海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第14話

 あたしたちは深海での航海を続けていた。でまぁあたしはと言うと……風呂に連れてこられていた。サニー号の船体後部にある図書館、その上に併設されているのが大浴場なのだそうだ。

 風呂までついた船ってあまりないから珍しいよなぁとか思いつつ。

 

「便利な雲だなぁ、これが雷雲になったりするんでしょ?」

「気持ちいいでしょ、‘シャワーテンポ’。にしても、アメジストみたいな瞳と銀髪に小麦色の健康的な肌、女の子らしいきっちりと出るとこは出てる完璧なスタイル……ロビンよりもプロポーション抜群なのって結構嫉妬しちゃうかも」

「指針にしてた人が世界一の美女だったから、負けじと美容とかに気を使うようになってね。そりゃあビフォーとアフターを比べたらナミさんもひっくり返ると思うよ?」

「世界一の美女ってあの、九蛇海賊団の?」

「ん、‘ボア・ハンコック’。あたしに‘アマゾネスアーツ’を教えてくれた師匠ってところかな。ついでに女磨きを履修させられたけどね」

 

 思い返せばなかなか楽しい日々だった。ルフィの修行にずっとつきそうなんてことはできなかったあたしはちょこちょこ女ヶ島の方に呼ばれてルフィの近況報告をしてたんだよね。

 そのついでにとハンコック直々に‘芳香脚(パフューム・フェムル)’を始めとした体術を指導されたり。ボサボサに傷んでいた髪を管理するように指導されたりと色々と身につけさせてもらった。

 強くなるために、その技術を教わったりと。ファッションセンスだってハンコックに似たようなものだ。あの人はスリットの入った特徴的なドレスを着こなすけど、あたしはまぁ似た感じではあれど、動きやすい服装を好むからね。

 赤のショートドレスに厚手のローブを首に羽織っているスタイルが多かったか、今はこう。ナミさんとロビンさんに服は多めに買っておくほうがいいと魚人島で服飾をかなり買った。

 カバンがパンパンになるくらいの量で、最近の流行りの服とか。そういったモノを着回すコーデを教えてもらった。まぁ、女ヶ島は基本的に軽装の戦士って感じの人が多かったしね。

 

「確かに、その九蛇の女帝を指標にすれば綺麗になるのは当然なのよね……今度その秘訣、教えてね?」

「ハイ、ヨロコンデー‼︎」

 

 なんでか敬礼してしまう癖がついた。まぁいいか……ん?

 

「なー、その雲わたあめみたいで美味そうだなー!」

「えー? これは食べられないわよ?」

「まぁ、雲が食べれるとか判断されるのは空島くらいだよねー」

「えー、甘いわたあめとどうちがうのかわからねぇぞ?」

「あら、ミクも気がついたの? チョッパー、雲から離れてね?」

 

 ……えーと、これは。わかりやすいこの気配、覗きだろうか。

 

「流石にわかr」

 

 言葉に詰まる。あたしの目の先には黒い雷雲があった。ばちばちと高出力の電気を蓄えたそれが……!?

 

「「「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」」」

「えっちょミク!?」

 

 サンジさんとブルックさんを真っ黒に焦がしていた。あたしは怖くて浴槽に飛び込んだ。呼吸は酸素だけをお湯の中から取り出せる能力があるから何分でも潜っていられるんだけども……

 

「こ、これやっぱ食いたくねぇぞ!?」

「どどどど同感だね! あ、あたしはいらないから!」

「なに? 雷が怖いの?」

「怖いどころじゃないやい! あたしの唯一の弱点が雷なんだよ!」

「えっ、そうなの?」

「覇気纏いは常にしてるけど、雷だけはどうにもならないんだよね。だから見聞色で相手の機先だけはぜっっったいに潰して雷を含む攻撃とかさせないようにするんだ」

「へぇ、意外な弱点なのね」

 

 ナミはそう言うが、おそらくこの弱点は……リヴァイアサンが天に刃向かわないよう作られたからなのかもしれない。よくわからんが、多分そう言う歴史があるのかもしれない。

 

「まぁ、いつか必ず克服してやるつもりだけどさ。弱点なんて抱えるのは馬鹿馬鹿しいし」

「頑張りなさい。にしても、星空を眺めてる気分に成れるのも贅沢よねぇ〜」

「うん、そうだね」

 

 チョッパーの懸念というかルフィたちの行動が読めないからちょっと不安もあるけど、海獣ならあたしの影響で近づいてこないので安心できるだろうかな?

 

「‘動く海楼石’。不名誉なあだ名が思いついたかも」

「ぷっ、何それ」

 

 そんな感じでゆったりとお風呂を楽しんでいたのだが……トラブルはやはりつきものみたいで、甲板の方で何か騒ぎがあったからお風呂を切り上げることにしたナミさんに促されて風呂からあがると。

 

「っ、海流に変化があるよナミさん……窓の外見て!」

「えっ……あれはホワイトストローム!?」

「海中にできる白い渦巻きだっけか……呑まれたらヤバいね」

「急ぐわよミク!」

「うん、了解!」

 

 ○○○

 

 ミクとナミが甲板に足を運び。一味は慌ただしく動く……ことはできなかった。

 というのも、深海魚を釣り上げ、それを放棄することを渋ったルフィたちの対応が遅れてしまい‘ホワイトストロームに呑まれてしまったのである……釣り上げた深海魚が’。

 

「‘クー・ド・バースト’で逃げようにももう手遅れだ!」

「なら、ミクならどうにかできるんじゃ……」

「もう試してるけど、リヴァイアサンの力でも渦を弱めるので手一杯だよ!?」

 

 ミクは意識を集中して海流の相殺を図るがやはり大自然の起こす現象には敵わず。ずるずると、徐々に渦に引き込まれる。ミクはもう別の手段として、親指先を犬歯で傷つけて血を流しつつ、サニー号を覆うコーティングシャボンに触れて血をシャボンに含ませた。

 

「武装色、硬化……ナミさんとロビンさんはあたしに捕まって。逃げれないなら流れに身を任すのみ!」

「アーゥ、サニー号ならこんな程度だ!」

 

 コーティングを武装色の覇気で強化するミク。ミクの血がコーティングに混ざったことで体の一部と遜色ないものとして彼女の覇気を通せる様になったのである……呑まれるとわかった以上対策を講じて、操舵するより他ないとミクは操舵輪に手をかけた。

 

「渦は時計回り。面舵いっぱいぃ!」

 

 右に舵を切り、渦の流れを読んだミクは船底を渦の内側に乗せる。そのままサニー号は滑るように渦の中を猛スピードで駆け抜ける。

 

「あっはははは! スッゲェぇ! 渦を乗りこなしてるぞこれ!」

「並みの船ならこの時点でバラバラだよ! 流石サニー号!」

「この海流を乗りこなしてるおまえもスーパー凄えぞ!」

「ヨホホホ! 上に下にぐるぐる回されて目が回りますよぉ〜! 私、回す目がありませんけどぉぉぉ!?」

「ナイススカルジョーク! っていってる場合かぁ!?」

「恐縮です! でも早く終わりが見えるといいんですけどぉ〜!?」

「冗談言ってないで、みんなしっかり捕まっててください!」

 

 獣人化形態のミクは尻尾でナミを巻きつけて、踏ん張りながら操舵輪を右は左へとわまし続ける。その背中にハナハナの実の能力でくっつくロビンもその操舵能力に内心で舌を巻く。

 

「目を離した物の10分でここまでのトラブルになるなんてぇぇぇ!」

「でも、これなら抜けれるかも……人類初かもね?」

「あたしたちが伝説の始まりってこと、ロビンさん!?」

「ええ、このまま抜けれたらだけども」

「いいや……あれ見て!」

「ん? ああっ、出口だ!」

 

 ホワイトストロームの終着点にてサニー号は放り出される。というより、ホワイトストロームが壁か何かにぶつかって止められた様な。

 ミクは力を抜き、獣人化を解除した……否。精魂尽きたと言うべきか。

 

「し、しばらく覇気が使えない……10分寝かせてぇ……」

「お疲れ様、ミク……ちょっとの間休んでてね」

 

 ナミに撫でられてミクは意識を手放した。

 

 次に目を覚ました時には上昇海流に乗り、新世界の海へ出た後だった。アイランドクジラの群れの手助けで海面に出たという顛末を聞きながらミクは戻ってきた見聞色の覇気の力で軍艦、海軍の船の存在を確認する。

 

「天候最悪、波は大時化。目の前、前方10キロ圏内に軍艦約20隻。どうする、ルフィ?」

「しししっ、まともに相手取るのは流石にめんどくせえ! 野郎ども、‘クー・ド・バースト’でかっ飛ぶぞ!」

「「「応ッ!」」」

「軍艦の間をすり抜けて、か。にひっ、スリリングでなかなか楽しそうじゃない!」

 

 ミクは海に飛び込み、深海魚に触れ、その体表面を泡で包み込む。そしてそのまま収縮させて小さなミニチュアの様にしてしまう。

 

「あーっ!? 何してんだミク!?」

「大丈夫、大丈夫♪ 後で元に戻すから逃げるのに邪魔な大きな荷物はしまっとかないとね?」

 

 それをポケットに突っ込みつつ、ミクは潜り、海中でそのまま完全獣化する。

 

『大波を呼んでそこの中を一気に駆け抜けるよ!』

「おう、その手筈で頼む!」

 

 そして、ミクの手で大波が呼ばれ。海軍の船が宙に浮いた隙をつきリヴァイアサンのパワーで牽引されたサニー号は全速前進。そのまま海軍の包囲網をするりと抜けた後……ミクが船内に戻ったタイミングで。クー・ド・バーストの力によってサニー号は空を飛んだのであった。




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