コード・クラッシュ   作:werkbau

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電脳探偵/3

 スイッチが入る、デッキが起動し画面がつく。企業ロゴが一度映し出されてから、エントリー画面、パスワードが要求される。副脳からアプリを起動、パスワード攻撃を開始、まずはログイン画面を3つに分割し、それぞれに対し別アプローチでの攻撃。総当たり、辞書、リバースブルートフォース、古典的だが現在でも通用するパスワードクラック。時間にして1分、総当たり攻撃がヒットしパスワードを割り出した。パスを使いログイン。画面を開き、

 

「んー?」

 

「何かあったの…?」

 

「いや、ちょっとね」

 

 高価な端末に不釣り合いなほど…何も入っていない。ウェブアクセス用のアプリアイコンが一つだけ我慢の左上に配置してあるだけだ。

 

「ふぅむ?…一つ聞きたいんだけど、妹さんって機械は得意じゃない感じ?」

 

「え、ええ、あまり」

 

「だよねー…」

 

「な、何?」

 

「んー、このデッキにはありえないほど、何も入れられてないってこと」

 

「そうなの?」

 

「あぁ、NONY社製デッキ・ハイペリア、スペックは…まぁ、今は関係ないか、とにかくノート系のデッキでも、かなりハイスペックなやつでね、ウェブを見るだけの様な人間は基本買わない」

 

「そ、そんな物なの…?」

 

「そうだよ、そして何よりもかなり高価だ、実家が太くてそのうえで何よりネット関係の仕事に就きたいようなやつじゃないと買い求めない」

 

「増々疑問…あの子、いつの間にそんな…」

 

「もしかしたら、買ったものじゃないのかもしれない」

 

 

「え?」

 

「誰かからの贈り物、とかね」

 

 そう言いながらウェブ画面を開く。アクセスログを解析、一週間以内で訪れたサイトを分類していく。最も多いサイトは美容関連だった。人気のコスメティックスのランキングや、ブランドサイト、安価で手に入りやすいが質のいいもののレビューなどが掲載されていた。時点はアクセサリだ、既に一般民衆には手に入りにくい天然宝石の写真と共に解説が載せられている。ここまではよい。アドレスを解析してもそれは公的に信頼のある企業のモノばかりで、裏はない。残り雑多なゴミの山から当たりを引き出さなくてはならない。そして、ゴミが多いのは言うまでもない。たまたま踏んでしまったサイト、広告から飛んでしまったであろうサイト、雑多と言う他ならない。骨が折れそうだ、と声をあげる。

 

「うぅむ」

 

「そ、その、大丈夫…?」

 

「そこは心配しなくていい、これでも電脳探偵だから」

 

「分かったけど…」

 

「まぁまぁ、少しは信用してよ、頼ってきたんだったら」

 

「心配なのよ…仕方ないでしょう…」

 

「そっか…ぉ?」

 

「何かあった?」

 

「かもしれない」

 

 アプリを走らせた中で、一つのサイトで奇妙なアクセス解析がおきた。それは一見普通の情報サイト、正しくは噂話がまとめられたゴシップサイトだ。下世話な話がいくつもまとめられ、見る人間によっては下品とも言われそうではあったが、そこは重要ではない、このサイトに入ってからの動きが重要で、奇妙なアクセス記録が残っている。それは、まるでサイトを見るのではなく、そうアクセスすることが重要のようだ。即座にサイトのソースをひらいた。解析開始、結果は黒。一定の順序でリンクを開くと、隠し部屋に飛べる仕組みだ。隠し部屋に入る。

 

「あぁーあ、これは当たりかな」

 

「な、何、これ………?」

 

「隠しサイト、それも違法なやつ」

 

 画面を軽くたたく。表示されていたのは赤黒く、毒々しさを感じさせる更精のページ。カルトを思わせるような重苦しい文章。呼びかけているのは、肉の体を捨てて、魂を自由にしようという謡い文句。それらは十代にはあまりにも求心力のある、魅力的な文面。やれ、ひ弱な身体を捨てればいじめられなくなる、インプラントを入れればドラッグをしても中毒にならない、そんな誘惑に駆られるような誘いがこれでもか、と。

 

「あの子…な、何でこんな…」

 

「しかも…あぁ、やっぱりBBSも備えてるかー」

 

「えっと、掲示板?」

 

「そうだよ、心理的抵抗を弱める為だね、これは…最初は嫌でも、話してるうちに考え方が変わることがある………」

 

「そんな………」

 

「多分、これは十中八九罠だねー、こう言う手垢のついたような裏サイトで引っ掛かるようなのは、まず技術的知識がないようなのばっかりだし」

 

「だ、だれがやったって言うのよっ…」

 

「こう言う事するのは、技術狂(テックマッド)だとか機械信仰者(クロームサイコ)だとか、そこら辺かな」

 

「そ、そう言われても知らないんだけどっ」

 

「字面の通り、いわゆるマッドサイエンティスト気質のイカレ技術者に、他人の体に無理矢理インプラントを仕込んで絶頂する変態、そんな奴ら」

 

「や、やだっ…そんなのに妹がっ!?」

 

「あり得るね…ちょっと待って、と」

 

 アプリを走らせて、いくつか解析を行う。

 

「ふんふん………」

 

「何してるの………?」

 

「IPアドレス割り出してる、おそらくだけど相手もそこら辺は適当に……ビンゴ」

 

「え、あ、何かあったっ!?」

 

「IPアドレスを調べて、このデッキから書き込まれた文面の検索をかけた…妹さんの書き込みをまとめるから待って…んー、直接見た方が早いかな、テキストファイル送っても大丈夫?」

 

「あ、その、ごめんなさい…私インプラント入れてないの…」

 

「は………?」

 

「へ、変かしら………?」

 

「う、嘘だろ………?」

 

 今のご時世、大なり小なりインプラントを入れるのは当然のことだった。特に副脳を組み込むのは必須とも言える。そもそも副脳がないと電脳(ワイアード)にアクセスできない。電脳に入れないのは不便を通り越して、もう一つの世界に飛び込めないと言う事になる。

 

「じゃ、じゃぁ、普段は何を………?」

 

「えっと、ちょっと古いけど外付けの端末を使ってる」

 

「つまり電脳に入ったことない………?」

 

「え、えぇ、これで事足りてるっていうか……」

 

「んじゃ、その顔も自前なの………?」

 

「その聞き方の意味は分からないけど、整形してないとかそう言う意味だったら、イエスね」

 

「生まれながらの美少女ってヤツなのね…」

 

「い、いきなり褒められると、ど、どう反応すればいいか分からないんだけど」

 

 照れている様すら絵になるのだから天然美少女と言うのは恐ろしい。インプラントが世界に生み出されてから、人工での美しさが主流になった。気に入らないところがあればインプラント…それは多少のリスクさえ目をつぶらせるには十分だった。誰もが美しさを求めたからだ、それは元から美しく生まれたとしても、人によってはインプラントを埋めて少しでも理想を目指した。

 

 そんな中で全く手つかずの、法で決められた最低限のナノマシン処置を除けば手の入っていない美人と言うのは天然記念物も真っ青な存在だった。

 

「いや、生きてる中で本物の美少女って言う存在に出あえるとは………!」

 

「そ、そこまでなのかな」

 

「いや、やばいね、照れる姿までマジの美少女だと格が違うわ」

 

「も、もぉっ!私の事はいいからっ!」

 

「って、そうだよな……じゃぁ、これ、このままコンソールでテキストファイル、見てよ」

 

 凶一が端末の画面を指さし、アリサに見るよう促す。

 

「えっと…それじゃ失礼して………」

 

 最初は怪訝そうな視線だったが、段々とアリサの顔が青くなっていく。書き込み内容の変遷があるからだろう。最初は抵抗、とまでは言わなくても壁のある書き込みだったものが、段々と、このコミュニティに迎合していっている。

 

 凶一はテキストを指さし、いくつか操作。エレナの書き込みの間部分の書き込みが表示された。

 

「多分、ここら辺はサクラか自分たちで書き込んで釣り餌をまいてる…いかにも自分たちは理解者、見たいな振りしてね」

 

「そ、そんな…」

 

「多分この端末を渡したのも、このサイト関係者…やり口としては結構あることだ、入り口を用意して、それから引き込んでいく」

 

「そ、そんな、なら、妹は…エレナはっ」

 

「まぁ、多分………」

 

 テキストを最後の書き込みに移動して、見る。

 

「このオフ会ってのに参加したのが……丁度失踪した時期に重なってるから、これだね」

 

「う、嘘でしょ……どうすればいいのっ……こんなっ!!」

 

 アリサは倒れ込み、顔を覆った。

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