私はパッドを見て、相手に問う。
「前の仕事はメイドってことは、給仕は得意?」
「いえ、ハット族に仕えていたので得意ではありません。」
「………」
ハット族の関係者はやめていただきたい。
トワイレックの女性はお断りした。
実はこれで3人目だ。1人目は元老院ビルの清掃員、2人目はパティシエ。パティシエの人には共同経営を求められたけど、私はお菓子を求めてない。
可愛いお菓子を出したところで綺麗に食べてくれるのは、店の客では早々いない。
次は、胡散臭い若い男。
彼の提出してきた共和国の登録IDは、どう見ても偽造IDだ。つまり、誉められた経歴はないということだ。慎重に面接しないといけない。
拒否したいけど、下手に刺激したくない。
「サム様、来られました。」
「通して。」
「さぁどうぞ!」
アズが通した若い男は店に入ってきて、軽く会釈する。男は普通の人間で、暗い茶髪の地味な人だ。逆に私の金髪が目立つ。
対面の椅子へ座るように促すと、遠慮がちに腰を下ろした。
「初めまして。私はサマンサ。単刀直入に聞くけど、これ偽造IDだよね?」
パッドを男に見せて、真偽を問う。
「ああ。訳ありなものでな。」
「どんな理由?」
「言わなきゃダメか?」
「信用できない相手を雇えるわけないでしょ。」
私がバッサリ告げると、彼はまずパッドを受け取って正式なIDを開く。
「名前はパトリック・カーター。25歳。以前はナブーのパイロットだった。」
「へぇ、同い年なんだ。ナブーって、保安部隊の?」
「ああ。」
〈ホーガ・フォレスト〉より、ナブーのパイロットをやっていた方が報酬は高くもらえるのに。私でもナブーに残る。正当な手続きも踏むし、真っ当な職だから。
「なんで辞めたの?」
「正確には辞めてない。」
「つまり、無断退職?」
「そっちもジェダイを辞めただろ?」
「………あんたに関係ある?」
「聞いたらまずいのか?」
「あんたも不採用。」
「はぁ!?」
パッドを閉じ、カーターに帰れと急かす。
だけど、彼は認めなかった。
「面接自体してねぇだろ!」
「もうやった。さっきの会話で雇いたくないって思った。」
「雇えないだろ!?」
「違う。雇いたくない。」
笑顔で言うと、彼は何度も私を止めてくる。
なぜこんな人を雇わないといけないのか分からない。雇い主のプライベートに突っ込んでくる従業員はいらない。私はただ仕事をしてくれればいいだけだ。
「悪かったよ。頼む、チャンスをくれ。」
「じゃあ聞くけど、辞めた理由は?」
「上と揉めたんだ。王室のじいさん達が、規則を守れってうるせぇんだよ。」
「規則は守る為にあるんだけど?」
「俺には合わない。だが、ここなら自由にやらせてくれそうだからな。」
「自由を履き違えてると思うけど、それなりのことは守ってもらうよ。」
なんだかヴォスを見ているような気分。ヴォスもルールは守らないし、礼儀がなってない。本当に似ている。
「雇ってくれるのか?」
「まだ雇うとは言ってない。あんたの仕事は、私が不在の間に代わりに店を回すこと。それと、危険が伴うかもしれない。」
3人の応募者には言ってない。まず、それ以前の問題だったから。基本は接客と調理だから、それができないと困る。
「危険?なぜだ?」
「あんたがさっき言ったように、私は元ジェダイ。事情があって、時々授業を請け負うことになったの。その不在で、愉快なお友達が来るかもしれない。」
「愉快なお友達?」
「分離主義連合。」
客に関しては何も言わない。タンバーとか常連だったしね。ただ、営業を邪魔するようなら黙ってはいられない。
それが私の不在時なら尚更だ。
「分離主義連合のリーダーを拒んだからね。可能性としてはなくもない。」
「危険手当はあるのか?」
「クレジットの上乗せくらいならしてあげる。」
「いや、そうじゃねぇって。デートくらいは、」
「失礼な男と付き合うと思う?」
にっこり言ってやると、カーターは黙った。
一番は、やはり信用問題だ。カーターが信用できるかどうかと言われれば、簡単には頷けない。偽造IDを作ってきたから、すぐに信用しろという方が無理だ。
「雇ってほしいなら、言葉で私を信用させて。」
「俺は嘘を吐かない。というか、あんたに嘘は通用しないだろ?だが嘘を吐く前に、俺はあんたを騙すようなことはしない。」
本心からの言葉のようだ。ナブー王室に仕えていただけはある。本当に、私の店に置くには役不足だ。
「いいよ、雇ってあげる。」
「本当か!?」
「危険かもしれないって分かってる?」
「承知の上だ。心配しなくていい。実戦経験はある。」
「危険なのは分離主義連合のリーダーだけじゃない。バトル・ドロイドとか、ダーク・ジェダイも来る。」
「ああ、分かってる。」
基本は店を回してもらい、普段は厨房に入ってもらうことになった。給料は、カーターが保安部隊のちょっと下。賄いと、住み込みを了承して、余っている部屋を貸した。
使ってない部屋だから掃除してないけど………
まぁ、自分でやってくれるでしょ。
「契約書は作らないのか?」
「自分で自分の首を絞めてもいいなら作るよ。」
「何だって?」
「ジェダイ評議会には話すけど、何かあった時に分離主義連合に狙われる可能性もある。だから作らない。」
もちろん給料は払う。でも、〈ホーガ・フォレスト〉で“働いている”という理由で危険に晒したくない。かなりの矛盾だけど、人手が足りないから、こうする他ない。ジェダイに店を任せたくないから。
「分かった。よろしく頼むよ、オーナー。」
「オーナーはやめて。普通にラストネームで呼んで。」
「ファーストネームはダメなのか?」
「絶対やめて。私が雇い主で、あんたは従業員なんだから。」
基本的な仕事内容を教えて、部屋も教え、護身用にブラスター・ピストルも渡した。大したマニュアルは作ってないから、細かい部分はカーターに任せた。料理はレシピがあればどうにかなる。
問題は、うちの運営方針だ。
「私の店は共和国派だろうが分離派だろうが関係ない。客として対応して。だけど、さっき言ったように分離主義連合が来るかもしれない。」
「店を守れって言うんだろ?」
「バトル・ドロイドとか賞金稼ぎが敵ならね。」
何がまずいかと言うと、ドゥークー伯爵とかヴェントレス自身が来た場合だ。カーターに実戦経験があっても、相手はフォース感応者。普通の人間には太刀打ちできない。
「もしライトセーバーを持つ相手が来たら、絶対に戦わないで。」
「店を守るんじゃないのか?」
「店より命でしょ。ジェダイと違って、ダーク・ジェダイとかシスは情けをかけない。鉢合わせたら、逃げて。逃げられないなら、私に連絡して。すぐ来るから。」
「分かった。」
2日間くらい仕事を教えた後、私はカーターに店を任せてジェダイ聖堂へ戻った。
アズがいるし、心配はしてない。
心配なのは、私自身だ。指導するのは、あのプロ・クーン。顔も怖いし、厳しいと言われている。
復帰訓練が嫌すぎる。
サムは独身を貫くべきか否か?
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早く結婚しろ。
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ダメ、独身でいろ。
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