海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第18話

 アレからなんやかんやあり、あたしは海軍と距離を置いて、現在ルフィと合流していた。そして、トラファルガー・ローより一つ忠告を受けた。

 

「‘海竜屋’。お前は、世間一般的に狙われる立場にあることは覚えておけ」

「海竜屋って……リヴァイアサンだからそう呼ぶつもり?」

「‘間抜け屋’よかマシだろうが。いいか、テメェの力はそんじょそこらの海賊、下手すりゃ国一つまるまる滅ぼせるだろ?」

「うん、簡単にできるよ? まぁ、その気になればだけどさ。そんな逆鱗踏むような真似さえしなけりゃ、そこまで徹底的にはやらんけどさ」

「やろうがやるまいがはどうでもいい。その力を持ってるってだけで狙われるんだよ。そしてテメェは……あの血族の末裔だろ?」

 

 そのことについてはノーコメント。私は無視してトラファルガーに続きを促す。

 

「ちっ、わーったよ。その他の話題は無しだ」

「そんで今あたしに手を伸ばしてるのが……‘ビックマム’はまぁ喧嘩売ったから当然として。‘カイドウ’と‘ドフラミンゴ’はまぁ、野心家だとか聞いてるからアプローチは予想の範囲内よ」

 

 モテる女は辛いよ──なんて軽口はともかくとして。新世界に名だたるご面々が私に興味津々なのはひっじょーにまずい……旨みもクソもなく不味い。

 

「だといいがな……世界政府もお前を無視しないだろう。その見聞色の覇気、どう考えても異常だ。‘万物の声’も聞けるのは特にな」

「はいはい。警告ありがとね?」

「ふん、軽々しく捉える能天気な奴だ」

 

 いわばロビンさん抜きでも‘歴史の本文(ポーネグリフ)’を読めるアドバンテージがある。麦わらの一味はそういった奇跡的な面々のおかげで少数精鋭かつ、一番‘ひと繋ぎの大秘宝(ONE PIECE)’に限りなく最前列で手を伸ばしてる。

 と言うことになる。万物の声を聞ける、話せるあたしは特に異常なんだろうけどね?

 

「ともかくだ。俺は用事を済ませてくる……麦わら屋、こいつは借りて行くぞ」

「ん?」

「ああ、いいぞ」

「「「おいっ!? そんな簡単に決断すんなよ!?」」」

 

 ゾロさん、ウソップ、あたしがツッコミつつ。あたしは海楼石の手錠を嵌められた……けども。

 

「どうせお前には無意味だろうが、シーザーを騙すために手を貸せ」

「まぁいいけど」

 

 あたしは手を獣人化させて見せるとトラファルガーは諦めの目である。どうにも、一応働いてるって証拠を見せるべく、捕虜を捕まえたと言う報告をしに行くのにあたしが一番適役だったとの事だ。

 まぁ‘毒が効かない’だの、好き放題言われたが事実だから仕方ねぇんだよね?

 

 で、あたしはトラファルガー言いにくいなぁ……

 

「なぁ、‘トラさん’」

「……は?」

「トラファルガーは長いしトラさんでいいでしょ?」

「……ったく、好きにしろ」

 

 とりあえずルフィのトラ男よかましだろうさとか思いながら後についていき、そして。研究所の奥に入り込むことができたのであったわけだが、こいつが……マスターとやら。

 

 ガスガスの実の能力者。ガス状の羽衣みたいな白衣に伸ばし放題の黒い髪、狂気に爛々と満ちた目と悪意に満ちた好奇心を持ってしてあたしを値踏みするこの男こそが‘シーザー・クラウン’だった。

 

「シュロロロロ、お前が侵入者かぁ? よくもまぁ無傷で捕まえれたな、ロー」

「俺を舐めんな、シーザー。七武海の端くれだぞ」

「そうね。その子は、麦わらの一味新人さんかしら? 手配書は……まだ無いわね」

 

 あったら困るわ。とまぁ、新世界で渡り合えるとおよそ最低ラインが2億からなんだっけなぁ。ふと、羽音がしたのでそちらを向くと止まり木に捕まって、カリカリと書類の処理をしている女性のハーピィ……いや、トラさんの能力で体のパーツを付け替えた改造人間かな?

 瓶底眼鏡をかけて、寡黙なのか。チラリとこちらに視線をよこし。

 

「私はモネ。ここで、シーザーの秘書官のような役職についているわ」

「……なるほど、その体は……キレイですね。空も飛べて、伝説上の存在であるハーピィになられてるのは羨ましいですよ」

「……っ、あ、ありがとう?」

 

 とりあえず、あたしは相手を褒めて下手に出ることにする。しかし、モネさんキレイだなぁ、同性ながら思うくらいには美人だ。

 

「さて、お前はどう処理してくれようか……お前の仲間もすぐに後を追わせてやる、シュロロロロ」

「あーうん。なるほど、だいたい理解できたわ」

「何かだ、小娘?」

「アンタがどうしようもないクソヤローで、ここで起きた過去の事件の首謀者が当時の責任者であるベガパンクの名前を勝手に使ってるってこと」

 

 びきっ、と額に血管を浮かべるシーザー。あたしに対して何かした……あぁ、なるほど。

 

「言葉に気をつけろよ? 今、お前の周りから酸素を全て取り上げることもでき……っ!?」

「無駄だよ。あたしにあんたの能力は通用しない」

「バカな!? 酸素は気体! 気体はすべて俺の意のままに操れる絶対法則なんだぞ!? 今お前の周りに酸素はゼロ、どうして普通にしていられるんだ!?」

 

 あたしはため息と共に、やれやれと肩をすくめる。

 

「そりゃさ、酸素は生き物の体内で炭水化物から得られる糖分を反応させてカロリーを作るために必要だよ? でも、それがないからって直ぐに体から酸素が全て消えるわけじゃない」

 

 あたしの周りから酸素を奪ったとしても。あたしの体内、備蓄している海水から酸素を取り込めば問題ないのだ。

 ちなみに備蓄してる方法は体内にある泡一つ一つに20立方メートルの海水を圧縮。泡はあたしの中で質量ゼロにできるからいくらだろ。まぁ完全獣化した時にリヴァイアサンの体を構成する海水がないとそもそも獣化できないから備蓄は必要なんだ。

 

「ま、そう言う人間もたまにいるんだよ。勉強になられましたかな、天才科学者殿?」

 

 ぐぬぬ顔で睨まれても怖くもなんともねーよ。なんてのは声に出さず、眠くて欠伸一つ……ん?

 

「ちょっと、シーザー。ここで毒ガスのテロはやめてよ!?」

「うるせぇ! ここで殺してやる!」

「……え、これ毒ガスなの? 睡眠ガスと思ったけど」

「「……は?」」

 

 顔色一つ変えずあたしが涼しい顔で欠伸してると、シーザーが変顔しながら絶句した。いやー、あたしには毒効かねぇんだわ……どんな最悪の水質な海水であっても、私の体にはなんら悪影響でないし、その付近の海水を浄化する能力だってある。

 つまり、基本的に毒はあたしにはなんら有効打にならないのさ……くぁ、と欠伸しながらモネさんとシーザーのやりとりを眺める。

 

「……ロー! ほんとにこいつ海楼石の手錠を……かけられてるわ……」

「隙あり」

「ぐぼぁっ!?」

 

 海楼石の手錠を握って脱力したシーザーに武装色は使わないけど、常に覇気纏いをしてるあたしなら頭突きを当てるくらいできる。おら、美少女様の頭突きだぞ、喜べ変態。いや、こいつ常に変体してるか?

 

「なっ、俺の体はガスなのに……! 親父にも打たれたことないのに!」

「知らんがな。とりあえず、あたしには有効打足り得ない無駄な行動は慎んだらどう?」

「そこまでにしとけ、シーザーも俺たちのことも考慮しろ。マスクくらい用意しやがれ」

「ふん! 敵味方の区別くらいやっとるわ!」

 

 鼻血を垂らしながらシーザーが喚くがあたしは素知らぬ顔。なるほど、あたしならまずこいつにやられる未来は見えない……小物も小物だし。脅威とは言えないかなぁ……他のみんなには普通に脅威だろうけども。

 

「まぁ、飼い慣らす方が得意なんじゃねーの? 子供に覚醒剤(ドラッグ)食わせるくらいにはクソ外道なマスター様よぉ〜?」

「っ……なんのことだ?」

「覚醒剤……もう気がついたの?」

「脳下垂体に干渉する薬で身体の巨大化。その分検体には負担もかかるし、幼少期より慢性的な摂取が必要……このアプローチは良いようで全然良くない。子供を巨大化させる意味がわからないけど、ビックマムの依頼、よね?」

 

 あたしはとりあえず推察とそして、見聞色の覇気による答え合わせだ。シーザーの考えを読み取り、あの子達が苦しむ理由になった元凶がビックマムにあるとわかった。

 ふざけんなよあのクソババァ……いや、こんな実験をしてるシーザーの方がよっぽどド外道だけどさ?

 

「シュロロロロ……教える気はねぇよぶぁ〜かっ!」

「あ、もう答え合わせは済んだから。ぶっちゃけ分かりやすい外道でよかったよ。いや、‘ど畜生’で良かった」

「は?」

 

 あたしは海楼石の手錠を捩じ切った。海と同じエネルギーらしいが、海そのものが海楼石を壊す場合、ダイヤモンド並の高度は無意味になる。

 

「心置きなく、お前を殴れるから、ね☆」

「ぐっごほぉぉぉっ!?」

 

 足元に作った泡を踏み込み、破裂させてシーザーに肉薄。そのまま土手っ腹に一撃を叩き込んで壁に向かってぶっ飛ばす。実体を殴り飛ばしたから壁に激突してフラフラと立ち上がるシーザー……意外とタフだなこいつ。

 

「くそぉ! やってられるかぁ!!」

 

 ガス状になって逃げた……は?

 

「おい、何突っ立ってる海竜屋! 追うぞ!」

「あ、うん。その前に、えい」

「なっ、海楼石を無力……うっ」

 

 モネさんをとりあえず覇王色の覇気で飲み込んでおく。援軍を呼ばれたらたまったもんじゃないからね?




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