灯台下暗し
2号店を開いて、1年が経った。
あれから、店はどちらも繁盛している。
そして、私は今初号店にいる。ただし、ホログラム通信越しで。隣には、ホログラムのリックもいる。
『しばらく顔を見ないから、心配したんだぞ?』
「ちょっと忙しかったの。ごめんね。」
常連の傭兵に、帝国関連の事務作業をしていたと説明する。
2号店を開くにあたり、かなり手間な事務作業も増えた。仕方ないと言えば仕方ないけど。両陣営で営業する為だから。
『しかし、これはどういう仕組みなんだ?』
「ん?何が?」
『ホログラムでリモート営業ってことだよ。帝国は何も言わないのか?』
彼が言いたいのは、私がホロ通信で店に出ている事実だろう。
これはリックの協力と帝国の黙認あっての所業だ。
私が作った仕掛けは、2号店の一角に360°画角のホログラム通信機を設置し、リックのいる〈ホーガ・フォレスト〉にアクセスするというもの。あっちの船にもホログラム通信機を設置して、私が店に出られるようにした。つまり、向こうには私の姿が映り、こっちには私の周りに向こうの様子が映るという仕組みだ。
このカラクリを成し得る為に、帝国には2号店の通信記録と仕入れ履歴、廃棄表を提出している。事務作業というのは、このことだ。帝国が黙認しているのは、この提出があるからだ。
帝国に身を置きながら公平に営業するには、この方法しか思いつかなかった。
「隠すものがないように、記録を見せてるからね。やましいものはないし。こっちはもう完全にリックに任せてるから、私はただの持ち主だよ。」
『何度も言うが、俺は代理だ。』
リックは常連にみんなに聴こえるように、声を張り上げて反論する。他の常連も同じく肯いていた。だけど、私は更にそれを否定する。
「初号店の権利者の名前はリックだけど?」
『俺は認めないからな。』
「私の唯一の頼みなんだから聞いてよ。全く……昔から頑固なんだから。じゃあ、また来るね。」
『おう。無理はするなよ。』
『いつでも待ってるからな!』
「ありがとう!」
通信を切断し、私は2号店のカウンターへと戻る。
カウンターには、デッカーという提督が入っている。
「提督は忙しいんじゃ……?」
「良いんだ。我々のせいで、窮屈な思いをさせているからな。少しは手伝わせてくれ。」
「分かった。でも、軍務との兼業はきついんじゃない?」
「心配無用だ。店の手伝いはローテーションで組んでいる。」
「はい!?」
つい裏返った声が出た。
何でも、将校の間で順番を決めているらしい。その将校達というのが、帝国の樹立同時から〈ホーガ・フォレスト〉に来ている人達だ。みんな昇進して、提督やら艦長になったそうだ。
ありがたいけど、皇帝が知ったらただでは済まないだろう。でも、彼らは覚悟の上で手伝いに来ている。バイト代も出ないのに。
本当は出したいけど、バイト代を払えば皇帝が首を突っ込んできそうで怖い。
それも承知で来ているのだから、本当に申し訳ない。
「あ、来てくれるのは嬉しいけど、明日から2日くらい店閉めるから。」
「突然だな。」
「ちょっとヴェイダーと用事があって。」
私の言葉に、店が静まり返る。
当たり前だろう。ヴェイダーは恐怖の対象なのだから。それは提督であっても変わらない。
「今度は何の無茶をする気だ!?」
「そういうのじゃないよ。ただの打ち合わせ。」
「は……?」
「心配しなくていいよ。本当に大したことじゃないから。」
みんな不安な顔をしつつも、何とか納得してくれた。
その時、店に息を切らせた軍曹が駆け込んでくる。
「こ、皇帝陛下がお呼びです!!」
さっきのヴェイダーの件よりも、店内の空気が冷えたのを感じた。
「分かった。玉座の間?」
「いえ……執務室です!」
軍曹を落ち着かせて、私はエプロンを外す。
「提督、申し訳ないけど今日は任せるよ。閉店したら会計締めてくれる?」
「構わないが……大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。売り上げは後払いシステムだから。」
「いや、そっちではなくて、」
「あ、皇帝の方?こっちも大したことじゃないと思うから。じゃあ、よろしくね!」
客に謝って、私は店を出る。
このタイミングで呼び出すなんて、嫌な予感しかない。私の魂胆がバレたわけじゃないとは思う。それでも、何かがある。
2号店を開いて1年、つまり、“エピソード6”が始まる時期だ。今頃はルーク達がソロを救出している頃合いでもある。そして、エンドアの戦いも迫っている。
反乱軍が来るまで、残り僅か。
これは誰にも話してない。
皇帝は、痺れを切らす頃合いだ。
「もしかして追い出されるのかなぁ……」
通路を歩きながら、不安が口に出る。
誰にも頼れない。私がやるしかない。信じてもらうしかない。
皇帝の執務室のドア前に着き、インペリアル・ガードが私を見下ろす。警戒はすぐに解かれて、2人は中に連絡した。了解を得たようで、私に通るように言う。
中から禍々しいフォースが滲み出てる。
ドアを開けてほしくない。
嫌な予感は当たったようだ。