@日△月 快晴
度重なる破壊音、そして鳴り響く轟音。誰かが暴れているらしい島を横切り、離れながらようやくアマゾンリリーに到着した。
なんつーか、海王類の気配がすごく多かったけど。あたしに喧嘩を売る馬鹿が居なくてよかった。とりあえず、ニョン婆様。レイリーさんの知り合いの方が獣化しているあたしを見て呆然としていたので、一度潜り。元の姿に戻るとさらに唖然とされた。
まぁ、あたしの能力はとても珍しい悪魔の実由来なので世界で知っている人の方が少ないだろうと思う。
破壊音やらについて書きたいと思っていたが、まずはアマゾンリリーの皇帝と言うか、君主たる‘ボア・ハンコック’さんに挨拶に行く事となったが軽い御目通りだけであまりこちらに興味がないというか……あれ恋煩いしてない?
恋愛脳というか、眼中にないと言うか。別にあたしとしては構ったものじゃないが、心配そうなのはわかったので、気になったから話を聞いてみると何やら意中の男が荒れていると。
そりゃ心配にもなるだろう。けど、いい女は‘待つことができる’と教えておいたら怜悧な雰囲気を持ち直した。というかすごい美人だなこの人。
このアマゾンリリーでは特に美女が多いらしく。この人はこの島国で一番美しいからと見下すどころか見下しすぎるあまりに仰け反っていたのが少しアホ可愛かった。
なお、あたしでもわかるほどにヤバい人なのだが、主に大腿部の発達の仕方。見た目はすらりとしたとても綺麗な美脚なのに、その筋密度はおそらく天まで駆け登れると思う。実際、レイリーさんに聞くと歩法で空を歩く人たちもいると聞いたくらいだし。
お偉い様への御目通りも済ましてようやく覇気について教えてもらえると思ったのだが、少し野暮用があると彼の手伝いをすることになった。
どうやらぶっ壊されて復興作業中の‘マリンフォード’……つまりはまぁ海軍本部へ乗り込むとかトチ狂ったことを言い出したのだ。まぁレイリーさんがきっちり守ると言ってくれたのでそれを行うメンバーを紹介したいと。
そして出会ったのが……‘麦わらのルフィ’だった。腐れ縁というか、この先なんとなくわかる。‘コイツとは長い付き合いになりそ’うだ、と。
○○○
「レイリーを連れてきてくれたのはお前か、ありがとな!俺はルフィ、‘モンキー・D・ルフィ’だ。よろしくな!」
「先に名乗られましたか。あたしはミク。‘ミク・D・ヴィレ’」
「ん? ミク……ぁぁぁぁぁっ!! お前、ウソップが言ってた奴か!」
「ウソップさんですか。ええ、知ってます。皆さんの旅路というか冒険の噂もちらほら聞いてるし」
「しししっ、俺たちの冒険まで知ってんのかァ。なぁ、お前強そうにはあんまし見えないけど」
麦わら帽子を被った少年とわいのわい、騒ぐことはないが楽しそうに。実際のところ同年代の友人がいないミクにとって面白いやつとの出会いであると感じさせたルフィとのやりとりはある程度場が温まるまで続いた。
「ルフィ君。ミク君は一応、君の妹弟子にあたる様になるから気をよくかけてやってくれ。さて、ジンベエ。マリンフォードへの突入だが手伝ってもらってもいいかな?」
「レイリーさんがいるなら、こっちとしても百人力じゃ。だが、その娘さんにゃあ荷が重すぎじゃとワシは思うが」
「む。あたしが弱そうなのは見かけだけだ。あたしは‘リュウリュウの実’を食べた」
「悪魔の実の能力者か、お前さん」
「ん、海に沈んでもへっちゃら。レイリーさんを背中に乗せれるほどの大きさになれる、見てて」
ルフィの暴れていた影響で開けた土地になっていた場所はミクにとっては好都合だった。己の身を変化させる。徐々に膨らんでいき、その身は全長250m。
赤く凶悪な眼光を宿す瞳の納まった巨大な頭部と、ぞろりと生え揃った牙を覗かせるは大きなアギト。透明感を有しながら、黒々とした鱗で覆われつつ。その身体は蒼いためが反射してまるでサファイヤのよう。
のたうつ蛇の如き巨躯には鋭い背鰭が延々と、尻尾の先まで続いていた。腕の部分水かきを有している割に人の手のひらに近い構造でありながら凶悪な鉤爪が青白く光る。脚は発達した鰭の形とまさに‘海龍’を彷彿とさせるそれだった。
『あたしはリュウリュウの実、モデル幻獣種で‘リヴァイアサン’の海竜人間だよ』
その身に泡を纏い、ふわりと浮くミクの完全獣化形態にルフィはというと
「スッゲェぇぇぇ!! なぁ、ジンベエ!」
「見事なもんじゃわい、なるほど。そらお前さんがここに来れる理由がわかった」
『褒められると少し嬉しいかな……見た目的に凶悪すぎるから。まだ覇気を使えないからまともに新世界で立ち回れないと思って、レイリーさんに弟子入りさせてもらったわけ』
その巨体でなかなか可愛らしい声で喋るそのギャップにジンベエは内心で困惑する。その隣のルフィはなんとも思ってなさそうではあるが、その辺は感性の違いなのだろう。
「うむ。乗り心地は流石に良くはないが、あの浮く泡に包まれれば彼女と同時に移動できる。コーティングの泡によく似た性質を持っているようでな」
『それを利用して海の底からマリンフォードに乗り込む作戦だよ。あたしも熱波のブレスとか吹き放てるから、援護もできるし。いそいそと復興してる途中で悪いけど、海軍にはもう少し苦労してもらおう』
そして、それから3日後。世界を大きなニュースが駆け回る。「麦わらのルフィ、マリンフォード急襲。‘水葬の礼’の後、‘16点鐘’及び‘黙祷’は海軍への挑戦か、その後逃亡」と。そして各地に散った仲間たちがその真意を理解した。それは
「3日後じゃない、2年後にシャボンディ諸島で会おう!」
彼らにしかわからない符牒。一部の人々は彼の行動の裏を推測するものたちもいた。そんな中で話題に上がったのは彼に伴っていた「海竜」だ。
いきなり水底より現れた、マリンフォードに乗り込んできた海王類のような存在は異質で、中央棟を一息で消し飛ばしたその火力は凄まじいものだった。
その大混乱の最中に好き勝手していたルフィを捉えることができなかったというその失態は上層部刷新という犠牲を伴ってようやく落ち着きを取り戻す事となる。ただし、海軍の中では海王類にトラウマを覚えた多くの海兵がこぞって引退するという珍事が起きる事となる。
気持ちはわからなくはないが、とりあえず。がんばれ、サカズキくん。君の未来はまず人事地獄から頑張る必要があるのだろう。
「なんちゅう失態じゃぁぁぁ!!」
○○○
#日△月 雨
ルフィに伴って暴れたマリンフォード。いやー、爽快感とスリルが段違いだった気がする。人殺しを進んでしなかったからまぁ別にいいんじゃねぇかな?
人的被害はおおよそルフィやジンベエが殴り倒していたぐらいだろうし、レイリーさんのなんかよくわからん攻撃で伸びていたくらいだろうし。
機能不全にしてやった海軍は当分動けず、あたしたちも修行に漸く着手できるようになった。とりあえずアマゾンリリーを抜けて、レイリーさんはあたしとルフィをその近くにある無人島のルスカイナへと導いてくれた。
そこにはなんかよくわからんが感じる。強大な獣たちの気配を。この辺が修行の一番大事なところなのだろうと思いつつ、そして何より期待を胸に抱きつつ、いざ上陸した。
で、まず初日であたしの実力不足が露見する。まぁ、硬いし。殺されることはないだろうけど、レイリーさんに軽くあしらわれた。舐めてかかったつもりはないけど、ルフィと一緒に殴りかかっていいようにあしらわれたんだ。
まるで未来を予知してるかのように避けるわ、攻撃を先読みしてると言わんばかりに殴られるわ、殴られるとなんか黒々とした腕でクッソ痛いわと散々な目にあった。
あれが覇気というものだと教わる。覇気には3種あり。レイリーさんに攻撃が当たらなかったのは‘見聞色の覇気’による先読み。そして金属よりも硬いあたしの鱗をぶち抜いてきた打撃。黒々とした腕が‘武装色の覇気’だそうで。
そして、レイリーさんがやってた‘よくわからん攻撃’こそが‘覇王色の覇気’だそうだ。この覇王色、ほんの一握りの人しか使えない先天性の力らしく、ルフィも使えるらしい。まぁこの辺はキチンと制御できるようにしないとダメだそうだ。まぁ、わかる。素知らぬ人を張り倒す趣味はないからね!
さて、方針もわかったからこそ。そして何より実戦経験があまりにもなさすぎるあたしはルフィに鍛えてもらう運びとなる。
兄弟子でありつつ師匠という変な関係だが、まぁ悪くないと……そう思うあたしだった。