私の体力が回復して、2号店はようやく営業を再開した。
とはいえ営業再開したものの、客足は乏しかった。
その理由は、反乱軍に備えているからだ。皇帝の命令で、帝国軍は臨戦態勢となっている。つまり、反乱軍を罠にかけようとしている。
更に言えば、この第二デス・スターはまだ完成していない。皇帝が建設を急がせている為に、いつも以上に客足が乏しい。例に挙げるなら、週5くらいで来ていた常連が忙しくて週1頻度になってしまった程だ。
原作の時系列だと、ハン・ソロ率いる先発隊が第二デス・スターのあるエンドアへと来る頃だ。
だけど、イレギュラーなことが起きた。
「なんで来たわけ?」
「あぁ?来ちゃ悪いかよ?旦那が嫁を心配するのは当然だろ。」
「そういう問題じゃないから、トリー。」
トリーは少ない荷物をカウンターに置いて、椅子に座る。
そう、旦那であるシカトロ・ヴィザーゴが2号店を手伝いに来たんだ。
連絡はしていたけど、彼はずっと私を心配していた。2号店の話が出てからは、来ないように言っていたのに、こうして来てしまった。私か彼のどちらかが、人質にされることもあるかもしれないのに。
「身柄を拘束されたりしたらどうするの?そこまで考えた?」
「馬鹿言うなよ。俺なんかでお前が屈するなんて、皇帝も思わないだろ。」
「軽率すぎるでしょ……」
「お前に言われたくねぇよ。心配すんな。俺だって場数は踏んできたんだ。いざとなったら自力で逃げ出すさ。」
確かに、彼は元社長で、シンジケートのボスだった。それなりに場数は踏んでいる。それでも相手はたかが帝国軍じゃない。トップはシスだ。
不安で堪らない。
「あのなぁ、皇帝は俺なんか眼中にないんだよ。」
「“俺なんか”って言うのやめてよ。私にとって、トリーは家族で、私の急所なんだから。」
「それは喜んでいいのか?」
「んー、ちょっとは危機感持ってほしいな。」
「悪かった……」
「もういいよ。来ちゃったんだし。ただし、来たからには私と同じ中立にいてよ?」
「分かったよ。」
とりあえず仲直りをして、私はトリーの荷物を受け取った。帝国の司令部には説明して、私と同じ中立だと話した。あとは、エンドアの戦いを待つだけだ。
翌朝、私はトリーと一緒に朝食を摂って、組手をすることにした。
これは、トリーの為だ。
店はお休みして、テーブルと椅子も隅に避け、私とトリーはお互い向き合う。
「トリー、手抜いてるよね?」
「抜いてねぇよ!」
トリーはパンチをするけど、私は手の平で衝撃を霧散させて全部防いでいる。
ストレートすぎて、わざととしか思えない。
「本気で来ないと、インペリアル・ガードも躱せないよ。」
「そんなこと言ったってなぁ…!」
「フォース感応者は不意打ちが良い。やってみて。」
「簡単に言うなよ!」
簡単には言ってない。逆に、不意打ちをするしかないんだ。フォース感応者にとって最も厄介なのは考えて出す手ではなく、ふとした不意打ちだ。
トリーは何度も試そうとするけど、私には届かない。
「………一旦やめよう。」
「どうしたんだ?」
「お客が来た。」
「客?」
入口には、皇帝が立っていた。トリーは恐怖を感じて、身を震わせる。私だって怖い。でも、何か用があるようだ。
思えば、呼び出されることが多くて、あっちから来るのは初めてだ。
「ここが其方の店か。」
「正確には2号店だけどね。何か用?」
「反乱軍の近況を教えてやろうと来たのだ。ところで、そのデヴァロニアンは紹介してはくれぬか?」
「そうだね。ちゃんと紹介するよ。シカトロ・ヴィザーゴ、私の旦那。」
「そうか、彼が夫だったか。ヴィザーゴ、彼女には苦労させられたか。」
「いや……」
トリーは恐怖で言葉がまともに返せていない。彼は離れさせた方がいい。私はともかく、トリーは避難させよう。
「トリー、少し仕事頼んでいい?」
「あ、ああ。」
「これ渡すから、司令部行って食糧もらってきて。」
「………分かった。」
「デッカー提督に言えばすぐ分かるから。」
トリーは頷くと、姿勢を低くしながら出て行く。その様子を、皇帝は面白くなさそうに見ていた。どうやら私が焦る姿が見たかったようだ。
「反乱軍の近況を知らせるって言うには、悪戯が過ぎるんじゃない?」
「余は何もしていない。其方が勝手に勘違いしただけだ。」
「私やジェダイはさて置き、普通の人から見ればシスは恐怖の対象だからね。それで?反乱軍は?」
「先発隊が来たようだ。このデス・スターを守るシールドを無効化する為にな。あぁ、そう簡単には来させるつもりはないぞ。」
人を駒だと思っている皇帝に、嫌悪感を抱く。
皇帝はカウンターの椅子に座り、更に話を続けた。
「若きスカイウォーカーと、其方の娘はここに来るだろう。娘は其方を、若きスカイウォーカーは父を取り戻しに。」
「別に無理矢理ここにいるわけじゃない。2人にもそう伝えてある。」
「ほぅ?通信機を使わぬ連絡手段があるのか。」
「………」
知られたところで、会話の内容が知られたわけじゃないから困らない。
私にとって、ジェダイの機密はほとんどがただの知識に過ぎない。それは皇帝にとっても同じ。お互いの条件は変わらない。
「ジェダイの古い技とやらか。幻影と言ったな。いくら我々シスに明かしたとしても、所詮ジェダイの小細工ぞ。未熟な彼らにも使えやせぬ。況してや、ジェダイではない其方も容易く扱えるものではないだろう。」
そんなことは分かってる。だから幻影を使ったら倒れたんだ。ジェダイではないという事実に加えて、ジェダイだった時も未熟だったのだから。
「そんなの、今に分かったことじゃない。そろそろ本題に入ったら?」
「良かろう。ルーク・スカイウォーカーが暗黒面に踏み込んだ暁には、其方の忠誠は余に向けてもらう。」
「もしルークが拒んで、父親を取り戻した場合は?」
「そんなことはあり得ぬ。」
ここまで断言できるということは、皇帝は勝利を確信している。皇帝がどこまで予期しているか分からないけど、恐らく今は目先のことしか見ていないだろう。私は目先のことだけじゃなく、視野を広げている。それが功を奏し始めていると信じたい。
「代わりに、あんたは何を約束してくれるの?」
「シスに信頼はないと分かっているであろう。何を期待している?」
ここで、最悪な考えが浮かんだ。私の命には拘らない。だけど皇帝を潰せて、尚且つ自分で首を絞められるような悪手を。
「大層なものは期待してない。せめて命の保障が欲しいだけ。」
「生に縋るのは愚か者の所業ぞ。」
「生きる者の特権だと思うよ。」
皇帝は私の意図を探りながら、返答を考えている。
やがて、皇帝は椅子から立ち上がる。
「では、シスの契約を。」
「どういうこと?」
「互いの命を懸けるのだ。文字通り、バランスが崩れれば傾いた方が死ぬ。」
「じゃあルーク達、反乱軍が負けたら私が死ぬってこと?」
「左様。我々シス、帝国が負けるようなことがあれば、余が死ぬ。この死はただの死ではない。呪いだと心得よ。良いな?」
「分かった。契約成立だね。」
そう言うと、皇帝は私の手を取る。その瞬間、手元から緑の炎が燃え上がって、皇帝と私の手に吸い込まれていった。これがシスの秘術だ。
皇帝は満足そうに店を出て行く。
いくら狙ったとはいえ、これは悪手すぎだ。皇帝の首どころか、私自身の首も危ない。でも、後戻りはできない。
もう決めたんだ。
何があろうと、ルークとレスリー、反乱軍を信じる。