不成立な喧嘩
1週間の復帰訓練が終わって、私は自室へと戻った。
1週間って短いよね。ところがこれ、めちゃくちゃハードスケジュールだった。というか、1週間でジェダイとしての訓練をみっちり叩き込まれた。
マスター・プロ、厳しすぎる。
私はあーだこーだ文句言ってるけど、10年のブランクは大きいということだ。
「マスター・ホーガン、生きてますか?」
「失礼な!生きてるよ!」
ドアを開けると、アナキンがいた。
そんなに仲良くないはずだけど、何の用だろう。
「どうしたの?」
「復帰訓練は無事終了したんですね。」
「うん。ねぇ、本当にどうしたの?」
私がしつこく聞くと、アナキンは言いにくそうに口を開く。
「最近、マスターが落ち込んでいるように見えて………」
「マスターって、オビ=ワン?」
「はい。何か知ってるんですか?」
「あー、もしかしたら………」
私は言葉をフェードアウトさせる。
もしかしなくても、私が言ったことが原因だろう。顔を見たくない、と言ったから。あの時のオビ=ワンの表情が脳裏に浮かぶ。
いや、でも、そこまで落ち込む?
ジェダイだから気にしないと思ったのに。
「どうしたんです?」
「たぶん、私のせい。」
「え?」
「マスター達と話し合う前に、オビ=ワンとちょっと喧嘩みたいなことになったから……」
私が何を言ったか話すと、アナキンは当たり前のことだとなぜか怒る。
「親しい人に言われたら傷付くに決まっているでしょう!どうして分からないんですか!」
「でも私はジェダイじゃないから正論でしょ?」
「例え正論だとしても、貴女がマスターを傷付けたことに変わりはない。ちゃんと話し合ってください。」
「えぇ……」
「………」
「分かった。話し合うよ。」
嫌そうな顔をしたら、アナキンに睨まれた。
オビ=ワンは明日から、アナキンとクリストフシスに行くらしく、今日中に話し会えと念を押された。授業があると言ったんだけど、それが終わったらでいいとまで言われた。
アナキンは何度も念を押して、部屋を出て行った。
「行かなきゃか………」
どんよりとした気持ちのまま、私は子供達が待つ部屋に向かう。
ダメだ。ちゃんと切り替えないと。子供達に辛気臭い顔は見せられない。
責任は果たさなきゃ。
「ん……?」
部屋に着くが、私はドアの前で立ち止まる。
何か騒がしい。はっきり言うと、怒鳴り合い。どうやら喧嘩しているらしい。
無言でドアを開け、今にも掴みかかりそうな2人をテレキネシスで部屋の端と端に引き離す。
「そこまで。」
私は静かに告げ、座るように言う。
子供達は一瞬唖然としていたけど、すぐに我に返った。
「え!?」
「この状況でやるんですか!?」
「今から何をやる時間?」
「授業です……」
子供達6人は、大人しく座る。
6人のデータは、事前に確認している。
男の子のマイクとシアン、女の子のリム、トワイレックのカリ、ノートランのモダル、イリドニアンのセオドア。さっき喧嘩をしていたのは、セオドアとマイク。一通り授業を受け終わったクランのうち、三分の一の子供達だ。
私の授業が終われば、未来の師にアピールする“アプレンティストーナメント”が始まる。
私はそれまでに、集中力と忍耐を覚えさせるのが務めだ。
「まずは自己紹介しよう。私はサマンサ・ホーガン。あんた達も順番に名前を教えて。」
名前は知ってるけど、互いを知る為に軽く自己紹介をし合った。
「最初に言っておくけど、私はジェダイじゃない。」
「それどういう意味ですか?」
「一応戻ったけど、ジェダイとして戻ったわけじゃない。次世代のジェダイをサポートしに来ただけ。」
「じゃあ、僕達の授業が終わったらもう帰ってこないんですか?」
「そういうことになるね。ほら、授業始めるよ。」
台の上に箱を置き、中を開けて見せる。
「石……?」
「何これ……?」
「集中力と忍耐力を培うには、これが一番手っ取り早い。」
「どうやるんですか?」
「フォースを使うには、集中力が欠かせない。まず石を積み上げて。」
私が手本にやって見せて、フォースを使って石を積み上げる。ある程度積み終わった後、今度は石を上から順に持ち上げて、宙でぐるぐると円を描いて見せる。
実はこれ、私が復帰訓練でできなくなっていたことだ。10年前はできたのに、集中力も足りず、1つの石に注意していると他の石が浮かべられなくなる。私はこれを1日かけて取り戻したのだった。
マスターには時間がかかりすぎだと呆れられた。
「私と同じようにできるようになったら合格。じゃあやってみて。」
1人10個ずつ渡し、子供達は訓練を始めた。
石を積み上げること自体は、みんなすぐにできるようになった。でも、全てを持ち上げて操るのは難しいようだった。一番最初にできるようになったリムでも、壁は高いみたいだ。
「できないっ……」
カリが泣きそうな顔で石を見つめる。
「カリ、秘密の話聞きたい?」
「秘密の話……?」
「うん。みんなには秘密だよ。なんで石を積んでるんだと思う?」
「集中力を鍛える為?」
「集中力はそんなに大事じゃない。まず、焦らないこと。ジェダイに焦りは禁物。冷静さを欠いたら周りが見えなくなるでしょ?それをよく考えてみて。」
頭を撫でてあげて、私は他の子の石積みも見る。
フォースに不可能はない。10年ブランクのある私でもできたんだ。この子達なら絶対にできる。
まず、気付いてくれるかが問題だ。
「もうこんな時間か。」
パッドで時間を見ると、もう終わりの時間だった。
あっという間だったな。
「え…?」
「僕達落第……?」
「大丈夫だよ。期限は今日じゃないから。次は5日後。その間にたくさん練習して。聞きたいことがあったら、これで連絡して。」
専用のコムリンクを連絡役にカリへ渡すと、子供達は首を傾げる。
「ジェダイ・オーダーのものじゃないんですか?」
「うるさいからシャットアウトしてるの。あ!マスター達に周波数教えちゃダメだからね!あと気軽に連絡していいから!」
「はい!」
『ありがとうございました!』
子供達は部屋を出て行き、私も真っ直ぐプラットフォームへ向かおうと早足に出て行く。
ところが、ドアを通った瞬間誰かに腕を掴まれ、引き止められる。引っ張られてつんのめり、私は勢いよく腕を振り払った。でも腕を掴んだ人を見て、私は言葉に詰まってしまった。
「サム、少しだけ時間をくれ。」
「オビ=ワン………」
オビ=ワンの真剣な表情に、私は了承した。
また説教だろうか?
子供達に甘いとか、もっと厳しく教えるべきとか、他にも何か言ってきそうだ。責任があるのは分かってる。でも、オビ=ワンにだけは言われたくない。
いろんなことが思考を巡り回って、言いたいことがまとまらない。
もし説教するなら、私は謝らない。
これが私なんだから。
サムは独身を貫くべきか否か?
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早く結婚しろ。
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ダメ、独身でいろ。
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