。
「それで、この部屋にこの身体を置いて欲しいの!」
「えぇ……」
精霊のお願いは大体聞いてしまう俺ではあるが、このお願いはすぐにYESとは返せない。
何故って? それは人間界で普通に問題になるからだ。
大抵の人間界にやって来た精霊がするお願いは「あれを見てみたい」だとか「あそこに行っていたみたい」だとか「あの
お願いの内容が俺と精霊の間だけの問題であるのなら良いのだ。
だが、今回は大企業SOLテクノロジーが関わっている。彼女達が何か証拠を残すと言うヘマをしたとは思わないが、SOLtiSと言う物的証拠を家に置いている事を万が一にでもSOLテクノロジーにバレでもしたら俺は大企業から新商品の試作品を盗み出した犯罪者になってしまう。濡れ衣で臭い飯を食わされるのは御免である。
「うーん流石に……」
「ダメかなぁ?」
リィラが上目遣いで俺の事を見て来る。
「やっぱり……」
「お願いだからぁ」
キスキルが祈る様に手を組んでこちらを見て来る。
「うっ……そんな目で見られても……」
「「……」」
ぐわー! そんな絵文字のピエンみたいな顔で迫って来るなー!
「あーもう! 分かったよ!」
「「やったー!」」
『ラッセさん……押しに弱すぎる……』
言うな、マスカレーナ。
それに、何も一生隠し通さなければいけない事も無いはずだ。数か月後には世間一般に流通し始めるのだから、その頃になればわざわざ隠す必要も無くなるだろう。
それまでは絶対に見つからない場所にしまっておく必要はあるが……。
「やっぱり押せば通ったね、リィラ」
「そうね、キスキル。これで人間界の活動拠点ゲット」
おーい、聞こえてるぞー。
やっぱりSOLtiS預かるの止めようかなぁ???
「そう言う訳だから、これからよろしくね!」
「よろしく」
「はぁ……」
そんな感じでまた俺の部屋は狭く騒がしくなるのだった。
『それで、ラッセさんはどこにあのデカいアンドロイドを隠すつもりなんですか?』
「そうだな……押し入れは……オカンが開ける可能性があるからダメだな」
『他には?』
「……」
『え!? もう候補無しなんですか!? 余りの無策さにビックリなんですけど!?』
「…………あ、そうだ」
『倉庫でも借りるんですか?』
「ミドラーシュ、頼めるか?」
「きょわ!?」
「ひえっ!」
『うわぁ……キスキルさんとリィラさんが突然動き出したラッセさんの影の中に引きずり込まれて行きましたよ』
「うん、ここなら
「びっくりしたぁ……」
「突然影が身体に纏わりついて来るとは……ていうか、一瞬でよく見えなかったけど中に何か居なかった……?」
『あ、二人とも出てきましたよ。……下半身はまだ影に埋まってますけど……』
「なんか絵面がアニメの最後に「トホホ……」って言ってそうなアレみたいになってるな」
「「良いから早く出して―」」
『トホホ落ちと呼ばれるアレはアイリスアウトって言うんだって!(^◇^)』