翌朝になり、反乱軍の地上部隊はエンドアの基地に攻撃を始めた。
反乱軍の本隊も、もうすぐ来るだろう。
私はトルーパーに見つからないように移動し、玉座の間の天井裏に潜んだ。下では皇帝が玉座に座り、ルークとヴェイダーを待っている。それが余程楽しみなのか、本来気付くはずの私の存在に、気付く余地がなかった。
それよりも、移動途中で皇帝が持っていた小物が気になった。四角錐で、重く冷たいフォースを感じた。シス・ホロクロンに似ているけど、別物だ。
四角錐の小物は保管庫へ入れられ、皇帝は厳重に扉を閉じていた。
やがて、ヴェイダーがルークとレスリーを連れて玉座の間に訪れる。
レスリーが持つ私のライトセーバーと、ルークのライトセーバーはヴェイダーから皇帝に渡された。
「よく来た。若きスカイウォーカー、レスリー嬢。」
「名前で呼ばないでくれる?」
「では、何と名乗る?」
「“レス”、私の名前の短縮形でもあるけど、ジェダイじゃないという意味も込めてね。」
脳裏に、昔現れたデヴァロニアンの少女が思い浮かんだ。あの時の違和感と謎が全て解けた気がする。あれも、私が経験すべきものだったんだ。
「良かろう。ところで……レスよ、母親のどっち付かずの態度はどう思う?」
「それ私に聞くの?」
「では、若きスカイウォーカーよ。お前はどうだ?」
「何が言いたい?」
「師を仰ぐなら、暗黒面も学ぶべきだと思わぬか?」
吐き気がする。皇帝は、私を材料にして2人を煽っている。昔、幼かったカリを守る為とはいえ、一瞬でも暗黒面に触れてしまった。皇帝はそれを知ってて、利用している。
でも、私は2人を信じる。
ルークとレスリーは、暗黒面には転じない。
「僕達を見縊るな。僕とレスリーは、サマンサを信じている。もちろん、父のこともだ。」
「ヴェイダー卿が裏切ることなどあり得ん。お前達は仲間を信じ過ぎている。反乱軍のことも同様だ。」
「何だと……?」
「我が帝国にとって、反乱軍など脅威ではない。事は余が思い描いた通りに進行しておる。」
全ては自らの手の上、と皇帝は言う。
「お前の友人達も、愚かだ。聖なる月にいるお前の友人達は罠に足を踏み入れた。反乱軍の艦隊も同じだ。シールド発生装置の場所を同盟軍に漏らしたのも余がしたことだ。少人数の攻撃ではどうにもならぬわ。我が精鋭の軍団が手ぐすねを引いて待っておる。気の毒に、お前の友人達が到着する時も偏向シールドはビクともしておらんだろう。」
ルークの怒りに感化され、私の心にも怒りが芽生える。
それを感じ取ったのか、皇帝はこちらに視線を向けた。
「ホーガン、いい加減隠れてないで出てくるがいい。」
初めから気付いてたいたようだ。
天井裏から降りると、ルークは驚いた顔をする。レスリーは驚くことはなく、呆れたような顔をしていた。私はどっちにも立たず、玉座の間の隅で壁に寄りかかる。
「サマンサ!」
「ホーガン、見よ。反乱軍は間もなく滅び去る。余の勝ちだ。」
「まだ決まってない。」
「何の話をしているの……?」
「サマンサ……?」
私が外に視線を向けると、レスリーはようやく理解したようだった。
「ママ、まさか反乱軍の勝利を賭けてるの?」
「何だって!?」
「私はあくまで中立。だからどっちが勝つとか言ってない。賭けてるのはあいつ。」
顎で皇帝を示せば、2人は怒りをちらつかせた。
ただ、その矛先は私にも向いているようだった。
「いいぞ、お前達の怒りを感じる。」
「息子よ、ホーガンはどちらでもない。これが最後の機会なのだ。反乱軍が負ければ、どの道我々に加わるしかない。」
「だが、この状況を変える道が1つだけある。」
皇帝の言葉に、2人は視線を上げる。
「ヴェイダー卿のように余に従え。さすれば、全てを救えるぞ。」
窓のシャッターを開け、皇帝は外を見るように促す。
外では反乱艦隊が、隠れていた帝国艦隊と戦いを始めていた。当然シールドは開いていない。なぜなら、罠だったからだ。
ルークは、皇帝の手元にあるライトセーバーを垣間見る。
「これが欲しかろう?」
皇帝の甘い囁きに、ルークは視線を逸らす。だけど、ルークは必死に怒りを堪えていた。それが、レスリーが知るジェダイの教えだったから。
“怒りでライトセーバーを握らない”
これは私が犯した間違いだ。娘のレスリーにはそう語った。だから、2人はそれを守ろうと努力している。
「答えは出たか?」
「従うわけないでしょ。」
「僕もだ。絶対に屈しない。父も返してもらう。」
「良かろう。従わぬのなら、死あるのみだ。ヴェイダー卿、2人を殺せ。」
皇帝の命令に、ヴェイダーは微動だにしない。
「ヴェイダー卿!聞こえぬか!?2人を殺せ!!」
“シディアス”はそう叫ぶが、やはりヴェイダーは動かない。
「どういうことだ……?」
私は、その“合図”にようやく動き出す。
「こういうこと。」
ヴェイダーの前に立ち、皇帝に軽蔑の眼差しを向ける。
「ヴェイダー卿!裏切ったのか!?」
「裏切ったわけじゃない。私とヴェイダーは“話し合い”をしただけ。」
「え……?」
「サマンサ……?」
「話し合いなど無意味ぞ!」
「本当にそう思う?」
現に、こうして意味を成した。
話し合いこそ、私とヴェイダーがしてきたことで、パドメが望んだことだ。ジェダイとかシスとか関係ない。対話も無く、解決はできない。仮に敵同士だとしても、相手を知らなければ何も変えられない。
皇帝には一生分からないだろう。
これが、私の選んだやり方だ。
「ホーガン、お前がヴェイダー卿を唆したのか?」
「人聞きの悪いこと言わないで。私達は互いを受け入れただけ。」
「そんな無茶苦茶な……!」
「ルーク、和平交渉こそジェダイの使命なんだよ。」
「え…?」
「ママ!こんなの和平交渉じゃないよ!」
「そりゃあね。私ジェダイじゃないから。」
私とヴェイダー以外、納得できないようだった。
当然だ。散々中立って言ってきたんだ。今更どちらかにつくのもおかしな話だ。
なら、どういうことか?
それは、至って単純なこと。
「私ジェダイじゃないから、ヴェイダーがカリを殺したのは許せてないし、今後も許せない。でもね、未来の為に行動はできる。」
そう、未来の為。
レスリーの為、愛する人達の為、仲間の為─────
理由はたくさんある。
「私がジェダイの代理として、ヴェイダーがシスの代理として。互いの妥協点を探しながら、話し合いをしてきた。」
「………」
「「ええっ!?」」
怒りで黙る皇帝に対し、子供達は驚愕の声を上げる。
話し合いで出た答えは、珍しくヴェイダーと答えが一致した。その答えが、一番望ましい結末だった。ただ、そこに至るまでが遠かっただけ。
勝ちも負けもない。
結論、皇帝を玉座から引き摺り下ろす。
これが“私達”の答えだ。