海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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かなり端折ってますが、主人公のメインパートがそろそろきます。
ここまではいわゆる序章なので、よろしくお願いします。


第2話

 トーン、トーンと音がする。 ぎゅっ、ぎゅむぅと音が鳴る。ギシギシ、ぐっ。ドスンと地が揺れる。

 船が軋む音、その音で‘ウソップ’は目を覚ます、気のせいかと思うが外では音がしていたのだ。「まさかあの‘大将’が外で張ってるんじゃ」……と内心によぎるが、ゾロたちのいう一騎打ちを反故にするのかと冷静に考えた彼は。偵察がてら、他の図太い面々が眠る中、夜中の船内を抜け出した。

 

 そこでは焚き火の光が目に入る。何者かが近くにあった木を切り倒し、何かを作っている。じっと観察していると、ふと目があった。

 ありえない、自分の偵察を見抜くなんて。とウソップは叫びたくなった心を押さえつけてすぐに遮蔽越しに隠れる。持ってきていた‘銀河パチンコ’に手を伸ばす。

 

「こっちから手出しはしません。武器を取るならこちらを殺す気でお願いします」

 

 ピタリ、とウソップは静止せざるを得ない。殺す気で来いと相手は言ったとすぐに理解したウソップは……両手を上げて降参の意を。無言でその声の方を見ると……黙々と筏を作る少女の姿が目に見えた。

 

 ○○○

 

「と、いう訳で。そちらにあたしから手出しするつもりはありません。お兄さんには疲労の色が強く見えますので、早くお休みになられてはどうでしょうか?」

「バカ言え。見張りもなく、このキャプテン・ウソップが一夜を明かさないとでも思うか!?」

「……無理な鼓舞は疲れを増すだけです。昏倒させてあげましょうか?」

「すみませんでした!」

 

 即頭を下げるお兄さん。わかればよろしい……ミクだ。あたしは現在、アオキジ(仮)の人に教えてもらった島にやってきたんだが、先約がいた。まぁこっちから手を出す事もないし、放置していたが。中から人が出てくる気配を感じたのでそちらを見ると、偵察兵っぽいこのお兄さんを見つけたのだ。

 ウソップと名乗ったお兄さんはあたしを観察するように、警戒と好奇の混じった視線を時折向けてくる。まぁ、その対応は仕方なかろうな。

 夜中に筏を作ってる不審者がいきなり出現(ポップ)したんだし。

 

「で、何か?」

「いや、どうやってここにきたんだよって聞きたいんだけど」

「海王類の頭に乗ってきました。筏を壊したお馬鹿さんをくっぷくさせて」

「なるほどなぁ……っておいちょっと待てよ!?」

「何ですかうるさいですね。筏作りの邪魔をしないでください」

 

 少しむすっとした顔を向けてやるが、お兄さんはのんびりと木材を素手で削っているあたしに目を見遣る。

 

「いや、素手で削ってんじゃねぇよ!?」

「道具がないんですから素手で作業するしかないじゃないですか」

「その理屈はおかしいからな!?」

「むぅ、まあそりゃそうですけどできるから仕方ないんですよ」

 

 能力を使うとあたしの腕や体は鱗で包まれる。今は手だけを鱗で包んで爪で木の幹をくり抜いてるところだ。荷物を固定するのに陥没させる方が都合いいので。

 ごりごりと削っては、焚き火に削りかすを入れて燃やす。その繰り返しでようやっと筏に使う木材の加工を終える。

 

「筏を作ってるのか、お前」

「ええ、あとはこれを括れば出発できます」

「そ、そんなのでここらの海をうろつく気かよ!?」

「え、そうですけど」

 

 頭おかしいんじゃないのかと遠回しに言われてる気もするが事実なので仕方なかろう。あたしは木材を縄で括り、焚き火から火を移した松明を片手にそのもう片手に蜜蝋を溶かして縄の節々を塗り固める。

 結構ガッチリ固まってくれるので密林に入った時とかは蜂蜜の採取は欠かせないのだ。ちな、蜂に刺されても鱗が守ってくれるので問題はないし、ハチミツも高値で売れるから資金源にもなる。

 思ったより大きな筏になったがまぁいいでしょう。それを海まで押して出発の準備です。

 

 死にたがりに見られそうですが、お兄さんは静止しないご様子。常識的な人だと思ってたんだけど……

 

「なんつうか、お前。‘あいつ’みたいだなうちの船長」

「あら、お兄さんが船長(キャプテン)じゃなかったんですか?」

「そ、その場のノリだ! お、お前、名前くらい名乗っていけ!」

「あ、はい。ミクですね」

「おう、俺はウソップ!」

 

 名乗れと言われれば名乗りますよ。という顔しつつ。

 彼の仲間はまだ寝てる模様でしたのでそそくさと出発しましょう……強敵と対峙して疲れ果てたような気配も感じますから。

 

「では、また。海はどこまでも繋がっていますので逢いましょう」

「ああ、またな……気をつけて行けよ……魚人なのか、あいつ」

 

 あたしはそう彼に告げて、半獣人形態……と仮に名付けた形態となり、筏を海へと押し出します。海流に乗るまでは泳いで押しましょう。

 

 ○○○

 

 □日△月 雨(嵐)

 

 ‘エニエス・ロビー’の崩壊。それを聞くとどうにも世も末だなぁと思う。風で飛んできた新聞が顔に張り付いて何事かとなったが、その日に号外を読んだんだけども。

 大海賊時代を生んでしまった世界政府の醜態がいよいよ隠せなくなってきたようだと内心で嘲笑う。

 絶対的権力のほつれは現体制の維持もさぞかし舵取りが大変なのだろうなんて思いつつ。あたしはシャボンディ諸島に向かって流されていた。

 ちゃうねん、嵐で積んでたオールが流されて。増設したマストが折れて帆を張れなくなってしまったんだ。

 なぜシャボンディ諸島とわかるのかって? そりゃ、偉大なる航路(グランドライン)前半の最終地点といえばシャボンディ諸島だからだ。

 聖地マリージョアを通るルートは使わない。あたしは筏を放棄してとりあえず潜るつもりだが、本当に今のまま‘新世界’に入るべきなのかどうか。

 

 風の噂。覇気なる力がないと向こうで渡り合うなど不可能らしいのでそれを鍛えないとダメになると思う。まぁ、なるようになる、能力にかまけて鍛えないわけにもいかないからあたしは基礎トレだけは怠ったことはない。

 だからこそ、シャボンディ諸島で隠居してると聞く‘冥王’の話を聞きに行くのも目標の一つだ。

 

 あたしがなぜ船出したのか……まぁ‘天竜人’が原因だ。奴らのせいであたしは故郷に居られなくなった。お忍びできてたのかは不明だが、たまたまばったり出会って頭を下げないとと思い、土下座してる途中で鼻水垂らした不細工に髪掴まれて凝視されて。ペドリフィアかロリコンか知らんが、未成年に獣欲を滲ませた目で近寄られたらトラウマになるっちゅうねん。

 振り切って問答無用で逃げ出し、‘家宝の果物’とやらを食べて海に身投げした。とうに他界していた両親からはこの実を食べるとカナヅチになって溺死してしまうと言われていたが。人権を犯されるくらいなら死んだ方がマシと思っていたんだ……しかし、どうも。あたしが食べたアレはカナヅチになるどころか今まで以上に泳げるようにされたので、当たりの部類だったのかもしれない。

 

 そこからは天竜人なる世界貴族どもの手に及んでいない安住の地を探して彷徨っているわけなのだが、あたしの能力は海ばかりのこの世界ならかなり便利な力だと思う。

 とにかく覇気だ。それを身につけないと話にならん。

 

 ▼日△月 曇り

 

 あたしは今、探していた‘冥王’であるレイリーさんに弟子入りさせてもらえていた。最近起こった事といえば頂上決戦。海軍本部へ‘エドワード・ニューゲート’の率いる「白ひげ海賊団」が攻め込んだことが世間揺るがす騒動になっていた。

 で、現在は凪の帯(カームベルト)を進んでいるところだ。レイリーさんは泳いでこの海域を渡るつもりだったらしいが、あたしの能力を知ってとあることを条件に弟子入りさせてくれた。

 曰く、あたしには覇王色の素質があるらしいのでその辺も含めて鍛える代わりに指定する場所に向かってほしいとのこと。どうやら‘アマゾンリリー’。別名女ヶ島へ進路を向けている。

 磁場を感じれる能力のおかげでどっちの方角に何があるのかがわかるから航海できる獣化形態は扱いが楽だ。図体が200メートル近くの、簡単に言えばめちゃ大きくなるから不便と言えば不便だけど。

 しかし、良いのだろうか? あそこって男子禁制のはず……なんだけどなぁ。

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