科学技術全盛時代に精霊の居場所は   作:はなみつき

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正義

「お、ここがワープゲートがある部屋みたいですね」

「やっと着いたか……」

 

 小夜丸と別れた後も俺とマスカレーナはこの巨大な建物をひたすら上へと昇り続けた。そして、ようやく貰ったメモに書かれた目的地へと到着することが出来た。

 

「小夜丸は大丈夫だろうか?」

「まあ、彼女はあれでもS-Forceで単独任務を任せられるエージェントですので実力は確かなはずですよ」

 

 ナイト・チェイサーの対処を彼女一人に任せてしまったが、今まで見て来た彼女の様子からするとややポンコツ感が否めない。

 まあ、マスカレーナがこうまで言うのだ。今は彼女の無事を祈ってひ弱な人間である俺は自分の事だけを考えた方が良いだろう。

 

「行きましょう!」

「あ、ちょっと待って」

 

 マスカレーナが早速部屋に入ろうとするのを俺は引き止め、足元の影に居るミドラーシュに声を掛ける。

 

「なあ、グレニャードを少し分けてくれないかな」

 

 そうすると、足元の俺の影からグレニャードが三個、影の中から浮かび上がってくる。

 地面に転がったグレニャードを手に取り、ピンを引き抜いてから少しだけ開けたドアの隙間から投げ入れる。

 

「念入りですねぇ」

「まあ、中で待ち伏せされたら大変だしな……さらに、もう一発!」

 

 時間を少しずらしてからもう一個のグレニャードのピンを引き抜いて投げ入れる。耳を澄ませると中から何人かの悲鳴と呻き声が聞こえてくる。

 

「よし。行くぞ、マスカレーナ!」

「うわぁ……」

 

 何故かマスカレーナが若干引いている様な気がするが、部屋の中にグレネードを投げ込むのはこういう場面では常套手段だろ? 残りの一発は予備として手元に残しておく事にするにする。

 

 扉を勢いよく開け放ち、中の様子を見てみると、一般職員と思われる精霊達が目を抑えて転げまわっている。そんな中でただ一人、仁王立ちをしてこちらに視線を向けてくる精霊が居た。その精霊は胸の装甲にS-Forceのトレードマークが刻まれたゴツい全身スーツを着込んでいる。頭部もバイザーが付いたヘルメットをしているため、グレニャードの閃光が効かなかったのだろう。

 

「ふむ……卑怯な手を使うジャスティスねぇ……」

「ん?」

「ジャースティスティスティス! だがしかし! ここは正義の砦、S-Force ブリッジヘッド! 狼藉物の好きにはさせないジャスティス!」

「なあ、あれってジャスティファイなのか?」

「うーん……そのはず……です」

 

 そこに居た精霊はS-Forceテーマにおけるエースモンスター、『S-Force ジャスティファイ』だった。その見た目は俺の記憶とも一致しており、奴の言動からもそうだと分かる。

 しかし……

 

「え? ジャスティファイってあんな感じなの? なんかイメージと違うな」

「私は直接話した事がある訳ではありませんが、冷静沈着で悪人には容赦がない人物だと聞いた事があります……本当なんですかね?」

 

 ジャスティファイの言動……というか、語尾? その語尾はどう考えてもおかしいだろ。

 まるでジャスティファイと言う精霊を知らない誰かが演じている様な……そう、エアプジャスティファイとも言える様相を呈している。

 

「何をごちゃごちゃ話しているでジャスティス? 『精霊躁者(スピリット・パペッター)』にそっちは『運び屋』だな? お前たちはここで終わりジャスティス!」

「スピリット……何だって?」

 

 運び屋と言うのがマスカレーナの異名だという事は分かる。だが、もう一つの方は聞き覚えが無い。しかし、この状況でその二つが並べられたという事は……

 

「精霊躁者はラッセさんの事ですよ。数々の精霊を誑かして~操って~あーんな事やこーんな事をしている、とこの世界で噂になっていますので」

「濡れ衣だろ!」

 

 やっぱり俺の事!? 何そのちょっと心の奥底に封印した感性をくすぐりかねない異名! 

 むしろ最近は精霊の方から俺の所に押し掛けられた覚えしかないのにその言い草は余りにも酷過ぎる! 

 

「ま、まあそれは今は置いておこう。ワープゲートはジャスティファイの向こう側にあるあの装置だな」

 

 この部屋の中央に鎮座している巨大な装置。中心にある球体の周りにこことは別の次元であろう景色が映し出されたモニターが多数浮かんでいる。その目の前にはいかにもなコンソールが置いて有り、あそこで操作する事によって次元移動が可能になるようだ。

 

「そのようです。でも、あれを動かすためにもジャスティファイをどうにかしなければ……」

「マスカレーナはジャスティファイは無視してあのコンソールの操作を頼む。あいつは俺が抑える」

 

 俺は左腕のデュエルディスクを展開し、ジャスティファイに挑もうとする。相手は治安維持組織の長。そんな背景を持つ奴なら当然決闘(デュエル)には応じるはずだ。

 

「食らええええええええい!!!!」

「ラッセさん!?」

「うおっ! お前もそういうタイプかよ!」

 

 ジャスティファイは床に足跡が付きそうな勢いで踏み込むと、こちらに向かってすっ飛んでくる。その勢いのまま殴りかかってくるつもりの様だ。

 モンスターを召喚しようにもカードを引く暇すらなかった俺はまだ右手に握っていたガラテアの大鎌を盾の様にして身体の前に構える。

 ジャックナイツのコアは黄華を選択。これでこの大鎌に触れた瞬間にジャスティファイは自分の家にでも飛ばされる事だろう。

 

「フンッ!」

「なっ!? ぐあっ!」

 

 ジャスティファイの拳をガラテアの大鎌が一瞬受け止めるが、その勢いのまま俺は殴り飛ばされてしまう。吹き飛ばされた俺を、地面に着地する前に出来た俺の影から伸びた影糸が受け止めてくれたお陰で大怪我をする事は無かった。

 

「腕が痺れる……ッ! 黄華の輝きが消えている? ……あ! なるほど、そういう事か……」

 

 黄華のコアの輝きを灯した大鎌に触れたジャスティファイがデッキに相当する場所に戻されなかった。それは『S-Force ジャスティファイ』が持つモンスター効果を無効化する効果による物だろう。

 この無効化効果によってトロイメア・ユニコーンのデッキバウンス効果が無効化されてしまったのだ。

 

「俺が除外されなかったのは嘗めているのか、それとも除外出来ない理由があるのか……」

 

 ジャスティファイは無効化効果に加えて攻撃するダメージステップ開始時にリンク先のモンスターを全て除外する効果も持っている。今のジャスティファイの攻撃の時に除外効果を使われていたら俺はどうなっていた事やら……。

 だが、奴の無効化効果はターンに一度しか使えない。そう何度も使う事は出来ないはずだ。

 なら……

 

「現れろ! 『オルフェゴール・トロイメア』!!」

 

 宣言と共に紺碧のコアの輝きを灯した大鎌を振りかぶると、鎌が切り裂いた空間の裂け目から姿はガラテアに似ているが顔の半分は彼女の穏やかな表情とは全く違う凶暴な笑みを浮かべた異形のモンスターが現れる。

 ガラテアの兄を自称する俺としてこのモンスターに頼るのはひっじょ~~~~~~~に複雑な思いがあるが、この場においては頼りになるのは間違いない。

 

「むっ! 攻撃が効かない?」

 

 オルフェゴール・トロイメアはオルフェゴールとトロイメアと言う二つのテーマに属するモンスター。異なるテーマの名称を同時に有するという事はどちらのテーマのサポートを受けることが出来るという訳だ。

 属性や種族、効果を考慮するとオルフェゴールに寄っているが、トロイメアと言う名称を持っている事で『トロイメア・マーメイド』のデッキから特殊召喚する効果に対応する事が出来る。

 

 そして、俺が呼び出したこのオルフェゴール・トロイメアと言うモンスター。普段は墓地肥やしがメインでオルフェゴールデッキでよく使われるカードであるが、実はリンクモンスターとの戦闘では破壊されないという別に隠されている訳では無いが隠された効果がある。

 

「だが、これしき、私の前では何の意味もないジャスティスッ! 正義の鉄拳!」

 

 戦闘破壊出来ないオルフェゴール・トロイメアに対してジャスティファイは戦闘時の除外効果を使い、オルフェゴール・トロイメアを難なく処理して来る。

 だが、これで時間は稼げた。

 

「俺は『影衣融合(シャドール・フュージョン)』を発動! デッキの『影依の巫女(ノエルシャドール) エリアル 』と『シャドール・ハウンド』を墓地へ送り、融合召喚!」

 

 オルフェゴール・トロイメアが時間を稼いでいる間に俺はデッキからカードを五枚引いて手札とした。そして、EXデッキから特殊召喚されるモンスターである『S-Force ジャスティファイ』が相手の場に居るため、デッキから融合素材を墓地に送って融合召喚する事が出来る。

 

「儀水の果ての果て……。氷結の一族の末裔の影よ。相対者を永久の凍土に縛りつけよ! 融合召喚! 現れろ、『エルシャドール・アプカローネ』!」

 

『エルシャドール・アプカローネ』

 レベル6 DEF2000 闇

 

「何!?」

 

 それは『イビリチュア・マインドオーガス』のシャドール体。正史では存在しないシャドールモンスターが手に持つ儀水鏡の杖から伸びた影糸がジャスティファイを雁字搦めにする。

 

「このカードが特殊召喚に成功した場合、フィールドの表側表示のカード一枚の効果を無効にする。無効にするのはお前だ、ジャスティファイ!」

「ぬおおお! 小癪な! だが、私の拳を止める事は……ジャスティス!?!?」

 

 墓地に送られたシャドール・ハウンドが影糸でグルグル巻きにされたジャスティファイに対して吠える様な仕草を取っており、それにビビったのかジャスティファイは防御姿勢を取る。多分守備表示になっているんだろう。

 仮に再びジャスティファイが体勢を整えて攻撃してくるとしても、戦闘破壊されないアプカローネが防いでくれるはずだ。アプカローネの無効化効果は永続的に適用されるのでジャスティスファイはこれで無力化出来た。

 

「ラッセさん! こちらに!」

「分かった! 今行く!」

「ま、待て! 待つんだジャスティス!」

「いや、その語尾は無理があるだろ」

 

 マスカレーナに呼ばれた俺は彼女が操作するコンソールへと近づいた。

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