【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

105 / 109
信念は濁流の中へ

皇帝が来た日の晩、ルークとレスリーが投降したと知らせを受けた。

 

時が来た、フォースが私を駆り立てている。

 

 

「臨時休業?」

「うん。」

 

 

私は準備の為に、トリーに店を休むことを話した。

 

カウンターに並んで座り、グラスを傾けながら皇帝とのことを説明する。

 

 

「まさか死ぬ気じゃねぇだろうな?」

「違うよ。私にも多少の企みはあるけど、命は懸けない。」

「だったら、皇帝と何を約束した?そこは聞いてないぞ。」

「それは……」

 

 

最悪の契約のことは話したけど、肝心なところは話していない。それこそ、トリーが嫌う命を賭す行為だ。話せるわけがない。

 

 

「ただの降伏だよ。」

「ただの降伏?その言葉の意味だと、お前らは一世一代の賭けをしたんだろ。」

「そんなんじゃないってば!」

「なら聞いてくるか?」

「どうせ怖くて聞けないくせに。」

「何だと!?」

 

 

トリーは怒るけど、すぐに冷静さを取り戻す。

 

 

「レスリーとあの小僧がこっちに来るんだろ?大人しく助けられるつもりなのか?」

「あの小僧じゃなくてルークね。私がどんな人か、よく分かってるでしょ。」

 

 

旦那は酒を煽りながら、口角を上げる。

 

 

「………まぁな。」

 

 

聞かなくても分かるようだ。

 

やがて、ルークとレスリーが到着したと報告を受けた。

 

みんな親切で教えてくるけど、皇帝とヴェイダー怖さに何もできることはない。それは私も分かっている。何より、帝国側に立つ覚悟を決めた人達だ。私はそれを静観するしかない。

 

皇帝は接触を嫌がるだろうけど、私はレスリーではなく、ルークと面会した。

 

監房ブロック担当の提督に頼み込み、人払いして独房に入らせてもらった。

 

 

「サマンサ!!」

「ルーク、ますます父親に似てきたね。」

「何だって……?」

「ごめん、こっちの話。皇帝は、あんたの力を欲しがってる。分かってて来たの?」

「当然だ。だが、僕は暗黒面には屈しない。それに、貴女と父を救う為に来たんだ。」

 

 

ルークの意志は固い。父親と、私を連れ帰る為に。“ダース・シディアス”と直接戦う覚悟でいる。

 

 

「皇帝は、父と貴女を見誤っている。貴女達は簡単に屈したりしない。本当は助けを求めているんだろう?」

「皇帝に聞かれてるって分かってる?」

「構わないさ。それに、これはジェダイの使命なんだ。」

「え……?」

「苦しんでいる人達を助けるのが、僕らジェダイの使命だ。レスリーからはそう教わった。サマンサの心が悲鳴を上げているのに、見ぬふりはできない。」

 

 

ルークはジェダイとして、もう一人前だ。私よりも先を見ている。レスリーも、同じように未来を予期しているはず。

 

私は古いジェダイのような見方しかできず、近い未来しか考えていなかった。

 

ルークの世代と私の世代、こうも変わるとは思わなかった。

 

 

「サマンサ、今…!」

「黙って。私はもうジェダイじゃない。だから、私なりのやり方で行動する。」

「サマンサもジェダイだ!そうじゃなかったら、僕とレスリーは何なんだ!?」

「あんた達はジェダイだよ。シスに滅ぼされる前のジェダイじゃない。本当のジェダイ。」

 

 

私は違う。一度はジェダイ・オーダーを去っている。いくら復帰訓練したとはいえ、ジェダイとしての人生は選ばなかった。

 

結果的にジェダイの行動もしたけど、それは偶然で必然だっただけ。

 

フォースの意思が、私に働きかけた結果だ。

 

 

「明日、あんたの選択で未来が決まる。」

「未来?何を、」

「あんた達を信じてる。フォースと共にあらんことを。」

「っ!?サマンサ!!」

 

 

ルークの声を無視して、私は独房を出て行く。

 

今の会話は、皇帝も聞いている。ここまで話す気はなかった。これで、“シディアス”に敵意があると知られた。

 

どの道、未来はもう決まっている。

 

私と皇帝が何をしようが、運命は変わらない。

 

 

「止まれ!!」

 

 

インペリアル・ガードが2人現れ、部屋に戻ろうとする私の前に立ち塞がる。

 

 

「サマンサ・ホーガン、我々と共に来てもらおう。」

「自由は保証されてるはずだけど?」

「関係ない。これは皇帝陛下の命令だ。」

 

 

面倒なことになった。

 

 

「待て。」

 

 

その機械的な声に、私は唖然とする。

 

 

「私が連れて行く。お前達は持ち場に戻れ。」

「だが、」

「もし連れて行くことができなければ、その咎はお前達に向くだろう。分かったな?」

 

 

インペリアル・ガードは仕方なく引いた。

 

“ヴェイダー”は、私についてくるように言い、普段は人が来ないエリアへと向かう。

 

どうやら遠回りしているようだ。

 

 

「しくじったな、ホーガン。」

「何も失敗してない。これも企みの一つ。明日の朝、全てが変わる。」

 

 

それは、ルークとのことも仄めかしていた。

 

 

「契約のこと、聞いたでしょ?」

「………勝手なことを。」

「撤回はしない。」

「1年前のあの言葉を忘れたのか?」

「忘れるわけないじゃん。私を信じるのをやめる?」

「………」

 

 

ヴェイダーは頷かなかった。

 

今ここでヴェイダーといるのは、1年前にヴェイダーと腹を割って話したからだ。あの時、私は真剣に向き合ったつもりだ。その覚悟は変わらない。

 

 

「猶予はないと思え。」

「言われなくても分かってる。」

 

 

使われていない個室に着き、私は中に入るように促され、仕方なく入ってベッドに座る。

 

 

「ここにいろ。予定外の動きは決してするな。」

「私が予定通り動くと思う?」

「お前が言い出したことだ。死にたくなければ、黙っていろ。」

 

 

そう言って、ヴェイダーは出て行く。

 

私が黙っていると思うな。

 

ここで大人しくしていたら、1年我慢した意味がない。2号店を作ったのは、この日の為なのに。ジェダイの道を選ばなかった、ジェダイとしての私の企みなんだ。

 

ブラスター・ピストルを携帯し、私はドア横のパネルを操作する。

 

ついに、皇帝と決着をつける時が来た。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。