海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第15話

 @日○月 大時化

 

 海軍の包囲網を突破したあたしたちは一番近い島へと向かっていた。とはいえ、ナミさんのログポースの反応を頼りになんだけど、ルフィの決めた真ん中の針。一番揺れてる針のログを辿っていた。

 危ない島に着くと思われるんだが、冒険のやり甲斐があるし、あたしは賛成した……まぁ、その分ナミさんたちが絶望した顔してたけどね?

 とはいえ、すぐに島が見えるわけでもないんだが。数日航海していて見えてきた島がログのない島。つまり、ログポースが指しているわけではない島が見えてきたのである。真っ赤に燃える、火山の島が。

 

 ついでになんか知らんが、緊急信号をデンデンが受信したが……うーん。だいたい罠なんだけど、ルフィがその信号を受信した。結果的にまぁ面白いことを聞いたんだが、断末魔をあげる通信主が最後に言った言葉は‘サムライ’。

 新世界の後半も後半、ワノ国の守護者たち。ゾロさんの腰に佩ている三本の‘刀’。刀を扱えば右に出る者がいないと言われるほどの剣豪たち。それがサムライだ。

 確か鎖国しており、世界政府も手が出せないほどにサムライたちが強いらしいのだが、そんな強者がどうにもあの燃える島で暴れているらしい。

 

 ちなみに島の名前は‘パンクハザード’だとか。パンクって聞くと‘ベガパンク’を連想する。この世界から見て500年先の技術を作り出すと言われる、世にある‘すべての発明の影にその存在アリ’と言わしめるほどの天才科学者である。

 かの‘パシフィスタ’を作ったのもベガパンクらしいが……はっきり言って傍迷惑もいいところだけども、まぁ海賊が多くなったから今の世には必要で仕方ないのかもしれんが……。

 

 とりあえず、ルフィに同行するメンバーを決めるくじ引きであたしはハズレを引いたので留守番である。行きたいのは山々だが、くじの結果なので粛々と従うとしよう。

 ……最近はずっと見聞色の覇気を使い続けていた疲労もあるから少しくらい警戒を解いてもいいよね……?

 

 ○○○

 

 ルフィたちがパンクハザードへ乗り込んでから少し経ち。残ったメンバーは各々で過ごしていた。空を見て、ナミは目の前の島が有するその気候の異常を説き。ミクは理解できなくもないと頷き、聞きに徹する。

 

「向こうのほうは極寒の空、こちら側は灼熱の大地……磁場がない島ってだけでも怪しさ100倍なんだけどなぁ……アレかな。アオキジとアカイヌの決闘の舞台がここだったりして」

 

 実際のところ百二十点の回答を叩き出したミクはと言うと。その茹だる様な暑さに見聞色の覇気は精彩を欠いた状態にあった。普段ではありえない、船内への侵入者を察知できぬほどに彼女は‘弱っていた’のである。

 すん、と鼻を鳴らす。妙な、無臭だが、何か意識が朦朧とする様な……ハッとミクが気が付いたからにはもう遅かった。

 

「なに、これ……チョッパー……これ、ガス……!?」

 

 やられた、と思ったが後の祭でミクの意識はそのまま暗転した。そして、次に目を覚ました時には……見知らぬ箱の中に閉じ込められていた。

 

「アーゥ、起きたかねぼすけ」

「んっ……フランキーさん……! ここどこ!?」

「わからないわ。多分睡眠ガスか何かでサニー号を制圧されたんじゃないかしら」

「俺もガスをそこそこ吸っちまった後にな。すまねぇ」

「俺たち、さらわれっちまったぁぁぁ!」

 

 チョッパーの悲鳴が響き。そこまで聞いたミクは「やっちまったぁ〜!」と言う顔をしつつ、それを見たサンジは苦笑いを溢した。ミクがずっと気配を探り続けていたことに関しても、見抜いていた彼はと言うと。

 

「大丈夫、ミクちゃんのせいじゃねぇさ。慣れない灼熱の地で見聞色の覇気をずっと使ってたんだろ? 体力だって限界がくるさ」

「えっ!? ちょっとぉ〜、あたし達のことが信用できないわけ、ミクぅ?」

「い゛っ!? いや、そんなことはないけど……」

「なら、常に見張りは必要ないからね? わかった?」

「……了解」

 

 ナミもまた困った妹分ができた気分になりつつ、彼女の柔らかな銀髪を撫でながらどうするかを考えていた時である。

 

「お主達、ちと良いか?」

「ん? ……何コレ」

 

 ミクはふらふらとその声のもとに歩み寄る。そしてそこにはバラバラになった何かが床に散らばっていた。

 

「どうか拙者の顔を組み立ててはもらえぬだろうか?」

「んー、コレ全部頭のパーツなんだね。おっけー」

 

 ミクの手によって組み上げられたのは男の顔。そして、生首。

 

「これでよし。違和感はない?」

「かたじけない。助かったぞ、異国の姫よ」

「いや、姫じゃないけどね?」

「「「ぎゃー!? 生首がしゃべってるぅぅぅ!?」」」

「遅いわぁ!?」

 

 くすくすとミクは笑いながら男の素性を見抜く。いや、見聞色の覇気で触ったが……

 

「まて、異国の姫よ。恩人とはいえ、拙者の心を読むのはいささか不躾と心得るが?」

「……あ、ごめん。つい癖でね? って、だからあたしは姫じゃないからね? コレってオペオペの実の能力みたいだけど……確かハートの海賊団船長が現在の能力者だったかなぁ……」

「ハートの海賊団……‘トラガルファー・ロー’。なるほど、七武海に最近入った奴だな」

 

 海賊の心臓100個を納めて七武海入りした関わってはいけない系の海賊。なお、ミクは顔見知り程度ではあるが、そこまで話す間柄では無かった。

 

「あんたはここがどこか知ってるの?」

「武士である拙者になんたる言い分! 女であるならば男より3歩下がって慎ましく話さぬか!」

「なんですってぇ〜? ミクに組み立てられた恩を忘れてどういう口の聞き方してんのよ!」

「な、やめよ!? 暴力はやめよ! 身包みを剥がされた傷心のことに関しては、心中を察する!」

「身包みを剥がされたんじゃなくてそういうファッションよ、流行もわからないなんて呆れるわねぇ」

「なんと淫らな、乳バンドだけではないか!?」

「え? お嫌いかしら?」

「断じて否! お好きでござる!」

「よくわかってるじゃねえか、サムライ。だが、色目を使うなこのすけべ野郎!」

「はいストップ、自分のこと棚に上げようとしても。サンジさんもお風呂覗こうとしたことあたしは忘れたわけじゃないからね?」

 

 呆れ眼のミクに正論を言われたサンジはそのまましなだれる様、嫌いにならないでね、ミクちゃんと土下座する。それを流して

 

「迷いも曇りなく言い切るあたり、流石のサムライスピリッツだね」

「よく見れば異国の姫も御脚を露出させすぎではないか! もう少し淑やかにせぬか!?」

「あら、お嫌いかな?」

「否、お好きでござる! ところで、お主らが船より連れてこられたと言う話は聞いてきたが、何者だ」

「あたし達も王下七武海と似たようなもの。この世に溢れてる海賊の一勢力だね」

 

 苦笑いしつつミクが答えると。大方予想通りの、その嫌悪感を隠さずにサムライは言葉を吐いた。

 

「海賊だと!? いやはや、言うほど野蛮ではないが……それはそれ! 拙者、吐くほどに海賊は大嫌いでござる!」

「まぁ、この状態にした奴と同類なら仲良くしたくはないでしょうね」

 

 お互いに差し支えのない情報交換には応じるサムライに対してミクは深入りしない程度に情報を与え、自分達のいる場所を把握する。

 

「おサムライさんも目的があるなら、手伝ってあげるけどどうする? あたし達は脱出できるけど、そのままにしておくのも忍びないし」

「海賊の情けなど受けぬ!」

「首だけじゃ息子さんを探させないでしょ?」

「あ、こらやめぬか! はなせぇ!!」

「あたしが勝手におせっかいするだけなんだから、黙ってなさいよ」

 

 ミクはサムライの髷を掴むと腋に抱えた。サンジは羨ましそうに血涙を流していたのに一同は呆れのため息を吐いた。

 

「まずはここから出よっか」

「だがよ、ミクちゃん。この扉の硬さは半端じゃないぞ」

「フランキーさんはコーラを温存して。あたしが蹴破るよ」

「アーゥ! 二人でならスゥーパー、蹴破れるのかぁ!?」

「なるほど、同時にか」

 

 ミクの考えを理解したサンジは情熱を燃やし、自身の脚に熱を発生させる。ミクもまた、武装色の覇気で脚を黒金に。

 

悪魔風(ディアブル)(ジャンブ)──牛すね肉(クロッス)ストライクッ!」

芳香脚(パフューム・フェムル)──鮪南無(マグナム)ッ!」

 

 足元に発生させた、泡を踏み込みの瞬間に割り。内部に仕込んでいた圧縮空気を解放、急加速したミクの豪脚から繰り出されるその一撃とサンジの燃える脚より放たれた跳び蹴りは分厚い鋼鉄の扉を焼き、そしてぶち抜いた。

 

「なぁ!? なんたる豪脚にござるか!?」

「ふふん、さて」

「追っ手が来る前に行くわよ!」

「「「応ッ!」」」

 

 ナミの掛け声に従う様、一味は部屋を脱出するのであった。




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