海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第11話

 あたしとルフィはコーティングされたノアの甲板に上がっている。しらほしのほうへはフカボシ王子達が警護を行っているから、なるべくコースを東に向けて。真横に移動させろと指示は一応しておいたが果たして。

 

「ジャハハハッ! 麦わら、クソアマ! テメェらだけはこの手で切り刻んでやる!」

「できるならさっさとやってるでしょうに。口先だけなら誰でも言えるわよ?」

「にっしし、つべこべ言わずにかかってこりゃあいんだよホーディ」

 

 さっきからかなりボコボコにしてるのにこの異様なタフさ。ほんとどうなってんだろうこいつ。そんな疑問に答える様に、ホーディはあからさまにヤバそうなカプセルを手にしてそれを口に含んで噛み砕く。

 

「ジャハハハ! さぁ、第二ラウンドだ!」

「ドーピングで自己強化ねぇ。後先考えずに使うと死ぬわよ?」

「ミク、このノアを頼む。こいつは俺がぶっ飛ばす」

「オッケー。一騎打ちに水指すつもりはないから、徹底的にやっちゃって、ルフィ」

 

 あたしは半海竜人モードで泡の外に飛び出すと。一気に完全海竜化。全長250mのリヴァイアサンの姿となり、ノアの船底を押し上げる様に押してみる。

 いや、そうじゃないな。あたしはノアの全体を取り囲む様に回遊して、渦を発生させる。ノアの莫大な質量を持ち上げるのはナンセンスならば、やることは一つだ。

 

『しらほし、聞こえる?』

「ぴえ”ぇ”っ!? 食べないでくださいぃぃぃ、いやえ? その声は、み、みみみみみく、ミク様ぁ!?」

『落ち着きなさい。今、このノアを海流で押し流そうとしてるけど、あたしだけじゃどうにも足りないみたいなのよ』

 

 離れた場所にいるしらほしに見聞色の覇気を使って話しかける。覇気は基本的に聴覚に作用させることもできるからね。

 渦は小規模な海流。海そのものと言われるリヴァイアサンの力を最大限に使ってはいるが、どうにもまだまだあたしが覚醒とは程遠い未熟な力のまま故に。どうしても、使いこなせてはいないんだ。

 

『オトヒメさんは優れた見聞色の覇気を持っていたのなら、あなたにもその素質は受け継がれてるはず。しらほし、海王類に語りかけて』

「む、無理です! そんなこと私にはできません!」

『あたしの声が聞こえてるなら、その才能は、絶対にあるわ。あたしが保証する』

「ミク様……」

 

 しらほしがその昔に海王類を呼んだって話は、おそらく。‘伝説の人魚姫’だから。百年に一度生まれる特別な子だからこそ、ホーディがそのあり得ないと一蹴したくても、できない事実を。不確定なそれを認めたくないからとしらほしを狙っている様にしかあたしには見えない。

 

『あたしはしらほしを信じる。だから、あんたを信じるあたしを信じろ!』

「ミク様……っ、はい!」

 

 祈り。そして、しらほしは。

 

「聞こえているなら……皆さん……力を貸してください! ノアを、止めてぇぇぇ!!」

 

 力一杯叫んだ。その声を聞いて、あたしの中のリヴァイアサンが……呼応した……!?

 

『うっ、ぐぅぅぅ……待ちなさ、リヴァイアサン……!』

「ミク様!?」

『あっァァァァっ!?』

 

 あたしの中でのたうち回る力が……!? これって、どういうことなの……!? 暴走しそうになるのを抑えるべくあたしは完全海竜化を解除して、リヴァイアサンの力を押し留める。けど……内側から力が溢れ出して止まらない……!?

 あたしの意思とは別にまた完全海竜化してしまったその体は。500メートルくらいになってるんですけど。

 

『んっ……あれ、動ける? いや、今はそんなこと言ってる場合じゃないね』

 

 あたしはしらほしの願いを叶えるべく、鎖を一つ咥えて引き上げる。そして、あたしの他にも、多くの気配があるがそれは海王類達だ。マトマトの実、その悪魔の実の力が複数の海王類の力を振り切ってまで、その効果を発揮することはないのだろうと思う。

 

『君は、今代のリヴァイアサンかい?』

『前にもいたような言い方ね、まぁそうなるんじゃない?』

『そうか、僕たちがノアを運ぼう。君はのあの中で暴れている者たちを止めてくれないか?』

『オッケー。あんたも話せるのね……壊れたら困るの?』

『同じ海王類ならば会話くらいはできるだろう? 約束の日まで、ノアは必要なんだ。分かっておくれ、じゃあよろしく頼むよ』

 

 ○○○

 

「ギア2(セカンド)、ゴムゴムのぉぉぉぉ、火拳銃(レッドホォォク)ッ!」

「ぐぁぁっ!?」

 

 腹に強烈な一撃を受けたホーディは意識が飛びながらもノアの艦橋近くに叩きつけられる。ルフィもまた、ホーディに噛まれた傷が開き、血が抜け出ていく感覚をやせ我慢で抑えていた。

 

「どんだけ頑丈なんだ、アイツ……」

「肉体的には限界を超えてると思うんだけどなー。あら、噛まれたの?」

「ミク!? おま、しらほしは!」

「しらほしなら大丈夫だよ。海王類たちが守ってるから」

 

 そう言いながらミクはルフィの受けた傷を見て。これ以上戦わせたらダメだと確信する。

 

「ルフィ、一騎打ちとはいえあんたに出血性ショックで死なれたらたまったもんじゃないから。交代するよ」

「嫌だ。ホーディは俺がぶっ飛ばす!」

「まぁこれ以上このノアを壊したらダメなんだってさ。あっこの海王類にお願いされたのよ」

 

 ミクは頭に血が登っているルフィを嗜めてばりぼりと何かを咀嚼する音に呆れと侮蔑を含む胡乱な視線をホーディに寄越し、その不気味な脈動に彼女とルフィは思わずドン引きした。

 

「ジャハハハ……よくも俺の計画を台無しにしてくれたな……! 貴様らだけは許さんぞ、麦わらぁ……!」

悪破螺頑拳(アクア・バニッシュ)ッ!!」

「ぐぼぅっ……!?」

 

 その踏み込みは速く、ルフィの‘ギア2’に匹敵する速度。しかし、ミクにはその軌道を見切られており。ルフィを狙った噛みつきに対して、ミクが体を滑り込ませるように割り込むと。螺旋状の水流と武装色の覇気を纏わせた手刀をホーディの腹に叩き込まれたホーディはノアの蓋に吹き飛ばされた。

 

「そこまで言うならこれ以上、手は出さないわ。ただ、止血はするよルフィ」

「いでででで!? ……傷に染みるけど、殺菌と止血のために仕方ねぇんだよなぁ」

 

 潮水。塩分濃度の高い泡を作り出したミクはその泡をルフィの傷口を埋めるようにくっ付ける。殺菌と止血の泡によりルフィの顔色は幾分か良くなった。そして、懲りずに挑みかかってきたホーディの迎撃だ。

 

「ゴムゴムのぉ……JET銃っ!」

「無駄だ、群鮫(ムラサメ)っ!」

 

 ホーディは自分が這い出た、ノアに開いた穴から噴出する魚人空手の柔術。水心で海水を掴むとそれをルフィめがけて投げつける。それはさながらサメの弾丸のようで、たまらずルフィは回避をせざるを得なかった。

 海水を食らうと能力者の自分は脱力する。その脱力はこの場において大きな隙になると懸命に避けた。

 弾幕を張り、牽制するホーディは隙をついてルフィに接近する。体制を崩されながらもルフィも反撃するが……速度を上げたホーディに拳を当てることも困難となっていた。

 ノアの甲板をぶち抜くその貫通力に余裕を持っていたルフィですら焦りを覚えるほどの威力だったが。二度目の噛みつきに対してはルフィも直線的な動きで迫るホーディに再び‘火拳銃’を叩き込む。

 

「ジェハハハ!!」

「しししっ! もう、見切った!」

 

 吹っ飛ばされつつも、脅威のタフさで踏ん張りそのままルフィにつかみかかったが。

 次の瞬間。ルフィの姿が視界から消え、ホーディは顎を蹴り上げられる。

 

「お前だけは許さねぇ! 武装色、硬化! ゴムゴムのぉ〜」

 

 ルフィは両手を覇気で硬化させると、加速させて炎を腕に宿す。そしてそのまま、炎を纏う拳打の雨をホーディに喰らわせる……!

 

「‘火拳銃乱打(レッドガトリング)ゥゥゥッ!!’」

 

 全身を隙なく、拳が落ちる感覚と共にホーディの意識は暗黒に落ちていく。そして、ついに決着となった。

 

 ノアは落下を止め、魚人島に迫っていた未曾有の危機は去った。

 

 勝者、‘麦わらのルフィ’




次回から、日記形式に戻ります。
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