科学技術全盛時代に精霊の居場所は   作:はなみつき

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カードの精霊

「どうぞ。これはサービスだ」

「あ、どうも」

 

 先ほど俺達と自己紹介を終えた草薙さんが俺の前にコーヒーを置いてくれる。

 ここは草薙さんが店主を務めるCafé Nagiの仮設テーブル。キスキルとリィラに捕まえられた遊作は話がある事だったので落ち着ける場所と言う事でここを提案してきた。

 

「そう言えば、世良君は遊作とメイド喫茶に行ったそうじゃないか。遊作はその時の事を全く話してくれなくてね」

「草薙さん、今その事は関係ないだろう」

「へいへい、お嬢さんたちもどうぞ」

「あら、ありがとう」

「どーもどーも。でもごめんなさい。私たちは頂けないわ」

「おっと、コーヒーは苦手だったかな」

「えーっと、そういう訳ではないのだけどね」

「すみません、二人の分は俺が貰ってもいいですか?」

「ん? それは構わないけど」

 

 飲み物を拒否する二人に対して草薙さんは釈然としない表情を浮かべているが、どう説明するにしても精霊の話からしないといけないので申し訳ない気持ちになってしまう。

 いやまあ、この人達なら納得はしなくとも理解はしてくれそうだから話しても良いのだが、今からその話をするのは唐突で意味不明だし、何より大変だからな。

 

「それで、藤木は何が聞きたいんだ?」

 

 心の中では彼の事を遊作と呼んでいる俺だが、普段から関わりは全くと言っていい程無い。なんなら以前ドラメ喫茶に行った時に初めて会話をしたレベルの交友関係だ。

 いや、初対面で一緒にメイド喫茶に行くってどういう事よ? いくら共通の知り合い(遊作がどう思っているか不明なので敢えて友人とは言わない)が間に挟まっていたとはいえ、俺と遊作の関係は意味不明過ぎるだろ。

 

「学校からずーっと彼の後をつけていたよね、君」

「え? そうなの?」

 

 キスキルが言うにはEvil★Twinの二人が校門前で合流した時点ですでに物陰から俺の事を見ている遊作に気が付いていたらしい。

 ……あ、そうか。だから普段全然見ない遊作を今日は珍しく学校で見かける機会があったわけだ。あれは俺の事を追っていたからなのか。

 

 こういう周囲をしっかり警戒している所を見るとやはり二人はヤバイ仕事をしている人間(精霊)なんだなと実感させられる。

 

「そうだな……まず、彼女……あのAIの子はどうなった?」

 

 遊作は少し聞きづらそうにしながらそう言った。それはガラテアの行く末がどうなったのかが不安になったからなのか、それとも見知らぬ人間であるキスキルとリィラが居ると言う状況でイグニスに関する事柄を言う事を躊躇ったからなのかは分からない。

 

「ガラテアか。彼女はあるべき所に帰ったよ」

「そうか」

 

 遊作は少し顔を伏せて何かを考える様な仕草を取ったが、俺の表情に悲壮感が全くないことに気が付いたのか、悪くない結果に落ち着いたことを悟ってくれたのだろう。

 

「本題はこちらだ。聞きたいことは三つある。ハノイの塔の事件発生時、お前はLINK VRAINSに居たな。アバターネーム、ラッセ。一つ、お前があの時行っていたデュエルの相手。二つ、そのデュエルで使っていたあの巨大なサイバース族について。そして三つ……世良は実際の所あの事件についてどこまで知っている?」

 

 俺とリースのデュエルの事は知られていたか。

 お馴染みのカメラコンビはplaymakerに引っ付いていたから俺の事は大っぴらには知られないと思っていたが、流石にa-vidaのあの巨体は巨大なハノイの塔の反対側とは言え隠しきれなかったか。なんかすげー光ってたしな。

 おそらくそこからそこで行われたデュエルのログを辿って俺に行きついたと言った所か。

 

 ……ていうか、そういえばa-vidaはサイバース族だったな。失念していた。そりゃ興味惹かれますわ。

 

「どうしてそんな事が知りたいんだ?」

「それは……俺が、playmakerだからだ」

「!」

「ハハ、LINK VRAINSの有名人がこんな身近に居たから流石に驚いたかな?」

 

 驚いた。

 だが、それは草薙さんが言うplaymakerの正体が遊作だった事に対してではない。そんな事は俺が生まれる前から知っている。

 俺が驚いたのは遊作が自分からplaymakerの正体を明かすようなことをしたからだ。草薙さんの反応を見るに、俺に正体を明かすことは承知の上での行動だったのだろう。

 

「あの日、お前はロスト事件について詳細は知らないと言ったな」

「ドラゴンメイド喫茶に行った日だな」

「草薙さんはしばらく黙っていてくれ」

 

 草薙さん興味津々か??? 

 

「だが、俺達がイグニスと呼ぶ意思を持ったAIと似た存在を連れ、サイバース族のモンスターを操っていたお前があの事件と全く無関係だとは考えにくい。世良が何かを隠している事は分かっている。だからこちらも秘密を共有した。教えて欲しい、あの事件について知っている事を」

 

 なるほど……。

 リボルバーからロスト事件の全容は聞かされているはずだが、結局のところリボルバーこと鴻上了見はロスト事件の黒幕ではない。黒幕である鴻上聖は遊作と対面した時点で死んでしまった訳だから彼としては自分の秘密を明かしてでもまだまだ知りたいことがあるという事か。

 

「…………さて……どこから話しをしたものか……」

 

 うーん……何というか……

 

「非常に申し訳ないのだが……、俺はロスト事件に関しては本当に知らない」

 

 申し訳ねぇなぁ。

 だけどこれはマジなんだよなぁ。

 ロスト事件に関して、この世界で生きる俺としてはニュースでやってたこと以上の事は知らないし、俺がリースとデュエルしていたのもサイバース族であるa-vidaを使っていたのも精霊関連という全くの別口なのだから。

 

「そんなはずッ……」

 

 俺の返答に対して納得がいかないとばかりに椅子から立ち上がる遊作だが、それを抑えて俺は話を続ける。

 

「ロスト事件には全く関係ないのだが、最初の二つに関しての質問になら答えられる」

 

 まあ、いいだろう。

 別にこれは秘密にしなければいけない様な事ではないのだから。

 話したところで誰も信じてくれないから誰にも話していなかっただけだ。

 仮に精霊に関する知識が悪用される可能性があったとしても、この二人ならそんな事はしないだろうし。

 

 俺が話す態度を見せたことで遊作は再び椅子に座り直し、草薙さんも横で話を聞く態勢になっている。

 

「藤木と草薙さんはカードの精霊って知ってるか?」

「「は?」」

 

 いきなりの話題転換に二人は虚を突かれた様な表情をする。

 

「まあ、そういう反応にもなるよな……最初の質問の答えだが、俺が相手をしていたのはこいつだ」

 

 椅子を少し引いて地面に向けて手を差し伸べる。そうすると俺の意図を汲み取ってくれたミドラーシュが影から一枚のカードを差し出してくれる。

 

「……ん??? ちょっと待ってくれ、今どこからそのカードを出した?」

「その話も後でしますんで」

 

 立ち位置の関係で遊作と草薙さんからは良く見えなかっただろうから変な場所からカードを取り出したように見えた事だろう。

 

「『星杯の妖精リース』?」

 

 

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