海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第6話

 半獣人形態。人と獣の間の姿となったミクは言うならば、‘セイレーン’だろう。銀糸の如き長髪は海水に揺れて魚人島の灯りを反射するように。耳は鰭の様に様変わりした上で、貌はの変化は乏しい。

 膨張するように上半身が逆三角形のように醜く膨れ上がるようなことはなかったが、その身長は2倍近くにまで伸びている。

 何より背鰭、水掻きが指の間に張り。そして、長い尾鰭のついた尻尾が海藻の如く揺れていた。

 内包するその力に、その威容に海獣たちがその身を震わせ、ジリジリと後退る。

 

「お前たち、何してやがる!」

「怯えるのも無理がないわ。あたしは怪物だもの……散れ、憐れな者共よ。敵対することすら悍ましいならば去れ、ならば命までは取るまい」

「なっくそっ!?」

 

 その言葉に震え上がった海獣たちは背に乗せていた魚人を振り落とし、全速力でその場を後にする。振り落とされながらも、逃げ去っていく彼らを呆然と眺める新魚人海賊団の戦闘員は気がつかなかったが、剣士の様なタコの魚人は抜剣して飛来した攻撃を逸らす。

 

「うぃ〜、ハモンド。ここは退くほうがいいぜぇ」

 

 不可視の攻撃、ではない。海流をその手に生み出しているのが見えることに気がついたその魚人は手の痺れからくる動揺を酒を呷ることで飲み下す。

 

「何言ってやがるヒョウゾウ! 怖気ついたか?」

「虚仮威しと侮って、死にテェなら勝手にしなぁ。俺ぁ降りるぜ、ひっく」

 

 ハモンドと呼ばれた魚人が静止するが、タコの魚人……ヒョウゾウは踵を返すようにその身を翻し、その場を去っていく。今ここで敵対するのは‘死ぬ’と理解した彼は退いたのだ。

 

「ちっ、使えねぇ野郎だ! いくぞ、カサゴン!」

「オッス、アニキ……ィ!?」

「伸びとけ、雑魚が‘悪破処兎(アクアショット)’」

 

 舎弟のカサゴの魚人に目配せ。そして、前を向いたその時。彼我の距離が50メートル以上は離れていたはずの人間が数秒もたたずに目の前に現れたことに、声を出す間も無く。

 ミクの放った‘水塊’によって吹き飛ばされる。至近距離で放たれたそれは容易にハモンドの意識を刈り取った。本当なら撃ち抜き、腹に風穴を開けれるはずだったが。あえてそれはしなかった。

 

「伝えておきな、人間を舐めるなって。さもないと、次は殺す」

 

 ただ単に睨む。それだけでカサゴンは意識を失い、その場に倒れ込んだ。その呆気ないその結末に、ゾロとサンジは彼女の秘めるポテンシャルを見抜く。

 

「見たかよマリモ」

「ウルセェぞコック。ああ、ルフィよりも早いなありゃぁ。それに加えてなんだよ、あの見聞色」

「未来予知が優しく見えるな。いやー手厳しい」

 

 ミクがあらかじめ‘その場所を予測して移動した’というのは見聞色の使い手なら誰でも読めるだろう。しかし、ミクの行ったあの移動はハモンドが何処を見るかすら‘最初から察知していた’と言うことにある。

 見聞色の使い手がおおよその基準とする予測は対象の行動が‘たらればの予測範囲内’が普通であり、「想定外」が時折発生するとされる。

 ミクの覇気はその想定外を全て‘クリア’していると言う破格の予知能力にまで至っているとゾロとサンジは分析した。

 

「おい、タコ」

「なんだい、嬢ちゃん。敵対はしねぇよ」

「今は、でしょ? まぁいいわ。この粗大ゴミを持ち帰りなさい」

 

 伸びた魚人二人を軽々と持ち上げ、投げ捨てる。その怪力、見た目から凶暴な魚人と大差ないとヒョウゾウは内心で一人ごちた。

 

「あいよぉ〜、ヒック。お頭に伝えといてやラァ」

 

 若干怪しい呂律の回らぬ口調と酒臭さにミクは険しい顔。それでも手を出さずに見送ったあたり、敵対しなければ容赦すると言う方針のようで。

 去っていったヒョウゾウをバカにする事もせずにミクはサニー号に戻るのだった。

 

 ○○○

 

「スルメ、今までお疲れ様。ここから先は自由になさい」

 

 目の端っこに涙を浮かべるスルメことクラーケンに、ミクは何泣いてんだよと言う顔をする。

 

「何泣いてんのよ、あたしに付いてくるならついてきなさい。魚人島にあんたみたいな巨体が入らないから自由にここら辺うろつきなさいって言ってん……あとスルメ、口の中に入れてるそのサメ服着てるわ。出しなさい」

 

 それを聞いたスルメはぎくっとなりながら、口から服を着た巨大なサメを解放する。その後サムズアップのように触腕を動かすと何処かへと消えていった。

 

「海獣もびびってどこかにいっちゃったわね。どうやって入ろうかしら」

「ん? そういえば入国審査があるんだっけ」

「ええ、魚人島に入るにはあそこの入り口を目指さないとダメよ」

 

 ナミは巨大シャボン玉を眺めつつ、ロビンが指差すその入り口へどう至るかと考える。

 

「ミク、リヴァイアサンになってサニー号を運んでくれない?」

「いい案だねそれ、だが断る」

「なんでよー!? まぁ、さっきまで海獣がいた所にそれ以上の大きさのが現れたら討伐隊寄越されそうだものね」

「と言うかあたしたち入れてもらえるのかな」

 

 世界政府に一応加盟している魚人島へ自分達が入れるのかとミクは疑問を抱く。地上でのアレコレが伝わっているとは言え、海軍の駐屯地などはないはずだがと。

 

「うっ、どうしよ」

「決定権はルフィにあるし、あたしは別に不法入国してもいいとは思うよ。海賊なんだし……なに、あんた。ご主人のとこに戻りなさいよ」

 

 スルメの吐き出したサメが逃げ出さない様子を見てミクは彼に話しかける。

 

「言葉がわかるのかって、あたしはリヴァイアサンよ? 海王類すら怯える存在なんだから、海の生き物の声はわかるわよ」

「海獣が逃げるくらいにゃあ、スーパーおっかない存在なのは間違いねぇな」

 

 笑うフランキーに肩をすくめて、ミクは戯けたよう。その様子を見ていた巨大なサメはミクに訴えかけるように。

 

「‘とある人のペットである私を助けてくれてありがとう、お礼に入国への口添えをさせてもらいたい’か……ん?」

「あら、身分の高い人のペットみたいね」

「浦島太郎の亀の配役が、サメになってるけど。えっと、メガロって名前なのね?」

 

 ミクの翻訳を聞いたロビンは意外そうに反応する。そして「どうする?」、とロビンとミクはルフィに目配せする。

 

「よーし、なら案内してくれ! でもどうやってあそこまでいくんだ?」

「その辺はもうあたしが運ぶわ。スルメもどっかいったし」

 

 再度シャボンより飛び出して。完全獣化モードに変貌したミクがサニー号を包むシャボンを浮かして移動させる。リヴァイアサンの前をメガロと名乗ったサメが泳ぎ先導する。

 後に、入国管理をしていた衛士のとある魚人はこう語る。

 リヴァイアサンが怖くてちびりかけたけど、可愛らしい声のギャップで困惑して逆に落ち着けた、と。

 

 その後、メガロの口添えもあり一味は魚人島へ入国を許可される。ただ、入国の際にコーティングを剥がさなければならず、サニー号の剥がれたコーティング加工を行える‘コーティング屋’に渡りもつけなくてはならないかとフランキーは語った。

 

「コーティング職人が跋扈してるって話も聞いてるが,トムさんの弟もこの魚人島にいるって俺は聞いてるぜ」

「となると、半日くらいは時間がありそうね」

 

 魚人島の港に寄港したサニー号。そこで会議を開いていた一行。友人であるケイミーにも顔は見せておきたいとサンジの熱烈なアピールで、三グループに分かれることにした。

 

 ケイミーを探すメンバーは純粋に街並みを見たいと言うルフィにお目付役にサンジ。そしてサンジが人魚を見て発作を起こした時に備えてチョッパーとウソップが同行するとなり。

 

 ゾロ、ブルック、ナミは新世界を目指すべく、物資補給のために買い出し。

 

 フランキーはコーティング屋を探すのに加えてロビンが魚人島に‘歴史の本文(ポーネグリフ)’があるらしくそれを読み解きたいと願い出たのでそれに付き添う形でミクが着いていくこととなった。

 

「よし、あとでな!」

 

 こうして新世界へ挑戦するべく魚人島へ上陸した一味。しかし、どうあがいてもトラブルメイカーな彼らであるが故に、やはり動乱に巻き込まれる羽目となるが、それは後に語らせてもらおう。




(1行で済んでますが、とある海賊がリタイアしてます)
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