海皇獣の冒険譚   作:狭霧 蓮

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第9話

「じゃあ……コーティングが終わり次第。サニー号でフランキーとチョッパーにサンジ君がゾロたちの救出ね」

「ルフィはメガロの腹の中で待機してくれ。ワシの合図に従って出て来てくれるといい」

 

 泣きそうなメガロをよそに作戦を立てる面々。その様子にミクはナムナムと手を合わせた。ガンバレ、メガロ。と

 

「ナミとロビンで国王を縛ってる鎖の鍵と‘天竜人の書状’を奪うなら、あたしは?」

「ミク、あんたは私たちの護衛よ」

「頼りにしてるわね、ミク」

 

 海の森での作戦会議を済ませ、メガロとジンベエが囮となる手筈。そこにしらほしも加わることとなる……しらほしは別の所へ避難してもらう予定なのだが……その途中で共々捕まってしまった様だった。

 こうして一味は分かれて行動することとなった。何があろうとすぐに動けるミクはというと、‘ギョンコルド広場’に到着。ナミの‘ミラージュ・テンポ’で透明化していた。

 

「すっごい、周り見えてないみたい。蜃気楼でも発生させてるの?」

「正解。意外と物知りなのね、ミクって」

「伊達に一人で旅してないよ。えーとこれだね、鍵」

「こっちの書状もオーケーよ。しっかし、趣味悪いわねーホーディって奴」

「ムカっ腹たって仕方ないけど、ルフィがぶっ飛ばすし譲ってあげる」

 

 そんな会話をしながら目的の物を手に入れた二人は離脱する。ホーディがしらほしがずっと黙っていたことについて……かつて署名を雇った人間に燃やさせた上でリュウグウ王国の王妃であるオトヒメを撃ち殺したのは俺だと。その上でしらほしが真実を知ってなお下手人である奴を恨まなかったのは凄いことだ、と納得する。

 そんな彼女を間抜けと蔑むホーディは国王ネプチューンと三人の王子をしらほしの目の前で痛めつけ、その上で処刑を行おうとした際。

 

「助けてください、ルフィ様ぁぁ〜っ!」

 

 しらほしの叫びが広場にこだまして。その隣でメガロが悶え苦しみ、口を開けた。

 そしてメガロの口の中より飛び出した人影が、ホーディの腹を強く蹴り飛ばす。奴がそのまま壁に飛んでいったのを見届けたナミはミクの背中に。ミクはやれやれとため息を吐いてその場を後にした。

 

 ○○○

 

 ロビンの手で解放された国王と王子たちが離脱していくのを見送り。ミクはルフィの隣へと降り立つ。

 

「ちょっと、ナミ。自分で走りなさいよ」

「つべこべ言わない、見習いでしょ?」

「うぐっ、仕方ないわねぇ」

 

 ナミを背中から下ろしつつ、ミクの苦言は先輩(ナミ)に聞き流される。その隣で

 

「それにしても、なんでこいつら余裕なんだ。船長をぶっ飛ばされたのに」

「ええ、確かに妙ね」

 

 船長を蹴り飛ばされ、余裕の面持ちを崩さない相手の士気に不気味さを訴えるチョッパーその隣でしらほしへ‘天竜人の書状’を託すナミ。

 

「皆さん、ありがとうございます! これは私たち、魚人島の希望ですから!」

「いいのよ、後でしっかりお礼はもらうけどね♪」

「ナミ、目がベリーになってるよー?」

 

 ミクのツッコミにハッと正気に戻るナミから視線を切り。彼女は倒れているホーディを見遣ると、彼は何事もなかったかの様に立ち上がってみせる。

 

「多分、ノックアウトできてないんだと思うよ。そら、立ち上がる」

「ォーウ、スゥーパァーッ頑丈な奴だな」

「んなこたぁどうでもいい、よわほしが危なくねぇか?」

「うむ、捕まること自体が想定外じゃ」

 

 ルフィの呼び方の変化、それは彼なりにしらほしを認めたと言うことの裏返し。嬉し泣きする彼女を慰めるよう、ナミとロビンはフォローする様に彼女を称えた。

 そして、立ち上がり。妄言を垂れ流すホーディの方を向いて……ミクは冷たい視線、それこそ絶対零度とも言うべきそれを突きつける。

 

「やがて、魚人族に逆らうものはいなくなる……俺こそが、真の海賊王にふさわしい!」

「……何が真の海賊王だ……恨み、妬みや嫉み。卑屈な感情を優越感で満たしたいだけの痛い野郎だよテメェは」

 

 その声はルフィのもの。ミクの正論の銃乱射(ガトリング)でボコられる副産物として色々な言葉を覚えていた。弊害として時折に、マジで折れかけるが。彼の鋼のメンタルで耐え凌いでいる。

 鬱々とホーディの心の芯にある僻みや憎しみを見てルフィは哀れな物を見る。

 

「ジャハハハッ! こっちは十万! 吹けば飛ぶような11人程度だ!」

「ふーん。相当な自信がお有りみたいだけど……」

 

 ミクは目をつむり、小さくため息を漏らした。目元の笑っていない、天使の如き微笑みを浮かべながら、ゾッとする言葉を言う。

 

「この十倍は用意しないとダメだよー?」

 

 彼女の紫炎色の瞳が揺れる。同時にルフィもその力を解き放った。グン、と何かに引き込まれる感覚に魚人島は包まれる。それが治まると同時に、次々と、バタバタと‘新魚人海賊団’の用意した兵士たちが倒れていく。立っていたのは……三万人程度だろうか。

 あたりは静寂に満ち、誰一人として声を出せなかった。

 

「これは……覇気?」

「たった二年。二年でここまで……」

「ミクちゃんはともかくとしてよ、ルフィ。お前も覇王色の覇気を使えやがったか」

「こりゃあ、うかうかしてらんねぇな。まぁ、これくらいしてくれねぇと船長交代だがよ」

「待って! 全員気絶させてくれよルフィ!?」

「そうよー! 何万人ってまだ残ってるじゃない!?」

 

 面々が胸を撫で下ろして、‘それでも三万人いるじゃん’と後ろで騒いだりしているのを無視して。唖然とするホーディにミクは切り裂く様な剣幕となり、その隣でルフィが吼える。

 

「お前の言った‘真の海賊王’……実に気に入らないわ」

「ああ、ホーディとか言ったか? お前は俺がぶっ飛ばす……お前がどこでどんな愚王になろうと俺には関係ねぇ! だけどな……」

 

 ルフィはホーディを見据えて宣戦布告する。その頂を目指すものとしての矜持と共に。

 

「海賊の王者は、一人で十分だ!」

 

 ○○○

 

 始まった‘麦わらの一味’対‘新魚人海賊団’の戦争。しかしそれは烏合の衆でしかない三万の兵士では一方的な蹂躙にしかならなかった。

 サンジが‘スカイウォーク’で空を飛び。高度を上げてしらほしを襲おうとする魚人たちへ一言警告すると、その‘燃える黒脚’の異名、通りに燃え上がらせる。

 

「ったく、躾のなってない客どもだよテメェらは! ‘悪魔風(ディアブル)(ジャンブ)──焼鉄鍋(ボアル・ア・フリール)スペクトル’ッ!」

 

 高い高度より繰り出される前蹴りの連打は飛んだ。飛翔する火の玉の如き、まさにマシンガンが如き射速のそれらは次々とホーディの部下たちを吹っ飛ばしていく。

 

「あんなろぉ。なかなかやるじゃねえか──こっちも負けてられねぇな……‘三刀流──黒縄・大龍巻(こくじょうおおたつまき)’……!」

 

 頭巾を結び、ゾロも本気の相手をすると、鉄の甲羅部隊なる連中に刀を向ける。刀を咥え、三刀流の構えをとると体を大きく捻る様な一閃。それは力強い竜巻を巻き起こし、たちまち兵士たちを打ち上げ切り裂き突き進む。

 ロビンの‘ハナハナの実’の能力で多くの兵士を無力化する。チョッパーが‘カンフーポイント’なる変身を経て軽やかに兵士を蹴散らし、フランキーの武器がコンパクトさに見合わない火力で吹き飛ばす。

 ウソップは植物を急速に成長させる‘緑星’により種から一気に大型の食虫植物が現れ多くの兵士が頭を齧られ拘束される。

 

「どうだ、ポップグリーンの魔術師ったぁウソップ様のことだ!」

「ちょっと、ウソップ! ちょっとは逞しくなったと思ったら、まったく」

「悪い、ナミ! 助かったぜ」

 

 後ろから不意打ちされそうになっていたウソップを助けようとナミが雷を起こす。各々がフォローし助け合う中で少しずつ気絶させられていく兵士たちに苛立ちを隠せない幹部団もついに動こうとする。

 

「ちぃ、数で優っている癖に役にたたねぇ奴らだ! だが、こんな広い所で、デカい人魚を守れるのか? ……‘撃水’ッ!」

「なっ、よわほし!」

「えっ……きゃあっ!?」

 

 放たれた凶悪な水の弾、しかしそれを真正面から弾き飛ばす。広い範囲に水飛沫が舞い、その衝撃の強さを物語っている。

 

「ひよっこの‘撃水’に打ち負けるわけがなかろう」

 

 相殺したのはジンベエで、ルフィはそれをみてしらほしの安全は一応確保されているものとして戦闘を継続する。

 そんな最中で、ミクはと言うと……

 

「やれやれー、サンジさんとキャラ被りしてる気もしないなぁ。まぁこっちは手技にスピード重視って事で差別化しないとなぁ」

 

 摺り足で相手の懐に潜り込みながら、腕を引きつつ背中でぶつかり自分よりも2倍以上の体格差をものともせずに跳ね飛ばし。

 そのまま回天。裏拳で振り下ろされた刀の腹を殴りへし折って、そのまま足元をはらい何人かを浮かす。

 

芳香脚(パフューム・フェムル)っ!」

 

 浮かした魚人たちを蹴り飛ばし、集団の中に叩き込んで蹴散らす。

 

「数ばっかりで歯応えもない。いい相手いないかなー」

 

 伸びた輩に目もくれず。彼女は幹部級の元に歩みを進めながら、ルフィの方を見ると

 

「ギア3(サード)巨人の銃(ギガントピストル)ぅぅ!」

 

 骨風船で巨大化させた腕による一撃で多くの兵士を蹴散らしていた。

 

「やるねー。さて……あたしの相手はどいつ!」

 

 ミクもまた暴れるべく、敵集団に吶喊していくのだった。

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