□日○月 魚人島の天気はずっと晴れ
今日の日記を書くことにする。宴の最中だが、こればっかりは日課なので仕方ない。
ブルックさんと一緒に‘ビンクスの酒’を初めて合わせて演奏したけど、なかなか楽しい余興になったと思う。
ブルックさんも楽しそうに演奏するもんだからこっちもノリに乗って難しい旋律やらを重ねて楽しさを爆発させることに成功した。
そういえば気になることが一つある。ホーディを捕縛した後に、ノアを牽引していった海王類たちの声をルフィも聞いていたらしい。
ルフィの見聞色の覇気は動物の声も拾えるのかもしれないなんて予想しつつ、あたしは宴には飽きたわけじゃないけど。
気になることをネプチューン王様に聞きにいくと言うロビンさんに付き添うことにしたんだが、とんでも無いことを聞いた気がする。
人魚姫しらほし。彼女は二つの名を持つ。古代兵器‘ポセイドン’と呼ばれる海王類を‘意のままに従える’力を持つ者。
……いやーまさか、‘リヴァイアサン’の力を限界まで引き出されるとは思わなんだ。王様曰く、‘海王類’の王であるしらほしの願いにあたしも答える義務があると言われるとは思わなかった。
「お主には悪いが、今後もしらほしが望んだ場合、巻き込んでしまうかもしれんのじゃもん」と居心地悪そうに言われたのは心外だった。いやまぁ……うーん。
あたしはきっちり言い返したよ。だってさ、しらほしはあたしの友達なんだからね!
○○○
「水臭いこと言わないでよ、ネプチューン王。あたしはしらほしの頼みなら大体のことは応えてやるわよ。あの子はあたしの友達なんだからさ」
「ありがとう、リヴァイアサン娘。わしもその言葉を聞けて安心なんじゃもん」
そのやりとりを見ていたロビンはふと思ったことを口にする。
「そもそも、‘リヴァイアサン’とはどういう海王類なの?」
「んあー、あたしも知りたい。ルーツはわかんないんだよ」
「む、よかろう。リヴァイアサンとは、母なる海の化身なんじゃもん。その力はまさにこの海の覇者たるにふさわしい物だったんじゃもん」
ネプチューン王の‘ウルトラマリン’などの魚人の使う戦闘術のルーツである水を掴む。あるいは水分を支配するその方法は元を返すと‘リヴァイアサン’の力をヒントにその昔に考案されたと言う。
ミクも思い返せば自身が扱うその力のほとんどは星に起因するものが多いと感じていた。‘泡’は海が動く際に無限に作り出される‘
完全獣化のその力は、制御を放棄すれば島国どころか要塞だろうと城だろうと、一息に吹き飛ばせると確信できる。
「ただ、現代でリヴァイアサンは危険視される悪魔の実の能力なんじゃもん。希少性は高く、
「ポセイドンがそれを従えるってのも納得だわ。リヴァイアサンも元々は海王類の先祖っぽいし。ただ、なんで悪魔の実になったのかは不明なんだよねー」
「その点はわしにもわからんのじゃもん。歴史が語られぬ以上、お主らの手で答えを紐解いて欲しいんじゃもん……それとリヴァイアサン娘よ。くれぐれもその力を無為に振るわんで欲しいんじゃもん」
何を分かったようなことを。ミクはそんな顔をしてはいたが、「ん、分かった」と素直に頷いていたのを見てロビンは微笑ましいものを見る目だったと言う。
「とりあえずじゃあ、ネプチューン王。ちょっと不摂生みたいだし、腰を診たげる。ぎっくり腰多いでしょ?」
「な、なんで分かったんじゃもん!?」
「常に腰を庇うような体制してたらわかるわよ」
「よ、止すんじゃもん!? 下手に弄ったらァァァァ!?」
ミクが作り出した泡に水を詰めたウォーターベッドのようなものにネプチューン王を乗せて、腰をゴキリ、ぐきりと整体。王の悲鳴が竜宮城に響き渡り、何事かと騒ぎになったのは言うまでもなかったのだった。
しかし、それはそれとして。経過観察でネプチューン王のぎっくり腰は快復の兆しを見せたと言う。現役の大騎士時代に近い溌剌さを発揮するくらいには復調したとのことだった。
これはミクなりのお礼も兼ねて。そして、少しでも自分の事を想って忠告してくれたネプチューン王へ感謝の形として行なったと言う事であった。
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麦わらの一味への感謝の印として、リュウグウ王国からその保有する財宝の5割を贈与することが決まったらしい。城の規模的におそらくだが王家の資産は20億ベリーを下回らないくらいだとは思うが、その半分となると‘10億ベリー’。想像できる金額では無いな、うん。
あたしとロビンが席を外してる間にジンベエからナミさんが聞いた話を聞き、あたしも色々。黒ひげに対しては注意しなくてはいけないだろうと心に留めることにした。
「そういやさ、左大臣さん。困りごとでも?」
「いぇっ!? いやー、そのぉ。こちらの都合のことなんじゃがぁぁ」
「いいからいいから、聞かせてよ。悩んでるなら知恵くらいは貸すよ」
どうしよう、どうしようと焦ってる雰囲気の左大臣さんの動きが気になって話しかけたら。どうにもお菓子工場がホーディ一味によってぶっ壊されてしまい、お菓子の納入ができないと困ったことになったと悩んでいるそうだ。
そういえば魚人島って、四皇の‘ビックマム’の庇護下にあるんだっけなぁ……お菓子は宴会の席で残っていた物を全部出してしまったらしいから受け渡す物がないらしい。
四皇‘ビックマム’といえばお菓子が大好きな海賊で知られている。万国という世界政府に非加入の‘国土’を持つ大海賊の一人と聞いていたけど。
「お前さんたちを巻き込むいかんのじゃ、かなわんわー……」
「ふぅーん……お菓子工場ってどこよ?」
「魚人島にあるんじゃが、ちょっと待て。お前さん何をするつもりじゃ?」
「にししっ、暇つぶし!」
あたしはとりあえず大方の場所は割り出したからそこに行くことにして。静止の声を振り切ってとりあえずその場所に向かうことにした。で、今になるんだけど……
「ほぇー、足長族の人にミンク族の人がいるんだねー。ビックマム海賊団ってかなり人種的に広いの?」
「四皇の名に恥じない一大勢力ソワール。覚えておいて損は無いでショコラ」
珍しいミンク族に加えてやたら足の長い。つまりは足長族のおじさんはタマゴ男爵と言うらしい。懸賞金はそこそこってくらいだとは思うけど、泰然と構えているが。
「つまり、貴方も強いってことね?」
「……覇王色の覇気を持つ者でソワール。ペコムズ、手出し無用でシルドゥプレ」
「がるる……資料にないガルル!」
「そりゃーそうだよ。まだ見習いだもん」
少しだけ覇王色の覇気を当ててみると面白い反応。タマゴ男爵さんはあたしに対して敵対行動は損だと思ってくれたようで。
「藪を突くのは子供でもあまりしないけど、お菓子が必要なの?」
「それが、ビックマム海賊団の名を使う‘みかじめ料’。その契約の上で成り立っているのでソワール」
「んー、お茶会にお菓子が必要な訳か。シャーロット・リンリンのあの巨躯だとめちゃ食べそうだもんなー」
そう言いながらあたしはまぁ、出したくはないけど出すことにした。あたし自身の大きさは身長が180センチメートルから全長250メートルの間で増減するけど、そのカラクリは泡である。体を泡で覆って増幅することであの巨体へと変貌するわけなのだが。
そして、不思議なことにあたしの体も少しだけ特殊。何もないけど、何かを出せる。
無から有を作り出すのは無理だけど、体の中に蓄えることができる。
「せっかく、この魚人島を救ったんだし。滅ぼすとか言われても困る、だから取引しない?」
「利のある話を保証できない見習い相手に、それは申し訳ないが不可能な話だボン」
「これを見てそう言えるかしら?」
あたしが出したのは黄金細工だ。これは沈んだ海賊船から財宝をコツコツとサルベージしたりしていた時期がある。
その当時から体内に備蓄していた‘へそくり’みたいな物。あたしにとっちゃ無用の長物だけど、処世術にお金は必要な物だ。
次々と財宝を取り出して、タマゴ男爵がフリーズした。現行価値はわからないが、多分6億ベリー分の財宝かもしれないね。
「お菓子10トンだっけな。資産価値にしておおよそ3億ベリー分だよね。まぁ、規模によるけど、みかじめ料として収めるべきそれが作れないなら金銭的違約金を払えば問題ないよね?」
「……あ、いや……黄身、バカでソワール?」
「とりあえず6億ベリーで手打ちにしてくんない? 今日、この島は助かったばっかだし、それを滅ぼされたら困るからね」
「なぜ、そこまでするのだボン?」
「そりゃぁ、友達が困るから。あたしにとってここに住む人々が困るのは癪なの」
タマゴ男爵はあたしの言葉を聞き、顎に手を添えて。
「黄身の名を聞こう」
「あたしはミク。‘ミク・D・ヴィレ’」
「ミク、か。半熟者にしては骨がある、我々に喧嘩を売る覚悟はあるのでソワール?」
「あ、いた。おーい、ミク! そろそろ出港準備しねえとまずいってのに!」
「ぎゃー!? やっぱりここにいたのかお前さん、かなわんわー!?」
あ、左大臣さんとルフィにゾロさんにサンジさんが来た。ペコムズってミンク族の人はルフィの部下に当たるとあたしの素性を見抜いたよう。そして事情を聞いたルフィも魚人島を滅ぼされるかもしれないと聞くと真っ向から反発する。まぁ当たり前か
そこで鳴るデンデン。コール音がずっと続くがタマゴ男爵さんとペコムズさんは電話に出ようとしない。
「ちょっと、なんで出ないのよ」
「俺は怒られたくないガオ」
「おい、ペコムズ。早く出るでシルドゥプレ」
「はーい、もしもーし」
状況が進まんのでとりあえず電話に出た。がちゃとデンデンの目が開いて、あたしと目が合う。
「「おぃっ!?」」
“んっ、ペコムズ、タマゴじゃないね? 誰だい、お前は”
「あたしはミクだ。お宅のお二人がお叱りを恐れて震え上がってるから代わりに出たんだよ」
「「おいおいおいおいおぉぉぉぉいい!?」」
外野がうるさいので、覇王色の覇気を叩きつけて黙らせる。こっちが代わりに話してやるってんだ、邪魔しないで欲しい。
「お菓子はないわ。諸事情、いや。トラブルで作れてないみたいでね?」
“やっぱりないのかい、巫山戯るんじゃないよ!”
「ミク、かわれ。俺が話す!」
「あっちょ、ルフィ!?」
「おい、お前がビックマムだな!」
“ん? ミクって小娘に代わりな、お前は誰だ”
「俺は‘モンキー・D・ルフィ’、海賊王になる男だっ!」
ルフィに受話器をひったくられて、ビックマムに名乗り返す。そして、とんでもない嘘をついた。
「お菓子なら、ないぞ! 10トン、ぜんぶ、俺が食ったぁぁぁぁぁ!」
「……ぷっ……あっははははっ! ルフィ、それ、くひひ、はっははは!!」
思わず笑ってしまう。それ、全部あたしたちのせいにするつもりじゃん。これ、は傑作だとお腹を抱えて笑うしかない。
「なっ、黄身はバカなのかね!? 船長がマムに喧嘩を売っているというのに!?」
「笑うしかないじゃん。こんな傑作!」
「まぁ、そうだな。うちの船長ならそれをやらかしてもおかしくはねぇ」
「クソマリモに同意だ。このままじゃ、
ゾロさんとサンジさんも意義はない模様。その言葉が聞こえたのかどうかはわからないが。あたしは一つ、仕込みをしておいた。
「弁償って訳でもないけど。あたしが蓄えてた財宝を、大体6億ベリー分くらい弁償に回すわ。タマゴ男爵の心を覇気で軽く読んだけど、船が2隻沈んだそうじゃない? 纏まった金が必要なんじゃないの?」
ルフィから受話器を奪い、あたしはタマゴ男爵さんの近辺の悩みを呼んだ。それができるのは高等な見聞色の使い手でないと無理。
“あ゛? おいタマゴ、何読まれてるんだい。腑抜けてんじゃねぇよ!!”
「ひぃ、申し訳ないでソワール、ですがこの小娘の言い分もご尤もかとぉゾンジョワール!?」
タマゴ男爵の自白もあってとりあえず、2週間待ってみないかと提案されたビックマム。だけど、それは一蹴される。そりゃぁ気持ちはわかる。海賊だもんね、お互いに。
“どこの腑抜けが自分の好きな物を、欲しい物を妥協する海賊がどこにいるぅぅ!! オレは食いたい時にお菓子を食いてぇんだよぉ!!”
「まぁ、それはわかるわ。あんた相手に喧嘩売ってるような発言だけどね? 魚人島は関係ないってことにしてくんない?」
“オレを誰か分かった上で、その言葉を吐いてるなら。良いだろう”
ビックマムの声音が変わる。どこか興味を持ったような、違うこれは新しいおもちゃを見つけた子供みたいな……
“キレのいい見聞色の使い手のようだね、小娘にしちゃ上出来だ。そうだ、カタクリの嫁に来ないかい?”
「誰かも知らん相手に嫁入りに行くバカがいるもんかよ」
“マッマッマンママンマ〜、威勢がいいねぇ……良いだろう、興味が湧いた。モンキー・D・ルフィ。ガープの孫と、もう一度名乗りな”
「ミク・D・ヴィレだ」
“……‘D・ヴィレ’だと……? ありえない……ロックス船長の女の名じゃぁないか!?”
「その辺は知らん。あたしの両親はとっくに死んでるからな」
“まぁ良いだろう、覚えたよ。そして望み通り、魚人島から標的をお前たちに変更してやる!”
あたしとルフィはアイコンタクト。存分、考えることは同じみたいだね、あたしたちは。
「「望む所だ、首洗って待ってろクソババァ!!」」
声を揃えてそう言い返すのだったが、後でナミさんにめっちゃ痛い拳骨をもらい、たんこぶができる羽目になったけど、その辺は誤差だと思う。だって、ルフィはボコボコにされてたからねゴムなのに。
感想や評価よろしくお願いします。
次回からいよいよ新世界編です