海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第21話

 見聞色の覇気を限界ギリギリまで探知する様に広げ、私はついに。地下にある瓦礫の集まった廃棄場付近から誰かいるのを感じとる。そして、何やら目つきの悪い……モネさんが懐に忍ばせていたデンデンから着信があった。

 

 え、なんで持ってるのかって? サシで話したかったからだが?

 

「もしもーし、どちら様ー?」

 “……かけ間違えたか? いや、そんなはずはない。お前は誰だ?”

「このデンデンに通信を寄越すとなると。ヴェルゴと、シーザーも連絡が途絶えたことに焦りを感じてるんですね?」

 “フッフッフッ……俺が誰かを分かった様な口ぶりだな、小娘”

「天夜叉。王下七武海が一人。‘ドンキホーテ・ドフラミンゴ’殿とお見受けしますが? 間違いなら間違いって言ってくださいね?」

 

 とりあえず。シーザーの言ってたジョーカーとはやっぱこいつだったか……ぷらりぷらり、あたしは別に目的もなく。パンクハザードの研究棟を彷徨いているが、見聞色の覇気を広げてるからなんだろうけど、これらが何を意味するのかをじわじわと理解してしまっていた。

 

 “お前の名前も教えてもらいたいところだが……そうだな、なんと呼べばいい?”

「じゃあ、ミクで。親しく読んでほしくはありませんから、小娘で結構ですよ?」

 “……そうか。フッフッフッ……! 運が俺に向いてきたのかな、こいつは”

「勝手に笑ってんじゃねえ気色悪い。なんですか? もう勝ち誇ったつもりですか?」

 “──中々辛辣だな、だが。強気な女は嫌いじゃねえ……どうだ、俺に付かないか? どうにも‘名前’で困ってるそうじゃねえか”

 

 困ってるのは確かだ……母様の名前が有名になりすぎて、ヴィレの一族郎党が処刑あるいはインペルダウンに収容の後に拷問ついでに死んでるはず。

 つまり、ヴィレの名前を持つ者はあたしだけしか生き残っていないのだから名乗るわけにもいかないんだよね、この名前。

 

「どうとでもなりますよ、んなもん。名前を誤魔化して生きるのも辛くもなんともありませんから」

 “そうか、それは惜しいな。だが、お前はロックスの血筋を引く者だそうじゃないか……世界政府はお前と言う存在にまだ気がついていない。どう言う意味かわからない訳じゃねぇだろォ?”

「仮にも政府に従ってる、誇りもクソもない‘商売海賊’ですものね、あなたは」

 “物おじもしねぇ、よく回る口だ”

「アホかテメェ、脅しにもなってねぇよ……海軍だろうと、世界政府だろうと。敵に回るならねじ伏せるまでだ」

 “フッフッフッ! 大口を叩ける余裕もあるのも感心だ”

 

 とりあえず、煽られてるのは分かったのでキレておく。ん? なんだ、これ……っ……!

 その存在はあたしにとって巫山戯るなと、激情を噴出させるには余裕なネタだった……許されざる、それ。

 

「おい、ドフラミンゴ……テメェ、‘SMILE’を流通させてたな?」

 “なんの話だ? ソレに関しちゃテメェに答えてやる義務はねぇぞ、ミク”

「あたしの名前を呼ぶな。この‘SAD’とか言うのは……たいそうふざけた奴だなぁ? シーザーの研究室にあった資料。血統因子だったか、ソレの応用で作った……なるほどな、理解した」

 

 あたしはキレると他人よりも3.5倍の思考能力を発揮する。常人の100%で頭脳を発揮するようなもんだ。

 点と点がつながって、一つの公式。一つの結果が導き出される。

 

「実に不愉快で、実にくだらないお遊びだよこれは」

 “何が言いたい”

「その実際の性能を発揮できるのは10%未満だろ、その代物」

 “っ!?”

「悪魔の実は食うと魂につながって、その器である肉体そのものを変質させる力がある。その形にベースがあって、超人系(パラミシア)動物系(ゾオン)自然系(ロギア)と分かれる……この血統因子は動物ばかり見てぇだな……さしずめ、人工悪魔の実、動物系。それがSMILEの正体か」

 

 あたしなりの推察。これは、SMILEは……血統因子を無理やり書き換えるリスクを背負って。人工的な悪魔の実の力を適合させれるかどうかは‘分からない’。ああ、ふざけた代物だ。

 

 “フッフッフッ……! お見事だ、その推察に違いねえ……おい、いや待て……”

「今から、それを、ぶっ壊すつもりだよ。こんなもん、あたしは……認めねえぇぇッッ!!」

 “よせ、やめろ! 俺たちの成果に触るなァっ!?”

「許してやるものかよ。不確実な賭けに。罪のない獣たちを利用するこれを、あたしは許さないっ!!──海皇爆咆哮(カルヴァ・イグナイク)ッ!」

 

 覇王色の覇気を球状に爆縮、それを一気に解放する。覇気はSADの装甲を貫き内側から拡散する様にその破壊エネルギーが拡散して、装置をパンパンに膨れ上げさせた。

 そして、結果。閃光、轟音と共に爆散する。獣の王として、それは許されざる冒涜だ。だから、壊す……!

 

 “……随分と、好き勝手やってくれたな。だが、そうだな……いいだろう”

「かかってこいよ、ドフラミンゴ。あんたに喧嘩を売ってやる──首洗って待ってろ」

 “フッフッフッ! なら、俺から出向いてやる! お前、モネに預けていたデンデンを使っているな? まさか殺しちゃいねぇよなぁ?”

「お前と一緒にすんなクズ野郎。つーかよ、仲間が自分のために死んでくれる、ソレが家族だと思ってるテメェが大っ嫌いだ」

 

 ごうごうと燃える瓦礫を前に、あたしは静かにキレた。コイツのやり方、コイツの全てをぶち壊してやる!

 

 “お前だけがここまでする理由はねぇよなァ? ローの記憶も読んだか”

「正確にはヴェルゴだ。あいつが昔やってことを視た」

 “そうかい……まぁいい、そこで待ってろ小娘ェ!”

「2日も待たねぇよ。あばよ」

 

 ガチャリ、切った通信とデンデンをとりあえず放置。あたしは踵を返すと、トラさんがいた。

 

「海竜屋……俺の目的を知ってたのか?」

「うんん、ドフラミンゴに喧嘩売るのにちょうどいいネタを探しててさ。それでここをね?」

 

 あたしの手にしていたデンデンを見て、トラさんは目を見開いた。

 

「馬鹿なことを。だが、SADがない以上。ドフラミンゴはカイドウの怒りを買うだろうな」

「カイドウが潰す前にあたしが終わらせてやる。別に、トラさんの許可とかなくてもやるよ? ルフィもあたしから話を聞いたらキレるだろうし」

「そうかよ。ったく、俺がいない間に勝手に話を進めるな馬鹿が」

「あわっ」

 

 トラさんがあたしの額を小突き。なぜかはわからないがポン、と頭に手を置かれた。

 

「だが、よくやってくれた。お前のおかげで手間が省けたよ、海竜屋」

「あ、そ。まぁ許せなかったのも事実だから問題ない」

 

 多少、なんだかわからないが体温が上がる……なんでだろうね? 褒めながら撫でられる。そんなことされたことがなかったから少しだけ、あたしは新鮮な気分になった。

 

「……黒足屋たちが侍の胴体が見つけて帰ってきたぞ。海軍の奴らも、白猟屋がなんでか子供達を引き取りに来たが理由を知ってるか?」

「なんでだろうね? ま、あたしは関係ないよ」

「……だといいがな。あとは侍の息子だが、目星はつけてんだろ?」

「うん。この近くにいるはずだから助けてくるよ」

「俺も行く。お前ばかりに仕事をさせるわけにはいかねぇからな」

 

 こっちで勝手にやってもいいのにとか思いつつ。あたしはトラさんと一緒に廃棄場へと足を運んだ。

 

 

 ●●●

 

 せっしゃはどうなるのだろうか……暗い闇の中、もう十日は何も食べておらぬでござる……そんなことの堂々巡り。人の気配が近づいてくるのに気がついた。

 錦えもんか? 久方ぶりに見るその姿を追い求めせっしゃは盗み見る様、瓦礫に埋もれたこの山からその人物を探ることにした。

 

 しかし来たのは錦えもんでは無く。薄い褐色の肌を持つ、麗しい異国の姫だった。それに加えて、白い帽子を被った見知らぬ男は護衛であろうか。しかしせっしゃは、銀髪に目を奪われた……透き通る様な紫水晶の如き双眸。そして鼻梁高く、桜色の紅をささぬ唇は瑞々しい水菓子の様に艶やかで。

 

 かつての自慢の妹、日和にも劣らぬその美貌はまさに‘天女’であった。

 

 その天女はせっしゃを探しているのか。モモの助と呼んでくださった。天よりせっしゃを救うべく現れた天女か。それかどうかはわからぬが、怪しい一つ目と比べれば……信用できる!

 

「またれい、そこなご婦人よ。せっしゃこそがモモの助にございまする!」

 

 ぐぅーとなる我が腹の虫よ。せめて見栄くらいは切らせてくれぇぇ……

 

「ちょ、大丈夫!? トラさんマズいんじゃない、この子」

「栄養失調と衰弱だな。急いで何か食わせないと死にかねん。海竜屋、何か買い物はあるか?」

「えっと……‘骨せんべい’に‘チョコレート’かなぁ」

「なら甘いものを食わせろ。滋養強壮に効く」

 

 護衛と思った男はどうやら医者の様だった。そのくせ、大太刀を持っておるが、もしや海賊か……!?

 

「か、海賊の施しはうけぬぅ……!」

「そう言わずに食べてよ、ほら」

「姫君のススメであろうと、せっしゃは、武士なり! 施しは、うけぬぅ……」

 

 ぐるるる、となる腹。限界が見える……しかして、せっしゃにも意地がある……!

 

「もー、わがままだなあ。はい、あーん♪」

「わぁい」

 

 手ずから美女が食べさせてくれるのならば是非もなし! ん、うまい! なんだこの甘味は!

 

「(メチャクチャちょろいな、コイツ(この子))」

 

 呆れ眼の二人など知らぬ。そら、もっとその甘味を献上するのじゃ!




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