ピンクの竜こと、モモの助くんを回収したあたしとトラさんはルフィ達の元に戻ったら……錦えもんさんが男泣きの土下座をしてきた。
「異国情緒に救われた、拙者。感涙の極み! このご恩、決して。決して忘れぬにござる!」
「いやー、いいよ。たまたま見つけただけだしね」
「ちょこれいとは美味であった。せっしゃは気に入った、もうないのかミクよ!」
「こらこら、ご飯の前なんだからおやつは食べ過ぎちゃダメだよ」
「むぅ、夕餉ならば仕方あるまい! おい、支度はまだか!」
「うるせぇぇぇ!! ちょっとは待てやクソガキがぁぁ!!」
サンジさんがキレながらタンカーに作ったかまどで炊いたり煮たりと大忙しで料理を作っていた。
そう、宴である。ルフィが音頭を取って海軍もケンタウロスも、関係なく騒ぐために料理を作っているところなのだ。
実はマスターことシーザーに関しては状況証拠として数々の資料を提示した結果。ケンタウロスみたいな人たちとルフィ達の間にあったイザコザも飲み込んでくれることとなって。
実験生物扱いされていた彼らはまだ服役中の囚人だったこともあり、G-5支部に連行されることになったようだ。まぁ、シーザーの施してた毒素の実験とかの治療もしないとダメだし、そりゃそうか。
連れて行くわけにもいかないからね、あんな人数絶対乗らないし。
「あ、モモの助くん。元に戻れる?」
「うむ。少しむず痒いが、こうじゃな!」
ドロン。と煙を上げて変身が解けたモモの助くんは人の姿に戻った。教えて良かったな、うむ。
「も、モモの助ェェェっ! 無事で、無事で何よりに……ゔ、ぅうっ!」
「錦えもんさんも泣いてないで服あげてよ。モモの助くんが凍死しちゃうから」
「むっ、父上! はよ、してくれ! 拙者はいま素っ裸でござる〜!」
「かたじけない、かたじけないぃぃ! どろんっ!」
錦えもんさんの妖術と言うか悪魔の実。フクフクの実っぽい能力が発動して、ぼふっと煙がモモの助くんを包むとゆたかっていうのかわからないが衣服を着た状態になっていた。寒さはこれで凌げるだろうか? さーて、あたしはエプロンを泡の中から引っ張り出すと身につける。九蛇のローブはマストに引っ掛けておいた。
「サンジさん、ヘルプするね」
「助かる、そっちの鍋をよろしく頼むぞ、ミクちゃん」
「アイアイサー!」
テキパキと仕込んでいくサンジさんの後を追従するように、鍋に具材を投入して。フライパンを振るって火を通す。良い匂いが鼻腔をくすぐって、腹の虫が鳴りそうになる。
あたしは水飴を溶かした水を層になるよう骨つき肉に流しかけて、この寒い気温を利用して凍らせると、煮だった油でじっくりと揚げる。あるいは、九蛇流の包丁さばきで野菜の皮剥きと乱切りを一瞬で終わらせる。
「これは飴焼きか……なるほど、保存性も上がるから結構使えるな」
「うん。こういう寒い気候だからできる食品加工かな。九蛇にいたころニョン婆に習った」
「ミクちゃんもルフィと修行してた頃に苦労したんだろうな。あいつ、料理なんて出来ねぇだろうに」
「出来ないことをこうやって役割分担できるから自慢の仲間だーって口癖みたいに言ってたね、そういえば」
「へっ、これからは食に関しちゃ不自由させるつもりはないさ。この俺がいるんだからな」
ルフィが作った気まぐれカレーのゲロみたいな味が忘れられない。グロテスクな味だったけど、それ以来あたしが料理を受け持っていたんだよなぁ……全く。
そんなやりとりをしながらもサンジさんの手は止まらない。気がつけばあたしも夢中になって彼の手伝いをするわけだが。
こうして、海軍も子供達も、囚人達も。あと、なんかベビー5とバッファローにシーザー(彼らはまぁ海楼石で繋がれてるけど)にも料理を振る舞った。
幸せの隣で、不幸になる人がいるのはちょっと不平等だからね。
さて、そんなこんなで宴を経て。私たちは海軍と海賊。馴れ合うのは御法度だけど今日だけは無礼講。
子供達も暖かいタンカーの中で寝静まってそれを見届けたあたしは酔い覚ましに……いやまぁ酔わないけどそんな気分で夜風にあたろうと思っていたら、先客がいた。
「あ。ナミ、ロビンさん」
「いらっしゃい、ミク」
「ちょうど良いところに来たわね」
今日の出来事とか、そしてこの島での冒険を振り返りながら。正直にいえば結構やらかしてるなー、あたし。笑いながらその顛末をナミとロビンさんに明かしてやったら……
「あら、そんな楽しいことになっちゃったの?」
「つまり、ビックマム海賊団に喧嘩を売ってる最中だっていうのにあんたはドフラミンゴに喧嘩を売ったってわけね?」
「そーそー。ドフラミンゴの、余裕のない声って傑作だったよ。いやー、くひひっ」
「笑ってるばぁいじゃないでしょぉぉーがぁぁ!!」
「あだっ!? 暴力反対!?」
案の定折檻されました。うう、たんこぶがジンジンして夜風が滲みる。
「でもまぁ、子供達のあーなっちゃった大元がビックマム海賊団なんだよ。だからどのみち、その計画をご破算にしたあたしたちはぶつかる運命だったのかもって思えばいい気がする?」
「それもそう……って流そうとするなぁぁっ!!」
たんこぶが増えました、夜風が痛いです。
「まぁ仕方ないわ。できるだけ安心できる航路を選ぶしかないわね」
「七武海(笑)だからヘーキだよドフラミンゴなんて」
にっと笑ったあたしを見て呆れ眼のナミと頼りにしてるわね、と微笑んでくれるロビンさん。にしし、やってやる。
ちなみに、ルフィに喧嘩を売ったのを話すと。逆によく言ったって褒められた。
「俺の仲間に手を出すなら、俺の敵だからな! しししっ!」
とか、なかなか言えるセリフじゃないよねー。流石ルフィ、ハンコックが惚れる男だぜ。
さて、そんなこんなであたし達は明日の明朝、出航の時を迎える。出立することになって海軍に子供を託すのは少々複雑だけど……
「スモーカー中将なら問題ないでしょ。海楼石付きの特注武具を確保できる人脈もあるみたいだしさ」
「ベガパンクに治療を依頼できるのが1番の利点。それに、ウソップにも言ったけどあたしたちは海賊だからね……子供達だって迷惑だろうしこれが妥当な判断なのよ」
「ふふ、らしくないわねナミったら」
「たまには酔いたいのよあたしだって、はーヤケ酒なんて久しぶりね」
持っていたグラスを空にしながらナミはそう言うけど。これは彼女の優しさの発露なんだと思う。なんでルフィやあたしにたんこぶを作れるのかと思えば納得だ。
「にししっ、ナミの拳骨は痛いのってさ」
「んー?」
「それだけナミが自分以外の人に優しいからなんだろうね。‘愛ある拳’はあたしの覇気をすり抜けるからねー」
敵に情けはかけないけど、仲間には伝わってほしいと打撃無効のルフィにも覇気を使えないはずのナミがダメージを通すのはそう言うことなんだろう。
諌めることができる勇気は、それだけの信頼の裏返しなのだから。
「ぷっ、何それ。でもルフィのお爺さんもそんなこと言ってたっけなぁ〜……懐かしいわね」
「海軍の英雄、モンキー・ガープ中将。いつか、会ってみたい気はするなぁ」
「ルフィが2人になる時点であたしはもうお腹いっぱい、胸焼けしちゃうから顔は合わせたくないわね、あたしは」
「ふふふっ、嵐みたいな人だったから私も同感ね」
ナミの苦笑も仕方ないだろう。ロビンさんも笑顔だけど多少疲れた笑顔って感じがするし。かの人の、その武勇伝はあたしも聞き及んでるし。非能力者でアレはバグってるだろと武勇伝のかたまり……否、仏のセンゴクと並ぶ伝説の海兵だ。
「んじゃー、明日の出航も早いしお先に」
「えぇ、おやすみ。ミク」
「おやすみ」
遠い海原を眺めながらサニー号の寝室、ハンモックに寝転んであたしは目を瞑った。
そして、日が上り……あたしたちは、トラさんとシーザーを追加で乗せて。サニー号は出立の時を迎える。
○○○
☆日○月 快晴
あたしたちは無事にパンクハザードを出航した。その際に一悶着、いや。
やれ無法者がとか、下賎な海賊がとか言ってた割に。「こいつら罵倒しないと、好きになっちまう」とか嬉しい罵倒だったから笑ってしまった。
子供達も将来海賊になるとか言い出して、あたしも海賊はやめて海兵は……天竜人っていう地雷があるから勧められない。
なのでいつか一緒にお酒を飲もうと約束した。子供だから、盃を交わすわけにはいかないからね。
そして、あたし達の次の進路はドレスローザ。まぁドフラミンゴに喧嘩を売った以上さっさと叩くに限る。しかし、直接手を下さずとも自分で首を絞めることになるだろうからとにかく時間を稼ぐとトラさんが作戦を立てたが……あたしはそれを遵守するつもりはない。
まぁ、時間稼ぎには賛成だからそれは従うけどね?
あと、どうやらモモの助と錦えもんさんの仲間がドレスローザにて捕まっているとのことであたし達と行動するようだ。
あ、ちなみに、撃破したヴェルゴは海軍に、モネさんは私が引き取った。
なんでかっていうとこの人も訳ありっぽいんだよねー……どちらかというと狂信者的な、でもドフラミンゴに裏切られたってことは薄々わかってるみたいで、妹さんの安全を確保してほしいと頼まれたし、あたしも頑張りますかー!
だから、首洗って待ってろよ……ドフラミンゴ!