魔法少女マジティア!(25才)   作:哀しみを背負ったゴリラ

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魔法少女マジティア第�話!『15+10=25』

 ────10年後。

 

 

「んで、生意気だからそいつ囲んでボコって全財産と髪の毛毟り取って写真晒してやったわけ」

「ギャハハ! タッ君容赦ねー!」

「オイオイ、俺超優しいよ? まだそいつの妹とかに手ぇ出してねぇモン。ま、明日手も中にも出すんだけどな!!」

「ブフォッ! 鬼畜! 鬼畜過ぎるって! タッ君マジ神! 最高!」

 

 夜も更けて、草木も眠る丑三つ時。

 寂れた公園のベンチでは、十数人の笑い声が響いていた。

 笑い声……といっても、子供達の元気な声ではない。

 社会に寄生し、反社会を標榜して人々から利益を奪う者。

 彼等が煙草の煙と一緒に吐き出す、薬の臭いがする汚い鳴き声だ。

 ヒヨコの様に黄色く染めた頭で、ヒヨコ並の知性で語る彼らの武勇伝は、騒音として深夜の街によく響く。

 時折、眠りを妨げられた近隣のマンションの住民が何事かと窓から公園を眺め見るが、集まっている集団の性質の悪さを察すると、直ぐに見なかった事にしてカーテンを閉じる。

 この辺りは警察の巡回経路からも外れている事から、彼らを大手を振って咎める事が出来る者はいない。彼等にとって、最近見つけたこの公園は、実に良き縄張りであった。

 

「おっ! そうだ、ついでだしヨシ達も呼んじゃうか? 折角だから皆でヤってパーティーに────あ? なんだコリャ?」

 

 ……だからこそ。

 自分達を脅かす外敵が居ないからこそ、彼等は油断してしまったのだろう。

 それは天敵が居ない島で、訪れた人間達に滅ぼされてしまった動物のように。

 

「オメェら見てみろよ! なんかここ、硝子殴ったみてぇに罅割れてんぞ!」

「罅割れェ? オイオイ、タッ君。薬ヤりすぎじゃね──ってマジじゃん! なんだコレ!」

「すっげ! 動画に上げたらバズるぜ!!」

 

 何も無い筈の空間に浮かぶ『赤黒い光を放つ罅割れ』。

 ごく普通の警戒心を持つ者であれば近付こうとも思わない異物。

 そんな物に、自分達が捕食者であると勘違いしていた愚か者達は、何の抵抗も無く触れてしまった。

 

 

 ……。

 

 

 丑三つ時を過ぎた公園には、静寂が満ちていた。

 街灯に集まる虫の羽音が響く寂れた公園からは、もはや騒音は響く事は無い。

 騒音の主であった男達は、1人残らず地面に倒れ伏しているからだ。

 彼らの顔には、総じて笑みが浮かんでいる。

 その笑みは、感情の高ぶりによる激しい笑みではない。

 穏やかな……まるで仏像のような穏やかな笑み。

 それはまるで、全ての欲望を失ってしまったかの様な。

 

 

「ああ────やっと出られた」

 

 

 不意に、つい先ほどまで誰も立っていなかった筈の公園に声が響いた。

 その声の主を探すかの様に、雲に隠れていた満月が顔を出すと、そこに現れたのは……

 

 勲章の付いた軍服に、金色の髪に昏い赤色の瞳。

 自分以外の全てを嘲笑するかのような歪んだ笑み。

 

「マジティア……まさか最後の技が封印術だったとは、流石の僕も予想外だったよ」

 

 月下に君臨するは、一人の魔人────名を『怠惰』のタイダロス。

 かつてこの街に降り立ち、魔法少女マジティア達の手により退けられた悪性。

 人類に仇成す邪悪なる魔人が、今ここに再臨した。

 

「僕を踏み潰して進む事すら是としなかった強さは、反吐が出るけど尊敬するよ。だけど……僕がこうして人間の欲望を奪う事で封印を解くなんて、あの頃の君達は思っていなかっただろうね」

 

 月光をスポットライトの様にして独り語る姿は、まるで演劇の序曲の様。

 そして、綴られるであろうその演目内容は、惨劇に他ならない。

 

「そうだ。殺されなかった以上、僕はまだ負けてない────さあ、再侵攻の始まりだ。今度こそは、僕が勝つ」

 

 恐るべき脅威。

 けれど……忘れてはならない。タイダロスがかつてこの世界に現れた邪悪である様に。

 この世界には、愛と平和を守り抜いた、愛の戦士がいた事を。

 

 

「────待ちなさいタイダロス! 悪行はこの私がゆるしませんわ!!」

 

 タイダロスの背後から響く、凛とした女性の声。

 まるでその声の主が居る事を待ち望んでいたかの様に、タイダロスはゆっくりと振り返る。

 

「その声と喋り方……ティアメープルか! はは! 随分と早い到着だね! ひょっとして、僕が封印を解くのを見越して────」

 

 そこまで告げて、不意にタイダロスの言葉が止まる。彼の視線の先に居たのは

 

 腰までの長さのやや傷んだ金色の髪をポニーテールで纏め、右手にはネギとスルメと金色の缶ビールが入ったエコバック。小豆色のジャージの上下を纏うその女性は、右手に食べられる野草が入ったビニール袋を持ったままタイダロスを指差している。

 どこかくすんだ様に見える金色の瞳を、掛けた黒縁の眼鏡越しにタイダロスへと向ける彼女は、名をティアメープ……ル……? 

 

 

「え……うわ、キッツ」

「ぶち殺しますわよ!!?」

 

 悪の組織の幹部の少年と、魔法少女マジティア(25才)。

 敵対する正義と悪の、10年越しの再会であった。

 

 

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