海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第5話

「よぉし、野郎ども。出港だぁぁぁぁ!」

「「「ちょっと待てぇぇぇ!?」」」

「おい、ルフィ。誰なんだこの女は」

「うん、説明なしにあたしが乗ってるのは不味いわよね」

 

 遠い目をするミクを差し置いて出港しようとするルフィを止めて。彼女は事情を説明する。混乱の最中なので、端折ったが。

 

「じゃあ、今は無名の海賊見習いってことで。改めてあたしはミク。‘ミク・D・ヴィレ’だ。よろしく」

「わかった。ルフィが連れてきたってんならそれ相応の腕に覚えはあるだろ。船長の選択に俺たちが口を挟むつもりはねぇよ」

「ありがと、ゾロさん。さてとりあえず砲弾が飛んでくるし、ルフィ!」

「おう、改めて出港だぁぁぁぁ!!」

「ぁー、先に行ってて。すぐに追いつくから」

「わかった! たのむぞ、ミク!」

 

 小さく頷き。ポヨン、とサニー号を包む泡から抜け出したミクは。ローブの下で服を脱ぎながら全身を能力によって発生させた泡で覆い隠す。

 次の瞬間。泡が爆ぜて、中より巨大な海竜が姿を現した。ギラつく赤い目の龍は近くに迫っていた海軍の軍艦目掛けて熱波を吐き出す。焼かれ、灰燼と化した戦艦に目もくれず。サニー号が先に沈んだのを確認して龍は岸に対して大きく体をくねらすことで大波を呼ぶ。

 波が対岸を強かに打ち付け、大将の援軍を呼ばんとしていた海兵達の通信機やデンデンたちが水流に流されてしまい、再びの大混乱となった。

 

 コーティングの効果で、水への抵抗が0になり。海中に向かった船体を追って、リヴァイアサンの巨体は翻り水底に向けて進み出すのだった。

 

 ○○○

 

「ルフィ、結局、あの子って何者なの?」

「あいつはリュウリュウの実の能力者でさ、レイリーの修業を一緒に受けた仲なんだ!」

「なるほど、悪魔の実の能力者ですか……女性の方でしたし、パンツ見せてもらえるでしょうか」

 

 ナミの疑問にルフィが答え。一同はレイリーという言葉に‘覇気’の使い手であると納得した。ブルックはナミに拳骨を食らわされ、そしてゾロの分析とサンジの妬みが爆発した。サンジに至っては境遇が境遇だけに、血涙を流しそうな雰囲気だ。

 

「レイリーの知り合いか。あの巨体、なにかしらの動物(ゾオン)系の能力者ってとこだな」

「おまぇぇぇ!俺なんか……俺なんか……!不公平だろ、あんな可愛い子と一緒に修行なんて!」

「サンジはどこで修行してたんだよ……」

 

 サンジの惨状にウソップは半笑いで、チョッパーはかわいそうなものを見る目で続きを促した。

 

「イワンコフのカマバッカ王国だよ、ちくしょうめ!」

「……第二のアマゾンリリーね。なるほど、フフフ」

 

 その言葉で理解したロビンがウソップたちにカマバッカ王国についてを教えて、それを聞いた面々はサンジに対して憐憫の視線を彷徨わせた。なお、ルフィはしばらく顔を合わせていない顔面兵器の彼を思い浮かべた。

 

「イワちゃんのところでか! 懐かしいなぁ、元気にしてるのかなぁ」

 

 わいのわいと今までの時間を振り返りながら。面々はふと、自分達の頭上を巨大な影を横切ったのに気がついた。そしてそれは沈みゆく船体に寄り添うように‘泡’をさらに上からコーティングする。

 

『ただいま。とりあえず、海王類の横槍が一番危険みたいだから追走するよ』

「「「でけえぇぇぇぇぇ!? こえぇぇぇぇぇ!?」」」

 

 ウソップ、チョッパーが思わず鼻水を垂らし涙を浮かべる。ナミに至ってはロビンの後ろに逃げ込んだ。それを見て、重篤な症状を発症したサンジが。

 ‘美女が動いた’のに見とれた彼が鼻血をエンジンに飛び上がり、コーティングに当たり。そのまま外に出かけるも、リヴァイアサン形態のミクが背鰭に引っ掛けてそのまま押し戻した。

 

「動物系の幻獣種、獣形態って奴か。初めて見たが、スーパーデケェな!」

『ふふ、びっくりした?それで、貴方が船大工のフランキーだね。すごい、兵器の塊みたい』

 

 愉快な見た目。それでいてその馬力や内蔵されている火力を見聞色の覇気で察知したミクはジャイアントキリリングも可能だろうとフランキーに対して所感を抱いた。

 

「ね、ねえミク。服はどうしたの!?」

『ん、船内に戻るときには着替えるからヘーキだよ。とりあえずそろそろ海流だからしっかり捕まってね』

 

 ナミの言葉に応えたミクはそのまま背に背負うように船底に移動する。そこで面々はとある事実に思い当たる……‘なんであいつ泳げんの?’と。

 

『あたしはリュウリュウの実、幻獣種モデルがリヴァイアサンの実を食べた海龍人間。だから、海に入っても脱力しないし、溺れる心配もないよ!』

 

 その意思を感じたミクがその秘密を明かし、一味は安全な航海の舵取りを行う。

 

 その最中にフランキーから‘バーソロミュー・クマ’への敬意を忘れるなと話もあったり、‘フライングダッチマン号’の噂を聞いたり。深層に差し掛かったところで追いかけてきた海賊船をミクが‘大熱波(ラグナブレス)’で焼き飛ばしたりとなかなか忙しい航海となっていた。

 

 そして、襲い掛からんと待ち伏せしていたクラーケンを覇王色の覇気でミクが手懐ける(物理)という暴挙で彼女はようやっと船に身を落ち着けた。

 そして、遂に海底10000メートル地点にて巨大なシャボン玉。コーティングに包まれた島を目視したところで再びトラブルに見舞われる。

 

「やったぁ〜っ! 着いたぞォォッ!」

「アレが魚人島か」

 

 嬉しさにルフィが叫んだところへ、感慨深そうなミクだったが、彼女の見聞色の覇気に大きな気配が複数近づいてくるのを察知する。

 

「おい、なんだこいつら」

 

 フランキーの指差す方へ自然と皆が視線を寄せると……ぬぅ、と大きな影が現れる。見上げなくては視界に収まらないその巨躯は微かな怯えを孕みつつもサニー号へと接近していた。ゾロは愛刀に手をかけるがそれをミクが制した。

 

「あん? どういうつもりだ」

「任せて。海の生き物にどうしてこの船が襲われないのかを教えてあげる」

「か、海獣の群れぇぇ!?」

「「「「ぎ、やぁぁぁ!」」」」

「終わったー! ここまできたのにぃぃ!」

「そら、そこ! 落ち着く!」

「「「「はぃいぃぃ!!」」」」

 

 叫ぶウソップたちにミクは一喝して黙らせるが、揺れる船体に気がつく。船を持ち上げているクラーケンがガタガタと震えていたのを見て……覇王色の覇気を再びぶつけて、さらに一喝する。

 

「落ち着きなさい、スルメ!」

 

 ワタワタと慌てふためくクラーケン。否、‘スルメ’とルフィが名付けた彼は落ち着きを取り戻すと、スルメはその場でおとなしくなった。

 

「ミクのほうがでかいかなぁ……ん? 誰か乗ってないか?」

 

 ドデカイ海獣の群れ、その中の一匹、キリン海獣の背中に人影を見る。ミクは初めから気が付いていたようで。じろりと睨みつけた。

 

「お前たち、麦わらの一味だな?」

 

 その声を聞きルフィはじっとその声の主を観察しているようで応えるつもりはないようで。その様子に少しだけ不機嫌な声で話を続けるのは魚人だ。

 

「沈黙は肯定と見させてもらうぜ? ああ、よく知ってるとも。かつて、アーロン一味の野望を打ち砕いた海賊たち」

「そういえば、アーロンをしばいたのはルフィだったね」

「んー、そんなこともあったっけなぁ」

 

 ミクの呆れた目に同意するようにナミが頭を抱える。そういえばそうじゃんと叫びそうになったが、我慢した。

 

「それで済めば俺たちの答えは一つだったんだがなぁ……よりによって、2年前。元アーロン一味のハチさんを庇い、あろうことが天竜人を殴り飛ばしたと聞いた──我々の敬愛する英雄、フィッシャー・タイガーのようにな」

「……要は敵か味方か、その判断に困るっていいてぇのか」

 

 ルフィはようやく口を開く。少しだけ苛立ちを含む声音でそう言い放つと。

 

「ハモハモハモっ……そうだ。俺たち新魚人海賊団に降って傘下に入るか、拒否するかを決めさせてやる。拒否した場合、ここで沈んでもらう」

「断る!」

「……今なんつった?」

「断るって言ったんだ。頭悪いのかお前」

 

 ブチリっと聞こえた気がした。魚人はこめかみに血管を浮かべつつ、ニヤリと。

 

「所詮は劣等種か、いいだろう、ならばここで死ね!」

 

 魚人は手を下ろす。海獣たちが牙を剥いて襲い掛からんと構えた。

 

「なっ、もうちょっと時間稼ぎなさいよルフィ!」

「大丈夫だ。ミクに任せろ」

 

 その言葉にナミは我に帰る。船頭から跳び。深海10000メートルの中でミクが外に飛び出していたのだ。しかし、水圧に潰される事もなく泡を用いて浮遊していたが。

 

「何者だ。お前の手配書はないみたいだが」

「弱み辛みに付け込んで動物たちを脅迫してんの?」

 

 ギロリ、その眼光に睨まれて少しだけ強張るが。虚仮威しなどと。しかし、ブルブルと震える海獣たちが後ずさる。

 

「お前たち、何をしている!奴らを沈めろ!あとなぁ、俺たちには戦力がいるんだよ……地上に出て人間どもに復讐するためのなぁ!」

「ふぅん。いいわ、相手してあげる……あたし一人で十分よ」

 

 ミクはそういうや否や。ルフィに目配せを一つ。

 

「人間が海の中で魚人にかなうとでも」

「超人的な肉体に強靭なタフネス。人間に勝るからこそそうやって見下せるんでしょうね。どうしてあたしがこの水深で活動できると思う?」

 

 ギャハハと嘲笑うが、その言葉にはたと、わらい声が止まる。魚人たちが見るとそこにいたのは人ではない。自分達と似たように、水掻き、そして背鰭に細長い尾を持つ魚人……否。龍種のようなそれがいた。

 

「あたし、今すっごく機嫌が悪いんだ……手加減は期待すんなよ、魚どもが」

 

 獰猛な笑みを浮かべ、彼女は仕掛けるのだった。

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