海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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タイトルを変更いたしました。この方がしっくりくるような気がしましたので。


第17話

 子供達を誘導しつつ、ミク達はひた走る。通路はほぼ一本道故に、迷うことなく突き進んで……

 

「お前ら、病気ってどんな病気かとかは教えられたのか?」

「ううん、そんなのはわかんないから」

「まぁそうだよね。子供にとって病気って言われたりしたら信じてしまうくらいだし」

 

 そこでどうしてここにきたのか等を聞き、ミクとナミはヒソヒソと。

 

「どう考えてもあの手口だと誘拐、だよねナミさん」

「そうねー。親元から1年どころか、あの空間にカレンダーなんてのはなかった。つまり、何年もここにいる子が多いと思うわ。とにかくチョッパー、後で診てあげて」

「任せろ! どんな病気でも、どんと来いだ!」

「たぬきさん頼もしい!」

「褒めても何も出ねーぞコノヤロぉ〜ってぇ、タヌキじゃねぇよ!?」

 

 そしてドン付き、ミクは嫌な気配を感じる。その扉の向こうに行けば出口とは思えど……

 

「……ここ以外に道はなかったよね……」

「そうね。他に枝道はなかったし、追いつかれても困るだけ。ミク、思いっきりやっちゃって!」

「う、うん。武装色、硬化……せいやっ!」

 

 ドンッ!と大きな扉を蹴開けると、ひょう。冷たい風が肌を撫でる。その中は氷の洞窟もかくやという、そんな通路であった。故に、肌面積の広いナミは悲鳴と共に震え上がる。

 

「寒ーいっ!? ミク、ローブの中に入れて!?」

「オッケー。んーみんな、ちょっと集まって」

 

 ミクは子供達に集合をかけて、獣人化。断熱性の高い泡で、子供達とナミを入れて包み込む。

 

「これなら、外は寒くても中は暖かいでしょ?」

「ナイス、ほんとに便利ねぇ」

「能力者は発想次第って相場が決まってるのさ」

 

 ナミに対してにっと笑い。ミクはふと、氷の通路に目を向け……笑顔のまま固まった。

 

「……えっとー、ここ……冷凍庫だね」

「「見りゃわかるわ!」」

「じゃねぇよ! 死体が凍らされてるんだよぉっ!?」

「「はい?」」

 

 2人に突っ込まれ、ミクはその中にあるものを指摘する。氷の中に、ずらりと並んだ、所狭しと凍らされたモノ。物言わぬ、鼓動の止まった……人の成れの果て。

 

「なっ、天井にもある……?」

「下にもあるじゃん!?」

 

 子供達の言う‘凍らされた人’は、彼らだったのだ。

 

「まー、しゃーないわ。ここいくしかないっしょ」

「うべっ!? 何すんだこのやろー!?」

 

 武装色で泡を黒金色に変化させて、周りの景色を遮断すると。その泡の中にチョッパーを蹴り込んで先を急いだ。中から外は見えず、ミクが泡を流動させて通路を抜けた。

 

 ○○○

 

 通路を抜けた後、サンジさんとフランキーさんも後続が来れないようにビスケットルームをぶっ壊して来たようで。結果彼らもあたしたちに追いつき合流したのだけど、なんなんだろうこの騒ぎ。あたし達は確かに、通路を抜けて……出口を蹴り開けた先にいたのは……

 

「いるじゃねえか、人が……何が一人だ。弁明は有るかァ……!」

「いるな……俺も今、驚いてるところだ」

「……お取り込み中? 失礼しましたー。はい、みんなーまわれー右。ヤクザさん達から逃げるよー!」

 

 門の外には海軍、らしくないヤクザっぽい人たちがいた。え、なにこれ。カチコミの現場? あ、それとなんでかトラガルファー・ローもいる。アカン、ここはダメだ。

 

「誰ですかあなたは!?」

「回れ右って、どうしたんだよミクちゅわん……ってぇ、テメェはスモーカー!? それと、いつも隣にいるかわい子ちゃん!?」

「あ、この人スモーカーって、あのスモーカー中将!? ルフィがよくケムリンって呼んでるあの?」

 

 飛んだ有名人に出会ったものだと、驚きを飲み込みつつあたしも逃走を図ろう。

 

「誰がケムリンだ……いやそれよりも。麦わらの知り合いか、お前は」

「……ノーコメントで!」

「……ロボにオオタヌキ、黒足に泥棒猫……間違いありません。手配書写真からは変わってますが間違いなく、麦わらの一味です! 総員、麦わらの一味を捕縛してください! あとそこのあなた! その子供達は一体……聞いてるんですか!?」

「海軍は最も信用できないので子供達を預けるわけにはいかんのでーす、もうちょっとこう、チンピラや無法者の集まりみたいな集団に子供を預けれるとも思えないんでー! ごめんなさーい!」

「うっ、正論っ……ってあっこら! 待ちなさい、どうして逃走するのですか!?」

「「「「よーし、大佐ちゃんにつづけぇー!! ……ぐはあっ!?」」」」

 

 迫真の棒読みで海軍の命令に離反、遁走する。まぁ、うん。思わず本音を叩き込んじゃったけど、別にいいか。

 もと来た道を逆走、そして……なんか向こうは向こうで大騒ぎになってるけど知らん、振り向かず……っ!

 あたしの虫の知らせ。思い立ったが吉日! すぐに獣人化して振り向く

 

「なんだこりゃあ、薄い膜みたいなのは」

「やべっ!? これはオペオペの実の領域内っ! みんなはひたすら走って! 阿波幻想(バブリージョン)っ!」

 

 あたしは泡で虚像を写す。反射した光が距離感を騙して、誤認した対象に……やっぱり! あたしに飛んできた突きは蹴り弾き。遠目に見たトラファルガーの、驚愕の表情があたしの目に映った。

 阿波を切ってナミさん達はとっくに領域を抜けていたし、問題ないな! ヨシ!

 

 あたしも身を翻して走し……っ!?

 

「‘シャンブルズ’……アイツらは‘ROOM(ルーム)’の外に出ちまった。流石にこれ以上範囲を広げるのは骨だ。で、お前……俺の能力を‘弾いた’な?」

「その変身した姿は……動物系(ゾオン)の能力者っ!?」

「幻獣モデルみたいだが……いや、それよりもだ。ロー、船を降ろせ」

 

 あれー? なんであたしここに帰ってきちゃったの? まるで入れ替えられたような……? な、軍艦が浮いてるっ!?

 あたしが驚愕していると、トラファルガーがこちらから視線を切ったし……しかしさっきから敵意を感じないんだよなぁ……

 何をしようとしたんだろうか、さっきの感じだとよくわからんが、うん。

 

「返してやるよ。もちろん、元のままとは言わないがな」

 

 シャン、と持っていた刀を一振りしたトラファルガー。視線の先で……軍艦が真っ二つに切られた……よく見るとあちらこちらで物資が浮いてるし……なんじゃこりゃ、なんでもありか? 前衛的なオブジェクトと化した戦艦から視線を切り。

 

「さて、おい……お前には少々役立ってもらうぞ。主に麦わら屋の女っぽいしな」

「あ、ちがうからね? ルフィの船に乗ってる船員(クルー)見習いみたいなもんだけどさ」

「ちぃ、麦わらの奴め! また厄介なのを、相当な手練を仲間に入れてやがるのか!?」

「……あんたのせいよ!?」

「俺は何もしてねぇ。お前が勝手に口を滑らせただけだろ、‘間抜け屋’」

 

 こいつ、煽るのが得意なのかな? 冷静さを欠くと碌なことにならんから乗るつもりはないけど。

 

「ちっ、簡単な挑発に乗らないことは褒めてやるよ」

「舌打ちしながら褒められてもひとかけらも嬉しくねぇよ!?」

 

 とりあえず、殴ろうかと思うが。カウンターが恐ろしいので大人しくしておいてやろう。あの斬撃を見るに、この領域内で逃げようとしてもまた‘入れ替えられる’可能性が高い。

 

「さて、スモーカー。ここを知られた以上。誰一人として返すわけにはいかない」

「お前ら、この円から出ろ! そこの嬢ちゃんも連れて行」

「させねぇよ。‘スキャン’……」

「あ? ……デンデンがねぇっ!?」

「俺のもだ!?」

「馬鹿野郎っ!? 太刀筋に入るなっ!?」

 

 あたしはぼけっとしてるつもりもなく、その場でしゃがむ。太刀筋に入ってた海兵達がスパッと真っ二つ、バラバラにされた。ついでに大量のデンデンがあたしの後ろに。うん、やっぱこの空間内から逃げ出すのは困難だな……はぁ。

 

「ひえー、実際目の前で見るととんでも能力だねー、オペオペの実の能力」

 

 トラファルガー・ロー。‘死の外科医’。スモーカー中将の解説をついでに聞いてるとわかるとんでもなさ。しかもここまでの大きさの(ROOM)を作っても疲弊してるように見えない。

 

「ふん、博識だな……確か、ミク・D……」

「わぁぁぁ!? わかった、そっちの指示に従うから、あたしの名前は明かすな!」

「分かればいい。物分かりのいいやつは嫌いじゃない」

「うそこけ。はぁ……」

 

 両手を上げて降参の意思表明、あたしはトラガルファーの指示に従う事となって。‘何もしない’ことを命じられた。

 さて、見ていることしかできないので海軍の大佐ちゃんこと‘たしぎ’さんが真っ二つにされて。

 

「なんて屈辱……斬られて生きてるなんて……! 斬るならば殺せっ、トラファルガー!」

「心意気だけは一端の剣豪みたいだな……よく覚えとけ、女海兵」

「あーうん。わかるよ、わかる」

 

 トラファルガーの次のセリフが手に取るようにわかる。弱いと新世界で生き残れないもんね? と言うか結果のわかってる喧嘩なんて暇で仕方がないんだよねー……ここは一つ、揶揄ってやろう。

 

「お前は次に、‘弱い奴は死に場所も選べない’と言う!」

「弱えぇ奴は、死に場所も選べない……おい、俺の言葉を先読みするな!?」

「いやー、似た様な価値観だしつい、ね?」

 

 てへぺろと誤魔化して。ため息を吐いたトラファルガーはスモーカー中将に向き直るり……わーお、大暴れしだした。

 スモーカー中将の十手の先は海楼石っぽいけど、なんで先っぽだけ?

 

「おーい、雑兵さん。この(ひと)運んであげなよ……いや、遠いな。仕方ねぇなぁ」

 

 勝手ながら、たしぎって人を引きずって、刀も貴重な業物っぽいし真っ二つにされたそれも回収しておく。破砕音やら剣戟が派手にぶつかり合って、ハイレベルな戦いだ。スモーカー中将のアレはモクモクの実。煙人間といったところか、自然系(ロギア)の能力っぽいかな?

 

「……なぜ、私を……?」

「死に場所はここじゃないよ、貴女のは。後、単純に助けれるのに見殺しにするのは流石に良心の呵責があるしさ」

「海賊なのに、変な人……」

「ひどいなー。もしもあたしがモーガニア側ならまぁ、サメの餌にでもするんだろうけどそこまで悪趣味な連中をぶっ飛ばす側なんでね?」

 

 とりあえず戦闘が終わるまでは‘たしぎ大佐’を守ることにしておく……目の前で死なれたら目覚めが悪いでしょ?

 ……自由の効かない身体で無茶をしないようあたしは泡で彼女を包んだ。内側から出れない泡なのであたしが出すと意思を決めないと割れない。

 

「……!?」

「呼吸はできるでしょ? 足手纏いが何かしようとしてもそれは結果的に大きな隙にかならないよ。ここで大人しくしときなよ」

「……っ!」

「こっちには聞こえないよ。音が向こうに出ないからね」

 

 ……そうこうしてるうちに終わったな、アレは。スモーカー中将が隙をつかれて心臓を摘出されていた。見せしめなんだろうなあ……お前も逆らえばこうなるって。

 どこから仕掛けてくるかわからないランダム戦法。しかも障害物が多いと余計に避けるのも困難になる。入れ代わり、立ち代わり強襲され続ければ疲弊もするし、集中力も欠ける……うん、相手したく無いな。

 

 そんなことを思いながら、たしぎ大佐の胴体をくっつけてあげるのだった。




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