麦わらの一味の猛攻。雷が、植物が、黄泉の冷気が入り乱れ、鋼鉄の巨人の進撃などなど。びっくり箱も真っ青な多彩な攻撃の前に、多くの兵士や魚人たちが沈められていた。
無論、彼らも新世界を目指す海賊たちだったりするが。その程度で新世界では通用しないとミクは内心で毒づいた。
「覇王色の覇気に当てられても数秒耐えれるくらいなら、かな。普通はそんなのは格上くらいだけどさ」
残心しつつ、構えを解きながらミクは口笛を吹く。甲高い音と共に響き渡った音色は──彼を呼んだ。
「おいでー、‘スルメ’!」
ミクの呼びかけに応えて。魚人島に大きな影がぬぅっと姿を表す。巨大なタコことクラーケンの‘スルメ’だった。
ギョンコルド平場に現れたスルメにミクはしらほしを護るよう指示を出す。そして、ホーディの元へと歩みを進める。
ロビンの攻撃にペシャンコにされ、吹き飛ばされる雑魚やらを無視しながら歩くが。
「ここから先には行かせないドスン!」
「邪魔しないでほしいなー」
シュモクザメの魚人。‘ドスン’が行くてを阻むように立ち塞がり。巨大なハンマーを振り下ろすが、ミクはそれを軽く指で支えて止めた。獣化なし、かつ軽い覇気纏いで衝撃を受けて、流したのだ。
「そんな程度じゃ、あたしに通用しないよ?」
「ミクちゃんに何やってやがるテメェ!」
「ぎゃぁぁ!?」
横から文字通り‘空を蹴って飛んできた’サンジの蹴りによってドスンは後方へと吹っ飛ばされる。それを見てミクはサンジにサムズアップしつつ。
「さっすが、サンジさん。頼りになるねー♪」
「はぁ〜い! ミクちゅわんの為なら火の中でも氷河の中でも駆けつけるぜぇ〜!」
ウィンクするとサンジが石化しかねない、ミクはその辺をチョッパーの診断を聞いていたので自重した。
「燃えてきたぁ!」
「おー、よく吹っ飛ぶなぁ……ん!?」
ホーディがルフィに蹴飛ばされたのを確認して、ミクはふと。魚人島の天辺を見上げる。見聞色の覇気に引っかかった気配を見て、焦りを感じたのだ。魚人たちの危機感が高まったことに疑問を感じ、見上げたその先には……‘バカでかい船’が魚人島へと接近して来ていたのだ。
アレはまずいと直感に従い。ルフィの方を見ると、彼はホーディをボコってる最中であった。
‘撃水’の雨をするりするりと避けながら進むルフィは武装色の覇気を使って強烈な拳をホーディに叩き込む。
吹っ飛んで行ったホーディから視線を切るルフィもまた異変に気がついたようで、その大きな船を見て。
「な、なんじゃありゃぁぁぁぁ!?」
流石に
「アレがあのまま落ちて来たら、魚人島のシャボンも割れるわ。流石にあたしたちも無事では済まないんじゃないかなぁ」
そもそもなんで動いてんだか、と。動力の類はないことから、ミクは首を傾げた。
しかし、いくつか。誰かがあの船に乗っているのはすぐにわかった。それは
「あっ、誰か落ちてくるよ」
落ちて来たのは巨人と見紛うほどの大きさな魚人のワダツミだった。
その会話の顛末を聞くに、どうやら‘バンダー・デッケン九世’がやらかした様で。ミクは頭を抱えた。
ただし、色々と語るあの男を、‘一方的な愛’を喚いたその男をミクは許す気はなかった。ああ、人様にここまで迷惑を、そして。勝手な愛とやらを説くストーカーの被害に遭っているしらほしが不憫だと本気で怒っていた。
「女の敵だね、あいつ。オッケー、ぶっ飛ばすわ」
「ミク、そっちは任せる。あいつ、なんでか武装色の攻撃を喰らってもピンピンしてやがるんだ」
「やったらタフな奴ねー。わかった、任せるよルフィ。しらほし……あれ?」
スルメに任せていたしらほしの行方を感知してミクはハッと青ざめる。彼女はなんと、魚人島を守るためにシャボンを身につけて飛んでいたのだ。
デッケンの悪魔の実の能力は何かに激突するか、標的を‘仕留める’まで追い続ける。
対象のしらほしがこの広場を離れれば、それに追従するのは道理である。しかし、相手は常識の通じない海賊風情。
投げられたナイフがデッケンの手を離れしらほしに向かうが、それは割り込んだミクの蹴り上げによって砕かれ、宙で爆散する。そしてそのまま、ミクは空を蹴り、デッケンに肉薄する。
「ったく!」
「死ね、しらほしぃぃ!」
「お前が、死ねぇぇぇぇ!!」
「なっ、ぐわぁぁっ!?」
「み、ミク様!?」
ミクは武装色の覇気で脚を硬化。そして、地を砕くほどの脚力を発揮してしらほしの元へと跳んだ。自身の能力で泡を作り出すと身に纏い、彼女の前へとミクが瞬間移動したかの様に現れたのだ。
そのからくりは泡を用いて空気抵抗の摩擦をゼロにした事。そして、ミクはこれを利用して、音速で動くことが可能となっていたのだ。さらに魚人島のシャボンと同成分の泡は空気中に浮ける性質も持つため、ミクはその場に滞空できる。
見聞色の覇気で常に自分の位置を予想しながら、ベストポジションに収まったのも色々と大きかった。
無様に吹っ飛んだデッケンはかろうじて意識を繋ぎつつ、闖入者を睨んだ。
「貴様ァ、よくも俺様としらほしの逢瀬を邪魔してくれやがって!」
「しらほし、あんたの勇気をあたしは買ったわ!こっちは任せてあんたはコレをできるだけ遠くに運んで!」
「わ、わかりましたミク様!」
「まずはご挨拶。雑魚は、引っ込んでね♪」
さて、とミクはデッケンに向き直り、彼を睨みつつ。覇王色の覇気を完全に解放する。ビリビリと世界が揺れる。空間が振動する感覚をデッケンが感じるや否や、彼の配下たちはたちまち気絶してしまった。
「あら、やりすぎたかな? まぁいいや、おいクソ野郎」
「な、お、お前一体何者……!?」
「何者、かぁ。あたしは海賊だよ。あんたと同じにされたかねェが、ね!」
「なっ、この!? はぇ、ぎゃんっ!?」
ミクはデッケンに躍りかかる。執拗に、まるで海蛇の様に絡みつく様な脚技で彼を追い詰めるように、そしてとうとう見せた隙をついてミクは彼の赤い皮手袋を履いた左腕を強かに蹴りつける。ごきり、鈍い音がデッケンの耳にいやに残った。
「ぎゃぁぁぁ!? お、俺様の腕がぁ!?」
「つぎはこっち」
デッケンの四本の脚、右側2本目掛けて半獣化による海竜人形態のミクは手を向け、手刀で虚空を切った。
「‘
手刀の軌道に追従するのは‘高圧水流の鞭’。それは重い打撃音と共にデッケンの右腕、脚の骨を粉砕する。
「あ、ぎゃぁぁぁ!?」
「これでちょっとのま大人しくしとけるでしょ?」
ルフィがこの船に取り付いたことも察知済みのミクはデッケンの無力化を最優先とした。そして完膚なきまでにボコボコにしたのには理由がある──この男が二度としらほしを狙わない様に。
「じゃぁごきげんよう。滅多なことは考えない方がいいよ?」
「このやろう、出せぇぇ!」
手で触れて投げるのがマトマトの実の能力だとするならば、触れない様にしてやればいい。ミクはデッケンを泡で包み、万が一にも何かに触れることができなくしていたのだ。
しらほしの逃走先、デッケンをどこで気絶させるかが大事なのだろうが。ミクは第二の懸念ことホーディの位置を探るとどうやら、ルフィも追撃に出たらしい。ただ、彼は能力者だし、海中の魚人族はそのスペックを大幅に向上させるため、状況は特に不利だろう。
なのでミクも打って出ることにした。
○○○
「ジャハハハッ! 愚かな人間風情が俺たち上位者に勝てるとでも思っているのか」
「くそっ、思うように動けねぇ……!」
ルフィの知覚。見聞色の覇気に引っかかる気配に彼はにぃと口角を吊り上げる。
「なんだ、不利を悟って命乞いでもする気か?」
「やるわけねぇだろバーカ」
ゴム質の肌をびよりと伸ばして。舌を出して挑発するルフィに青筋を浮かべるホーディはキレる。あからさまな挑発なのだが……
ぎゅん、と何かが迫る。その気配を掴んだ時にはもうホーディは海中を錐揉み回転して吹き飛ばされていた。
「間に合ったわね、怪我はない? ルフィ」
「しししっ。ああ、動きにくいから苦戦してたんだけど助かった!」
「くそっ、いいところを邪魔しやがって」
ホーディの前に現れたのは海竜人。鋭い鱗を逆立てた海竜が人になったような姿の誰かだった。
「テメェ、そいつは……リヴァイアサンか……!?」
「よくわかったわね。あんたの機動性は賞賛に値するとは言ってやんないわよ──そんな、愚かな借り物の力でイキってんじゃないわよ」
冷たい視線を寄越す、優美な鰭を海中に漂わせる女にホーディは挑みかかる愚を犯さず。まずはとルフィを狙い、トライデントを彼に向かって突き出したが、ガキン! と黒く変色した泡に阻まれる羽目となる。
硬い!?と驚愕の表情を隠せない彼にミクは種明かしもせず。
「
尾鰭を用いて加速しつつ、最高速での肉薄と武装色の硬化攻撃による大幅に強化された一撃をホーディに見舞う。速さ=質量と言わんばかりのその一撃を受けて。ホーディはノアに突っ込んでいく羽目になって、姿を消した。
「さて、ルフィ。しらほしが待ってるから行こう」
「おう、よわほしが根性を見せたんだ。いくぞ、ミク!」