バンドリどうでしょう 〜How do you like BanG Dream?〜   作:柳芽帆奈

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二日目②「Please choose HELL or HELL?」

 ピッ、ピッ……

 

 ここは大阪駅の切符売り場。その一端にあるみどりの券売機で綾世は博多に向かう新幹線の切符を買おうと端末を操作している。しかし……

 

「「」」ガシッ

 

「……」

 

「「」」ウルウル

 

 綾世の腕を掴みながら、目に光るものを浮かばせ、上目遣いで見つめる千聖とイヴ。

 

「千聖、イヴ。抵抗しても無駄だよ」

 

「もう疲れましたぁ……」

 

「嫌よ……九州なんて嫌よ」

 

 なんだとぉ!?千聖さんよぉ、それはちょっと許せませんなぁ。(佐賀県生まれ)

 

「あぁ、い、いや、そうじゃないのよ。そういう意味で言ったんじゃ……」

 

 うん?<●> <●>

 

「えぅ……」

 

 ん?<●> <●>

 

「きゅ、九州の皆さんすいませんでしたー!」orz

 

 うむ、それでよし。(ご満悦)

 

「ナレーションと会話するんじゃありません!そもそも、なんで会話出来んの?」

 

 次元の壁越えて〜、いつでも話しま〜す〜

 

「あっ、もういいっす……ってああ!」

 

 話を切ろうとした綾世が素っ頓狂な叫び声を上げる。どうやら気を取られ過ぎてボタンを押し間違えてしまい、領収書を発行し忘れたようだ。成程、これでは経費を事務所に請求できず、全額自己負担になってしまう。悲鳴をあげるのももっともである。

 

「他人事みたいに言いやがって……ならこっちが次元の壁飛び越えてやるよ!」

 

「やめてください!」

 

「そうっすよ!あんたまでいなくなったらもうこの番組はめちゃくちゃだよ!」

 

 こちらに向かってこようとする綾世をイヴと武雄Dの二人がかりで止めようとする。しかし、綾世の勢いは止まらず、今にも制止を振り切ろうとする。ちなみに千聖は未だにorz状態。当てにならなかった。

 

「こうなったら……恨まないでください!」

 

「ふがっ!?……」バタンッ

 

 言ってイヴが綾世の首に向かって手刀を炸裂。モロに食らった綾世はそのままバタンと倒れてしまう。

 

「これでしばらくは大人しくなったはずです……」

 

「あ、ありがとう。イヴちゃん」

 

 結局出発は綾世と千聖が正気に戻った約10分後になったが、特に旅程に問題はなく、博多に着いたのは昼前の11時45分のことだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!博多到着です!」

 

「つ、ついに九州上陸ですね……」

 

 北海道から昼夜ぶっ通しで日本を縦横断し続け、ついに九州にまでやって来た一行。流石のイヴもヘタってしまっている。

 

「さぁ、サイコロ振りましょうか」

 

「あっ、やっぱり振るのね」

 

「はい、もうね」

 

「振らないといけませんね」

 

 苦笑いしながらボードを差し出す綾世に、二人が同じような調子で返す。1000km以上の移動が続き、テンションがおかしくなり始めていた。

 

「さぁ、次の目的地です!」

 

 ①もうすぐ新幹線ができるんだって

 特急『かもめ』で長崎

 

 ②とりあえず九州は出よう

『福岡・山口ライナー』

 

 ③ここまで来たら、ねぇ

 九州新幹線で鹿児島中央

 

 ④日本の果てまで逝ってQ!

 沖縄・那覇空港

 

 ⑤流石に休みたい…

 明日まで一泊

 

 ⑥Please choose HELL or HELL?

 青春18きっぷで東京

 

「あ、東京行きの選択肢が出たわね」

 

「⑥を出せば東京に帰れるんですね……!」

 

 イヴがボードを見てそう呟く。しかし、彼女は気づいていない。その選択肢こそ現状最悪のものである事に。というのも、青春18きっぷは『普通・快速列車』にしか乗れない。つまり、新幹線や特急は一切使えないのだ。今の時間からだと東京へは確実に泊まりがけの行軍になる。つまり、それを知らない彼女は自らすすんで修羅の旅へと足を踏み入れようとしているのだ。

 

 ていうか気付きなさいよ。『Please choose HELL or HELL?』て書いてあるじゃん、どうあがいても地獄だよ?

 

 ここで気になるのは綾世。彼はこの選択肢の地獄度合いを知ってるはずなのだが……

 

(まあ、寝れるし大丈夫か)

 

 この有様である。お主、なかなか悪よのう。

 

「そ、それじゃあ、行きますよ」

 

「イヴちゃん、絶対に⑥を出してね」

 

 ダメだって!千聖よ、この作品でもMになろうとしているのか!?

 

「行きます……えい!」

 

 コロコロ……

 

「目は……②!?」

 

 ②、『福岡・山口ライナー』。目的地は隣県である山口県と、ほんの少しであるが、東京に近づくことが出来る。

 

「山口かぁ、でも鹿児島とか沖縄よりはマシか」

 

「東京じゃないのは残念ね」

 

「とりあえず次の便は2時半だから、昼ごはんでも食べてからいくか」

 

「ホントですか!?じゃあ明太子が食べたいです!」

 

「まあ、腹ごしらえは重要ね。でも軽いのにしときましょう」

 

「ん、それじゃあ行こうか」

 

 という訳で、一行は昼食を食べて、これから迎える高速バスの旅に備えて元気をチャージ。果たして明日までに東京に帰れるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れたわ」

 

「まあまあ、そんな事言うな言うな。それよりイヴ、ここ何処?」

 

「えっと……『湯田温泉通』ですね」

 

「そう!温泉ですよ!温泉!」

 

「うるさいわね、分かってるわよ」

 

 綾世達一行は長門湯本、川棚、俵山が名を連ねる『防長四湯』の筆頭、湯田温泉でバスを降りた。既に時刻は夕方の6時半を回っていて、山がちにあるこの地では既に街灯に明かりが灯り始めている。

 

「さて、次の目的地なんだけど……」

 

 いつものように綾世がボードを見せるが、これまでのものとは少し違っていた。

 

 ①温泉に入りたい!

 湯田温泉で一泊

 

 ②いや、少しでも東京に近づくんだ

 路線バスで防府

 

 ③でもやっぱり休みたい!

 湯田温泉で一泊

 

 ④九州に心残りが……

 在来線+新幹線で博多

 

 ⑤おまけだおまけ!

 湯田温泉で一泊

 

 ⑥山口とはオサラバよ!

『カルスト号』

 

『一泊』の二文字が三つも並んだボードを見た二人は静かに歓喜に打ち震える。まさに出血大サービスである。

 

「①③⑤の目を出したら温泉旅館に泊まれるよ」

 

「ホントですか!?さっきまでの鬼のような選択肢とは大違いですね!」

 

「随分良心的になったじゃない」

 

「まあ、正直言って俺も疲れて来たし、この時間になると高速バスとか特急列車がもうないんだよ」

 

 という訳で本日3回目のサイコロタイム。今度は千聖の番である。

 

(絶対温泉よ。それ以外はあり得ない)

 

 彼女の頭の中は既に温泉マークで埋め尽くされている。もはや、一泊以外の選択肢は頭の中から消えていた。

 

「おんせぇぇぇん!」

 

 魂の叫びと共にサイコロが手から放たれる。

 

「やったぁぁぁぁぁ!⑤よぉぉぉぉぉ!」

 

「チ、チサトさんのテンションがおかしくなってます」

 

「それだけ嬉しかったんだろうな……」

 

 出目は⑤。願いは通じ、この日は湯田温泉で一泊する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜温泉旅館(side千聖)〜

 

 カポーンッ……

 

「チサトさん、先行ってますね!」タッタッ

 

「あまりはしゃぎ過ぎちゃダメよ。滑るわよ?」

 

 身体を洗い終わった私達は露天風呂の扉を開ける。ちなみに今はカメラが回っていないため、撮影用のタオルはつけていない。変な妄想した人、怒らないから出てきなさい。ちょっとお説教してあげるから。

 

「ふぅ、疲れたわね」

 

 掛け湯をして湯船に浸かる。身体に溜まった疲労諸々がまるでお湯に流れ出るかのように消えていく。やっぱり温泉はいいわね……

 

「あれ?そういえば、イヴちゃんは何処にいるのかしら」

 

 先に露天風呂に向かったはずなんだけど……

 

 ビシャアアアアアッ……

 

「ん?」

 

「観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄……」

 

「え、えぇ……」

 

 視線の先にはそのイヴちゃんがまるで滝行を行うかのように、打たせ湯をその華奢な身体に浴びせていた。しかも般若心経を唱えながら。それだけでも十分パンチのある場面なのに、この打たせ湯の勢いの強さがそれをさらにかきたてる。まるで本物の滝みたいじゃない。

 

「い、イヴちゃん?」

 

「菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、心無罣礙、無罣礙故、無有恐怖、遠離・一切・顛倒夢想、究竟涅槃……」

 

 話しかけても応答はなく、ただただ経を唱え続けている。なんて集中力なの……!?

 

「イヴちゃーん!」

 

「……ち、チサトさん!?どうしました?」

 

 ようやく気づいてくれたわね。でも、なんで打たせ湯しながら普通に喋れるの?

 

 バン!ババン!(迫真)

 

「?」

 

 何かドアが開く音が聞こえたわね。壁の向こう側だから……男湯かしら?

 

「ぬわああああん疲れたもおおおおん」

 

「ちょっ、声でかいよ……貸し切ってないんだから」

 

 この声は綾世さんとカメラマンさん……あれ、あの人名前なんて言うんだっけ。声でかいって言ってるけど、どっちもそんなに変わらないからね?

 

「あぁもう、疲れましたねぇもう」

 

「ああ今日は、大変だったなーもう。夜行バスで大阪に着いたと思ったら、すぐに博多まで飛んで、今は湯田温泉って……綾世さんヨォ、本家さながらじゃないっすか」

 

「んん、そうっすねぇ……」

 

 そんな会話が数分間続いていた。ちなみに私は最後まで聞かなかったわ……何でって?のぼせそうだったのよ。結局あの後どんな話してたのかしら?

 

 フルーツ牛乳片手にマッサージチェアに座りながら考えにふける私であった……

 

 




次話でサイコロ①は完結予定です。
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