翌朝────
私は店を開けず、リックとホロ通信をしていた。
リックがカウンターの中に立ち、私がカウンター席に座るという立ち位置だ。今日は元々非定期的な営業会議だった。売上の照らし合わせなどが主だ。
営業計画表を閉じると、リックが何か言いたげな顔で私を見ていた。
話すように促すと、リックは重々しく口を開く。
『ボサンのスパイが死んだ。』
「知ってる。」
『助けられただろ。』
「リック、私はノータッチだって言ったはずだよ。」
ここでも、歪みが出たようだ。
泳がせるつもりが、ボサンのスパイが無茶をしたらしく、帝国は処分せざるを得なかったようだ。その報せは提督の1人から伝えられて、私はただ聞くしかできなかった。手を出さないと決めたのは私だけど、心の奥では後悔と迷いが燻っている。
少しずつ歪みが出始めている。
これは悪い変化か、良い兆候か、どちらにしてもフォースの意思を感じる。
『サム、無理はしてないよな?』
「散々話したでしょ。2号店を開く時に、私とリックはいかなる時も中立だって。」
『おい、これも皇帝が聞くんだろ?良いのか?』
「何かを企んでるわけじゃない。何も問題ないよ。ここで私達がどちらかに加われば、未来は翳る。子供達にとってもね。」
全てはバランスを求められる。私はジェダイを辞めた身だ。どちらかに味方してはいけない。感情的になれば、反乱軍に敗因を与えてしまうことになる。
棚からボトルを取り、私は淡々と酒をグラスに注ぐ。
『反乱軍はまた第二デス・スターを破壊するぞ。それも分かってたのか?』
「ノーコメント。反乱軍が危機に陥っても、私達は手を出さない。それは帝国軍に対しても変わらないから。」
『サムはあくまでレスリー達の抑止力ってことか?』
「うん。でも、レスリーとルークは気にしてないでしょ?」
『まぁな。意気揚々と帝国と戦ってたからな。』
ルークは別として、レスリーは私への腹いせに帝国軍を引っ掻き回している。さすがに帝国軍が可哀想だけど、それとこれとはまた話は別だ。レスリーも、私が口を挟まないと知って戦っている。
思春期で反抗期の娘を手放した私に、母親面する資格はない。
「………あの子達元気?」
『有り余るくらいにな。』
「そっか、良かった。」
『どうしたんだ?』
「………巻き込んでごめん。」
『今に始まったことじゃないだろ。』
「でも、リックを束縛してる。嫌になったらいつでも言ってよ?強制はしないから。」
『分かってる。まぁ、俺も散々振り回したからな。お互い様ってことにしようぜ。』
そう言ってくれて良かった。それでも、私の方が振り回している。命を懸けることもあったんだから。
「リック、いろいろありがとう。」
『好きでやってるんだ。そんなに気負うことないさ。こっちはそろそろ開店だ。また連絡する。』
「うん。」
通信が切られて、私はカウンターに突っ伏す。
ボサンのスパイが殺されたのが、悲しくないわけじゃない。ショックだったし、罪悪感もあった。何とも思ってないわけじゃないんだ。
でも帝国に通信を聞かれるから、何でもないふりをするしかない。
常連の将校は私を気遣うだろうけど、皇帝は違う。
「もう少しの辛抱……」
あと少し、もう少しだ。
再びナイトシフトになり、また来訪者が現れる。
「順調?」
「滞りなく。次は?」
「まだその時じゃない。」
「まだだと?このままではダース・シディアスの思う壺だぞ!」
「だから私とあんたが手を組んだ。昔のように、希望を信じて。」
「………承知した。」
納得していないようだったけど、無理矢理にでも理解するしかない。
来訪者は店を出て行き、私はいつも通りのルーティンを過ごす。
明朝、呼ばれている気がして、私は瞑想を始めた。
通信は皇帝に聞かれるから、フォースの幻影を声の主の下へと飛ばすことにした。呼んでいたのはルークとレスリーで、2人は私が現れたことに驚いていた。私が降り立ったのは、〈ホーム・ワン〉の一室だった。
「話って何?」
努めて笑顔で、子供達に問う。
私とは反対に、2人の顔色は芳しくない。
それでも、話を聞こう。